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1-7.仲直り
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しおりを挟む王輝の謝罪を聞き、遼がようやく自覚したのは、求めていたのは謝罪ではないということだった。王輝の発言より、王輝がライブに来なかったことがショックだったのだ。謝罪よりも、ライブに来なかった理由が知りたかった。遼は欲を抑えきれずに、王輝に尋ねた。
「一つ聞いていいか?」
王輝は何を聞かれるのだろうと表情が陰る。
「この前のライブに来なかっただろ?理由を教えて欲しい」
「……え?」
思わぬ質問に、王輝の口からは素っ頓狂な声がもれた。そういえば、ライブに行けなかったことを遼に直接話していないし、遼にそれについて聞かれなかったと思い返す。オーディションを受けていたからという理由を正直に伝えていいのかと、王輝は身構えたが、変に嘘をつく必要はないと判断した。
「急にオーディション受けることになって、そのオーディションが長引いて間に合わなかったんだよ」
真剣な遼の表情を伺いながら、王輝は恐々と理由を話した。
「ライブに行きたくなかった、とかじゃなくて?」
「え?違う違う。すごい楽しみにしてたから、行けなくて普通にがっかりした」
あの日は酔っぱらっていた上、遼とのセックスが激しく、どうにも記憶が薄い。王輝は記憶を呼び起こし「そうそう、あの日はオーディションは散々だったし、ライブも行けなかったから、やけ酒してたんだ」と続けた。
王輝の言葉を聞いた遼は、安堵で全身の力が抜け、その場に座りこんでしまいそうになる。ライブに行きたかったという王輝の本音を知ることができ、これだけのことで救われるなんて、と単純な自分に我ながら恥ずかしくなる。と同時に、嬉しくて頬がゆるむのを感じ、それを隠すために手で口元を覆った。
「なになに?俺がライブに来てなくて寂しかったとか?」
遼の表情の変化を見逃さなかった王輝が、いたずら心で尋ねると、遼はびくっと肩を揺らした。かぁっと顔を赤くして、しばらくした後、遼がゆっくりと頷いた。
揶揄ったつもりが、まさかの遼の肯定に、今度は王輝が顔を赤くする。赤面した二人は、少しの間そのまま向き合っていたが、たまらず王輝が遼に抱き着いた。久しぶりに遼の筋肉質の身体や熱い皮膚に触れ、王輝は安心感すら覚えた。
「今ヶ瀬?!」
驚いた遼は身動きが取れずに、あたふたする。さきほど王輝の質問に正直に答えたことで、遼の恥ずかしさはピークに達し、今すぐここから消えてしまいたいほどだった。
「セックスしたい」
王輝の欲望の呟きが、遼の耳朶を打つ。身長差のせいで、王輝は上目遣いで遼を見つめる体勢になった。二人の間にわだかまりがなくなったことで、王輝が次に求めたのは身体的な繋がりだった。
王輝の体温が伝わってくることで、遼の鼓動は速くなる。ライブ後にセックスしてから三日しか経ってなかったが、王輝に触れられると否応なく身体は反応してしまう。セックスしたいことはしたいが、明日はMV撮影が早朝から予定されている。
「ごめん、明日朝早くて……」
「そっか、まぁ俺も仕事あるし…」
案外あっさりと引いた王輝に、遼は珍しさを感じた。しかしその理由がすぐにわかる。
「じゃあ一緒に風呂入ろうぜ」
王輝はにやりと笑った。こういう笑い方をするときは、何か企んでいるときだと遼は知っていた。
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