お隣さんはセックスフレンド

えつこ

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2-2.溢れる気持ち

3 *

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「本当におもしろかった!早くもう一回観たい」
 遼は隣に座るご機嫌な王輝を微笑ましく見ていた。二人はタクシーの後部座席に並んで座り、マンションへと帰る途中だった。
 映画が終わった後から、王輝はテンションが高く、映画の感想を絶え間なく話していた。ストーリーも演出も、王輝にとって映画は満足な出来だった。そして続編の製作を匂わせる終わり方だったため、今後の展開にも期待が高まり、否が応でも楽しくなる。
 完全に聞き手に回った遼は、王輝の意見に頷き、時に感想を述べた。遼も映画はおもしろかったと感じていたし、久しぶりに大画面と大音量で観る映画に胸躍った。
「今日のために仕事頑張ってきた甲斐あった…最高…」
 今の王輝の心の中は、遼より映画だった。映画が始まる前の気持ちの葛藤はどこかに消えていた。
「佐季は?おもしろかった?」
 子供ように目を輝かせる王輝が可笑しくて、遼は小さく笑った。いつもは大人びた印象の王輝は、今は見る影もない。
「おもしろかったって。何回言わせるんだよ?」
 王輝はうんうんと満足そうに頷き、再び映画の話を始めた。
 王輝の話を聞きながら、遼はタクシーの窓から外を見る。煌々とした街の灯りが、高速で流れていく。夜でも街には活気が溢れ、道路には多くの車が行き交っていた。
 二人が乗ったタクシーは運良く渋滞には巻き込まれずに、マンションまで帰り着いた。時刻は十二時近く、マンション付近は静かだ。
 エントランスからエレベーターへ乗り、二人の部屋があるフロアに着く。エレベーターから降り、部屋が近づくにつれ、二人はどこかそわそわとした。明日は二人とも仕事があるので、今日は映画を観るだけという話になっていたが、どこか物足りなさを感じていた。二週間ほどキスもセックスもしていない。お互い何も言い出せないまま、エレベーターから近い遼の部屋のドアの前に着いてしまう。
「今日はありがとう。買い物も映画も楽しかった」
 遼にお礼を伝えた王輝の腕には、ゴールドの細身のバングルが光る。もとは遼が誘ってくれたから実現したことであり、いつもなら一人で映画を観に行っていたことを考えれば、かなり楽しめたと王輝は感じていた。
「俺の方こそありがとう。無理に誘ってごめん」
「そんなことない。誘ってもらえて、嬉しかった」
 ふいに本音がこぼれて、王輝はかぁっと顔が熱くなった。
 思わず可愛いという気持ちが浮かび、遼は頬が緩んだ。ここが外でなければキスしたのに、と邪な感情を振り払いながら、開錠しドアを開けた。
「じゃあ、おやすみ、今ヶ瀬」
「うん、おやすみ」
 一瞬交わった二人の視線は、すぐに離れた。遼が部屋に入っていく背中を王輝は見送る。静かにドアが閉じていき、王輝は自分の部屋へと足を向けた。が、本能的に踵を返し、遼の部屋の中にするりと身体を滑りこませた。王輝の後手にドアががちゃりと閉まった。
 玄関の灯りをつけたところだった遼は、急に現れた王輝の存在に驚く。王輝は勢いのまま遼に抱きつき、キスをした。後ろによろけそうになった遼は、バランスを取って王輝を支える。久しぶりのキスに、二人の体温が一気にあがる。
 触れた遼の体温の心地よさに、王輝は幸福感に満たされる。求めていたもののピースがハマる感覚だった。
 最初は驚いていた遼だったが、王輝のキスを受け入れる。口内に入りこんできた王輝の舌と自らの舌を絡めながら、王輝の身体を引き付けた。王輝の顎に手を添え、角度を変えて深く口づける。王輝の舌を軽く吸い上げると、王輝は小さく声を上げた。
 王輝から仕掛けたキスだったが、徐々に余裕がなくなってくる。王輝の心臓がどきどきと跳ね、自身に熱が集まる。キスだけで終わらせるつもりだった王輝は、このままではなし崩し的にセックスしてしまうと危機感を感じ、遼の胸板を押し返した。遼から身体を引き離し、唾液で濡れた唇を手の甲で拭う。
「っ、ごめん、おやすみ」
 王輝は部屋から出ようと、遼に背を向け、ドアノブに手を伸ばす。しかしその手は遼に掴まれ、後ろから遼に抱き寄せられた。背中に遼の体温を感じ、遼の匂いに包まれる。
「もうちょっとだけ」
 遼が王輝の耳に低音を吹きこむと、王輝はびくんと肩を揺らした。
 王輝のキスによって、遼の欲望のたかが外された。遼はピアスがついた耳朶は避け、耳介を甘く噛み、髪型のおかげで露わになった王輝のうなじにキスを落とした。ちゅ、ちゅ、と音を立て、うなじから首筋へと唇を移動させる。首筋を舐めると、少ししょっぱい味が遼の口内に広がった。遼が掴んだ手を絡めるように繋ぎ変えると、色違いのバングルが二人の手首で踊る。
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