68 / 89
9.16年目もずっと
2
しおりを挟む
それはそうだが、随分と昔のことだ。
私のほんの小さな気がかりの理由は、和葉の卒業式で明らかになった。
私は和輝と出席した。
和葉は愛華ちゃんと何枚も写真を撮った。
愛華ちゃんの両親も揃って出席していた。
仲が悪いどころか、驚くほど距離が近く、仲が良い。
実紗ちゃんのお母さんは、どうして浮気だの家を出たなどの嘘を子供に話したのか。
式の後、校門前で子供たちを待っている間、愛華ちゃんのお母さんが実紗ちゃんのお母さんに、デタラメを吹聴したことを抗議した。近くには他の父母もいて、注目されていた。
実紗ちゃんのお母さんは全く悪びれない。
「私は、愛華ちゃんのママが男性と二人きりで会っていて、親密そうだったと事実を話しただけですよ? 誤解されるような真似をする方が――」
「――妻が男と二人きりで会ったことはないし、親密そうだったと言うのもあなたの価値観でしょう? ご存じかもしれませんが、妻は海外での生活経験もあるので、他人との距離感が近いと感じることもありますが、それがあなたに関係ありますか? その上、あなたの娘さんは他のお子さんに、妻が浮気して出て行ったと吹聴したと聞いています。私は小さい会社ながらも経営者です。業務に支障が出るようなことになれば、名誉棄損で訴えさせてもらう!」
愛華ちゃんのお父さんが、お母さんを庇うように、実紗ちゃんのお母さんと対峙した。
愛華ちゃんのお父さんは株とか買収関係の仕事で、規模は知らないが毎年数十億の利益を上げているはずだ。
実紗ちゃんのお母さんに言ったことは、脅しじゃないだろう。
いつも実紗ちゃんのお母さんと一緒にいるお母さんたちは、旦那さんと遠巻きに見ているだけだった。
子供たちが先生とのお別れを済ませて出てきた。涙ぐんでいる子もいる。
みんなで写真撮影をした。
その時、誰かの声が聞こえてきた。
「実紗ちゃんのパパとママ、別居してるらしいよ」
「え? なんで?」
「最初は、パパはインフルエンザになったから、家族にうつさないようにお祖母ちゃん家にいる、とか言ってたらしいけど。実は女のところらしいって」
一体、どこからそんな情報が洩れるのか。
しかし、どこかで聞いた話だ。
「由輝も知ってるのかな、今の話」
和輝も同じことを思ったらしい。
まさか、私もインフルだと言って浮気してるだなんて心配したわけじゃないだろうか。
まさか、だ。
「お母さん!」
友達との別れを終えた娘が、満面の笑みで駆け寄ってくる。
「愛華のお母さん、赤ちゃんが出来たんだって!」
「えっ!?」
「はぁ!?」
これには、私も和輝も驚いた。
驚き過ぎて、当人に聞いてみた。
私のほんの小さな気がかりの理由は、和葉の卒業式で明らかになった。
私は和輝と出席した。
和葉は愛華ちゃんと何枚も写真を撮った。
愛華ちゃんの両親も揃って出席していた。
仲が悪いどころか、驚くほど距離が近く、仲が良い。
実紗ちゃんのお母さんは、どうして浮気だの家を出たなどの嘘を子供に話したのか。
式の後、校門前で子供たちを待っている間、愛華ちゃんのお母さんが実紗ちゃんのお母さんに、デタラメを吹聴したことを抗議した。近くには他の父母もいて、注目されていた。
実紗ちゃんのお母さんは全く悪びれない。
「私は、愛華ちゃんのママが男性と二人きりで会っていて、親密そうだったと事実を話しただけですよ? 誤解されるような真似をする方が――」
「――妻が男と二人きりで会ったことはないし、親密そうだったと言うのもあなたの価値観でしょう? ご存じかもしれませんが、妻は海外での生活経験もあるので、他人との距離感が近いと感じることもありますが、それがあなたに関係ありますか? その上、あなたの娘さんは他のお子さんに、妻が浮気して出て行ったと吹聴したと聞いています。私は小さい会社ながらも経営者です。業務に支障が出るようなことになれば、名誉棄損で訴えさせてもらう!」
愛華ちゃんのお父さんが、お母さんを庇うように、実紗ちゃんのお母さんと対峙した。
愛華ちゃんのお父さんは株とか買収関係の仕事で、規模は知らないが毎年数十億の利益を上げているはずだ。
実紗ちゃんのお母さんに言ったことは、脅しじゃないだろう。
いつも実紗ちゃんのお母さんと一緒にいるお母さんたちは、旦那さんと遠巻きに見ているだけだった。
子供たちが先生とのお別れを済ませて出てきた。涙ぐんでいる子もいる。
みんなで写真撮影をした。
その時、誰かの声が聞こえてきた。
「実紗ちゃんのパパとママ、別居してるらしいよ」
「え? なんで?」
「最初は、パパはインフルエンザになったから、家族にうつさないようにお祖母ちゃん家にいる、とか言ってたらしいけど。実は女のところらしいって」
一体、どこからそんな情報が洩れるのか。
しかし、どこかで聞いた話だ。
「由輝も知ってるのかな、今の話」
和輝も同じことを思ったらしい。
まさか、私もインフルだと言って浮気してるだなんて心配したわけじゃないだろうか。
まさか、だ。
「お母さん!」
友達との別れを終えた娘が、満面の笑みで駆け寄ってくる。
「愛華のお母さん、赤ちゃんが出来たんだって!」
「えっ!?」
「はぁ!?」
これには、私も和輝も驚いた。
驚き過ぎて、当人に聞いてみた。
27
あなたにおすすめの小説
夫婦の恋は結婚のあとに 〜二度目の初夜とクリスマスの贈り物〜
出 万璃玲
恋愛
「エーミル、今年はサンタさんに何をお願いするの?」
「あのね、僕、弟か妹が欲しい!」
四歳の息子の純真無垢な願いを聞いて、アマーリアは固まった。愛のない結婚をした夫と関係を持ったのは、初夜の一度きり。弟か妹が生まれる可能性は皆無。だが、彼女は息子を何よりも愛していた。
「愛するエーミルの願いを無下にするなんてできない」。そう決意したアマーリアは、サンタ……もとい、夫ヴィンフリートに直談判する。
仕事人間でほとんど家にいない無愛想な夫ヴィンフリート、はじめから結婚に期待のなかった妻アマーリア。
不器用な夫婦それぞれの想いの行方は、果たして……?
――政略結婚からすれ違い続けた夫婦の、静かな「恋のやり直し」。
しっとりとした大人の恋愛と、あたたかな家族愛の物語です。
(おまけSS含め、約10000字の短編です。他サイト掲載あり。表紙はcanvaを使用。)
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
セイレーンの家
まへばらよし
恋愛
病気のせいで結婚を諦めていた桐島柊子は、叔母の紹介で建築士の松井卓朗とお見合いをすることになった。卓朗は柊子の憧れの人物であり、柊子は彼に会えると喜ぶも、緊張でお見合いは微妙な雰囲気で終えてしまう。一方で卓朗もまた柊子に惹かれていく。ぎこちなくも順調に交際を重ね、二人は見合いから半年後に結婚をする。しかし、お互いに抱えていた傷と葛藤のせいで、結婚生活は微妙にすれ違っていく。
隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話
紫ゆかり
恋愛
オムニバス形式です。
理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。
大人の女性のストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる