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2章 帝国の呪い
2-93 これでも残暑
「まだまだ暑いなあ」
感想が口から流れ出た。
朝食後、洗濯をする。
この大教会には古い魔道具が備わっており、魔力を流し込めばまだまだ現役な物が多い。
遠い昔に設置されたようだが、その当時の最高技術を使用して作られた物なので今でも有用である。
洗濯に使用する魔道具もその一つ。
この大教会には魔石を買うお金がないので自力で動かすしかないが、魔導士である私の魔力量があればどれも動かすには困らない。
ただ、干すのは人力である。
乾燥の魔道具まではこの大教会に存在しなかった。今では上流階級にかなり普及している代物だが、昔の物は服が焦げたり燃えたりしていた欠陥品だったらしいので設置されてなくて正解かもしれない。
「今年は若い者には慣れない暑さだったか。私らにとってはまだまだ温い。残暑が長引いているのは同意するが」
「これで、残暑」
うひぃー、慣れない暑さだ。
年配の信者が洗濯物を干すのを手伝ってくれた。
祭壇に飾るクロスとか、布製の飾り、シーツ、服等も含めるとかなりの量だったので、汗が滴り落ちている。
同じ作業をしたはずなのに、信者は涼しそうな顔で中庭を去っていった。
慣れなのか?
リンク王国から来た者には辛い暑さである。
、、、クロウやセリムらは、クロウが制服を冷暖房完備にしてくれているから、そこまで問題ないか。
夜は半袖の爽やか普段着を着てたけど、アレも冷暖房完備だったりするのか?
羨ましい。
自分で便利な魔法をかけられると楽だよな。
クロウが魔導士法衣に一着だけ魔法をかけてくれたが、それを洗濯しているときはひたすら暑いのである。
この暑さなら、すぐに乾くと思うが。
「リーウセン、洗濯ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
笑顔で応える。
今日もラウトリスは可憐だ。
中庭に入って光を浴びたラウトリスは神々しくさえ思える。
クロウはいつも私のこと目か脳が腐っているじゃねえかという表情で見ているが、この美しさ、心奪われずにいられる方がどうかしていると思う。
大教会の中庭で洗濯物がはためく。
この分なら早々と乾くだろう。
修繕工事などどこ吹く風の穏やかな時間だ。
ここの大教会は相当に広い。
よく二人で管理できていると思うほどだ。
信者の奉仕の心がなければ、かなり悲惨な状況になっているに違いない。
「あ、もうそろそろクロウたちも来るかな」
洗濯カゴを所定の場所に戻してから準備しないと。
さすがにまた半袖短パンの格好で行ったら、クロウの笑顔が怖い。
私の素足もまだまだイケると思うのだが、男の素足を見て欲情するかっ、ボケっ、とあの目が語っている。
セリムの素足には欲情するクセにー。
「、、、どうだろう」
「え?」
「昨夜、隕石が帝城の敷地内に落ちたと公式に発表されたから、帝城がゴタゴタしていたら遅れるか、もしかしたら来れない可能性もあるかも」
そうそう、昨夜、地震のような大きな揺れがあったが、三人で盛り上がっていたので完全に流していた。
堅牢な大教会に被害がなかったのは教会長が即座に確認したし。
帝城内に隕石って、それ大事じゃないか?
