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2章 帝国の呪い
2-89 最強ヒーロー
黒い触手が私の目の前に迫る。
魔法は発動しない。
逃げられない上に、武器も何もない。
せっかくフィーアの意識外にいたというのに、自らの行動で招いた結果。
死を覚悟して、目を瞑った。
「目を開けろ、ベモガー。お前も皇帝になるなら、最後の最後まで諦めるな」
その声は。
私はパッと顔を上げる。
「父上っ」
剣で触手を薙ぎ払っていたのは、父だった。
「皇帝陛下っ、」
精鋭部隊がすぐさま駆け寄ろうとしたが、父上が手で制する。
フィーアの黒い腕が父上に襲いかかるが、剣で難なくとめる。
「フィーア、お前はやり方を間違った。皇帝となりたいならば、正々堂々と卑怯になる必要があった」
「何だよ、それ。意味わかんねえ」
「ああ、残された時間でお前がやりたいことはこんなことだったのか」
「っ、お前に何がわかるっっ。皇帝に選ばれたお前にっっっ」
フィーアは力の限り叫んだ。
それは交わらない想い。
選ばれた者と選ばれない者の。
「残念だ、フィーア。お前は皇子としての責任を果たせ」
父上の握っている剣がフィーアの肉体を貫いた。
「がっ、」
力の差は歴然。
勝負は一瞬。
黒い腕は霧状になり消える。
フィーアは供えられた花々の上に落ちる。
花弁が辺りに舞った。
「父上っ」
「大丈夫か、ベモガー」
父上が私に駆け寄り、剣で縄を切る。
ようやく不自由さから解放された。
「この首輪、」
「魔力封じの首輪です。解除できる者を呼んで来ます。ああ、いえ、皇太子殿下がよろしければ、ご足労をおかけいたしますが研究開発施設の方へ」
精鋭部隊の隊長がここで待っているよりも、場所を変えた方が良いと判断したようだ。
多少の怪我はあるものの、動けないほどではないことは見て取れる。
隊長に頷いて、私は動き始めた。
「兄上、」
叔父上が父上の背中に触れる。
「、、、ああ、大丈夫だ、ナナキ」
ああ。
私は悟る。
父上の横にいるのは、私ではない。
こんな事態で隣を任せられるのは。
ほんの少し、私が寂しさを味わいながらこの場を去ろうとしたときに。
「皇帝陛下っ、」
それ、を最初に気づいたのは、フロレンスだった。
彼の動きは素早く、それ、と父上の間に入り、防御したガントレットが粉々に砕け散った瞬間に、ようやく我々は脅威に気づいた。
「なっ、」
壁の穴が開いた部分から、何かが蠢き、侵入してくる。
禍々しさが半端ない。
比較するのもなんだが、フィーアとは比べ物にならない。
「くそっ、ポシュがいればっ」
「フロレンス、予備の武器はっ」
「そんなもの持ってたら、悔しんでないっ」
フロレンスが手にしているのは短剣。
フィーアが使っていたものだった。
一瞬で拾う芸当も素晴らしいと思ったが、短剣では対処しきれていない。
「加勢するっ」
精鋭部隊がフロレンスに駆け寄ろうとしたが、黒いものに反対側の壁まで吹き飛ばされる。
「ぐっ、」
次々と壁に破壊跡ができていく。
皇帝直属の精鋭部隊隊員が石ころのように飛ばされる。
「お逃げくださいっ、皇帝陛下っ」
フロレンスの腕はすでに赤く染まっている。
臣下がその言葉を言う意味は重い。
それは、皇帝陛下でも勝てないと評価したということだ。
「兄上っ」
その事態を察した叔父上が、父上を動かそうとする。
「ここでとめなければ、帝城に被害が出るっ」
父上が剣を構えようとした。
「皇帝陛下っ、一時撤退を。戦力を整え、万全を期して対処をっ。ここは私が押さえますからっ」
それは叫び。
ここにいる戦力では勝てないと評価した結果の。
「お願いしますっ、早くっ」
フロレンスが大声で叫ぶと同時に、見えていたはずの霊廟が一瞬消えた。
あの大きく空いた穴が、黒いもので塞がれてしまった。
