闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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8章

ミャアの迷い

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 私とリーン、そしてお父さんとクオン達の戦いに火が付き始めたころ。
 ラガナ達は未だにコロと戦えずにいた。

 そうというのも、ラガナとレディはコロと戦おうと決意を決めていたのだがもう一人、この場にいたコロの仲間……ミャアがまだ、戸惑いを隠せずにいた。



「じい……生きてたニャ!」
「ミャアさん……違います、僕は死にました。今目の前にいるのは貴方の仲間のコロじゃありません」
「嘘ニャ!じいはじいニャ!間違いないニャ!じいはミャアが意地悪ばかりしたから怒ってるだけニャ!」
「ミャアさん……」


 ラガナとレディがコロの意志を汲み、戦おうとした矢先、ミャアが間に入るようにして立ちはだかった。


「ミャア、そ奴はじいの心を持っているがじいではないのじゃ……このままではじいの心を痛めるだけじゃ」
「違うニャ!じいは操られた振りしてるだけニャ!!」
「ミャアちゃん……」


 コロに背を向け両手を広げて二人を止めるミャアにラガナもレディも何もできずにいた……だが。


「いけないっ、ミャアさん避けてください!」
「ミャ?……ニャアア!?」


 リーンの操り人形であるコロは自分に背を向けているミャアに容赦なく光の魔法で攻撃を始めた。
 ミャアはその攻撃を避けられるはずもなく、直撃する。


「ミャア!!」


 ラガナが心配の声を上げる。


「だ、大丈夫ニャ……じいはちょっと悪ふざけをしてるだけニャ……」
「もうよい、解っておるだろう……」
「解らないニャ!解りたくないニャ!……ミャアは……コロが死ぬところなんて見たくないニャ……」
「ミャアちゃん……」


 ミャアの気持ちは私もよくわかる。
 私だって、お父さんやコロが殺されるところなんて出来れば見たくない……ううん、私だけじゃないだろう……他の皆だってきっとそうだ……でも……。


「酷いですよミャアさん……僕を助けてくれないつもりですか?」
「………コロ?」


 攻撃を受けてもコロに背を向けているミャアに……コロはそう言った。
 コロの予想外の言葉にミャアは驚きの表情を見せる。


「僕に友達を殺させようとするんですか?」
「な、何言ってるニャ!じいはそんなことしないニャ!」
「いいえ、このままでは僕はあなた達を殺してしまいます……僕にはそれを止められない」
「出来るニャ!諦めちゃダメニャ!」
「駄目なんです……だって、この体はそうできているんですから……」


 魔物であるコロはリーンに殺されたとき、その体を消滅させられた。
 その為、お父さんとは違い元の身体を使っているわけではない、リーンが作ったコロに似せた体にその魂を封じ込められているのだ……いわば、あの体は唯の入れ物だ。


「大丈夫ニャ!ディータはソウルイーターの身体を乗っ取ってるニャ!じいだって出来るニャ!」
「ごめんなさい、僕にディータさん程の力はありません……それに、相手も悪い」


 そう、あれを作ったのはリーンだ。
 ソウルイーター等と比べることも出来ないほど大きな力を持つ存在である。
 そのリーンの創った身体を異常種とは言え、魔物であるコロにどうこうすることは出来ないのだろう。
 よしんば、出来たとしても、作り物の身体では私がリーンを倒した瞬間に消えるのみである……。
 つまり、コロを助けるということは出来ないのだ。


「そんなことはないニャ、きっと……きっと……」
「ミャアさんの意気地なし!!!」
「!?」


 突然のコロの大声に、ミャアは驚き、続きの言葉を言うことが出来なかった。


「ミャアさん……僕が嫌いですか?」
「そんなことはないニャ!」
「なら……僕を助けるために……殺してください……これ以上僕は仲間を傷つけたくはありません」
「……!……嫌ニャ」


 それでも断るミャア……ミャアはなんとしてもコロやラガナ達を説得したいのだろう。
 気持ちがわかる分、ラガナやレディも何も言えずにいる……だが、コロの気持ちだってわかるのだろう……もし自分が同じ立場ならラガナやレディも同じことを言うだろうから。


「ミャアさん!」


 自分の身体が動き出すのを感じたのだろう、コロは焦った表情で叫ぶ。
 そして、そのコロの両手から光の魔法がミャアに向けて放たれた。
 ミャアはまたもその攻撃を無防備に受ける。

 コロの攻撃能力はそれほど高くはない……ただし、一つの魔法を除いてである。
 光の魔法の中でも最高位の魔法、光神裁ラ・ピュリオン
 もし、その魔法をコロが使えば、タフなミャアとてただでは済まないだろう……今のところ、コロが使っているのは光弾ライトニングバレッドと呼ばれる光の魔法の中でも簡単な方な魔法である。
 ただ、コロほどの魔力の持ち主が使えば、それなりの威力にはなるのだが……ミャアはそれを先ほどから無防備に喰らっている為、それなりのダメージを受けてしまっているが、命にかかわるという程のダメージではないようである。


