『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁

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入院9日目

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 ちゃんとしていない私にシャント手術。ダジャレかよ。
 新春、シャンソン、新春、ショー。
 関係ないか?

 シャント手術とは腕の動脈と静脈を繋ぐ手術である。
 それにより五寸釘みたいな針を二本刺して透析を行うのである。
 私はその針を見ただけでオシッコをちびり気を失いかけた。
 採血のあんな針でも痛いのに、こんな針を刺されたらまるで昔の特高警察が行っていたと言われる爪の先から針を入れる拷問と同じである。
 しかも一日置きに週三回、同じところに刺して3時間、それが最終的には4時間になるらしい。
 私は「透析をするくらいなら死んだ方がマシだ!」と駄々を捏ねた。
 すると木村多江さんに似たやさしい看護師さんがそっと私の手を握り、「大丈夫よ狸小路さん、針を刺す1時間半前に麻酔のテープを貼るから痛くないわよ」と言ってくれた。私はちょっと安心した。

 「だったら野島さんが針を刺してよ」
 「それは出来ないの、担当じゃないから」
 「だったら野島さんのパンツちょうだい、それをハンカチ代わりに握りしめて頑張るから」
 「アハハ 考えておくわね」

 野島さんはナースの鑑だと思った。



 シャント手術は凄い国立医大の凄いイケメンの凄い心臓外科医が執刀してくれることになった。
 両腕を剃毛し、手術の2時間前から抗生剤の点滴をするのだが、最終的にどっちの腕にするかは造影検査をして決定するので腕には点滴針を刺せないから足の内側くる節の静脈に刺すのだがこれはかなり痛そうである。
 私はその痛みに耐えるため、他の看護師さんにも「お守り」にパンツをもらおうとしたがダメだった。


 最初、男性の看護師さんが挑戦してくれたがまるで江戸時代の火付検めの拷問のような激痛でギブアップ。 注射が一番上手だというベテランナースさんと選手交代して、「痛い!」の呟きだけで済んでホッとした。
 そして手術の時間となり、いよいよ手術室へと車椅子で運ばれた。


 いくつもの分厚いステンレス製の扉のオペ室があり、私のオペ室は2番だった。
 ドラマで見たような雰囲気。
 6人ほどのスタッフさんが私を温泉旅館の人のように温かく出迎えてくれた。
 物凄く頭が良さそうで品があり、やさしくて私が子供の頃に住んでいた、歯のないオッチャンが自転車を盗んでいるようなスラム街には絶対にいない人たちだった。

 (同じ地球人?)

 と思ったほどである。


 私は手術台に横になり、固定され、左腕を別の台に乗せた。
 もうまな板の鯉状態である。覚悟を決めて十字を切って祈りを捧げた。ラーメン。

 そして全員で声を出してJRの職員さんのように最終確認が行われた。

 シャント手術は局所麻酔で行われる。でも痛そう。

 「先生、少しまだ痛みが」
 「わかりました、麻酔を追加しますね?」
 「お手数をおかけします、では始めて下さい」
 「もう切開していますよ」
 「えっ!」

 ホッとした。いつの間にかBGMがゆずの『栄光への架け橋』からカフェ音楽に変わっていた。
 私の隣りでは美人ナースが退屈しないように私の話し相手になってくれていた。 
 まるでカフェで中森明菜ちゃんとデートしているみたい。
 もしこのナースさんがいなければ、許されるなら北島三郎の『祭』にして欲しかった。


    あ~,祭だ祭だ
    シャント祭~♪

 
 もちろんこのイケメン先生には合わない。不謹慎である。かといって氣志團でもない。やはり消去法でやってもカフェ音楽だろう。 

 オペが終盤に近づいた時、イケメンドクターが言った。

 「狸小路さん、これから痛いことしますね?」
 「先生、痛い事って何ですかあ!」

 まさに晴天の霹靂である。
 私は身構えた。
 すると先生は強く私の腕をしごき出した。
 激痛が走ったがなんとか我慢した。

 「はあはあ」
 「これをやると術後がラクなんですよ」
 「はあ~、ありがとうございました」
 「ではあと2回、頑張りましょう」
 「えー、あと2回もすんの!」

 私は右手で看護師さんのオッパイに触りたいほどの苦痛に耐え、無事手術は成功した。
 先生はじめスタッフのみなさん、本当にお世話になりました。ペコリ。
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