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1章 敵国の牢獄
1-29 酒は飲んでも飲まれるな
「はっはっはーっ、ようやくリンク王国から問い合わせがやってきたぞ」
大きな口で笑いながら、サザさんがプッハーと大ジョッキを空ける。
不思議としか思わないが、なぜ俺は毎晩飲みに誘われることになるのだろう?
半目になったナナキさんから、『今夜も行くよね?行くと言ってよね??ぶっちゅううううっ(キスマーク)』という意味不明なメモを渡された。いや、言いたいことはわかるが、意味不明だよね?誰にでもこんなメモを渡しているんですか?ここの皇帝は。せめて封書にしてくれよ。
ナナキさんは俺が空間転移魔法陣を設置しているということを知っているのだろうか。
知っていると仮定して動いた方が良さそうだが、あえて俺からは言わないでおこう。
「王国から問い合わせ?」
「第四王子部隊隊員の生死の確認。個別で来たのもあってセイティ男爵家が独特だったが、今、牢獄で話題のコーダ・セイティの実家からだ。あの子を死なせるためにあの部隊に入れたわけじゃないっ、生きているなら返してくれーっ、って手紙で熱く語ってくれていたが、生きていることを望むなら捕虜になってから一週間以内には交渉を始めないと普通は生きてないだろ」
「捕虜が生きていることを調べられたということですか」
あのリンク王国が、もしくは誰かの実家か。
まだ生きているのなら交渉の余地があると実家が思ったのなら。
だが、生き残った者がリンク王国に戻って温かく迎え入れられると思ったら大間違い。
リンク王国は、捕虜となるくらいなら死ね、と貴族に教育する国である。もちろん男女問わず。
生きて戻ったら戻ったで針の筵。
ただし、高位貴族なら黙らせられるが、コーダの家は男爵位。
そもそも平民がそれに従う義務はない、キッパリ。
「ま、俺たちがそれに対して正直に返答する義務はないが」
「でしょうね」
だましだまされるのは敵対国家では当たり前。
国の諜報部隊の腕の見せどころである。
「それに、お前のいなくなったリンク王国に価値はない」
サザさんもキッパリ。
酔うと大きく出るタイプですかね。
動く魔力充填装置だと思っているんですかね、俺を。
そういう認識でも便利で役に立つと思ってくれていればいいんですが。
「王国の魔法障壁のことですか?というか、労役で魔石に魔力充填しましたが、数分で終わりましたよ。あんな量しか充填しなくていいんですか?」
労役の時間、ゴートナー文官が魔導士を連れて、魔力充填用の魔石を持ってきた。
あまりに少量なので様子見なのかと思った次第だ。
余った時間は自由時間に、もとい、薬作りの時間となった。厨房も作業場を快く貸してくれてありがとうっ。
「、、、ああ、これ以上お前に頼るとうちの魔導士が怠ける。お前には定期的にやってもらうことになるが」
ああ、そりゃすでに働いている方がいらっしゃいますよね。その人の仕事まで奪っちゃいけませんよね。
帝国はリスク分散しているんですね。リンク王国のように簡単に予測できることをしちゃいけませんよね。
思い出したついでに。
「あ、これ、腰痛の薬です。いつもの顔ぶれに、イッツニューの軟膏も持ってきました。軽い腰痛のときは軟膏の方をお使いください。薬液ビタビタの湿布薬よりも使いやすいです。肩こりにも効きますよ」
飲み薬、湿布薬がいつもの薬だ。
いろいろなブツを仕入れできたので、作れる薬の幅が広がる商品棚。
捕虜の皆さんは重度の腰痛持ちだからより効能がある湿布薬が必要だが、そこまでの痛みではないときは軟膏の方がいい。
使うのがクセになっても困るし。
どうせ皇帝陛下に会ったのだから、嫁に手渡してもらう方がナナキさんも楽だろう。
「おおっ、コレがあの薬かっ。よしっ、もう一セットないか?」
サザさんがニヤリと笑った。
うん?あー、うん。
「、、、どなたのためのもう一セットですか」
「うちの嫁のためっ」
「その手にしている薬が皇后殿下に渡す用じゃないのですか」
「コレは俺のっ」
俺はサザさんににっこり笑う。
「皇后殿下のお薬はナナキさんに渡しておきます」
皇帝陛下のクセに他人の物をガメようとするな。いや、帝国は武力で他国から何もかも奪ってきた当たり前の行為か。
「ええーーーーっ、ひっどーいっ、ここはおごってあげるからさーっ」
いつもおごってくれてるくせにー。
下町の居酒屋だから値段は知れている。俺は質屋で騎士からまきあげた物品を売却して帝国の通貨を得ているので支払えるのだが。
皇帝が言いたいのはそういう話じゃないだろうけど。
「サザさんが本当に必要になったときは直接俺に声をかけてくださいね」
「おおっ、有無を言わせない作り笑い。ここは引くのが戦略か。戦略的撤退かっ。決して敗退じゃないぞっ」
「帝国の皇帝を敗退させたー、ウレシー」
「感情まったいらなウレシーだな。嬉しさがにじみ出ている」
皇帝の感性は平民にはわからないもんだな。
わかりやすく表現してみたのだが、上から目線の人間にはそう見えるのかな。
「で、話を戻しますが、何でリンク王国は捕虜の生存を確認して来たんですか?こんな年月も経って」
「話をズラされたから、聞く気がないのかと思った」
あれ?俺がズラしたんだっけ?
