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1.今も好きですか?
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「時計、どうしたの?」
いつもの腕時計を目の前に、違う時計をはめる夫に、聞いた。
「調子悪くて、止まっちゃうんだよ」
「そう。修理に出す?」
「ああ、うん。コレがあるから急がなくていいよ」と、腕を上げてそれを見せる。
「その時計、気に入ってるのね」
「え?」
「結婚前に使ってたの、でしょ?」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
いくら良い物でも、二十年も前に買ったのなら、それなりにメンテナンスに出していなければ、とっくに動かなくなっていたのではないだろうか。
ああ、メンテナンスしてたのか……。
「じゃ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
いつもの挨拶。
いつからかはめられなくなった二つの指輪の横に、夫の腕時計。
結婚した時に私がプレゼントした時計は、思い出を刻むことに疲れてしまったようだ。
あの女性との思い出は、重ねているのに……。
夫は知らない。
私が知っていることを。
だから、言わない。
拗ねたり怒ったり、そんな可愛らしさはとうに忘れた。
でもね? 傷つかないわけじゃないの――。
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