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第十一章:南の大陸

11-20スィーフ出発

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 エルフの村から迎えに来たのは戦士長のソルガさんだった。


 ソルガさんはエルフの森と精霊都市ユグリアの間にあるゲートと呼ばれる場所の警備を中心にエルフの村を守っている。
 歴戦の戦士の英雄で村の戦士たちを束ねてもいる。
 そんな偉い人がわざわざ迎えに来てくれたのだ、私たちもとても心強い。


「そう言う訳で、お世話になりました。そうそう、約束のお米ちゃんと送ってくださいね!」

「勿論ですとも。それで、シェル様にはどうぞよろしくお伝えください。ああ、勿論女神様にも」

 一応冒険者ギルドには挨拶だけしておこうとギルドマスターのグエラさんや管理者のボビーさん、それと料理長のナムニさんに挨拶をする。

 ナムニさんなんかもっとお米を使った料理を知りたがっていたけど、とりあえず今まで教えて来たものを完璧に仕上げる為に日夜練習に励んでいるとか。
 よしよし、これでスィーフでお米が出回れば増産も質も向上するだろう。

 リザードマンのパキムさんには会えなかったけど、私たちは皆さんに手を振りながら冒険者ギルドを後にする。
 そしてソルガさんと一緒にエルフの村に向かって出発するのだった。


 * * * * *


「でも、驚きましたよ。まさかお迎えがソルガさんだなんて」

「ほんとだね、ラーニィーが聞いたらうらやましがるよね~」

「ははは、ラーニィーはもう立派なお大人だ、もしそうだとしても自分で帰って来れる。リルやルラのような若木とは違う」


 そう言いながらスィーフの街を出て街道を歩き始める。
 そこはいたって普通の道で、わだちや人が通っているためにそこだけ地面が見えている。
 周りは草むらが広がっていて所々に林などが見える場所。

 イージム大陸とは全然違う。


「だが、二人はあのジュメルにも目を付けられている。ジュメルは過去にエルフの村を襲った事もあるんだ。あの『魔人戦争』や『巨人戦争』、『悪魔の神』や『狂気の巨人』にさえ関わっていた。油断出来ん連中だ」

 ソルガさんはそんな事を言いながら険しい表情をする。


「ねぇねぇ、ソルガさんそのお話もっとしてよ!」

「ルラっ!」


 こう言ったお話が大好きなルラはソルガさんにお話をおねだりする。
 私は思わずルラを戒める。

「はははは、歩いての旅だ。少しずつ話してやろう」

 それでもあの戦士長で厳しいはずのソルガさんは笑いながらルラの要望に応えてくれる。

 なんか意外。

 村でたまに見かけるソルガさんは何時も険しい表情をして戦士たちのエルフを鍛えていた。
 弓の練習なんか男女分け隔てなく厳しく特訓させていたからみんな鬼教官とか陰では言っていたのに。
 なんか私にたちにはやたらと優しい。

 ソルガさんは私たちの速度に合わせて歩きながら以前どんなことがあったか話をしてくれた。


 エルフ族は長寿なので千歳以上の人たちがゴロゴロしている。
 それなのにここ千年くらいはあまり人口も増えず、この数百年で新たに生まれたエルフは私とルラの二人だけだったらしい。
 なので村の中ではいつもみんなから大切にされていた。
 
 エルフ族はなかなか増えないからそう言った意味でも結束がとても強い。
 だから渡りのエルフも私たちの面倒を見てくれていた。

 そんな事をぼんやり思いながらソルガさんが話してくれているお話を聞いている。


 と、街道に数人の男の人たちが現れた。


「へへへへ、エルフとは珍しい。お、そっちの二人の女はなかなかの上玉じゃねぇか? 大人しくしろ、そうすりゃ命だけは助けてやる」


 来たぁーっ!!

 今まで出会った事は無かったけどこれが有名な盗賊さんねっ!!


「なんだ貴様ら。私たちに何か用か?」

「ぐへへへへ、いくら精霊魔法が使えるエルフでもこの数相手じゃ勝てねぇだろ?」

 その盗賊のおじさんはお約束通りのセリフを言うと茂みの奥から更に二十人くらいの盗賊の人たちが出て来た。
 皆さんモヒカン刈りや肩にとげとげのパッドを付けたお約束の世紀末風の恰好をしているのも素晴らしい。


「えへへへへっ! 悪いやつだ、お姉ちゃんいいよね!?」

「そうね、ソルガさんこれが私たちのスキルです!!」


 そう言ってルラは駆け出す。


「お、おいルラ!」


 ソルガさんは慌てて止めようとするけど、ルラは構わず突っ込む。

「あたしは『最強』!!」

「ちっ、せっかくの上玉が!! 殺さねぇ程度にしとけよ、楽しみが減る!」

 そう言って盗賊のおじさんはルラにこん棒を振るけど、ルラはそれを拳で弾き飛ばしてその盗賊のおじさんを殴り飛ばす。


 ばきっ!


 哀れおじさんは向こうの茂みに吹っ飛ぶけど、その眼は既に白目をむいている。


「ちっ! お前ら一斉にかかれっ!!」


 多分一番偉い盗賊のおじさんだろうけど、仲間に号令をかけると一斉に盗賊たちが動き出す。


「まずい、ルラっ!!」


 ソルガさんは弓をつがえすぐに放つ。
 しかも三本も一斉に!!

 それはまるで魔法の矢のようにルラに襲いかかる盗賊たちの眉間に刺さる。


 とすっとすっとすっ!!


「すごっ!」

 ルラは襲い来る数人を殴り飛ばしながらもその神業のような射的に感嘆の声をあげる。
 ソルガさんはそれでもルラに襲いかかる盗賊が多いので弓を離し腰から剣を引き抜きながら増援に入ろうとする。


「足元の土を『消し去る』!!」


 しかしここからでは盗賊たちが先にルラに襲いかかる。
 なので私はチートスキルで盗賊たちの足元の土を消し去った。
 するといきなりぽっかりと開いた二メートル以上の穴に雪崩の如く次々と野党のおじさんたちが落ちて行く。


「なっ!? 精霊魔法か!? あの女を先にやれ!!」


 盗賊のお頭風のおじさんは今度は私にその的を絞って来た。
 そして仲間の盗賊が弓を放つけど、私はまたまたチートスキルを使ってその矢を消し去る。


「矢を『消し去る』!」


 すると弓から放たれた十数本の矢は瞬時に消えてしまう。
 そこへルラが飛び込んで野盗のおじさんたちを蹴り飛ばす。


 ばきどかぼすっ!


「くっ、エルフの癖につえぇっ!!」

「お、お頭!!」


 ルラの活躍に盗賊たちの間に動揺が走る。
 流石にもう半分近くも倒されればそうにもなるだろう。
 ソルガさんでさえ私たちのそれに驚き、動きを止めている。


「くそう、こうなったら! 先生、出番ですぜ!!」

 盗賊のお頭らしき人物はそう言って振り返りながらその茂みに叫ぶ。
 すると奥の茂みががさがさしながら揺れて一人の剣士が出て来た。


「ふん、この俺が呼び出されるほどの者が現れたか?」


 
 そう言って彼は鋭い眼差しで私たちを一瞥するのだった。

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