安瀬乃片敷六丁目六番地六号より

takaue.K

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第二十三話 飴

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 Y子ちゃんの家庭は、有体に言ってしまえばネグレクトだった。

 Y子ちゃんの母親というのがもうどうしようもなく、手と結合してるのかとばかりにスマホを手放さない。しかも自分だけ食事を勝手にとり、Y子ちゃんのことは完全に放置していた。
 元々旦那が家事その他含め自分が面倒見るからといって口説き落としたこともあり、彼が朝夕の食事の支度はしていたものの、仕事があるためどうしても日中のY子ちゃんは放置されざるを得なかった。

 そんな環境で育った子が真人間として育つはずもなく、小学校高学年に入る頃には盗みやかっぱらい、拾い食いなど当たり前に行うようになっていたY子ちゃんは孤立していた。
 もちろん、そうなると更に野放図に生きるしかなく、一層誰からも省みられることはなくなっていた。

 そんなある日。
 珍しく早く帰ってきたY子ちゃんは、なにやら口をもごもごさせている。
「どうしたのよそれ」
 気だるげに問うた母親に、Y子ちゃんは言葉少なに返した。
「飴。もらった」
「ふぅん」
 Y子ちゃんの母親は、それきりスマホに視線を戻した。
 いつものことで、どこからか盗んだ、或いは奪ったものをもらったと言っているのだろう。そう思ったからだ。

 異変に気づいたのは、夜も更けて帰宅した父親だった。
 家族の分の半額弁当を温めなおし、ご飯だよと部屋に呼びに行った父親は絶叫した。
 Y子ちゃんの口から出たおびただしい血が、衣服を真っ赤にぬらしている。
 慌てて病院に担ぎ込まれた結果、どうやらY子ちゃんが長い間舐めしゃぶっていたものはどこかで拾ったガラス片だったのだ。

 ただ、不思議なことにY子ちゃんは自身の口から取り出されたガラス片をみてはじめてうろたえたという。
 Y子ちゃんはその後もずっと、飴を貰ったというのは本当のことで、帰宅途中に出会った日傘の老婆が飴をくれたと主張していた。
 警察はその老婆を探したが見つけられず、結局Y子ちゃんのいつものホラだろうと結論付けるに至った。一方で口内の傷はありえないほど深かったため、そこまで傷つけるには本当に飴だと思いこんでなければ不可能だったろうという噂が町では絶えなかった。



 最後に。
 この話を聞いて私がもっともぞっとしたのは、その後母親が治療費を惜しんで医者に診せないでいた結果、感染した菌が脳に達しY子ちゃんは苦しみぬいて死んだという結末だった。

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ツギハ25ニチ19ジ
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