15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

文字の大きさ
2 / 89
1.今も好きですか?

しおりを挟む
*****


「お母さん、ダイエットしないの?」

 唯一、家族が揃う週末の食卓で、由輝よしきが言った。

 因みに、「ダイエットしなきゃ」が口癖の私だが、息子から聞かれたのは初めてだ。

「なに、急に」と、私は油がバチバチいっている鍋から唐揚げを摘まみだしながら聞いた。

 弾みで親指の第一関節に油が飛んだが、気にしない。

 冷やすのは、飯はまだかと食卓テーブルで待っている三人に、この唐揚げを届けてからだ。

「お母さん、顔は悪くないんだからさ」

「だから、なにが言いたいの」

 油きりのバットから皿に盛りつけた唐揚げをカウンターに置くと、和葉かずはがテーブルの中央に移す。

「いただきまーす」

 四人分のご飯と大根の味噌汁、キュウリの浅漬け、鶏の唐揚げ、ほうれん草の胡麻和え。由輝と夫の和輝かずきの前には、昨日の残りの麻婆豆腐もある。

 由輝は唐揚げにかぶりつき、和葉は取り皿にレモン汁を垂らす。和輝は味噌汁をすすった。

 私は手を洗い、油が飛んだガス台を拭いてから、食卓に着いた。

 あと一か月で中学三年生となる由輝は、とにかくよく食べる。

 中学入学時に、卒業までにぴったりになるのだろうかと心配しながらも買った二サイズ上の制服も、既に着られている感はない。

「昨日――」と、由輝は口をもごもごさせながら言った。

「――誰のお母さんが美人かって話してて」

 まだ口に入っているのに、箸は既に次の唐揚げを刺している。

 私は、まだ使っていない自分の箸で、和輝と和葉の皿に唐揚げを三つずつのせた。

あらしん家のお母さんが断トツだったんだけどさ」

「当たり前でしょ。愛華あいかのお母さんてハーフだよ?」

 嵐くんと愛華ちゃんの兄妹は、それぞれ由輝と和葉と同じ年で、友達だ。

 そして、彼らの母親がフランスだかイギリスだかと日本のハーフであることは、保護者の間でも広く知られていること。ついでに言うと、元モデルらしい。

「当たり前だけど、うちのお母さんの名前は出なくてさ? 当たり前だけど」

 失礼な息子だ。

 当たり前、を二度も言った。

「で、俺は考えた。そして、わかった。お母さんは痩せたら少しは綺麗になる!」

「お行儀が悪い!」

 唐揚げを刺した箸をブンブン振る由輝に、ピシャリと言う。が、全く気にされない。

「だって、結婚式の写真とか、別人じゃん! 今の半分くらいでさ? お父さんが抱っこできるくらいだったんだろ?」

 ああ、そんなこともあった。

 もう、十五年も前のことだ。

「祖母ちゃんも言ってたし。この頃は細くて可愛くて素直ないいお嫁さんだった、って」



 すいませんね!

 太くて可愛くなくていい嫁じゃなくなって!!



 心の中で姑に毒づく。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

君から逃げる事を赦して下さい

鳴宮鶉子
恋愛
君から逃げる事を赦して下さい。

【完結】時計台の約束

とっくり
恋愛
あの日、彼は約束の場所に現れなかった。 それは裏切りではなく、永遠の別れの始まりだった――。 孤児院で出会い、時を経て再び交わった二人の絆は、すれ違いと痛みの中で静かに崩れていく。 偽りの事故が奪ったのは、未来への希望さえも。 それでも、彼を想い続ける少女の胸には、小さな命と共に新しい未来が灯る。 中世異世界を舞台に紡がれる、愛と喪失の切ない物語。 ※短編から長編に変更いたしました。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

政略結婚の作法

夜宮
恋愛
悪女になる。 そして、全てをこの手に。 政略結婚のために身分違いの恋人のいる王太子の婚約者となった公爵令嬢は、妹の囁きを胸に悪女となることを決意した。 悪女と身分違いの恋人、悪女になるはずだった妹の物語。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

処理中です...