15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

文字の大きさ
71 / 89
9.16年目もずっと

「何を言わせたいのよ……」

「恥ずかしいこと?」

「なんで!?」

「可愛いなぁ、と思って」

「はぁ? どこが――」

「――思い出したんだよ。俺、柚葉が恥ずかしそうにしてるの見ると、めちゃくちゃ興奮したなって」

「……っ!?」

 もはや、言葉にならない。

 ラブホでの夜から、和輝は随分と口数が多くなった。多分、二人きりの時に限って。

 私の知っている夫ではないようで、ドキドキする。

 付き合い始めの頃に戻ったようで、心臓が痛すぎる。

「……どうしちゃったのよ」

「ん? 嫌か?」

「そうじゃないけど……」

「子供たちに隠れてって、スリルあるな」

「楽しまないで!」

 ハハハッと笑って、和輝が腕を緩めた。

 そして、私の肩に手を置くと、振り向かせるように力を入れる。

 無意識に目を閉じると、バンッとドアが開かれた。

 焦るなんてもんじゃない。

 よく、ドラマや漫画なんかでは、咄嗟に距離を置いて誤魔化すが、現実にはそんなに俊敏に動けないし、誤魔化すにも頭が回らない。

 結果、近づいた顔を背けるので精いっぱい。

「俺はっ――!」

 いつものことだがノックもなしに寝室のドアを開け放った息子は、今にも泣きそうな、それでいて怒ってもいるような複雑な表情で私たちを睨みつけて言った。

「――弟も妹もいらないからなっ!!」



 へ――――っ!?



「あーーっ! お父さんとお母さんがラブラブしてるぅ」

「ラッ――ラブラブなんてっ――」

 和葉の言葉に、私と和輝の体勢を思い出した私は、慌てて立ち上がろうとして前のめりになり、床に座り込む格好になった。

「――ったた」

「大丈夫か?」

 和輝に腕を掴み上げられ、ベッドに戻る。

「おっ、親のクセに! 気持ち悪いんだよ!」

 そう吐き捨てて、由輝はその場から逃げ出すように走り去り、恐らく自分の部屋に駆け込んだ。

 バタンッと叩きつけるように閉まったドアの音からして、そうだろう。

 私と和輝は唖然として、ドアを見つめていた。

「お兄ちゃんて、こっども~」と、和葉が訳知り顔で兄の部屋を見る。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「愛華のお母さんに赤ちゃんが出来たじゃない? だから、お兄ちゃんは弟と妹ならどっちが欲しい? って聞いたの。そしたら、いきなり怒りだしちゃって」

「はぁ……」

「私は妹が欲しいけど、そしたら一人部屋じゃなくなっちゃうのはヤだなぁ。あ! 妹が一人で寝れるようになる頃には、私はもう大人か! 彼氏と同棲とかしてるかも~」

 鼻歌でも歌い出しそうに言葉を弾ませながら、和葉も自分の部屋に戻る。

「同棲!? おいっ、和葉! 結婚前に男と暮らすとか、ダメだからな!!」

 返事の代わりに、娘の部屋のドアがバタンと閉じる音。

 急にシン……と静まり返る。

 途端に、なんだかおかしくなった。

感想 7

あなたにおすすめの小説

秘められた薫り

La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位 55位を獲得した作品です。 「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。 欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。 ​クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。 指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。 ​完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。 夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。 一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。 ​守るべき家庭と、抗えない本能。 二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。 欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

【完結】曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話

むらさきさゆり
恋愛
オムニバス形式です。 理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。 大人の女性のストーリーです。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。