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2章 帝国の呪い
2-62 魔力量増強のための訓練
「ギノは実感あるのか?魔力量が増えたという」
仕事終了後、更衣室でボレールが聞いてきた。
「あー、うん、多少は」
嘘を言っても仕方ないので正直に答える。
ロッカーから鞄を取り出して斜めにかける。
「いいなー。さすが、魔導士見習だよなー。生まれ持った魔力量が違うから」
「俺らそもそもゼロだから。部屋長に会わなければこんな訓練することなかったし」
羨ましそうな目で俺を見ているのがファンとトータ。
ファンはエプロンを自分の鞄に突っ込む。
鞄を持ったトータとボレールはすでに扉から出ようとしている。
「皆は黒ワンコを飼うために魔力量を上げようと思っているんだろ。俺は魔導士になるために魔力量を上げなきゃいけないし」
「黒ワンコを早くお迎えしたいなあ。俺の魔力で黒ワンコの血肉が育ってくれるなら嬉しいよなー」
トータはキラキラと夢を語るが、人外と会ってから少々わかり合えないものを感じるようになった。
未知のものに憧れる気持ちはわかるが、少々度が過ぎている。
部屋長ですら少し引いているときがあるくらいだ。
黒ワンコを飼いたいと思っているのは、ファンもトータと同じ。
だからこそ、部屋長に言われた訓練を地道に行っている。
ボレールが苦笑いを浮かべたから、おそらく彼の目的は違うところにあるのだろう。
お疲れ様と薬師見習の三人と大教会を出て別れる。
俺は帝都の出身じゃない。
帝国ではどんなに地方の田舎町でも十歳前後に一回は様々の検査を行う。
軍人になれば職に困らないという優しい配慮ではなく、単純に帝国の軍事力を増強するためだ。
帝国は魔導士だけでなく、剣や他の素質のある子供たちを教育する。
それに選ばれることは誉れでもある。
出発時は一族総出どころか、町全体で祝われてしまう。
一旗揚げなければ、二度と故郷には帰れなくなってしまうくらいに。
特に、そこまでの魔力もないのに、選ばれてしまった者には本当にきつい状況なのである。
魔導士というものがどういうものかもわからないまま、親元から引き離されてしまった者には地獄である。
故郷に帰るに帰れない。
手紙も年に一度、生存報告を送れば良い方になってしまった。
家族とも疎遠になってしまった。
帝都では他人とのつながりはあまりにも希薄である。
魔力量が一定以上ある者、と言っても、その魔力量に応じて道が分かれている。
まずは、英雄ポシュのようにスラム街出身でも上流階級の学校に特待生で通わせるほどの高い魔力量を持つ者。これは一番わかりやすく、国の中枢に関わる予定になる者として教育される。
次に、ほどほどの魔力量の者、軍事学校や魔法学校でそれぞれの得意分野を伸ばす。こちらも卒業後は軍人となるが、出世の道は程遠いけれど、魔導士としての地位は確立されている。
で、最後は俺のように、確かに魔力量は一定以上あるが、そのラインギリギリ超えるところにいる者。つまり、魔導士として成立する最低ライン。学校に入れても魔力量が多い者に実技がついていけないし、教員がわざわざ個別指導をする伸びしろも感じられない。軍に入れたところで魔導士としてそこまでの戦力にはならないと思われており、市井の魔導士に教育を任されることになる。
簡単に言えば、弟子として魔法を教える代わりに小間使いとして利用されるわけだ。
ごくごく稀にこういう者のなかにも有能な魔導士が排出される実例があるため、魔力量が一定以上の者には魔導士以外の道を閉ざすためにこういう制度が作られている。
戦闘には不向きでも、街の中に魔導士がいる方が住民にも便利なのである。低レベルの魔導士であったとしても、魔法薬やら何やら魔導士でなければできない仕事も少なくない。
魔力量が一定以上あったために、魔導士以外の将来の選択肢がなくなってしまった。
それは幸運だったのか、不幸なことだったのか、俺には判断できない。
将来が決まってしまったあの頃はまだ幼くて、自分がやりたい仕事なんて考えてなかったから。
三人が見えなくなってから、俺は広場のベンチに座る。
俺は十七歳。
あの三人よりも年上だ。残念なことに体格はボレールの方が良いが。
薬師見習の三人には言ったことはないが、報酬はあの三人よりも高い。
それに、アッシェン大商会は俺が普段師事している魔導士のグランツ師匠にも手数料を払っている。
