15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

文字の大きさ
67 / 89
9.16年目もずっと

しおりを挟む


 翌朝。

 私は夫の腕の中で目覚めた。

「おはよう」

 頭上から聞こえた声と共に、おでこにチュッとキスが降ってきた。

 結婚前のような甘い挨拶。

「おはよう」と返事をして顔を上げると、夫の唇が重なった。

 昨日は、たくさん話をした。

 昔話や、子供のこと、職場のこと。

 ジャグジーのお風呂にも入ったし、美味しいご飯も食べたし、マッサージチェアも使った。

「帰ったら、ベッドくっつけるか」

 唐突に、夫が言った。

「うん」と、私は笑って答えた。

 本人も言っていた通り、和輝は私の短い髪がかなり気に入ったらしく、ずっと触っている。

 家に帰ると、和葉が泣きそうな顔で出迎えてくれた。

 由輝は不機嫌そうに、「おかえり」とだけ言った。

「あれでも、かなり心配してたよ」と母が教えてくれた。

 昨日はこっちでも雪が積もったようだけれど、玄関前もカーポートの下も、綺麗に除雪されていた。

「ありがとう、由輝」とお礼を言うと、「別に」とだけ返ってきた。

「お父さんにはなんて言って来たの?」と帰り際に母に聞くと、「二人は友達のお葬式に行くから、って」と言われた。

 私と和輝は顔を見合わせ、苦笑いした。

「柚葉、和輝さんのお母さんに電話しておきなさい。二人と連絡がつかないって、家に電話があったから」

 そう言って、母は帰って行った。

 私のスマホの充電が切れている間に、お義母さんがかけてきていた。ご近所さんに屋根の修理と雪対策をしてもらえる業者を紹介してもらったらしい。

「そのご近所さんに、柚葉のことを褒められて鼻が高かったみたいだ」

「そ?」

「ああ。インフルで実家にいるって言ったら、心配してたよ」

 お義母さんに電話をしたら、お礼を言われた。それから、「たまには私のことも頼りなさい」なんて、素直じゃない労わりの言葉も。

「和葉の卒業と入学のお祝いをしたいから、みんなでおいで」とも。

 晩ご飯の席では、由輝と和葉が自分の箸や皿、お茶なんかを用意していて驚いた。

「おばあちゃんに、今時の中学生は自分の箸も用意できないの? って怒られちゃった」と、和葉が教えてくれた。

 何でも先回りしてやってしまっていた私も悪い。多少、いや、かなりイライラしても、自分たちでやらせていかなければ。

 それから、意外なことがもう一つ。

 髪を短く切った私に、和葉は「似合う」と褒めてくれて、由輝は「前のが良かった!」と不機嫌になった。

「見慣れないからだろ」と和輝は気にしていない様子で、ベッドを移動した。

 それを見た和葉は「模様替え?」と聞き、由輝は更に不機嫌になった。

「お母さんを俺に取られたとでも思うのかね」と、和輝が呟いた。

「そういえば、和葉じゃなくて由輝の方がママっ子だったもんな」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

君から逃げる事を赦して下さい

鳴宮鶉子
恋愛
君から逃げる事を赦して下さい。

王太子は妃に二度逃げられる

たまこ
恋愛
 デリンラード国の王太子アーネストは、幼い頃から非常に優秀で偉大な国王になることを期待されていた。 初恋を拗らせ、七年も相手に執着していたアーネストが漸く初恋に蹴りを付けたところで……。 恋愛方面にはポンコツな王太子とそんな彼をずっと支えていた公爵令嬢がすれ違っていくお話。 ※『拗らせ王子と意地悪な婚約者』『先に求めたのは、』に出てくるアーネストのお話ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

花も実も

白井はやて
恋愛
町で道場を営む武家の三男朝陽には最近、会うと心が暖かくなり癒される女性がいる。 跡取り問題で自宅に滞在したくない彼は癒しの彼女に会いたくて、彼女が家族と営む団子屋へ彼は足しげく熱心に通っているのだが、男と接客している様子を見ると謎の苛立ちを抱えていた。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

【完結】この胸に抱えたものは

Mimi
恋愛
『この胸が痛むのは』の登場人物達、それぞれの物語。 時系列は前後します 元話の『この胸が痛むのは』を未読の方には、ネタバレになります。 申し訳ありません🙇‍♀️ どうぞよろしくお願い致します。

処理中です...