「クロウ、隕石落としの魔法が使えたりしてー」
「一応、自然災害で他国の関与はないと発表されているよ。まあ、できそうだけどね。今は大きな声で言わない方が良いと思うよ」
忠告してくれるラウトリスも可愛い。
抱きしめたいが、汗でべたべただからやめよう。
純白な神官服に汗ジミでもできたら大変だ。
「ありがとう、気をつけるよ。他の皆が来れなくとも、修繕工事は進むだろうから気を引き締めなくちゃ」
クロウたちが来れなくとも、今日の工事は休みではない。
修繕作業員は普通に来るだろう。
名残惜しいが、ラウトリスと別れて、軽くシャワーを浴びて、薄いサラサラ生地でできている魔導士法衣に着替える。
おそらく、帝城がゴタゴタしていれば、いつも送迎してくれているゴートナー文官がクロウたちを連れてくるのは難しい。
となると、ポシュとメーデが来れるかどうか。
ただし、彼らは本来、皇帝直属の精鋭部隊。
さすがに隕石が落ちたのなら、事後処理に借り出される可能性がある。
帝城とはいえ、無傷ではないだろう。
「人外相手に一人だと厳しいなあ」
心配になるのは仕方ない。
一人での作業は心もとない。
それに、そばにいなくとも、大教会のなかで就業時間中ならいつでもクロウがいる安心感。
何か遭ってもどうにかなる、どうにかする心強い存在である。
それが今日はいないのである。
助けを呼べない不安。
白ワンコも帝城までは走ってくれないか?いや、知らせたところで来れないか。
「まあ、そこまで悲観するな」
「そうそう、後で隙をついて、クロウは魔法陣で来ようとか目論んでるぞ」
振り返ると、そこにいたのは。
「アジュール、クリムゾン、」
彫刻姿の。
人化した姿ではない。
できれば、人化した姿の方が頼りがいがあるのだが、人外に要望を伝えられるほど親しくはない。
クリムゾンならお菓子で釣れる可能性も無きにしも非ずだが、クーリミオン看守の姿だと仕事しなさそう。
もちろん、今もクリムゾンは黒ワンコに乗っている。
「クロウが来てくれるのはありがたいけど、それをやると後でセリムが怒らないか?」
「気にするのはそこなのか」
人外なのに、不思議なものを見ているような視線を私にくれてしまうアジュール。
クロウが魔法陣でこっそり大教会に来たら、セリムが牢獄に置いていかれる。
セリムまで連れて来てはバレる危険性が高まる。
嫉妬セリムの視線は刺すように痛い。
クロウ以外に向ける視線はかなり怖い。
クロウに向ける視線はあんなに甘く優しいのに。その優しさを百分の一でも他人に振り分けてくれないだろうか。
リンク王国王都の墓地で再会したときから、そう思っている。
ポシュやファンは超鈍いのかな。ポシュはクロウにさえ喧嘩を売れたのだから、そういう感覚が壊れているのかもしれないけど。
ファンは戦闘民族でもなければ軍人でもないし、魔導士でもないから殺意がわからないのかもしれないな。
「あ、それに、午後からの薬部屋はどうするの?牢獄内から捕虜の姿がなくなったらバレるだろ」
「クロウは分身魔法が使えるから大丈夫ー」
「、、、え、っとぉ、確か昔にクロウが冗談で分身を使えるようになったとか言っていた気が、」
「冗談」
プッと笑うクリムゾン。
冗談として受け取ったんだー、みたいな小馬鹿にした笑いだった。
「分身ができることはそこまで多くない。だが、まあ、セリムには分身だと伝えていくだろうし、普通の人間にはバレない」
アジュールが優しく微笑みながら伝えてくれる。
おや?
常々思っていたが、クリムゾンよりもアジュールの方がクロウに対する理解度が高い気がするのだが?
あんなに縁ができることを嫌っているのに。
敵を知るために調べた、という感じではないんだよなあ。
クロウの前ではものすごーく嫌そうな顔をしているけど。
「皇帝陛下とか皇弟殿下とかには、分身だとバレるのか?」
あの人たちの戦闘能力も察知能力も高過ぎる。
「忙しい時の皇帝にはバレないが、逆に忙しい時ほど皇弟にはバレる」
「へえー」
今日みたいな日は皇帝陛下がクロウをかまう一瞬すら臣下によって与えられないだろう。
、、、まあ、皇弟殿下は牢獄の料理長だという話だからな。
日々、会っているのだからさすがにバレるだろう。
牢獄に入ったことがないので、料理人姿の方を私は見たことないのだが。
コックコート着て無精ヒゲはやしたオッサンだと言われても、疲れていながらも綺麗な軍服姿からは想像ができない。
私が目撃したときは軍服姿だし。
お昼のお弁当は彼が作っているということだし、クロウは胃袋をつかまれているのだろう。
クロウも料理は得意なのだが。
おそらくあの弁当の味以上のものを作れる。
他人のために作ろうとする意識があっても、自分のために作りたいとはまったく思わないらしい。
それに、他の人が作ったご飯は美味しいと言う。
加えて、自分のために作ってくれたご飯やお菓子は、どんなに不味くても美味しいらしい。
味覚が私より終わっている気がする。
第四王子部隊が帝都に特攻してから業務が停滞し始め、リンク王国でようやく調べ上げたクロウの仕事。
宮廷魔導士団の調査では、魔法障壁と王宮に関わるほぼすべての魔道具を魔力充填していた。薬の手配も彼がしていたし、状況証拠から彼が作っていたと報告がされていたが、上層部は一切信じていなかった。
リンク王国の今の状況がすべてだ。
どうにもなっていない。
国全体を覆っていた素晴らしい魔法障壁は影も形もない。
あの国はもはや泥船。
「ま、アイツが皇弟と結ばれると皇帝が絡んで厄介だから、今回は平和な時代だ」
しみじみとした味が醸し出される発言。。。
アジュールよ、そういうこと、私に言わなくていいのだけど。
感想が口から流れ出た。
朝食後、洗濯をする。
この大教会には古い魔道具が備わっており、魔力を流し込めばまだまだ現役な物が多い。
遠い昔に設置されたようだが、その当時の最高技術を使用して作られた物なので今でも有用である。
洗濯に使用する魔道具もその一つ。
この大教会には魔石を買うお金がないので自力で動かすしかないが、魔導士である私の魔力量があればどれも動かすには困らない。
ただ、干すのは人力である。
乾燥の魔道具まではこの大教会に存在しなかった。今では上流階級にかなり普及している代物だが、昔の物は服が焦げたり燃えたりしていた欠陥品だったらしいので設置されてなくて正解かもしれない。
「今年は若い者には慣れない暑さだったか。私らにとってはまだまだ温い。残暑が長引いているのは同意するが」
「これで、残暑」
うひぃー、慣れない暑さだ。
年配の信者が洗濯物を干すのを手伝ってくれた。
祭壇に飾るクロスとか、布製の飾り、シーツ、服等も含めるとかなりの量だったので、汗が滴り落ちている。
同じ作業をしたはずなのに、信者は涼しそうな顔で中庭を去っていった。
慣れなのか?
