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2章 帝国の呪い
2-45 何事も知らないフリをするのが正解
「クロウ様の技を他人が身につけるのは至難の業なのか?」
シエルド氏が資料を捲りながら、俺に問う。
知らん。
「俺、リンク王国にいたときは、人に教えたことないから」
「この薬部屋ができて約一か月。いろいろな成果物を鑑定してみましたが、やはりクロウ様一人で作る薬は段違いの効能なんですよね。言うなれば、最上級の最上って感じですかね」
シエルド様は鑑定魔法が使えるんですかー、知ってたけどー。
大教会の薬部屋にてシエルド氏と打ち合わせ中。見習たちはいつもの作業を頑張ってもらっている。
「効能が高くないと文句どころか処罰してくるヤツらに囲まれていましたからねえ」
「リンク王国の王宮は今、痛い目に遭っているので因果応報ですね。あの国の王族は何を考えて生きているのか、私でさえ本当に謎なんですよ。有能な人物をわざわざ手放すなんて」
「彼らにとって黒髪の平民なんて代わりのいるゴミみたいなものですよ」
「ゴミ、、、」
「ああ、ゴミは捨て去るものなので、代わりすら必要ないものです」
シエルド氏が持ってきた資料を見せてもらう。
最上級のなかでも上中下があるのはわかるが、最上級の最上って何なんだ?
薬師見習が下準備をして俺が仕上げた薬は上級の上あたりになり、薬師見習だけで作った薬は上級の下にランク付けされているのが多いという話。
それでも、上級薬の位置づけなら良い薬だと思うのだが。
シエルド様の鑑定魔法って誰が何の作業を担当したのかまで見えるのだろうか???
この人の能力って、商会のトップに立つ人間なら絶対に欲しくなるよな。
従業員がサボっているかどうか、成果物を見れば一目瞭然。どんなに口で誤魔化そうとしても。
「うーん、クロウ様が卑下して言っているわけじゃないのがなー。リンク王国の王族は簡単に滅ぶより痛い目に遭った方がいい気がしてきた」
「リンク王国の王族と会うことなんて、今までもこれからも一生ないのですから、どうでもいいですよ」
「うん、まあ、クロウ様がぶん殴りたいとか恨みを晴らしたいとか言わないのなら、どうでもいいか。うちがどうとでもできる相手なら」
ぶん殴りたい?
さすがにそんなことは思っていませんて。
もう関係のない人たちなのだから、わざわざ関係を結び直すこともない。
「金儲け主義が囲い込んだ薬師様に手を出す馬鹿がいたら見てみたいもんだよねー」
だらーんと椅子に座りながら発言したのはクーリミオン看守である。
本日はゴートナー文官が休日なので、代わりの送迎要員なのだが、、、そのまま朝から大教会に居つきやがった。
ぶっちゃけサボリである。
別に、コイツは牢獄にいる間もそんなに仕事していないのだが。
というか、捕虜の俺たちに休日がないのはわかるが、ゴートナー文官って大修繕工事への関与が始まってから毎日送迎の付き添いしていなかったかな?
ごくごく稀にゴートナー文官に外せない用事があり別の役人が来ていたこともあったが、本当にごくごく稀だった。
社畜か?
帝国には休日もないのか?
あの人、文官だぞ?
今日の休日も、俺たちに理由を言えないから休日と言っているだけの気がする。
「クーリミオン、お前、たまには姿勢を正したらどうだ?身長も高いのにもったいないぞ」
、、、シエルド氏は兄らしく、緩く着ていたクーリミオンの軍服の詰襟をしっかりと閉じ直した。
クーリミオンは超嫌そうな顔をする。
ここは大教会。
ニヤニヤしながら二人を見ているちっこいエセルたちが発生してそうだ。
ついポロっと言っちまったんだ。故意じゃない。つい、あの二十一巻も発売されている物語の感想を言い合っていたときに、この二人を想像してしまうとついつい。
俺、誰に言い訳しているのやら。
この超嫌そうな顔も。。。
「シエルドー、お前と同じ身長だよー、俺はー」
「クーリミオン看守の方が二センチほど高いだろ」
つい正しい知識でツッコミしてしまった。
「クロウ様が何でクーリミオンの身長を知っているんですか?」
「何でクロウがシエルドの身長を知っているんだ?」
二人に詰め寄られた。
二人の身長を知っていなければ、その差は出ない。
「見ればわかるだろ?」
「シエルドは踵が少し高い靴を履いているだろっ。見た目は全然変わらないだろっ」
えー、やだ、何、この双子。
怖い。
見た目、同じ身長にするために調整しやがっていたのか?