薬師見習は基本的に時間給らしく、彼らの所属している薬工房には仕事に従事していない時間、特に何も支払われていない。
手が足りなければ他の薬師見習を雇えばいいというだけで、彼ら自身が薬工房に有益な何かを生み出すわけではないからだ。
魔導士見習は違う。
俺たちにはとりあえず一定以上の魔力量がある。
修行と称して、魔石に魔力を充填させたり、魔法薬の土台となる液体を作り続けさせるだけで、ある程度儲かる仕組みがある。
世の中には弟子に魔法薬の土台となる液体の作り方しか教えず、飼い殺す者も少なくないという。
魔力量があれば、最低限の仕事ができてしまうのが魔導士見習。
だからこそ、弟子が師匠が与えた仕事をしない時間があるのは、師匠にとっては打撃でしかない。
俺は深い溜息を吐く。
夕方ではあるが、まだ日は高い。
ここにいるだけで、じっとりと汗が滲んで来る。
確かに基礎的な魔法はグランツ師匠から教わっている。
現在、午前中に多くの時間を割くのは、魔石に魔力の充填、魔法薬の土台となる液体作り、雑用がほとんどである。
俺が帝都に来たときはグランツ師匠の弟子は複数人いたが、他の魔導士のところに自主的にすべて移ってしまい、今は俺一人となっている。新しく弟子を取る気はないらしく、グランツ師匠の最近の仕事もご近所の頼まれごとを消化するようなものしかない。
部屋長から教わった訓練は、グランツ師匠から教わっている魔法の修行とは毛色が異なる。
グランツ師匠は魔法を練習すればするほどその魔法がうまくなる、ということである。
つまり、習った魔法を反復練習しろ、というのが師の教えであった。
帝国では、魔力量は多少訓練で増えることがあっても、多少であり、誤差の範囲内と言われている。
魔力量を増やす訓練というのはそもそも帝国には存在しない。
はずだったのに、部屋長に提案されたときは驚いたし、増えるものなら増やしたいと願った。
部屋長が示す薬師見習が行う訓練方法を単純に言えば、身体強化の魔法を弱く数分間、毎日行うものである。
あの三人はほぼ魔力量がないので、それだけでも魔力量は伸びるそうだ。だが、彼らは魔法を使えないので握ると身体強化の魔法が微弱に体内に流れるというペン型の魔道具を渡されている。体内に魔力がなくなっても、もともと少ない魔力量なので、怠いとしか感じないらしい。
俺の場合は数分間ではなく、もう少し長い時間、というか、自分の魔力が枯渇する寸前まで使い、すぐに魔力回復薬を飲むという訓練である。
体内から魔力がなくなる寸前というのはかなり肉体が怠くなり、魔力回復薬を飲むのが遅れると相当気持ちが悪くなる。さらに症状が進んでしまうと眩暈がして吐き気もあるのに立っていられない状態になってしまい、倒れたままその場に吐き散らかすことになる。
部屋長から俺はその訓練をするときは必ず手が伸ばせるところに魔力回復薬を置いてからするように言われているが、一度、ほんの微かに遠くて手が空を切った苦い経験から、魔力回復薬を手に持って訓練することにしている。
他の三人とは難易度が全然違うから気をつけてね、とも言われていた。
魔力回復薬はわりと高価な薬である。
同じ魔力回復薬なら回復したい魔力量に応じて、飲む液体量が増える。
あの三人が一口飲むなら、俺は小瓶一本が必要となる。
訓練自体はやり続けたいが、部屋長から渡されている魔力回復薬を使い続けるのはどう考えても悪い気しかしない。仕事で恩を返せるほど、魔法は上達していないからだ。
それに、俺の魔力量が増えて単純に喜ばしいのは、部屋長ではなく師匠の方ではないかと思ってしまうと、魔力回復薬の高い費用を部屋長が負担するのはおかしいと感じる。
だからといって、せっかくの機会を棒に振ることもできず、モヤモヤと考え続けている。
お金持ちの息子とかだったら普通にお金で返せるのに、とどうにもならないことを考え悩む。
「いやいや、そこまで真剣に悩むことないのに」
その声にバッと後ろを振り向くと、部屋長がいた。
うん?部屋長だよな。うん、黒髪黒目の部屋長だ。
夏場は眩しく目に優しくない純白法衣じゃなかったので、一瞬戸惑ってしまった。
見慣れない普段着。
普段着だと神々しさがなくなり、親しみやすさが倍増するな。話しやすさも倍増している気がする。
純白ではないので驚いたけど、黒で統一されている普段着でも黒髪と調和して格好良い姿である。ファンやポシュが見たら喜ぶのではないだろうか。
何で普段着で外に出れるのに、仕事はあのリンク王国の制服で来るのだろうか?