「ぐうっ」
フロレンスが再び父上との間に入った。
父上が動かなかったから。
最強の父上でも押し負けると判断して。
ガントレットがない今、彼の腕は。
それは命を懸けて、皇帝陛下を救うための覚悟。
おそらく、フロレンスが突破されれば、父上も。
我々が対峙しているものは、もしかしたら叔父上のその剣でも太刀打ちできない化け物なのかもしれない。
フロレンスが、父上が、叔父上へ前に出てほしいと頼まないのだから。
もし、そうなら。
全滅という文字が頭の中に浮かぶ。
帝城が、帝国が滅びる。
警鐘が頭のなかに響いている。
こんななか、私は無力だ。
誰か。
誰か、この状況をなんとかしてくれ。
お願いだ。
助けてほしい。
敵でも、悪魔でもいいからっ。
「このっ、クソフロレンスっ」
その声は父上ではなかった。
聞きなれない声が、フロレンスを罵倒した後。
空間に光が満ちた。
爆音が響く。
鼓膜が破れるかと思う音の後に、衝撃。
数分後、ようやく恐る恐る顔を上げる。
この場にいた全員、父上も叔父も床に這いつくばっている。
供えられていた花々は、すでにどこにも存在しない。
この場から綺麗に消え去っていた。
瓦礫だけが残る。
だが、そんな中でたった一人だけ、ごくごく普通に立っている者がいた。
純白の法衣を着た者。
「クロウ、」
叔父上がその人物に声をかけ、立ち上がろうとした動きをとめた。
その腕につかまれているのは。
「あの、クロウさん?フロレンスの胸倉つかんで、どうしたんですかね?」
恐る恐るといった雰囲気で、叔父上は話しかけている。
血塗れのフロレンスをつかんでいるクロウ殿は相当の怒りの表情を浮かべている。
純白な法衣に血がついたらどうするんですか、と言える状況でもない。
クロウ殿の手は完全にフロレンスの血で濡れていることだろう。
フロレンスは先ほどの防御のせいで、肉体を酷使し過ぎたのだろう。
一切の抵抗ができないようだ。
「、、、コイツは二十一巻も本を出しておきながら、未完で死のうとしやがった」
怒りのせいで声が震えているが、内容が意味不明。
「は?」
「俺はメモに精鋭部隊全員でここに来いって書いたよなあ。人の親切を無下にしやがって。死にたければ死ねばいいのにっ。あの本の著者だって知らなければ見殺しにできたのに。帝国が全部対処する案件だったのにっ」
何か不穏なこと口にしてませんか?
フロレンスを見殺しにする気だったんですか?
「、、、二十一巻、ああ、叔母に頼まれて書いてるあの本か」
血を流しながら、思い出し言う言葉ではない気がするなあ。
「何なんだよ、お前はっ。あんなクソヘタポエムは自らの手でしっかり時間をかけて書いているのに、何であの本は魔道具による自動筆記なんだよっ。著者がお前とわからなかったじゃねえかっ。遅筆過ぎて、出版社に掛け合おうと思っていたくらいだったのに」
クソヘタポエムと聞いて、ここにいて傷ついている精鋭部隊の隊長と隊員は悲し気に視線を外して頭を抱える。
そして、クロウ殿の出版社に掛け合おうは、普通に話し合うという意味合いではない気がする。この怒り具合を見ても。
ブンブンとフロレンスを振り回して、フロレンスの顔がより一層青褪める。
それ以上振り回したら、フロレンスの血がなくなるぞー。せっかく意識あるのに、貧血でぶっ倒れるぞー。
「、、、ええっと、クロウさん、フロレンスが遅筆過ぎてお怒りで?」
叔父上が立ち上がり、パンパンと汚れをはたきながら聞く。
「その通りっ」
「じゃあ、フロレンスの業務時間をその執筆作業に少々融通すると言ったら、この場を元に戻してくれないかなあ」
、、、叔父上、なんちゅうお願いをするんですか。
そんな願い聞くわけ。
「ふむ、修復」
修復、だけで周辺が光り輝いた。
