41 / 89
5.知らなかったでしょう?
7
しおりを挟む
私は首を回し、ボキボキッと骨が鳴るのを聞いてから、餃子の様子を窺う。
疲れた……。
昼休憩の後、座ったのは運転中だけだ。
冷蔵庫から麦茶を取り出すと、ティーパックが半分しか隠れない程度しか残っていなかった。
「なくなったら作ってよ……」
はぁ、とため息をつきながらポットの中身を捨て、軽く洗ってティーパックを放る。
疲れた…………。
カウンター越しに食卓を見れば、既にハンバーグもコロッケもない。
私はお茶漬けかな……。
結局、餃子五つを和輝用に取り分けたが、残りは子供たちの胃袋に納まった。と同時に、和輝が帰宅した。
今日も、早い。
私が理由を聞く間もなく、子供たちが連日帰宅の早い父親に、やれミスったのか、やれ干されたのか、やれ会社が危ないのかと、ニュースやYouTubeの受け売りを混同し、私に一喝され、さっさと部屋に上がって行った。
私は特大のため息をつきながら子供たちの食器を片付け、ちょうど焼き上がった生姜焼きと餃子を並べた。
「いつにも増して、騒がしいな」
着替えた和輝が、呟きながら食卓につく。
「そう? いつもあんな感じだよ。最近は由輝の塾が休みだから余計に」
「ああ、そっか」
和輝が食べ始め、さて自分のご飯はどうしようかと考えたが、お湯も沸かしていないし、味噌汁もあるしで、茶碗にご飯を山盛りによそい、冷蔵庫から納豆を取り出した。
そして、いつもの和輝の隣の席ではなく、正面に座る。
「お母さん、まだ食べてなかったのか?」
「うん。今日はバタバタしてたから――」と、納豆を掻き混ぜながら和葉を店に連れて行き、帰りが遅くなったことを話した。
「生姜焼き、食う?」
納豆ご飯と味噌汁だけの私に、和輝が聞いた。
「ううん。なんかもう、がっつりお米で十分」
本心だ。
炭水化物を抜くダイエットもあるというのに、山盛りの米を頬張っている私は、ダイエットが成功しないはずだ。
卒業式のスーツ、着れるかな……。
「俺も納豆……食うかな」
ぼんやりしていたら、和輝が言った。
「うん? あるよ」
私は立ち上がり、和輝の背後を回り込んで冷蔵庫に取りに行く。
カウンター越しに納豆を渡した。
「あ、からしもいる?」
もう一度冷蔵庫を開けて、ドアポケットのからしのチューブを取り出す。
ついでに麦茶のポットも出して、私と和輝のコップに注ぎ足した。
ポットを冷蔵庫に戻し、席に座る。
「……お母さんは忙しいな」と、夫が納豆を掻き混ぜながら言った。
そうよ。
母親は忙しいの。
誰にも感謝されないけど、頑張ってるの。
知っているつもりでも、知らなかったでしょう?
今夜は腰と肩に湿布を貼って寝ようと、思った。
疲れた……。
昼休憩の後、座ったのは運転中だけだ。
冷蔵庫から麦茶を取り出すと、ティーパックが半分しか隠れない程度しか残っていなかった。
「なくなったら作ってよ……」
はぁ、とため息をつきながらポットの中身を捨て、軽く洗ってティーパックを放る。
疲れた…………。
カウンター越しに食卓を見れば、既にハンバーグもコロッケもない。
私はお茶漬けかな……。
結局、餃子五つを和輝用に取り分けたが、残りは子供たちの胃袋に納まった。と同時に、和輝が帰宅した。
今日も、早い。
私が理由を聞く間もなく、子供たちが連日帰宅の早い父親に、やれミスったのか、やれ干されたのか、やれ会社が危ないのかと、ニュースやYouTubeの受け売りを混同し、私に一喝され、さっさと部屋に上がって行った。
私は特大のため息をつきながら子供たちの食器を片付け、ちょうど焼き上がった生姜焼きと餃子を並べた。
「いつにも増して、騒がしいな」
着替えた和輝が、呟きながら食卓につく。
「そう? いつもあんな感じだよ。最近は由輝の塾が休みだから余計に」
「ああ、そっか」
和輝が食べ始め、さて自分のご飯はどうしようかと考えたが、お湯も沸かしていないし、味噌汁もあるしで、茶碗にご飯を山盛りによそい、冷蔵庫から納豆を取り出した。
そして、いつもの和輝の隣の席ではなく、正面に座る。
「お母さん、まだ食べてなかったのか?」
「うん。今日はバタバタしてたから――」と、納豆を掻き混ぜながら和葉を店に連れて行き、帰りが遅くなったことを話した。
「生姜焼き、食う?」
納豆ご飯と味噌汁だけの私に、和輝が聞いた。
「ううん。なんかもう、がっつりお米で十分」
本心だ。
炭水化物を抜くダイエットもあるというのに、山盛りの米を頬張っている私は、ダイエットが成功しないはずだ。
卒業式のスーツ、着れるかな……。
「俺も納豆……食うかな」
ぼんやりしていたら、和輝が言った。
「うん? あるよ」
私は立ち上がり、和輝の背後を回り込んで冷蔵庫に取りに行く。
カウンター越しに納豆を渡した。
「あ、からしもいる?」
もう一度冷蔵庫を開けて、ドアポケットのからしのチューブを取り出す。
ついでに麦茶のポットも出して、私と和輝のコップに注ぎ足した。
ポットを冷蔵庫に戻し、席に座る。
「……お母さんは忙しいな」と、夫が納豆を掻き混ぜながら言った。
そうよ。
母親は忙しいの。
誰にも感謝されないけど、頑張ってるの。
知っているつもりでも、知らなかったでしょう?
今夜は腰と肩に湿布を貼って寝ようと、思った。
19
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
夫婦の恋は結婚のあとに 〜二度目の初夜とクリスマスの贈り物〜
出 万璃玲
恋愛
「エーミル、今年はサンタさんに何をお願いするの?」
「あのね、僕、弟か妹が欲しい!」
四歳の息子の純真無垢な願いを聞いて、アマーリアは固まった。愛のない結婚をした夫と関係を持ったのは、初夜の一度きり。弟か妹が生まれる可能性は皆無。だが、彼女は息子を何よりも愛していた。
「愛するエーミルの願いを無下にするなんてできない」。そう決意したアマーリアは、サンタ……もとい、夫ヴィンフリートに直談判する。
仕事人間でほとんど家にいない無愛想な夫ヴィンフリート、はじめから結婚に期待のなかった妻アマーリア。
不器用な夫婦それぞれの想いの行方は、果たして……?
――政略結婚からすれ違い続けた夫婦の、静かな「恋のやり直し」。
しっとりとした大人の恋愛と、あたたかな家族愛の物語です。
(おまけSS含め、約10000字の短編です。他サイト掲載あり。表紙はcanvaを使用。)
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
好きだった幼馴染みに再会→婚約者を捨ててプロポーズした侯爵令息
星森
恋愛
侯爵家の令息エドモンドは、幼い頃に結婚を誓い合った幼馴染コレットへの執着を捨てられずにいた。
しかし再会した彼女は自分を避け、公爵令息アランと親しくする姿ばかりが目に入る。
嫉妬と焦燥に駆られたエドモンドは、ついに“ある計画”に手を染めてしまう。
偶然を装った救出劇、強引な求愛、婚約破棄──
すべてはコレットを取り戻すためだった。
そして2人は……?
⚠️本作はAIが生成した文章を一部に使っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる