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3章 奇縁がつなぐ間柄
3-1 危険な発光物
「フロレンスはやはり遅筆ー」
「せっかく助けられた命なのにー」
「早漏のくせにー」
「閉じ込めちゃうー?」
「異空間にー?」
「さすれば、さすがに書き進めるかもー」
ちっこいエセルたちがわやわやと不穏な計画を話し出した。
フロレンスへの遅筆な悪口以外があった気もしたが、まあいいや。
俺よりも待ち望んでいるフロレンスの物語。
俺が実行に移す前にエセルたちがフロレンスの拉致監禁を実行してくれそうだ。
コイツら、他人には姿も見えないし、声も聞こえもしない。監禁計画が外に漏れることはないだろう。
完全犯罪。
だが、フロレンスが大教会に来ることはあるのか?
来なければ、大教会から出られないエセルたちには犯罪が成立しない。
来てしまったら最後だが。
物語を書き上げるまで、エセルたちが放してくれないだろう。
しかし。
「ギノ、コイツら見えるのか?」
じぃーっとコイツらを見ているかのようなギノの視線。
視力の悪い人がやるような目を細めて睨むように見ている。
「いえ、見えてはいないのですが、ここ辺りにものすごい違和感があります。部屋長がそういう発言をされるということは、、、いるんですね?」
「もしかして、前から違和感あった?」
「あ、多少は。部屋長が何もない空間に話したりしているのを見たときは、たいてい変な違和感を感じてました」
「へえー」
ぎゅっ。
「えっ、」
俺がギノの手を握ったら、壁際に立っているセリムからものすごい鋭い視線が来た。
、、、ポシュとファンからも厳しい視線がやってきたが、その後ろからのメーデとボレールの悔しそうな表情も視界に入る。
とりあえず、今はどうでもいいか。セリムだけは後でフォローを入れておこう。
「うわっ、目がチカチカする。え、、、」
ギノが瞬く。
キラキラに光る発光物が床にいるからな。
「俺の魔力を通してみた。ギノが認識できるのは数分間程度だが、コレらも要注意な人外だ」
数分で充分だろ。
それ以上認識できても害悪でしかない。
「何をーっ」
「要注意とは何事かー」
「おお、姿は可愛らしいですけど、」
床でちまちまと動く姿は可愛らしいのは同意するが、大人エセルはただただ胡散臭いだけだった。
潰して正解。
「こんな風に光っていたり、可愛らしい人外が世間では妖精とか言われるんですかね?」
「あー、」
その可能性はあるかもしれない。
姿が見えた者からしたら。
外見で判断してはいけないのは人間でも同じことが言えるのだが、エセルは外見だけは良い。
「妖精ー?」
「てへっ」
「お前は見る目があるじゃないかー」
妖精と言われて、悪い気はしないらしい。
嬉しそうな笑顔を浮かべていたり、照れていたり、赤くなってもじもじしたりしている。
「あ、もう見えなくなった」
「そりゃ、良かった」
「、、、部屋長」
ジリジリと近寄ってきたのはトータだった。
うん、人外大好きトータだ。
トータの性癖はどこで歪んだ?その興味、もう少し人へ向けろ。
「今、妖精だとか言ってませんでした?」
「妖精じゃない。危険な人外だ」
キョロキョロしていても、さすがにトータでは気配も感じないと思うが。
あれ?
妖精の定義って何だっけ?
発光物で、可愛らしいサイズで、羽は必須ではなかったような。そしてイタズラ好き。
条件は当てはまってしまう気がする。
元々、大きなサイズを見てなければ。
そういや、大人エセルは浮かんでいたな。
ちっこいエセルたちは空中に浮かぶことはないが、今のところは。
この姿ならば、浮かんでしまえば妖精と勘違いする者もいるのではないか?幼児体型ではあるが、そういう妖精もいないことはないだろう。
妖精の目撃談は意外と存在している。
もしかして、こういう人外ってゴロゴロと世間に転がっているのか?
地方では妖精にかどわかされたと噂される行方不明者もまた数多い。
いなくなる寸前に目撃したのが子供だったりすると光に包まれたとか訴えるので、魔法による連れ去りの可能性も高い。実際は盗賊や魔物に襲われたのではないかと考えられている。
そもそも、妖精は現実にいるかどうか定かではない。
イタズラ程度で済めばまだいいのだが、その正体は理不尽極まりない人外である可能性が限りなく高いので、行方不明者の安否は遺体が出て来なくとも判断がついてしまう。
「あのー、部屋長、今ギノにした見えない人外が見える方法を俺にもしてくれませんか」
トータは自分の願いをきちんと口にすることができてえらいぞ。
皮肉じゃないぞ、これは。
けれど。
「トータはまず自分の魔力量を上げないと難しい。見せる方法はいくらでもあるんだが、たいていはどこかしらに負担がかかったり、無理が生じる」
「そうなんですかー。いつか見ることができることを祈って」
トータは手を組み神に祈るポーズをする。
「神に祈ってもどうにもならないぞ。自分がどれだけ訓練するかですべてが決まる」
「おお、さすがは部屋長。現実主義ですね」
「トータだってせっかくの自分の努力を神の手柄にされたら嫌だろう」
「じゃあ、クロウはセリムと出会えたのは神が定めた運命だとか思わないのか?」
横からポシュが尋ねてきた。
その質問にはどういう意図があるんだ?
「セリムが俺を口説いてくれたのは、セリムの努力の賜物であって、神が決めた運命じゃない」
セリムを神の手柄にされてたまるか。
「リンク王国って無神教だったっけ?」
「正確には国王が亡くなったら神格化する。歴代国王を神として祀っていたがそこまでの信仰は集めていない。宗教国家の教会もあったが、たいていの者は無宗教と言った方が近いんじゃないか」
リンク王国で歴代国王が神となったところで、黒髪の平民が祈るわけもない。
その神は黒髪の平民に試練しか与えないのだから。
リンク王国の貴族であっても自国の神に形だけ祈っている。王族の目があるから。
「あー、そうなんだ。それなら仕方ないか」
「オルド帝国は今の皇帝が神みたいなものだろ。帝国民は歴代皇帝もまた崇め奉るが、現皇帝ほどではない」
「確かにそうだな。歴代皇帝の霊廟が消え去ったのは残念だが、皇帝が無事なら何の問題もない」
ポシュが言い切った。
帝城の敷地内にある歴代皇帝が眠る霊廟が綺麗になくなっても、その件についてはさしたる混乱はなかった。隕石という自然災害。他国からの侵攻でなければ帝国民は問題にすらしないらしい。
反対に、落下地点のすぐ近くにいた皇帝の行動の方が問題になっているくらいだ。
すぐ近くと言っても、霊廟自体が相当大きな建物なのだし、関係者以外立入禁止になっている区域も相当に広い。皇族が言うすぐ近くは信じない方が良いと思う。
怪我一つないとすぐさま無事である姿を見せて声明を出したが、戦争には勝てても自然災害にまで勝てるわけではないのが人間である。
超人的な皇帝ではあるが、帝国中から心配されたわけである。
上層部からはかなりの小言が本人に、帝国民からはかなりのお手紙が帝城に届けられたそうである。
まあ、国民に愛されている証拠でもある。
「俺も皇帝陛下は信じられるけど、神は祈ったところで何もしてくれないことは確かだ」
「試練だけを与える神なら、祈るだけ時間の無駄だろ」
「、、、クロウなら、ああ、うん、何でもない」
ポシュが言葉を濁した。
それもそうだろう。
彼は救われなかった側だ。
上流階級の学校に特別待遇で通って、軍では皇帝直属の精鋭部隊に配属されて、第三者から見たら何が救われなかったのかと批判する者もいるのかもしれない。
けれど、彼が幼い日に失ったものは計り知れない。
スラム街で、両親もおらず、貧しい生活を送っている上に、微かに手にしたものでさえ何もかも奪われる。
それが神の定めた運命だと言うのなら、神を恨まない方がおかしい。
恨むべきはスラム街を放置して孤児を保護しなかった失政のせいである。
彼の意志が正常なら、神を倒すために革命の狼煙をあげる動きにもなっていたはずだ。
残念ながら、帝国の呪いがあったためにここまで歪んで成長した。
恨むべき者を守るべき者として今まで生きてきてしまったのだから。
ポシュがそれを正確に自覚できるのは一体いつになるのだろうか。
「せっかく助けられた命なのにー」
「早漏のくせにー」
「閉じ込めちゃうー?」
「異空間にー?」
「さすれば、さすがに書き進めるかもー」
ちっこいエセルたちがわやわやと不穏な計画を話し出した。
フロレンスへの遅筆な悪口以外があった気もしたが、まあいいや。
俺よりも待ち望んでいるフロレンスの物語。
俺が実行に移す前にエセルたちがフロレンスの拉致監禁を実行してくれそうだ。
コイツら、他人には姿も見えないし、声も聞こえもしない。監禁計画が外に漏れることはないだろう。
完全犯罪。
だが、フロレンスが大教会に来ることはあるのか?
