お隣さんはセックスフレンド

えつこ

文字の大きさ
8 / 116
1-1.二人の日常

8

しおりを挟む

「準備OKです。タスクさんお願いします」
 スタジオスタッフから声がかかる。タスクは楽譜を持って録音ブースへと入った。タスクの次はカズ、最後は遼の予定だった。遼とカズは並んでソファに座り、録音ブース内のタスクを眺めた。
 タスクの準備が整ったようで、演奏が流れ、タスクが身体でリズムを取りながら、メロディーに歌をのせていく。
「いつ聞いてもうまいよなぁ」
 カズが感心するように呟いた。
 タスクはグループ内で一番歌がうまく、落ちサビやメロディラインはタスクが担当することが多い。一応センターということになっているが、本人はほとんど意識しておらず、タスク自身としては三人同等というスタンスだ。
 一方、カズは歌よりもダンスが得意とし、アクロバティックな動きが魅力的で、バク転なども軽々とこなす。ダンスの振付を担当することもあり、難しいものから簡単なものまで、振付は多岐にわたる。簡単な振付はファンも一緒に楽しめると評判がよかった。しかし難しいものになると、遼とタスクがついていけなくなってしまうこともあった。
 二人とは対照的に、遼は歌もダンスもそつなくこなし、二人の苦手な部分を埋める役割が多い。リーダーとしてライブで進行を任されたり、マネージャーと一緒に仕事打ち合わせに参加したりと、縁の下の力持ちとして働いている。グループのために何でもこなす遼を、カズとタスクは一目置いていた。
 バランスが取れたグループだが、実は寄せ集めで、その場しのぎで作られていた。
 そもそも事務所としてはタスク一人をデビューさせたかったのだ。十五歳でスカウトされ、即デビューが決まっていたタスクは、グループでならデビューしてもいいと条件を付けた。それで、遼とカズがメンバーとして集められたのだ。
 事務所はある程度グループでの活動をした後、解散させて、タスクだけをソロで再デビューさせるつもりだった。しかし、意外なほどに人気がでてしまい、解散という話は立ち消えている。メンバーはその話を知らず、知っているのはマネージャーの岸だけだった。事務所の意向はいつ変わるかわからない。岸としても内心ハラハラしながらマネジメントをする日々である。しかし、グループはようやく軌道に乗ってきたところで、まだまだ上を目指せるし、ここで終わらせるわけにはいかないと岸は強く思った。
 タスクの歌を聞きながら、遼はスマホでスケジュールを確認した。六月末の東京でのツアーオーラスまでに、あと二ヶ所地方公演がある。音楽番組出演や雑誌取材、遼個人の仕事、八月にかけて新曲プロモーションのための仕事が目白押しだ。オフはあるものの、ほとんどが仕事でうまっていた。一瞬王輝とセックスする時間がなさそうだと考えてしまい、自分で呆れた。今は仕事の時間だと頭を切り替える。
「うわー、結構うまってるじゃん」
 カズが遼のスマホを覗きこんでいた。遼はカズに見やすいように、スマホの画面の角度を変えてやる。「仕事があることはいいことだぞ」と岸にくぎをさされて、カズはおどけた表情を見せた。
「リョウはソロの仕事増えたねー。最近絶好調じゃん。なんかいいことあった?」
「いいこと…」
 カズの質問に、王輝との関係が浮かぶ。
 王輝の方から持ち掛けてきたセフレ関係だったが、遼も似たような状況だった。仕事に追われ、アイドルとして、リーダーとして、求められることが多く、プレッシャーを感じる日々。仕事は楽しいのに、精神的に追い詰められ、自分がどう振る舞えばいいがわからなくなっていた。岸にはよく「肩の力を抜け」と言われたが、力加減がわからない。カズみたいにあっけらかんとすればいいのか、タスクのようにストイックに仕事をすればいいのか。どうすればアイドル佐季遼としての正解なんだろうと悩む日々が続いた。周囲に相談できずに、一人で抱え込んでいた。
 息抜きには好きなことをやればいいと言うが、遼にとっては歌やダンスが好きなことであり、他にやりたいことが見つからない。オフの日に家でのんびりしたり掃除をしたりしても、悶々とした気持ちが晴れない。ファンレターに「最近疲れてますか?」「元気がなくて心配」と書かれることが増えてきて、ファンに心配をかけるなんてアイドル失格だと、さらに追い打ちがかかった。
 そこに舞い込んできた王輝との関係。最初は抵抗があったが、王輝とのセックスを重ねることで身体が軽くなり、仕事でもうまく力を抜けるようになった。理由はわからないが、王輝の顔が好きだった遼は、自分にとっての癒しを見つけた感覚だった。
 高校中退するまでには普通に彼女がいてセックスをしていたが、スカウトされてアイドルを目指し始めてからは、セックスはおろか、自慰の回数も減っていた。アイドルになってからも同様だった。
 性欲を満たすという答えに、自分の身体ながら最低だと落ち込んだときもあったが、今では王輝とのセックスが欠かせないものとなっている。気兼ねなくセックスして、仕事もうまくいくのなら、これ以上何を考える必要があるだろう。王輝も同様に、遼とのセックスが欠かせないものとなっているなら、お互いwinwinの関係だ。遼は割り切ってセフレ関係を続けていた。
「えー?なになに!一人でにやけるなよ!」
 ばしっとカズに背中叩かれた遼は、痛さに顔をしかめた。頬に触れたが、にやけていたかはわからなかった。
「俺はお前を信じてるから何も言わないが、スキャンダルだけには気を付けろよ」
 岸が鋭い視線で遼を見つめた。鼓動が速くなり、嫌な汗が噴き出しそうだ。
「そんなんじゃないですって。大丈夫です」
 遼は笑顔を作って答えた。セフレ関係は絶対バレてはいけない。新たに覚悟をした瞬間だった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

処理中です...