15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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9.16年目もずっと

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 夫と愛し合うことで宿る命は、夫に愛された証。

 望む答えを得られたからか、夫は少し照れ臭そうに唇を噛んだ。

 ワイシャツを脱ぎ、Vネックのリブニットを頭から被る夫を横目に、私はこうして畏まった行事にしかつけないネックレスや指輪を外してケースにしまう。

「柚葉」

 着替えを終えた和輝に呼ばれ、ウォークインクローゼットを出る。

 ベッドに座る彼は、足の間の布団をポンポンと叩く。

「え」と、思わず低い声が出てしまった。

 足の間に座れと言いたいのなら、恥ずかしすぎる。

「柚葉」

 珍しく引かない和輝に、私は諦めて近づくと、手を引かれて強制的に座らされた。

 後ろからギュッと抱き締められる。

 隣の部屋では、娘が友達と交換したプレゼントを開いている。

 悪いことをしているわけではないが、緊張感が半端ない。

 髪を切ってから風通しの良いうなじに唇が押し付けられる。

「ちょ――」

「――広田、会社を辞めて実家に帰るって」

「え?」

「俺が紹介した会社と契約がまとまりそうだったのに、前の、不倫がバレて辞めた会社の人から相手にその話が伝わって、担当者を変えるなら契約すると言われたらしい」

「そんな……」

「自業自得、だけど」

 確かに、そうだ。

 それでも、広田さんを不憫に思うのは、和輝の気持ちが少しも彼女に残っていないとわかったからだろう。我ながら、単純だ。

「たいしたことじゃないかなと思ってたけど、やっぱり気になるから聞くけど――」と、気になる前置きの言葉が、私のうなじをくすぐった。

「――柚葉、働いてる店、俺に隠してたよな?」

「……っ」

 どうして改めて聞くの、と思った。

「今更だけどさ、付き合ってる時も俺が迎えに行くの断ってたし、復帰してからも店の名前と電話番号は教えてくれたけど、住所は駅までだったし。気づかなかった俺も、まぁ、マヌケなんだけど」

 最初から、私は和輝に自分の職場の正確な位置は教えなかったし、仕事終わりに迎えに行くと言われても断って中間地点で待ち合わせていた。

 退職して、パートとして復帰することになった時も、最寄り駅と店の名前、電話番号だけを教えた。店の名前も、哉太くんが継いで変わる前の店の名前で教えていた。

 徹底していた。

 正確な場所がわかって、そこが元カノと暮らしたマンションの目の前だとバレるのが嫌だった。

「最初はまぁ、わからなくもないけど、復帰する時は教えてくれても良かったんじゃないか?」

「…………」

「柚葉?」

 無言で俯く私の耳に唇を寄せ、和輝が囁く。

「言えよ」

 最近、恥ずかしいことばかりだ。

 適当に流したいが、しっかり背後から抱き締められているこの状態では、それもできそうにない。

「……元カノを思い出して欲しくなかった……から」

 恥ずかしさのあまり、最後はほとんど口の中で音が消えていた。代わりに、ぼやきがハッキリ言葉になる。
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