帝国の方針だろうか?偉い人が考えることはよくわからん。
捕虜に仕事時の自由というのはなさそうだし。
捕虜だよな、まだ。帝城に帰って行ってるし。
「あ、部屋長、お疲れ様です。ゴートナー文官とともに先ほどお帰りになりませんでしたか」
「うん、一度帰って夕食も食べてきたよ。ギノこそ、仕事終わってから結構時間が経っているけど、考え事でもしてたのか?」
あー、うん、日がまだ高いからって、考え事し過ぎたか。
あの師匠は弟子が時間通りに帰って来ないと、飲みに出かけてしまうからな。
今日の夕食どうしようかな、ではなく。
ここで部屋長に会えたのだから、高額な魔力回復薬のことについて尋ねなければ。
「あ、セリムさんもご一緒でしたか」
部屋長の少し後ろに見慣れた顔が存在した。
こちらも騎士の純白制服ではなく普段着である。帯剣もしていない。
肩にはいつも通り銀ワンコものっている。
あ。
デートならお邪魔したらまずいな。
仕事終了後、更衣室でボレールが聞いてきた。
「あー、うん、多少は」
嘘を言っても仕方ないので正直に答える。
ロッカーから鞄を取り出して斜めにかける。
「いいなー。さすが、魔導士見習だよなー。生まれ持った魔力量が違うから」
「俺らそもそもゼロだから。部屋長に会わなければこんな訓練することなかったし」
羨ましそうな目で俺を見ているのがファンとトータ。
ファンはエプロンを自分の鞄に突っ込む。
鞄を持ったトータとボレールはすでに扉から出ようとしている。
「皆は黒ワンコを飼うために魔力量を上げようと思っているんだろ。俺は魔導士になるために魔力量を上げなきゃいけないし」
「黒ワンコを早くお迎えしたいなあ。俺の魔力で黒ワンコの血肉が育ってくれるなら嬉しいよなー」
トータはキラキラと夢を語るが、人外と会ってから少々わかり合えないものを感じるようになった。
未知のものに憧れる気持ちはわかるが、少々度が過ぎている。
部屋長ですら少し引いているときがあるくらいだ。
黒ワンコを飼いたいと思っているのは、ファンもトータと同じ。
だからこそ、部屋長に言われた訓練を地道に行っている。
ボレールが苦笑いを浮かべたから、おそらく彼の目的は違うところにあるのだろう。
お疲れ様と薬師見習の三人と大教会を出て別れる。
俺は帝都の出身じゃない。
帝国ではどんなに地方の田舎町でも十歳前後に一回は様々の検査を行う。
軍人になれば職に困らないという優しい配慮ではなく、単純に帝国の軍事力を増強するためだ。
帝国は魔導士だけでなく、剣や他の素質のある子供たちを教育する。
それに選ばれることは誉れでもある。
出発時は一族総出どころか、町全体で祝われてしまう。
一旗揚げなければ、二度と故郷には帰れなくなってしまうくらいに。
特に、そこまでの魔力もないのに、選ばれてしまった者には本当にきつい状況なのである。
魔導士というものがどういうものかもわからないまま、親元から引き離されてしまった者には地獄である。
故郷に帰るに帰れない。
手紙も年に一度、生存報告を送れば良い方になってしまった。
家族とも疎遠になってしまった。
帝都では他人とのつながりはあまりにも希薄である。
魔力量が一定以上ある者、と言っても、その魔力量に応じて道が分かれている。
まずは、英雄ポシュのようにスラム街出身でも上流階級の学校に特待生で通わせるほどの高い魔力量を持つ者。これは一番わかりやすく、国の中枢に関わる予定になる者として教育される。
次に、ほどほどの魔力量の者、軍事学校や魔法学校でそれぞれの得意分野を伸ばす。こちらも卒業後は軍人となるが、出世の道は程遠いけれど、魔導士としての地位は確立されている。
