15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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番外編*十五年目の煩悩

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「お父さん」

 由輝の修学旅行三日前。

 ソファに座ってテレビを見ている俺の背後に、和葉が立った。ソファの背に両肘をつき、耳元で囁く。

「私、焼肉食べに行きたい」

「焼肉?」

「うん。いつもより高いプランの」

 家族で焼肉に行くと、大体は食べ放題の一番安いプラン。最近は行っていない気がするが。

「お兄ちゃんがめちゃくちゃ食べるからって、ずっと行ってないでしょ? 高級なお肉を、ゆっくり食べたい」

 事実だが、そういう言われ方をすると、由輝に対して罪悪感をもつ。

「で、帰りに、近くのパフェのお店でぇ――」

「――調子に乗り過ぎ!」

 更に和葉の背後に、柚葉。

「いーじゃない。お父さんとお母さんのデートの為に、お祖母ちゃん家に泊まりに行ってあげるんだから」

「泊まり?」

「お祖母ちゃんたちにお寿司をねだる気でしょう? お寿司食べて焼肉食べてなんて、太るよ!」

「若いから、大丈夫だもん!」

「お母さんも昔はそう思ってたけどね!」

 何の言い合いだ。

「和葉。寿司と焼肉を続けては、胃もたれしないか?」

「胃もたれって?」

 そこからか。

「いいな、若いって」

「でしょ? ね? だから!」

「わかったよ」

「やったぁ!」

 和葉がソファに身体を預けてぴょんっと飛び跳ねた時、二回でバタンッとドアが閉まる音がした。

「お兄ちゃんだ」と小声で言うと、娘はリビングを出て行く。

「泊りって?」と、柚葉に聞く。

「お母さんがね、次の日の朝、学校まで送ってくれるって」

「ふぅ……ん?」

 気の抜けた声が出た。

 食事デートがお泊りデートに変わった。



 お泊り、ってキモいな。



 自分で自分の思考に突っ込みを入れながらも、下りてきた息子に何でもない表情を向けた自分は、なんて薄情な父親だろうと少しだけ反省した。
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