来なければ、大教会から出られないエセルたちには犯罪が成立しない。
来てしまったら最後だが。
物語を書き上げるまで、エセルたちが放してくれないだろう。
しかし。
「ギノ、コイツら見えるのか?」
じぃーっとコイツらを見ているかのようなギノの視線。
視力の悪い人がやるような目を細めて睨むように見ている。
「いえ、見えてはいないのですが、ここ辺りにものすごい違和感があります。部屋長がそういう発言をされるということは、、、いるんですね?」
「もしかして、前から違和感あった?」
「あ、多少は。部屋長が何もない空間に話したりしているのを見たときは、たいてい変な違和感を感じてました」
「へえー」
ぎゅっ。
「えっ、」
俺がギノの手を握ったら、壁際に立っているセリムからものすごい鋭い視線が来た。
、、、ポシュとファンからも厳しい視線がやってきたが、その後ろからのメーデとボレールの悔しそうな表情も視界に入る。
とりあえず、今はどうでもいいか。セリムだけは後でフォローを入れておこう。
「うわっ、目がチカチカする。え、、、」
ギノが瞬く。
キラキラに光る発光物が床にいるからな。
「俺の魔力を通してみた。ギノが認識できるのは数分間程度だが、コレらも要注意な人外だ」
数分で充分だろ。
それ以上認識できても害悪でしかない。
「何をーっ」
「要注意とは何事かー」
「おお、姿は可愛らしいですけど、」
床でちまちまと動く姿は可愛らしいのは同意するが、大人エセルはただただ胡散臭いだけだった。
潰して正解。
「こんな風に光っていたり、可愛らしい人外が世間では妖精とか言われるんですかね?」
「あー、」
その可能性はあるかもしれない。
姿が見えた者からしたら。
外見で判断してはいけないのは人間でも同じことが言えるのだが、エセルは外見だけは良い。
「妖精ー?」
「てへっ」
「お前は見る目があるじゃないかー」
妖精と言われて、悪い気はしないらしい。
嬉しそうな笑顔を浮かべていたり、照れていたり、赤くなってもじもじしたりしている。
「あ、もう見えなくなった」
「そりゃ、良かった」
「、、、部屋長」
ジリジリと近寄ってきたのはトータだった。
うん、人外大好きトータだ。
トータの性癖はどこで歪んだ?その興味、もう少し人へ向けろ。
「今、妖精だとか言ってませんでした?」
「妖精じゃない。危険な人外だ」
キョロキョロしていても、さすがにトータでは気配も感じないと思うが。
あれ?
妖精の定義って何だっけ?
発光物で、可愛らしいサイズで、羽は必須ではなかったような。そしてイタズラ好き。
条件は当てはまってしまう気がする。
元々、大きなサイズを見てなければ。
そういや、大人エセルは浮かんでいたな。
ちっこいエセルたちは空中に浮かぶことはないが、今のところは。
この姿ならば、浮かんでしまえば妖精と勘違いする者もいるのではないか?幼児体型ではあるが、そういう妖精もいないことはないだろう。
妖精の目撃談は意外と存在している。
もしかして、こういう人外ってゴロゴロと世間に転がっているのか?