で、最後は俺のように、確かに魔力量は一定以上あるが、そのラインギリギリ超えるところにいる者。つまり、魔導士として成立する最低ライン。学校に入れても魔力量が多い者に実技がついていけないし、教員がわざわざ個別指導をする伸びしろも感じられない。軍に入れたところで魔導士としてそこまでの戦力にはならないと思われており、市井の魔導士に教育を任されることになる。
簡単に言えば、弟子として魔法を教える代わりに小間使いとして利用されるわけだ。
ごくごく稀にこういう者のなかにも有能な魔導士が排出される実例があるため、魔力量が一定以上の者には魔導士以外の道を閉ざすためにこういう制度が作られている。
戦闘には不向きでも、街の中に魔導士がいる方が住民にも便利なのである。低レベルの魔導士であったとしても、魔法薬やら何やら魔導士でなければできない仕事も少なくない。
魔力量が一定以上あったために、魔導士以外の将来の選択肢がなくなってしまった。
それは幸運だったのか、不幸なことだったのか、俺には判断できない。
将来が決まってしまったあの頃はまだ幼くて、自分がやりたい仕事なんて考えてなかったから。
三人が見えなくなってから、俺は広場のベンチに座る。
俺は十七歳。
あの三人よりも年上だ。残念なことに体格はボレールの方が良いが。
薬師見習の三人には言ったことはないが、報酬はあの三人よりも高い。
それに、アッシェン大商会は俺が普段師事している魔導士のグランツ師匠にも手数料を払っている。
薬師見習は基本的に時間給らしく、彼らの所属している薬工房には仕事に従事していない時間、特に何も支払われていない。
手が足りなければ他の薬師見習を雇えばいいというだけで、彼ら自身が薬工房に有益な何かを生み出すわけではないからだ。
魔導士見習は違う。
俺たちにはとりあえず一定以上の魔力量がある。
修行と称して、魔石に魔力を充填させたり、魔法薬の土台となる液体を作り続けさせるだけで、ある程度儲かる仕組みがある。
世の中には弟子に魔法薬の土台となる液体の作り方しか教えず、飼い殺す者も少なくないという。
魔力量があれば、最低限の仕事ができてしまうのが魔導士見習。
だからこそ、弟子が師匠が与えた仕事をしない時間があるのは、師匠にとっては打撃でしかない。
俺は深い溜息を吐く。
夕方ではあるが、まだ日は高い。
ここにいるだけで、じっとりと汗が滲んで来る。
確かに基礎的な魔法はグランツ師匠から教わっている。
現在、午前中に多くの時間を割くのは、魔石に魔力の充填、魔法薬の土台となる液体作り、雑用がほとんどである。
俺が帝都に来たときはグランツ師匠の弟子は複数人いたが、他の魔導士のところに自主的にすべて移ってしまい、今は俺一人となっている。新しく弟子を取る気はないらしく、グランツ師匠の最近の仕事もご近所の頼まれごとを消化するようなものしかない。
部屋長から教わった訓練は、グランツ師匠から教わっている魔法の修行とは毛色が異なる。
グランツ師匠は魔法を練習すればするほどその魔法がうまくなる、ということである。
つまり、習った魔法を反復練習しろ、というのが師の教えであった。
帝国では、魔力量は多少訓練で増えることがあっても、多少であり、誤差の範囲内と言われている。
魔力量を増やす訓練というのはそもそも帝国には存在しない。
はずだったのに、部屋長に提案されたときは驚いたし、増えるものなら増やしたいと願った。
部屋長が示す薬師見習が行う訓練方法を単純に言えば、身体強化の魔法を弱く数分間、毎日行うものである。