調整しているのはシエルドの方だと思うが。
軍服も軍靴もクーリミオンの方は支給品である。
けれど、なぜ調整していることをクーリミオンも知っているのか。
エセル五匹全員が、後ろできゃーっと騒いでいる。
やっぱりいた。
非常にやかましい。
俺だけにしか聞こえない騒音問題。
頼むから黙っていてくれ。
あれ?もしかして液体エセルまでいたりしません?波打っていたりしてません?ぴちゃぴちゃと。誰も呑み込まないでね。
「ところで、この薬部屋、何で人口密度が上がっているんですか?」
俺の半目に気づいて、シエルド様が話題を変えた。
その指摘に、ちとドキリとさせられる。
エセルたちのことはバレてないよな。
「メーデは皇帝からしばらくお休みをもらったとのことだ」
「えー?精鋭部隊を解雇ー?」
だるそうなのにわざわざ言うクーリミオン。
怠惰を演じるなら、放置しようぜー。
キャラをブレさせるなよ。
愛する双子のお兄様がいるからって。
メーデが困ったように微笑んでいる。
年齢は確実にメーデの方が上である。
メーデは大人な対応しているなー。薬部屋なのに大剣背負っているけど。
「クーリミオン看守、わかってて言うな。ポシュが皇帝に泣きついた後、そのまま勤務させておくと皇帝が普通にメーデを使うと判断されて、しばしの休暇をしているだけだ」
「それなら休暇してても、戻ったら命令されちゃうじゃん」
「休暇とは名ばかりで、メーデはポシュが暴走しないように監視しているのだそうだ」
国からの命令なのか、自主的なものなのか、尋ねることは決してしない。
メーデが言った通りの理由を俺は受け入れる。面倒だから。
ポシュは会話に混じらず部屋の隅っこに移り、丸薬をこねこねしている。
こちらには背中を向けて。
黒ワンコたちが顔真っ赤なんですー、と密告してくれているが。
「ポシュの暴走って、お偉い方々の会議に突撃することー?」
「それもある」
メーデがぼそりと答えた。
それも、って他にもあるの?
メーデもとめられなかったポシュの行動が?
「クロウ、実は申請書の写しの一枚をポシュに渡したんだ」
セリムがなぜ答えるっ?
顔はものすごく困惑した表情を浮かべているが。
「申請書というと」
「皇帝に提出する婚約の」
「そういえば、俺が何枚か写しを作っておいたなあ。皇帝への嫌がらせに」
許可しなければ何枚でも提出するよ、というデモンストレーションの意味合いで。
俺も婚約も結婚も申請書を持っている。原本があれば、写しはいくらでも作れるので大丈夫なのだが。
「ポシュに頼み込まれて、、、皇帝に頼めと言ったんだが、、、あまりにもうるさくて、つい顔に」
セリムがポシュの顔に申請書を叩きつけた光景が目に浮かぶよ。
相当うるさかったんだね。
きっと俺の後ろで飛び跳ねているエセルたちと同じくらいうるさかったんだろうね。え?それ以上?