もう年齢が年齢だし忘れちゃったなー。あ、お酒のせいかもしれない。ちびちび。
「それは死亡しているかどうかの確認ですか」
「お前、目が怖いわー。だから、アイツらが人質になるんじゃないかと勘繰られるんだぞ」
「、、、情が湧いたら、人質になるかもしれませんね。コレはリンク王国に対する怒りです」
せめて形ばかりであっても、本当に救うのは無理だとしても、交渉するフリだとしても、貴族ぐらいには助けの手を差し伸べてもいいじゃないか。
命をかけて戦う者に対する対価がこれでは。
「捕虜になっているとしたら確実に死んでいる時期だから、問い合わせてきたんですか」
なんて救われない。
彼らはリンク王国のために戦場に来たというのに。
リンク王国は全員が生き残って捕虜となっているとは露ほども考えていないのか。
第四王子部隊に数人の生き残りが存在していたとしても、この過ぎ去った月日で亡くなっていることを確実にしてから問い合わせてきたのか。
生き残っている方が面倒だと言わんばかりの対応だ。
「、、、で、それを俺に聞かせて、リンク王国への怒りを倍増させてやろうという魂胆だったり?」
サザさん策士だねー。
「あ、倍増なのね。あったのね、元々怒りが」
「そりゃあるでしょう。聖人君子でもない限り。同じ仕事をしていても、黒髪の平民というだけで王宮では大変な思いをしてきましたし」
「生まれるところを間違ったな。帝国なら大歓迎だったぞ」
手を大きく広げて器の大きなところを見せようとする。
帝国は帝国で厳しいのだが、リンク王国とは違った意味で。
どちらがいいのかは人によるだろう。だが、産まれる場所を選べないし、他国に移り住める人間は数少ない。
「帝国に生まれていたら、魔導士になってない可能性も大きいですよ」
「うちは徴兵制だから、剣や体術が嫌いならー、魔導士になってないと訓練がとてつもなくキツイよー」
ふふふ、さすがクソ皇帝。痛いところをついてくるぜ。
「たらればの仮定の話はまた今度に。今のリンク王国の話をツマミに飲みましょう」
ちびちび。
サザさんはグイッと一杯。この人も一口一杯なのかな。
店員がすぐに気づいて、次を持ってきている。商売上手な可愛い店員さんだ。
「よしっ、飲むぜっ。あ、そうそう、リンク王国と言えば、王宮の使用人から非難ゴウゴウなんだそうな」
「平民の使用人は内心、非難しかありませんでしたが」
「怖いことに、魔道具の魔力充填を王族エリアだけに絞ってやってるらしい」
王族エリアというのは、王宮の王族居住区域のことである。
そこが一番豪華絢爛にしているとはいえ、王宮は支える使用人の数が半端ない。
そう、支える者たちがいるのは王族エリア以外なのだが、そこにも便利な魔道具はこれでもかと取り入れられているはずである。魔道具が魔力切れになると料理ができなかったり水道が使えなかったりと日常生活にかなりの悪影響が出る。
王族エリアの魔道具のほとんどはただの趣味だから後回しで良さげなのだが、平民にはわからない高尚な考えでも国王は持っているのだろうか。
「、、、確か王族エリア以外にも、厨房施設とか浴場とかトイレとか冷暖房とか生活を支えるための数えれば数えるほど恐ろしい数の魔道具がありませんでしたかね?俺の記憶違いでしたかね?」
それをすべて放置しているとはどういうことなのか?
宮廷魔導士団への非難だけで済めば、まだいい話じゃないか?
