最後の男

深冬 芽以

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【番外編1】千堂隼の恋

恋の終わりと始まり-4

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「じゃあ、彼氏!」

「はっ?」

「彼氏なら、転校しない?」

 こういう発想が出来るのが、亮君この子のいいところだ。真君くらいの年齢になってしまうと、ここまで楽天的には考えられないだろう。

 年齢もそうだけれど、亮君の場合は、お母さんの自分への愛情を信じて疑わないからかもしれないけれど。

 普通は、お母さんを取られると不安になりそうなものだ。と、思う。

「そうだね。溝口さんがお母さんの彼氏になっても、名字は変わらないし、転校もないね」と、俺は言った。

 亮君の表情が、わかりやすく明るくなる。

「ただ、札幌と釧路は遠いから、お母さんが溝口さんに会いに行くときは、泊まりで出かけてしまうけどいい?」

「いいよ! お土産買って来てくれるなら」

「真君は?」

 亮君とは違い、真君は少し神妙な面持ち。

「千堂さんは、お母さんと溝口さんが恋人になってもいいんですか?」

「え?」

「お母さんのこと、好きなんでしょ?」



 まぁ、あれだけわかりやすくアプローチしてれば、わかるよな……。



「そうだね。でも、お母さんが好きなのは溝口さんだから、溝口さんと幸せになってもらいたいと思ってるよ」

 俺の、嘘偽りのない、本音。

「結婚した方がいいってことですか?」

「結婚だけが幸せじゃないよ? 恋人でいる方が幸せなこともあるんじゃないかな」

「……」

 真君には、まだ少し難しい話かもしれない。けれど、彼は納得すると思う。溝口さんを父親とは認められなくても、母親の恋人としては認められる程度に、大人だろう。

「じゃあ、お母さんに言ってみるね」

「え?」と、俺と真君が声を揃えて聞いた。

「智くんを彼氏にしていいよって!」

 この勢いだと、数時間後に帰宅すると同時に言いそうだ。

「俺に言い作戦があるんだ」と、俺は右手の人差し指を立てて言った。

「お母さんに、最高の誕生日プレゼントをあげよう」

 二人は興味津々で俺を見た。

 俺たちはお菓子を食べながら作戦を話し合った。

 亮君には少し難しいと思うが、なんとか納得してくれた。

 俺は、この子たちが好きだ。

 本当に、父親になりたいと思っていた。

 けれど、今は、こんな風に相談してもらえる、ちょっと年の離れた友達、でもいいかなと思えた。



 ちょっとじゃねーか。



「じゃ、作戦会議はここまで!」

 お菓子とジュースを平らげた二人に、言った。

「ここからは、テスト勉強をします!」

 二人が身体をくねらせて、嫌そうな顔をした。
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