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第十二章:留学
12-49大魔導士杯決勝戦その5
しおりを挟む「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうっ!!!!」
ゴーレムの腕を切り落とされたハイリスさんは空に向かって吠えるかのように叫んでいる。
「この緑の光、確かにハイリスやラッシュ、ロティの考えている事が何となくわかる。この領域にいる限り私たちの考えは筒抜けになってしまう!」
「くそっ、私の中から出て行けぇ、私は、私はぁっ!!」
「ハイリス、だめっ!」
状況を理解したミラーナさんがそう言うとハイリスさんは更に頭を振って唸り始める。
すると同じく獣人族のロティさんが慌ててハイリスさんの元へ行く。
「私の中から出てゆけぇえええええええええっ!!!!」
ぶんっ!
相手のゴーレムの目が一瞬光った。
「何この感覚、ざらついたこの感じは!」
「こ、これは…… 感情が理性を越え始めていますわ、これでは自我が保てませんわ!」
一体何が起こっていると言うの?
緑の光に包まれた人たちの中で共感が起こり、相手の考えいる事が分かってしまいヤリスにとってはもの凄く有利な状態になっている。
しかし相手のホリゾンチームのメイン操縦者であるハイリスさんには異常がみられるようだ。
「ぐるぅおぉああぁああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ぼんっ!
大きな叫び声があったと思ったら相手チームのハイリスさんが咆哮を上げていた。
そして瞳の色が無くなって血走った眼の色になる。
「駄目、ハイリス! このままじゃっ!!」
ロティさんが叫んでいる。
一体何が?
「お、お姉ちゃんあれっ!」
ルラに言われもう一度ハイリスさんを見ると感情の精霊が噴き出している。
それは赤黒く燃え上がるかのようにハイリスさんを包み込む。
「くっ、何なのですのこれは? この感じ、彼女の意識が無くなってゆきますわ!! ハイリスさんが、自我を保てなくなっていますわ!!」
「もう、何よこれっ!? 私の中にこのどす黒いイライラする感情が入って来るっ!!」
アニシス様もヤリスもそんな事を言って額に汗をにじませる。
なんかやばい感じがひしひしとする。
「お姉ちゃん、あんな感情の精霊見た事無いよ、まるで怒り狂っている精霊みたいなの!」
「怒り狂う? まさか、バーサーク!?」
狂戦士と呼ばれる存在がいる。
怒りの精霊が心をついばみ、自我が崩壊して周りの物をすべて破壊しつくす。
その攻撃力は生命力をも削る為に通常の何倍もの力を発揮して暴れまわる。
それが狂戦士、バーサーカーだ。
「アニシス様、ヤリス! ハイリスさんがバーサーカー化してる! このままじゃ暴れ出します!!」
私は思わず二人に見えている状況を伝える。
「そう言う事ですの、この感じはハイリスさんがバーサークした為なのですわね」
「くぅうううぅぅぅ、こっちまでこの感覚に引っ張られそうよ!」
ヤリスの背に手を付けているアニシス様も覚醒した姿のヤリスも苦悶の表情を浮かべている。
そして相手のホリゾンチームも……
「るぐがぁおおおおおぉぉおおぉぉぉぉぉっ!!」
ハイリスさんが咆哮を上げて暴れ出している。
それをラッシュさんが魔法で押さえようとしているけど、男性のラッシュさんでさえ簡単に弾かれる程の力をハイリスさんは発揮している。
そして更にゴーレムにも動きがあった。
「なんなの、こいつ!」
ヤリスが慌てた声を上げる。
見れば切り落とされた腕をつかんで振り回しながらヤリスのゴーレムに攻撃をしている。
「ヤリス、今共鳴をやめてもバーサークした相手はそのままですわ、まず目の前のゴーレムを押さえるのですわ!!」
「分かった、このぉっ!」
アニシス様にそう言われ、ヤリスはゴーレムの操作に集中する。
「はあっ! 三十六式が一つ、バトルアックス!!」
相手の目の前で空中前転してその遠心力と荷重を十分に乗せた踵落しをする。
それは見事に相手のゴーレムの頭に落ち、その踵をのめり込ませる。
ガッシャーン!
流石に頭を潰され相手のゴーレムは倒れる。
「よし、やった!」
「いえ、まだですわ!!」
相手のゴーレムが倒れて一瞬に喜んだヤリスだったけど、アニシス様が警告の声を上げる。
見れば頭を潰されたゴーレムがゆらりと立ち上がりふらりとこちらを見ている。
そして次の瞬間、体からあの赤黒い精霊力を放ちながらこちらに飛び掛かって来た。
「くっ! こいつまだ!!」
「駄目ですわ、ハイリスさんがバーサーカー化しているので同期しているゴーレムにもその力が流れ込んでいますわ、このままではハイリスさんの命まで使い切ってしまいますわ!!」
向こうではホリゾンチームの面々がハイリスさんを取り押さえようと頑張っている。
事実上ハイリスさんはゴーレムを操っていない、いやむしろ怒りの精霊に乗っ取られている?
「ヤリス、アニシス様! あのゴーレムがハイリスさんの魔力を使って怒りの精霊が暴れまわってます! 何とかしないと!! このままではハイリスさんの命が吸われてしまいます!!」
私はそう叫ぶとアニシス様が頷いて言う。
「こうなったら一か八か全ての精霊魔晶石をフル回転させますわ! ゴーレムがそれに耐えられるか分かりませんが、共鳴効果を更に上回る出力を出せますわ!!」
そう言ってアニシス様は高速詠唱に入る。
その呪文は全く理解できない程高等な呪文で構成されそして複雑で舌を噛んでしまいそうな言葉ばかりだった。
まさしく早口の赤巻き紙、青巻き紙、黄巻き紙やガスバス爆発、東京特許許可局状況だった。
そしてアニシス様の呪文が完成して力ある言葉を唱える。
「【限界解放】フルバースト!!」
きんっ!