「使えない上司を持つと、部下は非常に苦労するっていう話だ」
「、、、ソウデスネ」
そうだけど、結論がそれでいい話でしたっけ?
大きな口で笑いながら、サザさんがプッハーと大ジョッキを空ける。
不思議としか思わないが、なぜ俺は毎晩飲みに誘われることになるのだろう?
半目になったナナキさんから、『今夜も行くよね?行くと言ってよね??ぶっちゅううううっ(キスマーク)』という意味不明なメモを渡された。いや、言いたいことはわかるが、意味不明だよね?誰にでもこんなメモを渡しているんですか?ここの皇帝は。せめて封書にしてくれよ。
ナナキさんは俺が空間転移魔法陣を設置しているということを知っているのだろうか。
知っていると仮定して動いた方が良さそうだが、あえて俺からは言わないでおこう。
「王国から問い合わせ?」
「第四王子部隊隊員の生死の確認。個別で来たのもあってセイティ男爵家が独特だったが、今、牢獄で話題のコーダ・セイティの実家からだ。あの子を死なせるためにあの部隊に入れたわけじゃないっ、生きているなら返してくれーっ、って手紙で熱く語ってくれていたが、生きていることを望むなら捕虜になってから一週間以内には交渉を始めないと普通は生きてないだろ」
「捕虜が生きていることを調べられたということですか」
あのリンク王国が、もしくは誰かの実家か。
まだ生きているのなら交渉の余地があると実家が思ったのなら。
だが、生き残った者がリンク王国に戻って温かく迎え入れられると思ったら大間違い。
リンク王国は、捕虜となるくらいなら死ね、と貴族に教育する国である。もちろん男女問わず。
生きて戻ったら戻ったで針の筵。
ただし、高位貴族なら黙らせられるが、コーダの家は男爵位。
そもそも平民がそれに従う義務はない、キッパリ。
「ま、俺たちがそれに対して正直に返答する義務はないが」
「でしょうね」
だましだまされるのは敵対国家では当たり前。
国の諜報部隊の腕の見せどころである。
「それに、お前のいなくなったリンク王国に価値はない」
サザさんもキッパリ。
酔うと大きく出るタイプですかね。
動く魔力充填装置だと思っているんですかね、俺を。
そういう認識でも便利で役に立つと思ってくれていればいいんですが。
「王国の魔法障壁のことですか?というか、労役で魔石に魔力充填しましたが、数分で終わりましたよ。あんな量しか充填しなくていいんですか?」
労役の時間、ゴートナー文官が魔導士を連れて、魔力充填用の魔石を持ってきた。
あまりに少量なので様子見なのかと思った次第だ。
余った時間は自由時間に、もとい、薬作りの時間となった。厨房も作業場を快く貸してくれてありがとうっ。
「、、、ああ、これ以上お前に頼るとうちの魔導士が怠ける。お前には定期的にやってもらうことになるが」
ああ、そりゃすでに働いている方がいらっしゃいますよね。その人の仕事まで奪っちゃいけませんよね。
帝国はリスク分散しているんですね。リンク王国のように簡単に予測できることをしちゃいけませんよね。
思い出したついでに。
「あ、これ、腰痛の薬です。いつもの顔ぶれに、イッツニューの軟膏も持ってきました。軽い腰痛のときは軟膏の方をお使いください。薬液ビタビタの湿布薬よりも使いやすいです。肩こりにも効きますよ」
飲み薬、湿布薬がいつもの薬だ。
いろいろなブツを仕入れできたので、作れる薬の幅が広がる商品棚。
捕虜の皆さんは重度の腰痛持ちだからより効能がある湿布薬が必要だが、そこまでの痛みではないときは軟膏の方がいい。
使うのがクセになっても困るし。
どうせ皇帝陛下に会ったのだから、嫁に手渡してもらう方がナナキさんも楽だろう。
「おおっ、コレがあの薬かっ。よしっ、もう一セットないか?」
サザさんがニヤリと笑った。
うん?あー、うん。
「、、、どなたのためのもう一セットですか」
「うちの嫁のためっ」
「その手にしている薬が皇后殿下に渡す用じゃないのですか」
「コレは俺のっ」
俺はサザさんににっこり笑う。
「皇后殿下のお薬はナナキさんに渡しておきます」
皇帝陛下のクセに他人の物をガメようとするな。いや、帝国は武力で他国から何もかも奪ってきた当たり前の行為か。
「ええーーーーっ、ひっどーいっ、ここはおごってあげるからさーっ」
いつもおごってくれてるくせにー。
下町の居酒屋だから値段は知れている。俺は質屋で騎士からまきあげた物品を売却して帝国の通貨を得ているので支払えるのだが。
皇帝が言いたいのはそういう話じゃないだろうけど。
「サザさんが本当に必要になったときは直接俺に声をかけてくださいね」
「おおっ、有無を言わせない作り笑い。ここは引くのが戦略か。戦略的撤退かっ。決して敗退じゃないぞっ」
「帝国の皇帝を敗退させたー、ウレシー」
「感情まったいらなウレシーだな。嬉しさがにじみ出ている」
皇帝の感性は平民にはわからないもんだな。
わかりやすく表現してみたのだが、上から目線の人間にはそう見えるのかな。
「で、話を戻しますが、何でリンク王国は捕虜の生存を確認して来たんですか?こんな年月も経って」
「話をズラされたから、聞く気がないのかと思った」
あれ?俺がズラしたんだっけ?