リンク王国から来た者には辛い暑さである。
、、、クロウやセリムらは、クロウが制服を冷暖房完備にしてくれているから、そこまで問題ないか。
夜は半袖の爽やか普段着を着てたけど、アレも冷暖房完備だったりするのか?
羨ましい。
自分で便利な魔法をかけられると楽だよな。
クロウが魔導士法衣に一着だけ魔法をかけてくれたが、それを洗濯しているときはひたすら暑いのである。
この暑さなら、すぐに乾くと思うが。
「リーウセン、洗濯ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
笑顔で応える。
今日もラウトリスは可憐だ。
中庭に入って光を浴びたラウトリスは神々しくさえ思える。
クロウはいつも私のこと目か脳が腐っているじゃねえかという表情で見ているが、この美しさ、心奪われずにいられる方がどうかしていると思う。
大教会の中庭で洗濯物がはためく。
この分なら早々と乾くだろう。
修繕工事などどこ吹く風の穏やかな時間だ。
ここの大教会は相当に広い。
よく二人で管理できていると思うほどだ。
信者の奉仕の心がなければ、かなり悲惨な状況になっているに違いない。
「あ、もうそろそろクロウたちも来るかな」
洗濯カゴを所定の場所に戻してから準備しないと。
さすがにまた半袖短パンの格好で行ったら、クロウの笑顔が怖い。
私の素足もまだまだイケると思うのだが、男の素足を見て欲情するかっ、ボケっ、とあの目が語っている。
セリムの素足には欲情するクセにー。
「、、、どうだろう」
「え?」
「昨夜、隕石が帝城の敷地内に落ちたと公式に発表されたから、帝城がゴタゴタしていたら遅れるか、もしかしたら来れない可能性もあるかも」
そうそう、昨夜、地震のような大きな揺れがあったが、三人で盛り上がっていたので完全に流していた。
堅牢な大教会に被害がなかったのは教会長が即座に確認したし。
帝城内に隕石って、それ大事じゃないか?