「ミャアさん、攻撃をしてください!ミャアさんなら僕を倒すことなんてわけないでしょう!」
「嫌ニャ!……じいがいないのはもう嫌ニャ!」
「ミャアさん………」


 コロの問いかけに首を振り続けるミャア、その間もコロからの攻撃は続いている。
 ミャアはそれを避けようともしない。
 いくらタフなミャアでも何度も何度も喰らい続けていればいずれは斃れてしまうだろう。
 そして、そのいずれはそれ程遠い未来ではない。


「ニャっ!」


 何発目の攻撃かわからないくらいの数を受け、ミャアは膝をつく。


「ミャアさん!!」


 コロの叫びに、ミャアは顔を上げる……。
 そして、コロの顔を見ると、ミャアは息を飲んだ。


「じい……泣いているのニャ……」
「当たり前ですよ……僕はミャアさんを傷つけているんですよ……悲しくない訳ないじゃないですか……嫌じゃない訳ないじゃないですか……」
「じい……」
「ミャアさんは優しい人です、ずっと僕の傍にいてくれました、ほとんどの人や魔物が僕の傍にいたがらないのに……」
「そんなの当然ニャ!じいは良い奴ニャ!見た目だけでじいを遠ざける奴なんかと一緒にするなニャ!」
「やっぱり、ミャアさんは優しい人です」
「……それは違うニャ……ミャアも友達が出来なかったニャ……乱暴もので短気で相手の事も考えずに物を言うミャアは友達が出来なかったのニャ……でもじいはそんなミャアと一緒にいてくれたニャ……意地悪な事も言ったりしたのに、じいは笑って一緒にいてくれたニャ……ミャアは……じいにいなくなって欲しくないニャ……」


 ミャア……ミャアにとって、コロはとても大切な存在だったのだろう……そう、私にとってのクオンみたいに……もしクオンが死んだりしたら……私だって……。
 きっとラガナ達もそれが解っているから何もできずにいるのだ……。
 コロから攻撃を躱さずに受け続けているミャアを助けることも出来ず、コロを止めることも出来ない。
 それをするだけでミャアがさらに傷つくと解っているから。


「ミャアさん、ありがとう………でも、ミャアさんは一人じゃないですよ」
「………」
「ラガナさんやレディさんがいます……カモメさん達も……それにこれからもっといろんな出会いがあります」
「……出会いなんていらないニャ……じいにいて欲しいニャ……」
「僕だって、死んだ後もずっと見てますよ……死んだら皆のこと見ていられるんですよ?」
「そうなのニャ?」
「はい」


 涙を流しながらも笑顔で肯定するコロ……本当にそうなのかは死んだことのない私には解らない……いや、きっと嘘なのかもしれない。もし、見ていられるのなら、リーンがコロ達に意識を持たせたとき、すでに状況を理解できていたはずだ……いや、ただ単に、そんなことをリーンが出来ると思っていなかったから驚いただけなのか……正確なことは死んでみないと分からないだろう。


「だから、ミャアさん。僕を助けてください、こんな偽物の身体に捕らわれたままにしないでください……このままじゃ、僕の心は本当に死んでしまう……皆さんを傷つけることで僕の心は死んでいってしまうんです。」
「…………みゃあぁ」


 コロにそう言われてミャアは迷う。
 コロを殺したくはない、でもこのままでもコロの心を殺してしまう。


「ミャアさんお願いします。他の誰でもありません、僕の一番の友達のミャアさんにお願いします」
「一番の友達……一番の友達ニャ……?」
「はい」
「うう……『コロ』は狡いニャ……そう言われたらお願いを聞くしかないニャ……」
「!……はい、よろしくお願いします。『ミャア』」



 初めてミャアの口からコロの名前を聞いた気がする……今までじいとしか呼んでなかったのに。
 そして、コロもミャアのことをさん付けで呼ばなかった。
 呼び方を変えただけなのに、二人も気分で変えただけかもしれないけど……なんだか、二人の距離が縮まったように感じた。


「ラガナ、レディ、手出しは無用ニャ!コロはミャアが倒すニャ!そしてコロを助けるニャ!」
「解ったのじゃ……じいの事頼むのじゃ」
「頑張ってぇん、ミャアちゃん!」


 ラガナとレディはその場を離れてディータ達の近くへと移動する。
 コロの事はミャアに完全任せるようだ……コロの為にもミャアの為にもそうするのが一番だと判断したのだろう。
 そして、コロとミャアの戦いが始まるのであった。
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