もう年齢が年齢だし忘れちゃったなー。あ、お酒のせいかもしれない。ちびちび。
「それは死亡しているかどうかの確認ですか」
「お前、目が怖いわー。だから、アイツらが人質になるんじゃないかと勘繰られるんだぞ」
「、、、情が湧いたら、人質になるかもしれませんね。コレはリンク王国に対する怒りです」
せめて形ばかりであっても、本当に救うのは無理だとしても、交渉するフリだとしても、貴族ぐらいには助けの手を差し伸べてもいいじゃないか。
命をかけて戦う者に対する対価がこれでは。
「捕虜になっているとしたら確実に死んでいる時期だから、問い合わせてきたんですか」
なんて救われない。
彼らはリンク王国のために戦場に来たというのに。
リンク王国は全員が生き残って捕虜となっているとは露ほども考えていないのか。
第四王子部隊に数人の生き残りが存在していたとしても、この過ぎ去った月日で亡くなっていることを確実にしてから問い合わせてきたのか。
生き残っている方が面倒だと言わんばかりの対応だ。
「、、、で、それを俺に聞かせて、リンク王国への怒りを倍増させてやろうという魂胆だったり?」
サザさん策士だねー。
「あ、倍増なのね。あったのね、元々怒りが」
「そりゃあるでしょう。聖人君子でもない限り。同じ仕事をしていても、黒髪の平民というだけで王宮では大変な思いをしてきましたし」
「生まれるところを間違ったな。帝国なら大歓迎だったぞ」
手を大きく広げて器の大きなところを見せようとする。
帝国は帝国で厳しいのだが、リンク王国とは違った意味で。
どちらがいいのかは人によるだろう。だが、産まれる場所を選べないし、他国に移り住める人間は数少ない。
「帝国に生まれていたら、魔導士になってない可能性も大きいですよ」
「うちは徴兵制だから、剣や体術が嫌いならー、魔導士になってないと訓練がとてつもなくキツイよー」
ふふふ、さすがクソ皇帝。痛いところをついてくるぜ。
「たらればの仮定の話はまた今度に。今のリンク王国の話をツマミに飲みましょう」
ちびちび。
サザさんはグイッと一杯。この人も一口一杯なのかな。
店員がすぐに気づいて、次を持ってきている。商売上手な可愛い店員さんだ。
「よしっ、飲むぜっ。あ、そうそう、リンク王国と言えば、王宮の使用人から非難ゴウゴウなんだそうな」
「平民の使用人は内心、非難しかありませんでしたが」
「怖いことに、魔道具の魔力充填を王族エリアだけに絞ってやってるらしい」
王族エリアというのは、王宮の王族居住区域のことである。
そこが一番豪華絢爛にしているとはいえ、王宮は支える使用人の数が半端ない。
そう、支える者たちがいるのは王族エリア以外なのだが、そこにも便利な魔道具はこれでもかと取り入れられているはずである。魔道具が魔力切れになると料理ができなかったり水道が使えなかったりと日常生活にかなりの悪影響が出る。
王族エリアの魔道具のほとんどはただの趣味だから後回しで良さげなのだが、平民にはわからない高尚な考えでも国王は持っているのだろうか。
「、、、確か王族エリア以外にも、厨房施設とか浴場とかトイレとか冷暖房とか生活を支えるための数えれば数えるほど恐ろしい数の魔道具がありませんでしたかね?俺の記憶違いでしたかね?」
それをすべて放置しているとはどういうことなのか?
宮廷魔導士団への非難だけで済めば、まだいい話じゃないか?
「使えない上司を持つと、部下は非常に苦労するっていう話だ」
「、、、ソウデスネ」
そうだけど、結論がそれでいい話でしたっけ?
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