眩しさで目を閉じた後、再び瞼を開けたら、、、棺も、供えられた花も、穴の開いていた壁も元通りになっていた。
血塗れていたフロレンスも、ガントレットまで元通りになっていた。
そして、壁に激突させられた隊員たちも手足を動かして無事を確認している。
皆、表情が緩み始めた。
彼らは何事もなかったかのように事後処理を開始する。
で。
おかしい、とこの状況をそう感じるのは私だけなのだろうか。
この状況を受けとめ切れない私の方がおかしいのだろうか。
「皇帝陛下っ、隕石が霊廟付近に落下した模様です。ここは危険ですのでお下がりください」
少々してから、研究開発の魔導士たちと残りの精鋭部隊隊員、他の護衛たちがバタバタと走ってきた。
急に辺りが騒がしくなる。
「皇帝陛下、我々は窪地になってしまった霊廟一帯の調査を始めます。この一帯を立入禁止区域とします」
「、、、そうか」
「簡易な魔力分析の結果ですが、他国による干渉ではなく、完全な自然災害による隕石だと判断できます。ですので、他国への軍事行動の準備は必要ないものと思われます」
「そうなのか」
父上が訝し気にクロウ殿を見る。
ええ、研究員が言っている通りですよ、という顔をしているのはクロウ殿。
晴れやかな顔でそこにいる。
「皆様もお怪我がないようでしたら、自室の方に」
誘導を始める精鋭部隊の隊長。肉体が元通りなら通常運転に戻る精鋭部隊。
父上が剣を鞘に納める。
「アイツは危機一髪に現れるヒーローか」
「残念でしたね。皇帝陛下が皇太子殿下を助けて一番いいところだけをかっさらったと思ったんですけどねー」
フロレンスーっ。
お前もさっさと逃げなかった父上に怒っているだろっ。
魔法は発動しない。
逃げられない上に、武器も何もない。
せっかくフィーアの意識外にいたというのに、自らの行動で招いた結果。
死を覚悟して、目を瞑った。
「目を開けろ、ベモガー。お前も皇帝になるなら、最後の最後まで諦めるな」
その声は。
私はパッと顔を上げる。
「父上っ」
剣で触手を薙ぎ払っていたのは、父だった。
「皇帝陛下っ、」
精鋭部隊がすぐさま駆け寄ろうとしたが、父上が手で制する。
フィーアの黒い腕が父上に襲いかかるが、剣で難なくとめる。
「フィーア、お前はやり方を間違った。皇帝となりたいならば、正々堂々と卑怯になる必要があった」
「何だよ、それ。意味わかんねえ」
「ああ、残された時間でお前がやりたいことはこんなことだったのか」
「っ、お前に何がわかるっっ。皇帝に選ばれたお前にっっっ」
フィーアは力の限り叫んだ。
それは交わらない想い。
選ばれた者と選ばれない者の。
「残念だ、フィーア。お前は皇子としての責任を果たせ」
父上の握っている剣がフィーアの肉体を貫いた。
「がっ、」
力の差は歴然。
勝負は一瞬。
黒い腕は霧状になり消える。
フィーアは供えられた花々の上に落ちる。
花弁が辺りに舞った。
「父上っ」
「大丈夫か、ベモガー」
父上が私に駆け寄り、剣で縄を切る。
ようやく不自由さから解放された。
「この首輪、」
「魔力封じの首輪です。解除できる者を呼んで来ます。ああ、いえ、皇太子殿下がよろしければ、ご足労をおかけいたしますが研究開発施設の方へ」
精鋭部隊の隊長がここで待っているよりも、場所を変えた方が良いと判断したようだ。
多少の怪我はあるものの、動けないほどではないことは見て取れる。
隊長に頷いて、私は動き始めた。
「兄上、」
叔父上が父上の背中に触れる。
「、、、ああ、大丈夫だ、ナナキ」
ああ。
私は悟る。
父上の横にいるのは、私ではない。
こんな事態で隣を任せられるのは。
ほんの少し、私が寂しさを味わいながらこの場を去ろうとしたときに。
「皇帝陛下っ、」
それ、を最初に気づいたのは、フロレンスだった。
彼の動きは素早く、それ、と父上の間に入り、防御したガントレットが粉々に砕け散った瞬間に、ようやく我々は脅威に気づいた。