セリムにつきまとうのは、俺が許さないぞー。
「ああ、皇帝は出さないだろうなあ」
同性同士の婚約申請書は皇帝へ直々に提出する必要があるが、その提出する申請書をもらうことも困難なのである。
皇帝が必要と認めなければ、申請書すら拝めないということだ。
「で、その婚約申請書を提出したの?」
「サインしてくれと言われたから、嬉しくて、つい書いてしまったら。いや、本当に皇帝陛下に提出するとは思ってなくて」
、、、メーデ、頼まれたからと簡単にサインしちゃだめだよ。
いつか犯罪に巻き込まれるよ。
シエルド氏が資料を捲りながら、俺に問う。
知らん。
「俺、リンク王国にいたときは、人に教えたことないから」
「この薬部屋ができて約一か月。いろいろな成果物を鑑定してみましたが、やはりクロウ様一人で作る薬は段違いの効能なんですよね。言うなれば、最上級の最上って感じですかね」
シエルド様は鑑定魔法が使えるんですかー、知ってたけどー。
大教会の薬部屋にてシエルド氏と打ち合わせ中。見習たちはいつもの作業を頑張ってもらっている。
「効能が高くないと文句どころか処罰してくるヤツらに囲まれていましたからねえ」
「リンク王国の王宮は今、痛い目に遭っているので因果応報ですね。あの国の王族は何を考えて生きているのか、私でさえ本当に謎なんですよ。有能な人物をわざわざ手放すなんて」
「彼らにとって黒髪の平民なんて代わりのいるゴミみたいなものですよ」
「ゴミ、、、」
「ああ、ゴミは捨て去るものなので、代わりすら必要ないものです」
シエルド氏が持ってきた資料を見せてもらう。
最上級のなかでも上中下があるのはわかるが、最上級の最上って何なんだ?
薬師見習が下準備をして俺が仕上げた薬は上級の上あたりになり、薬師見習だけで作った薬は上級の下にランク付けされているのが多いという話。
それでも、上級薬の位置づけなら良い薬だと思うのだが。
シエルド様の鑑定魔法って誰が何の作業を担当したのかまで見えるのだろうか???
この人の能力って、商会のトップに立つ人間なら絶対に欲しくなるよな。
従業員がサボっているかどうか、成果物を見れば一目瞭然。どんなに口で誤魔化そうとしても。
「うーん、クロウ様が卑下して言っているわけじゃないのがなー。リンク王国の王族は簡単に滅ぶより痛い目に遭った方がいい気がしてきた」
「リンク王国の王族と会うことなんて、今までもこれからも一生ないのですから、どうでもいいですよ」
「うん、まあ、クロウ様がぶん殴りたいとか恨みを晴らしたいとか言わないのなら、どうでもいいか。うちがどうとでもできる相手なら」
ぶん殴りたい?
さすがにそんなことは思っていませんて。
もう関係のない人たちなのだから、わざわざ関係を結び直すこともない。
「金儲け主義が囲い込んだ薬師様に手を出す馬鹿がいたら見てみたいもんだよねー」
だらーんと椅子に座りながら発言したのはクーリミオン看守である。
本日はゴートナー文官が休日なので、代わりの送迎要員なのだが、、、そのまま朝から大教会に居つきやがった。
ぶっちゃけサボリである。
別に、コイツは牢獄にいる間もそんなに仕事していないのだが。
というか、捕虜の俺たちに休日がないのはわかるが、ゴートナー文官って大修繕工事への関与が始まってから毎日送迎の付き添いしていなかったかな?
ごくごく稀にゴートナー文官に外せない用事があり別の役人が来ていたこともあったが、本当にごくごく稀だった。
社畜か?
帝国には休日もないのか?
あの人、文官だぞ?
今日の休日も、俺たちに理由を言えないから休日と言っているだけの気がする。
「クーリミオン、お前、たまには姿勢を正したらどうだ?身長も高いのにもったいないぞ」
、、、シエルド氏は兄らしく、緩く着ていたクーリミオンの軍服の詰襟をしっかりと閉じ直した。
クーリミオンは超嫌そうな顔をする。
ここは大教会。
ニヤニヤしながら二人を見ているちっこいエセルたちが発生してそうだ。
ついポロっと言っちまったんだ。故意じゃない。つい、あの二十一巻も発売されている物語の感想を言い合っていたときに、この二人を想像してしまうとついつい。
俺、誰に言い訳しているのやら。
この超嫌そうな顔も。。。
「シエルドー、お前と同じ身長だよー、俺はー」
「クーリミオン看守の方が二センチほど高いだろ」
つい正しい知識でツッコミしてしまった。
「クロウ様が何でクーリミオンの身長を知っているんですか?」
「何でクロウがシエルドの身長を知っているんだ?」
二人に詰め寄られた。
二人の身長を知っていなければ、その差は出ない。
「見ればわかるだろ?」
「シエルドは踵が少し高い靴を履いているだろっ。見た目は全然変わらないだろっ」
えー、やだ、何、この双子。
怖い。
見た目、同じ身長にするために調整しやがっていたのか?