ヤリスの操るゴーレムの中から甲高い金属のような音がした。
その途端、ヤリスのゴーレムに変化が起こる。
ハイリスさんの狂ったゴーレムから一旦大きく飛び退くとその胸元に四つの光が現れる。
それは地、水、火、風の四つの精霊の色。
それがくるくる回りだし、その中央部に真っ黒な空間が出来あがり始める。
黒い渦はどんどん加速して行ってバチバチと放電まで始める。
と、目の間にいたハイリスさんのゴーレムがよろける。
いや、これはあの黒い渦に吸い込まれ始めている?
「長くはもちませんわ。これは異界へとつながるゲート。何処に飛ばされるかは分かりませんがあのゴーレムを異界へと飛ばしますわ!!」
「えっ? 異界??」
「スパイラル効果で時空のひずみを作りそこへあのゴーレムを飛ばしますわ!」
アニシス様はそう言ってヤリスに更に魔力を送る。
「ちょ、ちょっとアニシス様、そんなに魔力を送られたら!」
「時間がありませんわ、ヤリスも手伝ってくださいですわ!!」
そう言ってアニシス様は更に魔力をヤリスに注ぐ。
ゴーレムを操っているヤリスはそのアニシス様の魔力を受けてゴーレムに更に魔力を送っている様だ。
「くぅうううぅぅ、アニシス様の魔力って粘っこくて熱くてドロドロだから私の中に入ると私のと混じってさらにドロドロになっちゃうぅ!!」
「いや、言い方ぁっ!!」
ヤリスもアニシス様と同時に更にやリスのゴーレムに魔力を送っている様だけど、言いかたぁっ!!
ぐぐぐぐぅ……
ぎゅう~ずぼんっ!
しかしその甲斐もあってハイリスさんのゴーレムはとうとうヤリスのゴーレムの作るあの黒い渦の中に吸い込まれてゆく。
「やったっ!」
そう喜ぶヤリスだったけど、そこで変な顔をする。
「アニシス様、うまく行ったけど、これってどうやって止めるんです?」
「あっ」
いまだヤリスのゴーレムはあの黒い渦で周りの物を吸いまくっている。
飛んでくるゴミも周りにある小石も何も。
「まさか止める方法が分からないとか……」
私は恐る恐るそう言っていると赤みのかかった金髪がだんだんと白くなっていくアニシス様。
「参りましたわ、私の魔力も底をついてきましたわ。【限界解放】したまでは良いのですが止める方法がわかりませんわ。このままでは私の魔力どころか魂まで吸われて死んでしまいますわ・・・・・・」
「ちょ、ちょっとアニシス様ッ!? って、覚醒している私の魔力もどんどん吸われている? なにこれ、このままじゃ私の魔力まで尽きちゃう? どんだけ魔力使っているのよ!!」
ええぇっ?
覚醒しているヤリスまで魔力切れ起こす程!?
まずい、このままじゃヤリスとアニシス様が死んじゃうっ!!
「一か八か、あの黒い渦を『消し去る』っ!!」
私は慌ててあの黒い渦をチートスキル「消し去る」で消してみる。
するとスキルが発動してあの黒い渦を消し去った!
ひゅんっ!
「ぶっはーっ! 助かったぁ~」
「はぁはぁ、流石にきつかったですわね。ありがとうございますリルさん」
途端にヤリスもアニシス様もその場にしゃがみこんで脱力する。
アニシス様なんか髪の毛が真っ白になっている。
ヤリスもいつの間にか覚醒が解けて何時ものヤリスになっている。
そしてホリゾンチームもハイリスさんが気を失っているようでどうやら落ち着いたようだ。
『全く、あなたたちは面白いからたまに覗いてはいましたが、この世界にまで影響がある事は控えて欲しいですわね?』
え?
私は声のした方を見るとルラがそこへ立っていた。
そしてルラの表情を見るとぼ~っとした表情で瞳が金色になっていた。
『あなたたちのその力、私が与えたものですからこの世界では絶対ですわ。しかし使い方を間違えるとこの世界自体を破壊してしまいますから気を付けて欲しいですわ』
「え? あ? ル、ルラ??」
『今はこの娘の身体を使って話しかけていますわ。こちらの世界に来ても元気そうで何よりですわ』
こ、この声……
エルハイミさん?
いや違う、これは……
「ああっ! この声は駄女神っ!」
『駄女神とはひどいですわね? まあいいですわ。とにかくあなたたちには楽しませていただいておりますが、その力の使い方だけは注意してくださいですわ。危うくさっきはあのゲートを消す時に【世界の壁】の一部まで消えてこの世界が破裂して無くなる所でしたわ』
「破裂って……」
『この世界はいわば風船で出来ているようなものですわ。それに穴なんて開ければ破裂してしまいますわよ? 何処か他の風船、世界とつなげるだけならまだしも、私の力を使って【消し去る】という事はその部分が完全になくなってしまう事なのですわよ? ですから以降は気を付けてくださいですわ。ではごきげんようですわ』
そう言ってルラの瞳の色が元の深緑色に戻ってその場で気を失うように倒れる。
「うわっ、ルラっ!」
私は慌ててルラを抱き寄せるのだった。
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