「なっ、」
壁の穴が開いた部分から、何かが蠢き、侵入してくる。
禍々しさが半端ない。
比較するのもなんだが、フィーアとは比べ物にならない。
「くそっ、ポシュがいればっ」
「フロレンス、予備の武器はっ」
「そんなもの持ってたら、悔しんでないっ」
フロレンスが手にしているのは短剣。
フィーアが使っていたものだった。
一瞬で拾う芸当も素晴らしいと思ったが、短剣では対処しきれていない。
「加勢するっ」
精鋭部隊がフロレンスに駆け寄ろうとしたが、黒いものに反対側の壁まで吹き飛ばされる。
「ぐっ、」
次々と壁に破壊跡ができていく。
皇帝直属の精鋭部隊隊員が石ころのように飛ばされる。
「お逃げくださいっ、皇帝陛下っ」
フロレンスの腕はすでに赤く染まっている。
臣下がその言葉を言う意味は重い。
それは、皇帝陛下でも勝てないと評価したということだ。
「兄上っ」
その事態を察した叔父上が、父上を動かそうとする。
「ここでとめなければ、帝城に被害が出るっ」
父上が剣を構えようとした。
「皇帝陛下っ、一時撤退を。戦力を整え、万全を期して対処をっ。ここは私が押さえますからっ」
それは叫び。
ここにいる戦力では勝てないと評価した結果の。
「お願いしますっ、早くっ」
フロレンスが大声で叫ぶと同時に、見えていたはずの霊廟が一瞬消えた。
あの大きく空いた穴が、黒いもので塞がれてしまった。
「ぐうっ」
フロレンスが再び父上との間に入った。
父上が動かなかったから。
最強の父上でも押し負けると判断して。
ガントレットがない今、彼の腕は。
それは命を懸けて、皇帝陛下を救うための覚悟。
おそらく、フロレンスが突破されれば、父上も。
我々が対峙しているものは、もしかしたら叔父上のその剣でも太刀打ちできない化け物なのかもしれない。
フロレンスが、父上が、叔父上へ前に出てほしいと頼まないのだから。
もし、そうなら。
全滅という文字が頭の中に浮かぶ。
帝城が、帝国が滅びる。
警鐘が頭のなかに響いている。
こんななか、私は無力だ。
誰か。
誰か、この状況をなんとかしてくれ。
お願いだ。
助けてほしい。
敵でも、悪魔でもいいからっ。
「このっ、クソフロレンスっ」
その声は父上ではなかった。
聞きなれない声が、フロレンスを罵倒した後。
空間に光が満ちた。
爆音が響く。
鼓膜が破れるかと思う音の後に、衝撃。
数分後、ようやく恐る恐る顔を上げる。
この場にいた全員、父上も叔父も床に這いつくばっている。
供えられていた花々は、すでにどこにも存在しない。
この場から綺麗に消え去っていた。
瓦礫だけが残る。
だが、そんな中でたった一人だけ、ごくごく普通に立っている者がいた。
純白の法衣を着た者。
「クロウ、」
叔父上がその人物に声をかけ、立ち上がろうとした動きをとめた。
その腕につかまれているのは。
「あの、クロウさん?フロレンスの胸倉つかんで、どうしたんですかね?」
恐る恐るといった雰囲気で、叔父上は話しかけている。
血塗れのフロレンスをつかんでいるクロウ殿は相当の怒りの表情を浮かべている。
純白な法衣に血がついたらどうするんですか、と言える状況でもない。
クロウ殿の手は完全にフロレンスの血で濡れていることだろう。
フロレンスは先ほどの防御のせいで、肉体を酷使し過ぎたのだろう。
一切の抵抗ができないようだ。
「、、、コイツは二十一巻も本を出しておきながら、未完で死のうとしやがった」
怒りのせいで声が震えているが、内容が意味不明。
「は?」
「俺はメモに精鋭部隊全員でここに来いって書いたよなあ。人の親切を無下にしやがって。死にたければ死ねばいいのにっ。あの本の著者だって知らなければ見殺しにできたのに。帝国が全部対処する案件だったのにっ」
何か不穏なこと口にしてませんか?