あの三人はほぼ魔力量がないので、それだけでも魔力量は伸びるそうだ。だが、彼らは魔法を使えないので握ると身体強化の魔法が微弱に体内に流れるというペン型の魔道具を渡されている。体内に魔力がなくなっても、もともと少ない魔力量なので、怠いとしか感じないらしい。
俺の場合は数分間ではなく、もう少し長い時間、というか、自分の魔力が枯渇する寸前まで使い、すぐに魔力回復薬を飲むという訓練である。
体内から魔力がなくなる寸前というのはかなり肉体が怠くなり、魔力回復薬を飲むのが遅れると相当気持ちが悪くなる。さらに症状が進んでしまうと眩暈がして吐き気もあるのに立っていられない状態になってしまい、倒れたままその場に吐き散らかすことになる。
部屋長から俺はその訓練をするときは必ず手が伸ばせるところに魔力回復薬を置いてからするように言われているが、一度、ほんの微かに遠くて手が空を切った苦い経験から、魔力回復薬を手に持って訓練することにしている。
他の三人とは難易度が全然違うから気をつけてね、とも言われていた。
魔力回復薬はわりと高価な薬である。
同じ魔力回復薬なら回復したい魔力量に応じて、飲む液体量が増える。
あの三人が一口飲むなら、俺は小瓶一本が必要となる。
訓練自体はやり続けたいが、部屋長から渡されている魔力回復薬を使い続けるのはどう考えても悪い気しかしない。仕事で恩を返せるほど、魔法は上達していないからだ。
それに、俺の魔力量が増えて単純に喜ばしいのは、部屋長ではなく師匠の方ではないかと思ってしまうと、魔力回復薬の高い費用を部屋長が負担するのはおかしいと感じる。
だからといって、せっかくの機会を棒に振ることもできず、モヤモヤと考え続けている。
お金持ちの息子とかだったら普通にお金で返せるのに、とどうにもならないことを考え悩む。
「いやいや、そこまで真剣に悩むことないのに」
その声にバッと後ろを振り向くと、部屋長がいた。
うん?部屋長だよな。うん、黒髪黒目の部屋長だ。
夏場は眩しく目に優しくない純白法衣じゃなかったので、一瞬戸惑ってしまった。
見慣れない普段着。
普段着だと神々しさがなくなり、親しみやすさが倍増するな。話しやすさも倍増している気がする。
純白ではないので驚いたけど、黒で統一されている普段着でも黒髪と調和して格好良い姿である。ファンやポシュが見たら喜ぶのではないだろうか。
何で普段着で外に出れるのに、仕事はあのリンク王国の制服で来るのだろうか?
帝国の方針だろうか?偉い人が考えることはよくわからん。
捕虜に仕事時の自由というのはなさそうだし。
捕虜だよな、まだ。帝城に帰って行ってるし。
「あ、部屋長、お疲れ様です。ゴートナー文官とともに先ほどお帰りになりませんでしたか」
「うん、一度帰って夕食も食べてきたよ。ギノこそ、仕事終わってから結構時間が経っているけど、考え事でもしてたのか?」
あー、うん、日がまだ高いからって、考え事し過ぎたか。
あの師匠は弟子が時間通りに帰って来ないと、飲みに出かけてしまうからな。
今日の夕食どうしようかな、ではなく。
ここで部屋長に会えたのだから、高額な魔力回復薬のことについて尋ねなければ。
「あ、セリムさんもご一緒でしたか」
部屋長の少し後ろに見慣れた顔が存在した。
こちらも騎士の純白制服ではなく普段着である。帯剣もしていない。
肩にはいつも通り銀ワンコものっている。
あ。
デートならお邪魔したらまずいな。
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