15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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2.知ってるよ?

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「うちのお母さんだって働いてるだろ」

 珍しく、掘り下げる。

 隣の妻のことを『うちのお母さん』と呼ぶのはいただけないが。

「だって、ほら。夢乃ちゃんはちゃんとしたお仕事だし。ねぇ?」と、お義母さんが私を見る。

 私は口角を上げるだけの笑みを返した。



 すみませんね、正社員じゃなくて。



 お義母さんがミニうどんを口元に運び、ずずずっとすすった。

 お腹空いた。

「夫婦で有休取って旅行してるくらいなんだから、関係ないだろ」

 本当に、珍しく和輝が突っ込む。

「新婚だもの。そういうコミュニケーションて大事じゃない。あの子たちの子供も早く見たいし。ねぇ? 柚ちゃん」

「そうですね」



 義弟夫婦あの人たち子供作る気ないんじゃなかったっけ?



「きっと可愛いわよぉ。佑も私たちの子供にしてはイケメンだし、夢乃ちゃんなんてお姫様みたいじゃない。楽しみだわぁ」



 すみませんね、私はお姫様みたいじゃなくて。



 下の子に甘い、のは大抵の母親に言えるだろう。

 我が家も違わずだが、お義母さんほどわかりやすくはないはずだ。

 和輝が物静かで感情の起伏もあまり感じさせない性格だからか、自由奔放で社交的で愛想の良い佑くんが可愛くて仕方がないのだ。

 年齢差が七歳というのも大きな理由だろうが。

 和輝の後で二人の子を流産した後に出産できた子だから、尚更。

 佑くんの奥さんの夢乃ちゃんは更に六歳年下で三十歳。

「それにね? やっぱりこういうことは長男の嫁の方が頼みやすいのよ。柚ちゃんはパートさんだから休みも自由でしょ? こうしてランチしたり限定のロールケーキ買ったりできるんだからいいじゃない。そもそも、運転してもらってるだけで病院には付き添ってもらってないんだし」

 これは、流れがマズい。

 ここまで黙っていた私のレーダーが察知し、対策を講じた。

「お義母さん、天ぷら美味しいですか?」

「美味しいわよぉ。あら、柚ちゃんの遅いわね。ちょっと聞いてみましょうか」と、お義母さんが振り向いて店員さんを探す。

 その隙に、私は唇に人差し指を立てて、夫に目配せした。

 伝わったようで、彼は目を伏せて天丼を口に運ぶ。

「いえいえ。もうすぐくると思うので」

 十二時を過ぎて一気に客が入ったから、店員さんはあっちこっちに小走りだ。

 ようやく私の料理が運ばれてきた時には和輝が食べ終わり、会社に戻った。

 私はお義母さんの夢乃ちゃんトークを聞きながら急いで食べたせいで、せっかくの天ぷらの味がよくわからなかった。

 ただ、思った。



 八年経っても夢乃ちゃんに姑の世話この役は務まらないだろうなぁ……。


 
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