フロレンスを見殺しにする気だったんですか?
「、、、二十一巻、ああ、叔母に頼まれて書いてるあの本か」
血を流しながら、思い出し言う言葉ではない気がするなあ。
「何なんだよ、お前はっ。あんなクソヘタポエムは自らの手でしっかり時間をかけて書いているのに、何であの本は魔道具による自動筆記なんだよっ。著者がお前とわからなかったじゃねえかっ。遅筆過ぎて、出版社に掛け合おうと思っていたくらいだったのに」
クソヘタポエムと聞いて、ここにいて傷ついている精鋭部隊の隊長と隊員は悲し気に視線を外して頭を抱える。
そして、クロウ殿の出版社に掛け合おうは、普通に話し合うという意味合いではない気がする。この怒り具合を見ても。
ブンブンとフロレンスを振り回して、フロレンスの顔がより一層青褪める。
それ以上振り回したら、フロレンスの血がなくなるぞー。せっかく意識あるのに、貧血でぶっ倒れるぞー。
「、、、ええっと、クロウさん、フロレンスが遅筆過ぎてお怒りで?」
叔父上が立ち上がり、パンパンと汚れをはたきながら聞く。
「その通りっ」
「じゃあ、フロレンスの業務時間をその執筆作業に少々融通すると言ったら、この場を元に戻してくれないかなあ」
、、、叔父上、なんちゅうお願いをするんですか。
そんな願い聞くわけ。
「ふむ、修復」
修復、だけで周辺が光り輝いた。
眩しさで目を閉じた後、再び瞼を開けたら、、、棺も、供えられた花も、穴の開いていた壁も元通りになっていた。
血塗れていたフロレンスも、ガントレットまで元通りになっていた。
そして、壁に激突させられた隊員たちも手足を動かして無事を確認している。
皆、表情が緩み始めた。
彼らは何事もなかったかのように事後処理を開始する。
で。
おかしい、とこの状況をそう感じるのは私だけなのだろうか。
この状況を受けとめ切れない私の方がおかしいのだろうか。
「皇帝陛下っ、隕石が霊廟付近に落下した模様です。ここは危険ですのでお下がりください」
少々してから、研究開発の魔導士たちと残りの精鋭部隊隊員、他の護衛たちがバタバタと走ってきた。
急に辺りが騒がしくなる。
「皇帝陛下、我々は窪地になってしまった霊廟一帯の調査を始めます。この一帯を立入禁止区域とします」
「、、、そうか」
「簡易な魔力分析の結果ですが、他国による干渉ではなく、完全な自然災害による隕石だと判断できます。ですので、他国への軍事行動の準備は必要ないものと思われます」
「そうなのか」
父上が訝し気にクロウ殿を見る。
ええ、研究員が言っている通りですよ、という顔をしているのはクロウ殿。
晴れやかな顔でそこにいる。
「皆様もお怪我がないようでしたら、自室の方に」
誘導を始める精鋭部隊の隊長。肉体が元通りなら通常運転に戻る精鋭部隊。
父上が剣を鞘に納める。
「アイツは危機一髪に現れるヒーローか」
「残念でしたね。皇帝陛下が皇太子殿下を助けて一番いいところだけをかっさらったと思ったんですけどねー」
フロレンスーっ。
お前もさっさと逃げなかった父上に怒っているだろっ。
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