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第十六章:破滅の妖精たち
16-27事情
しおりを挟む私たちはティアナ姫の転生者、ナディアさんに会っていた。
「先生、みんなに迷惑をかけていることは重々承知です。でもこれ以上先生たちに迷惑をかけるには……」
「いや、これはナディアの為だけじゃないんだ。女神様の君への執着は異常ともいえる。一体何がここまで女神様を君へと駆り立てるのか、そしてどうしたら穏便に事が運べるかをみんなで考えるべきだと思う」
ナディアさんは心底すまなさそうにしている。
そしてアインさんは真剣なまなざしでナディアさんを見ている。
「エルハイミは…… 私は……」
ナディアさんはそこまで言ってしばし沈黙する。
しかし、意を決したかのようにこちらを見て話し始める。
それは長い長い恋物語だった。
* * * * *
初代ティアナ姫が始めてエルハイミさんと出会ったのは彼女の誕生パーティーだった。
当時、エルハイミさんより二つ年上のティアナ姫は魔法に対して優秀であったが、それに負けず劣らずの子がいると言う事に興味を持ち、彼女の誕生日会に向かった。
それが全ての始まりで、長い長い恋の始まりであった。
ティアナ姫としての彼女はエルハイミさんを本当に愛していて、国としてもエルハイミさんを娶り一緒になったとされ北の領地、今のティアナの国を分け与えられそこに愛の巣をつくったそうな。
だが、そこで色々問題があり、大きな大戦でエルハイミさんを異空間に消失して失意のどん底に陥ったも、何とか再会を果たし再び愛を誓いあったが、次なる「狂気の巨人」との戦いでエルハイミさんを守る為に最後にはその命を散らした。
ただ、当時天秤の女神より転生を約束され、最後にエルハイミさんに自分を見つけてくれるよう頼んでその人生を終えた。
それからだ。
エルハイミさんはどんなに時間がかかろうとも、どんなに遠くてもティアナ姫の転生者を見つけ出し、そして保護してくれて記憶が戻るとまた愛し合った。
それを何度も何度も繰り返し、時にはエルハイミさんと共に世界の秩序を守る為、裏や表舞台でその力を使っていた。
ある時は真紅の「鋼鉄の鎧騎士」を駆り、またある時は国の重要の人物として表舞台に登場してと。
そしてエルハイミさんとの子供を残し、その国に大きな影響力を残したりもした。
そんなティアナ姫だが、安定して同じ地域に転生できるようにと、冥界の女神セミリア様にエルハイミさんは頼み込んで輪廻転生システムに干渉する事により、ティアナ姫含むエルハイミさんに関わった力ある魂は皆この村に転生する事となった。
それから何百年も転生を繰り返し、その都度エルハイミさんにまた出会い愛し合っていたのだが……
「輪廻転生は確かに出来るの。でも私の記憶は人としてのその長き人生を思い出すには体がもたなくなってきたの…… 人がせいぜい覚えていられる人生は数百年。それを超えると人の脳には負荷が強すぎて心と体が維持できなくなってくるの……だから私の記憶をオーブに一部保管する事によりその負荷を減らそうとしたのだけど……」
ナディアさんはそこまで言って大きくため息を吐く。
そして枕の後ろからオーブを取り出す。
「これがティアナとしての記憶の一部を封じこめたオーブよ。しかし記憶を一旦魂から離すと今度は転生後に記憶が戻るのが遅くなるの……これが人としての限界なのよ……」
そう言って生まれたばかりの赤ちゃんを見る。
「正直、記憶を取り戻してティアナであった時の私を思い出し、オーブの記憶をシェルから渡され記憶の循環をする事によりエルハイミの事が好きである気持ちは強くなるわ。でも今の身体はナディアとして生を受け、そして記憶が戻る前にバックに恋をしてしまった。私はバックを受け入れナディアとしての人生を受け入れてしまった。エルハイミには悪いけど、今度の人生はどうやってもエルハイミと一緒ににはいられないわ。私には愛する夫と子供たちがいる…… だから、どうにかエルハイミには今世の私をあきらめてもらいたい…… 次の人生は必ずエルハイミのモノになるから……」
ナディアさんはそこまで言って涙を流す。
「ナディア……」
「あなた、ごめんなさい。あなたの事は勿論愛してるわ…… でも私の魂にはエルハイミを愛して止まない私もいるの…… ごめんなさい……」
そう言ってナディアさんは泣き崩れる。
まあ、その……
私も転生しているので今の私の記憶は確かに愛結葉のモノだけど、リルとしての人生を始めているし、拓人君であったルラの事も大切な実の妹として見ている。
過去は確かに在る。
でも今の私はリルで、愛結葉じゃない。
もし、また死んで生まれかわり、記憶がまた蘇ったとしてもそれはその時の私でリルじゃない。
でなければ生まれ変わっても全く同じ自分ではいられない気がする。
「ティアナ姫とはそこまで女神様の奥深くに存在するのだな…… 俺にティアナ姫に勝てるわけがない。まあ、昔の事だがな……」
「あの時は…… ごめんなさい先生、でも暴走を始めた先生を止めるには私も手加減が出来なかった、同じオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』相手では……」
「それはもう済んだことだ、恨んでなどいない。しかしそこまで深い愛をどうすればあの女神様があきらめてくれるかだが……」
アインさんとティアナ姫にも過去に何か有ったのだろう。
しかし今はナディアさんとしてアインさんを「先生」と見ている。
人は変わってゆくもの。
私たちエルフだって長寿とは言え変わってゆくものだ。
しかし、女神となってしまったエルハイミさんは……
「あの、私のスキルはもうエルハイミさんには効きませんが、他の事なら使えるのじゃないかと……」
それは本当に思い付きだった。
出来るかどうかの確証はない。
しかし私のこのスキルはあの駄女神からもらったモノ。
この世界では絶対的な力を持っている。
だから、もしその力が使えてそしてこの事実がねじ曲げられるのなら……
「試して、試してみたい事があります。上手くいくかどうか分からないけど……」
私のその言葉にアインさんもナディアさんもこちらに目を向けるのだった。
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