「クロウ、隕石落としの魔法が使えたりしてー」
「一応、自然災害で他国の関与はないと発表されているよ。まあ、できそうだけどね。今は大きな声で言わない方が良いと思うよ」
忠告してくれるラウトリスも可愛い。
抱きしめたいが、汗でべたべただからやめよう。
純白な神官服に汗ジミでもできたら大変だ。
「ありがとう、気をつけるよ。他の皆が来れなくとも、修繕工事は進むだろうから気を引き締めなくちゃ」
クロウたちが来れなくとも、今日の工事は休みではない。
修繕作業員は普通に来るだろう。
名残惜しいが、ラウトリスと別れて、軽くシャワーを浴びて、薄いサラサラ生地でできている魔導士法衣に着替える。
おそらく、帝城がゴタゴタしていれば、いつも送迎してくれているゴートナー文官がクロウたちを連れてくるのは難しい。
となると、ポシュとメーデが来れるかどうか。
ただし、彼らは本来、皇帝直属の精鋭部隊。
さすがに隕石が落ちたのなら、事後処理に借り出される可能性がある。
帝城とはいえ、無傷ではないだろう。
「人外相手に一人だと厳しいなあ」
心配になるのは仕方ない。
一人での作業は心もとない。
それに、そばにいなくとも、大教会のなかで就業時間中ならいつでもクロウがいる安心感。
何か遭ってもどうにかなる、どうにかする心強い存在である。
それが今日はいないのである。
助けを呼べない不安。
白ワンコも帝城までは走ってくれないか?いや、知らせたところで来れないか。
「まあ、そこまで悲観するな」
「そうそう、後で隙をついて、クロウは魔法陣で来ようとか目論んでるぞ」
振り返ると、そこにいたのは。
「アジュール、クリムゾン、」
彫刻姿の。
人化した姿ではない。
できれば、人化した姿の方が頼りがいがあるのだが、人外に要望を伝えられるほど親しくはない。
クリムゾンならお菓子で釣れる可能性も無きにしも非ずだが、クーリミオン看守の姿だと仕事しなさそう。
もちろん、今もクリムゾンは黒ワンコに乗っている。
「クロウが来てくれるのはありがたいけど、それをやると後でセリムが怒らないか?」
「気にするのはそこなのか」
人外なのに、不思議なものを見ているような視線を私にくれてしまうアジュール。
クロウが魔法陣でこっそり大教会に来たら、セリムが牢獄に置いていかれる。
セリムまで連れて来てはバレる危険性が高まる。
嫉妬セリムの視線は刺すように痛い。
クロウ以外に向ける視線はかなり怖い。
クロウに向ける視線はあんなに甘く優しいのに。その優しさを百分の一でも他人に振り分けてくれないだろうか。
リンク王国王都の墓地で再会したときから、そう思っている。
ポシュやファンは超鈍いのかな。ポシュはクロウにさえ喧嘩を売れたのだから、そういう感覚が壊れているのかもしれないけど。
ファンは戦闘民族でもなければ軍人でもないし、魔導士でもないから殺意がわからないのかもしれないな。
「あ、それに、午後からの薬部屋はどうするの?牢獄内から捕虜の姿がなくなったらバレるだろ」
「クロウは分身魔法が使えるから大丈夫ー」
「、、、え、っとぉ、確か昔にクロウが冗談で分身を使えるようになったとか言っていた気が、」
「冗談」
プッと笑うクリムゾン。
冗談として受け取ったんだー、みたいな小馬鹿にした笑いだった。
「分身ができることはそこまで多くない。だが、まあ、セリムには分身だと伝えていくだろうし、普通の人間にはバレない」
アジュールが優しく微笑みながら伝えてくれる。
おや?
常々思っていたが、クリムゾンよりもアジュールの方がクロウに対する理解度が高い気がするのだが?
あんなに縁ができることを嫌っているのに。
敵を知るために調べた、という感じではないんだよなあ。
クロウの前ではものすごーく嫌そうな顔をしているけど。
「皇帝陛下とか皇弟殿下とかには、分身だとバレるのか?」
あの人たちの戦闘能力も察知能力も高過ぎる。
「忙しい時の皇帝にはバレないが、逆に忙しい時ほど皇弟にはバレる」
「へえー」
今日みたいな日は皇帝陛下がクロウをかまう一瞬すら臣下によって与えられないだろう。
、、、まあ、皇弟殿下は牢獄の料理長だという話だからな。
日々、会っているのだからさすがにバレるだろう。
牢獄に入ったことがないので、料理人姿の方を私は見たことないのだが。
コックコート着て無精ヒゲはやしたオッサンだと言われても、疲れていながらも綺麗な軍服姿からは想像ができない。
私が目撃したときは軍服姿だし。
お昼のお弁当は彼が作っているということだし、クロウは胃袋をつかまれているのだろう。
クロウも料理は得意なのだが。
おそらくあの弁当の味以上のものを作れる。
他人のために作ろうとする意識があっても、自分のために作りたいとはまったく思わないらしい。
それに、他の人が作ったご飯は美味しいと言う。
加えて、自分のために作ってくれたご飯やお菓子は、どんなに不味くても美味しいらしい。
味覚が私より終わっている気がする。
第四王子部隊が帝都に特攻してから業務が停滞し始め、リンク王国でようやく調べ上げたクロウの仕事。
宮廷魔導士団の調査では、魔法障壁と王宮に関わるほぼすべての魔道具を魔力充填していた。薬の手配も彼がしていたし、状況証拠から彼が作っていたと報告がされていたが、上層部は一切信じていなかった。
リンク王国の今の状況がすべてだ。
どうにもなっていない。
国全体を覆っていた素晴らしい魔法障壁は影も形もない。
あの国はもはや泥船。
「ま、アイツが皇弟と結ばれると皇帝が絡んで厄介だから、今回は平和な時代だ」
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アジュールよ、そういうこと、私に言わなくていいのだけど。
感想
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