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2.知ってるよ?

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「デザート頼むの珍しいね?」

「お母さん、好きだろ? わらび餅」

「好きだけど、私のセットにもデザートついてるよ?」

「あんなちょっとじゃ、足りないだろ」



 こういうところは、すごく気が利くのに。



 ピコーンと甲高い電子音が聞こえた。

 和輝のメッセージ受信を知らせる音。

「母さん、今来るって。わかるかな」

 和輝がお義母さんに電話をかけ、店まで誘導する。

 十五分ほどでお義母さんが到着した時、ちょうど私と和輝の料理が運ばれてきた。

 お義母さんは私の斜向かい、息子の横に座った。

「あぁー、お腹空いたぁ」

「お疲れ様です」

「あら、美味しそうね」

「レディース御膳です」

「私もそれにしましょ。あ、飲み物は何?」

「これは黒ウーロン茶です」

「いいわね。私もそれで」

 お義母さんの分を注文する。

 店内は賑わってきていた。

「あぁ、疲れた」

 おしぼりで手を拭きながら、お義母さんが言った。

 和輝は大エビを口に入れる。

 私は、自分の御膳を義母の前に押し移した。

「お義母さん、先にどうぞ」

「あら、いいの?」

「私、食べるの早いので」

「そうだけど……。ありがとう」

 お義母さんがにっこり笑って箸を持つ。

 私のお腹がぐぅっと小さく鳴ったが、聞こえてなかったようだ。

「これ、先に食べてたら?」と、和輝がわらび餅の小鉢を私に差し出した。

「わらび餅? 美味しそうね。このセットにはついてないの?」

「セットのデザートは杏仁豆腐みたいですね」と、私は御膳の端の小鉢を指さした。

「これだけ? わらび餅に替えてもらえないの?」



 ダメでしょうね。



「和輝さん、私はいいからお義母さんに食べてもらって?」

「え? けど――」

「――ありがとう! 優しいわねぇ、柚ちゃん」

 オーバーリアクションでお礼を言われ、私の笑顔も引きつる。



 都合がいいんだから。



「あら? その袋、ロールケーキじゃない?」

 お義母さんが手毬寿司を頬張って、言った。

「あ、そうです。先月は買えなかったんですけど――」

「――あまおうのでしょ? 美味しいのよねぇ」

「食べたこと、あるんですか?」

「ええ。この前の日曜日、夢乃ゆめのちゃんが持って来てくれたの。お昼には売り切れちゃうこともあるんでしょ? わざわざ朝一で買ってくれたみたいで。嬉しい気遣いよねぇ」



 すみませんね、手ぶらでお邪魔して。



「たまのお休みなのにねぇ。若いのにちゃんとした子よねぇ」



 すみませんね、若くないのにちゃんとしてなくて。

 

「そんなに仲良くしてんなら、たまには病院の送迎を頼んだらいいんじゃないか?」

 私への気遣いなのか、純粋な感想なのか、この夫の意図は読めないが、恐らく後者だろう。

「それはまた別じゃない。だって、ほら、夢乃ちゃんはお仕事してるし。たすくと結婚してまだ一年? 姑の世話なんてさせたら、佑に叱られちゃうわよぉ」



 姑の世話が嫌がられることは認識してるんですね。



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