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6章
竜の住処
しおりを挟む「竜の秘宝……そんなものがあるんですのね」
「私も初めて知ったわ」
道中、エリンシアにドラグ山脈へ向かう理由を説明していたディータは竜の秘宝の事を伝えると、ため息を吐いていた。
「女神でも知らないって……そんなことあるの?」
「そりゃ、あるわよ。私達女神は、あくまで生物を創造するだけの存在だもの……世界には私達もしあらないような不思議がいっぱいあるわ」
「へー、でも、生物を創造ってすごいね……ディータと妹のレナさんはこの世界皆のお母さんなんだ」
「ま、まあ、そんな感じかしらね」
お母さんと呼ばれるのがこそばゆかったのか、ディータは顔を少し赤らめ照れる。
その横で、同じような表情で照れているアネルの姿をエリンシアが見つけると疑問を言葉にした。
「なんで、アネルさんも照れてますの?」
「え!……て、照れてなんてないわよ?」
「そ、それよりカモメ、足元に気を付けなさい」
「うん」
必死に誤魔化すアネルに助け船を出すディータ。
カモメは目が見えない状態なのでクオンに手を引かれながらゆっくりと歩いている。
最初はクオンがおぶっていくという事になっていたのだが、少しでも目の見えない状態で歩くことに慣れたいというカモメの意思を尊重し、移動スピードは落ちるがドラグ山脈まで馬車と徒歩で移動しているのだ。
「少しは慣れましたの?」
「うん、なんとなくだけど、気配が解るようになってきたよ」
「あら、すごいですわね」
「あはは、クオンのお陰かな」
移動の間、クオンはずっと、カモメに付きっきりである、最初は小さな小石の場所も細かく教える程の過保護っぷりであった。
馬車と徒歩での移動の為、ドラグ山脈に着くまで丸一日を要している。
出来るだけ早くカモメを治したい気持ちであるディータは少し焦れてもいたのだが、それでもカモメの希望を聞いてあげたいという気持ちが勝っていた為、これを了承したのだ。
そして、なぜカモメが目の見えない状態で徒歩での移動を希望したかというと、出掛ける直前に話は戻る。
「うーん、目が見えないと怖いね……どこに何があるか全然わかんないよ」
「あら、そんなことありませんわよ?」
「え、どういうこと、エリンシア?」
出かける直前、ツァインの城から外に出るときにカモメはクオンに手を引かれながら恐る恐る歩いていた、そんなカモメにエリンシアはアドバイスのつもりで話をしたのだ。
「石や木などにも呼吸がありますわ、その呼吸を感じることで無機物の気配も感じることが出来るんですの」
無機物の呼吸を感じる……そんなこと考えたことも無かったカモメは素直に驚いた。
「それらを肌で感じることで戦いの中での動きも向上しますのよ?」
「へー、そうなんだ……クオンも出来るの?」
「うん、背後に壁があるとか移動中足場にできそうなものがあるとかが解ると態々そこを確認するために見る必要がなくなるからね」
そうなのかとカモメは少し考える。
今目が見えないのはそれを習得するチャンスなのではないだろうか?
もし習得できればこれからの戦いでそれを活かせるはず……そう思ったのだ。
「ディータ」
「ん?どうしたの?」
「ドラグ山脈に行くまで徒歩で移動できるところは徒歩で行ってもいいかな?」
アネルの魔法で空を飛んで移動できるところはアネルにカモメを運んでもらおうと考えていたディータだったので、カモメのその提案に驚く。
だが、カモメが道中、少しでも無機物の気配を感じる訓練をしたい。
どうせなら、目が見えなくなったこの状況を利用して少しでも戦いの役に立てたいと言ったことによってディータはそれを了承した。
なんだかんだ、カモメに甘いのがディータである。
そして、徒歩での移動の最中、クオンがカモメの手を引きながら気配の捉え方をずっと指導していたのだ。お陰でドラグ山脈に着くころにはカモメは無機物の気配をある程度はとらえられるようになっていた。
「さて、ここからは気を付けて進みましょう」
「そうですね、ドラゴンたちは人間を嫌っています、あまり刺激をしないようにしないといけません」
異常種であるラガナと唯一人間でドラゴンと交流のあるアネルがいる為、すぐには襲い掛かっては来ないだろうがそれでも警戒することに越したことはない。
それに、いくら二人がいたとしてもそう簡単に竜の秘宝を使わせてくれるとは限らないのだ。
「さあ、行くわよ」
ディータの掛け声で一同、ドラグ山脈へと足を踏み入れるのであった。
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