調整しているのはシエルドの方だと思うが。
軍服も軍靴もクーリミオンの方は支給品である。
けれど、なぜ調整していることをクーリミオンも知っているのか。
エセル五匹全員が、後ろできゃーっと騒いでいる。
やっぱりいた。
非常にやかましい。
俺だけにしか聞こえない騒音問題。
頼むから黙っていてくれ。
あれ?もしかして液体エセルまでいたりしません?波打っていたりしてません?ぴちゃぴちゃと。誰も呑み込まないでね。
「ところで、この薬部屋、何で人口密度が上がっているんですか?」
俺の半目に気づいて、シエルド様が話題を変えた。
その指摘に、ちとドキリとさせられる。
エセルたちのことはバレてないよな。
「メーデは皇帝からしばらくお休みをもらったとのことだ」
「えー?精鋭部隊を解雇ー?」
だるそうなのにわざわざ言うクーリミオン。
怠惰を演じるなら、放置しようぜー。
キャラをブレさせるなよ。
愛する双子のお兄様がいるからって。
メーデが困ったように微笑んでいる。
年齢は確実にメーデの方が上である。
メーデは大人な対応しているなー。薬部屋なのに大剣背負っているけど。
「クーリミオン看守、わかってて言うな。ポシュが皇帝に泣きついた後、そのまま勤務させておくと皇帝が普通にメーデを使うと判断されて、しばしの休暇をしているだけだ」
「それなら休暇してても、戻ったら命令されちゃうじゃん」
「休暇とは名ばかりで、メーデはポシュが暴走しないように監視しているのだそうだ」
国からの命令なのか、自主的なものなのか、尋ねることは決してしない。
メーデが言った通りの理由を俺は受け入れる。面倒だから。
ポシュは会話に混じらず部屋の隅っこに移り、丸薬をこねこねしている。
こちらには背中を向けて。
黒ワンコたちが顔真っ赤なんですー、と密告してくれているが。
「ポシュの暴走って、お偉い方々の会議に突撃することー?」
「それもある」
メーデがぼそりと答えた。
それも、って他にもあるの?
メーデもとめられなかったポシュの行動が?
「クロウ、実は申請書の写しの一枚をポシュに渡したんだ」
セリムがなぜ答えるっ?
顔はものすごく困惑した表情を浮かべているが。
「申請書というと」
「皇帝に提出する婚約の」
「そういえば、俺が何枚か写しを作っておいたなあ。皇帝への嫌がらせに」
許可しなければ何枚でも提出するよ、というデモンストレーションの意味合いで。
俺も婚約も結婚も申請書を持っている。原本があれば、写しはいくらでも作れるので大丈夫なのだが。
「ポシュに頼み込まれて、、、皇帝に頼めと言ったんだが、、、あまりにもうるさくて、つい顔に」
セリムがポシュの顔に申請書を叩きつけた光景が目に浮かぶよ。
相当うるさかったんだね。
きっと俺の後ろで飛び跳ねているエセルたちと同じくらいうるさかったんだろうね。え?それ以上?
セリムにつきまとうのは、俺が許さないぞー。
「ああ、皇帝は出さないだろうなあ」
同性同士の婚約申請書は皇帝へ直々に提出する必要があるが、その提出する申請書をもらうことも困難なのである。
皇帝が必要と認めなければ、申請書すら拝めないということだ。
「で、その婚約申請書を提出したの?」
「サインしてくれと言われたから、嬉しくて、つい書いてしまったら。いや、本当に皇帝陛下に提出するとは思ってなくて」
、、、メーデ、頼まれたからと簡単にサインしちゃだめだよ。
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