地方では妖精にかどわかされたと噂される行方不明者もまた数多い。
いなくなる寸前に目撃したのが子供だったりすると光に包まれたとか訴えるので、魔法による連れ去りの可能性も高い。実際は盗賊や魔物に襲われたのではないかと考えられている。
そもそも、妖精は現実にいるかどうか定かではない。
イタズラ程度で済めばまだいいのだが、その正体は理不尽極まりない人外である可能性が限りなく高いので、行方不明者の安否は遺体が出て来なくとも判断がついてしまう。
「あのー、部屋長、今ギノにした見えない人外が見える方法を俺にもしてくれませんか」
トータは自分の願いをきちんと口にすることができてえらいぞ。
皮肉じゃないぞ、これは。
けれど。
「トータはまず自分の魔力量を上げないと難しい。見せる方法はいくらでもあるんだが、たいていはどこかしらに負担がかかったり、無理が生じる」
「そうなんですかー。いつか見ることができることを祈って」
トータは手を組み神に祈るポーズをする。
「神に祈ってもどうにもならないぞ。自分がどれだけ訓練するかですべてが決まる」
「おお、さすがは部屋長。現実主義ですね」
「トータだってせっかくの自分の努力を神の手柄にされたら嫌だろう」
「じゃあ、クロウはセリムと出会えたのは神が定めた運命だとか思わないのか?」
横からポシュが尋ねてきた。
その質問にはどういう意図があるんだ?
「セリムが俺を口説いてくれたのは、セリムの努力の賜物であって、神が決めた運命じゃない」
セリムを神の手柄にされてたまるか。
「リンク王国って無神教だったっけ?」
「正確には国王が亡くなったら神格化する。歴代国王を神として祀っていたがそこまでの信仰は集めていない。宗教国家の教会もあったが、たいていの者は無宗教と言った方が近いんじゃないか」
リンク王国で歴代国王が神となったところで、黒髪の平民が祈るわけもない。
その神は黒髪の平民に試練しか与えないのだから。
リンク王国の貴族であっても自国の神に形だけ祈っている。王族の目があるから。
「あー、そうなんだ。それなら仕方ないか」
「オルド帝国は今の皇帝が神みたいなものだろ。帝国民は歴代皇帝もまた崇め奉るが、現皇帝ほどではない」
「確かにそうだな。歴代皇帝の霊廟が消え去ったのは残念だが、皇帝が無事なら何の問題もない」
ポシュが言い切った。
帝城の敷地内にある歴代皇帝が眠る霊廟が綺麗になくなっても、その件についてはさしたる混乱はなかった。隕石という自然災害。他国からの侵攻でなければ帝国民は問題にすらしないらしい。
反対に、落下地点のすぐ近くにいた皇帝の行動の方が問題になっているくらいだ。
すぐ近くと言っても、霊廟自体が相当大きな建物なのだし、関係者以外立入禁止になっている区域も相当に広い。皇族が言うすぐ近くは信じない方が良いと思う。
怪我一つないとすぐさま無事である姿を見せて声明を出したが、戦争には勝てても自然災害にまで勝てるわけではないのが人間である。
超人的な皇帝ではあるが、帝国中から心配されたわけである。
上層部からはかなりの小言が本人に、帝国民からはかなりのお手紙が帝城に届けられたそうである。
まあ、国民に愛されている証拠でもある。
「俺も皇帝陛下は信じられるけど、神は祈ったところで何もしてくれないことは確かだ」
「試練だけを与える神なら、祈るだけ時間の無駄だろ」
「、、、クロウなら、ああ、うん、何でもない」
ポシュが言葉を濁した。
それもそうだろう。
彼は救われなかった側だ。
上流階級の学校に特別待遇で通って、軍では皇帝直属の精鋭部隊に配属されて、第三者から見たら何が救われなかったのかと批判する者もいるのかもしれない。
けれど、彼が幼い日に失ったものは計り知れない。
スラム街で、両親もおらず、貧しい生活を送っている上に、微かに手にしたものでさえ何もかも奪われる。
それが神の定めた運命だと言うのなら、神を恨まない方がおかしい。
恨むべきはスラム街を放置して孤児を保護しなかった失政のせいである。
彼の意志が正常なら、神を倒すために革命の狼煙をあげる動きにもなっていたはずだ。
残念ながら、帝国の呪いがあったためにここまで歪んで成長した。
恨むべき者を守るべき者として今まで生きてきてしまったのだから。
ポシュがそれを正確に自覚できるのは一体いつになるのだろうか。
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