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5 恋愛ごっこ
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久し振りに焦った。
年齢を重ねると、ちょっとのことでは動じなくなる。
けれど、まさかのお誘いを、課長のプライドを傷つけないように断ろうとして、思わず早口になってしまった。
「人様にお見せできる身体じゃ……ありませんし……」
言っていて、恥ずかしい。けれど、事実だ。
そして、そんなことを言われたら、男性はその気も失せるだろう。
けれど、課長は引かなかった。
「再婚や恋愛は考えてないって言ったよな?」
「……はい」
「じゃあ、別れた夫があんたの最後の男でいいのか――?」
物凄い衝撃。
男性なんて、結婚なんて、もう懲り懲りだと思っていた。
けれど、そうか。
このままでは、私の人生は元夫に縛られたまま――。
課長の問いの答えに迷いはない。
元夫が私にとって人生最後の男になるなんて、嫌だ――!
「そんなに難しく考える必要なない。あんたにとっては、リハビリだ。もう一度恋愛したい、再婚したいと思えるようになるための」
リハビリ……。
課長のバカげた提案が、良策のように思えてくる。
「恋愛……ごっこってことですか?」
「そういうことだな」
「けど……」
「ルールを決めよう」
「ルール?」
「そう。例えば、あんたは俺に手料理を作る。材料費はもちろん俺が出すし、都合のいい時だけで構わない。あんたに不都合がなければ、俺の家で作った料理を子供に持ち帰ったりしてもいい。そうしたら、一晩に二度も料理しなくて済むだろう? もちろん、その分の費用も俺が出す。あんたは食費を削減出来て、俺は手料理に有りつける」
「はぁ……」
それは、有難い。
最近の子供たちの食欲には驚かされる。少しでも食費を軽くできたら、助かる。
「次に、あんたは俺にアメの使い方を教える。あんたは俺みたいな男に対する恐怖心を克服できる」
課長の言ったことは、正しい。
私は課長が怖い。
正確には、課長のように『大声を出す男性』が怖い。
理屈じゃない。
長年の結婚生活の副産物。
「それなら、『する』必要ないですよね?」
「『しない』と決める必要もないんじゃないか? あんたが元夫を最後の男にしたいのなら、無理にとは言わないけど」
その言い方はズルい。
「そんなことして、私が本気になったらどうするんです?」
「本気?」
「『ごっこ』で済まなくなるかもしれませんよ? 会社でも追いかけ回されて、関係を暴露されたり結婚を迫られたりするかもしれませんよ?」
課長は自分の都合のいいように話をまとめようとしているけれど、この提案には落とし穴がいくつもある。
「それを言うなら、逆の心配もあるよな」
「逆?」
「俺があんたに本気になる可能性」
年齢を重ねると、ちょっとのことでは動じなくなる。
けれど、まさかのお誘いを、課長のプライドを傷つけないように断ろうとして、思わず早口になってしまった。
「人様にお見せできる身体じゃ……ありませんし……」
言っていて、恥ずかしい。けれど、事実だ。
そして、そんなことを言われたら、男性はその気も失せるだろう。
けれど、課長は引かなかった。
「再婚や恋愛は考えてないって言ったよな?」
「……はい」
「じゃあ、別れた夫があんたの最後の男でいいのか――?」
物凄い衝撃。
男性なんて、結婚なんて、もう懲り懲りだと思っていた。
けれど、そうか。
このままでは、私の人生は元夫に縛られたまま――。
課長の問いの答えに迷いはない。
元夫が私にとって人生最後の男になるなんて、嫌だ――!
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リハビリ……。
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「恋愛……ごっこってことですか?」
「そういうことだな」
「けど……」
「ルールを決めよう」
「ルール?」
「そう。例えば、あんたは俺に手料理を作る。材料費はもちろん俺が出すし、都合のいい時だけで構わない。あんたに不都合がなければ、俺の家で作った料理を子供に持ち帰ったりしてもいい。そうしたら、一晩に二度も料理しなくて済むだろう? もちろん、その分の費用も俺が出す。あんたは食費を削減出来て、俺は手料理に有りつける」
「はぁ……」
それは、有難い。
最近の子供たちの食欲には驚かされる。少しでも食費を軽くできたら、助かる。
「次に、あんたは俺にアメの使い方を教える。あんたは俺みたいな男に対する恐怖心を克服できる」
課長の言ったことは、正しい。
私は課長が怖い。
正確には、課長のように『大声を出す男性』が怖い。
理屈じゃない。
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「それなら、『する』必要ないですよね?」
「『しない』と決める必要もないんじゃないか? あんたが元夫を最後の男にしたいのなら、無理にとは言わないけど」
その言い方はズルい。
「そんなことして、私が本気になったらどうするんです?」
「本気?」
「『ごっこ』で済まなくなるかもしれませんよ? 会社でも追いかけ回されて、関係を暴露されたり結婚を迫られたりするかもしれませんよ?」
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