1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

文字の大きさ
26 / 61

二度目のお出かけ 1

しおりを挟む
 あの後、手の空いていた聖騎士1人が警備隊の詰所に行って、警備兵を連れて来て場を納めたらしい。
 私は泣いてたからね。

 事情聴取をして、聖騎士だから疑われはしなかったけど、母親の出血量で生きているのが奇跡だと言われて、ラズが神聖魔法を使って母子を治したことにしたらしい。
 嘘つかせて、ごめんね、ラズ。

 警備隊に感謝されて教会に帰ったものの、ラズの足元と男を取り押さえた聖騎士の鎧と服に血痕がついていたらしく、すわ何事かと騒ぎになりかけた。
 主に大司教様が。

 私はすっかりと泣き疲れて寝ていたのだけど、起きたら凄い大司教様に心配された。
 「もう、出掛けてはいけません」と言われたが「わたちはじゆうでしゅ」と言ったら引き下がってくれた。
 過保護な父親みたいだよ。
 でも、心配してくれて、ありがとう。

 ラズも「泣かせてしまい申し訳ありませんでした」と跪いて、なかなか顔を上げてくれなかった。
 私が勝手に泣いたんだよと言っても、真面目なラズは自分の中で納得できなかったみたいだ。
 なんだか、初めの頃のラズに戻ってしまったみたい。
 責任なんて感じなくていいんだよ。



 そんな晩から一夜明けて次の日。

 私は1の鐘で目を覚ました。
 起き上がると部屋に控えていたラズが挨拶してくれた。

「おはようございます。サチ様」

「おはようごじゃいましゅ。りゃず」

 昨日の場面がよぎって、健やかな目覚めとはいかなかった。
 ラズが目が私を探るように見てくる。

 水が置いてある机まで飛んで行って、口をすすいで顔を洗う。
 うん、私は元気だ! 大丈夫! 昨日の母子も助けられた! うん! いい事をしたんだ。

 横にいたラズに抱きつく。
 ラズが身体を固くした。

「りゃず、きにょうはありがとう、ごじゃいましゅた。みんにゃげんきでいきてましゅ。わたちたちは、いいことをちたんでしゅ。わりゅいことじゃありましぇん。だからわりゃってくだしゃい。しぜんにゃりゃずがしゅきでしゅよ」
 (ラズ、昨日はありがとうございました。みんな元気で生きてます。私達は、良いことをしたんです。悪い事じゃありません。だから笑ってください。自然なラズが好きですよ)

 私の言葉を聞いて、ラズは顔をくしゃっと歪ませた。

「いいえ、私は、私は、サチ様のお心を守れませんでした。貴女に消えない傷を残してしまった。許されないことです。あの家に行かなければよかった。お止めするべきだったのです。私は自分が許せません」

「ちがいましゅよ、りゃず。わたちはあにょおやこをたすけりぇて、うりぇちかったのでしゅ。みごりょちにしてたりゃこうかいしましゅた。きにょうはありぇで、しぇいかいだったのでしゅ。だりぇもわりゅくありまちぇん。わりゅいのは、あにょ、おとこだけでしゅ。あとはみんにゃじぇんにん(善人)でしゅ。いいことをしましゅた。わたちもすこしおとにゃににゃりましゅた。りゃずもしぇいちょうしたにょでしゅ。みんにゃおとにゃになりました。こりぇでよかったのでしゅ。りゃずはわりゅくありまちぇんよ。いいこでしゅ。わたちはしっていましゅ。いいこ、いいこ、いいこでしゅ。きにょうはありがとうごじゃいました」
 (違いますよ、ラズ。私はあの親子を助けれて、嬉しかったのです。見殺しにしていたら後悔してました。昨日はあれで、正解だったのです。誰も悪くありません。悪いのは、あの、男だけです。あとはみんな善人です。良いことをしました。私も少し大人になりました。ラズも成長したのです。みんな大人になりました。これで良かったのです。ラズは悪く有りませんよ。いい子です。私は知っています。いい子、いい子、いい子です。昨日はありがとうございました)

 抱きしめているラズから水が落ちて来た。
 見上げると、ラズがボロリと泣いていた。
 私が大泣きしたから、自分が悪いと責めていたんだ。
 また雫が落ちてきた。
 ラズの頭を抱きしめる。

「いいこ、いいこでしゅ。りゃずはいいこでしゅ。いいこはほめりゃれましゅ。りゃずはりっぱでしゅた。いいこ、いいこでしゅ」

 ラズの喉からぐうっと音が聞こえた。

「いいこ、いいこでしゅ。りゃずはいいこでしゅ。いいこ」

 ラズが泣き止むまで頭を抱きしめていた。

 ◇◇◇

「申し訳ありませんでした。胸をお借りしてしまって」

 私は真っ平で無い胸を見る。
 仕方がない幼児だから。

「わたちのむにぇにゃりゃ、いつでもかちましゅ。えんりょにゃくいってくだしゃい」

「いえ、そうそう高貴なお胸をお借り出来ません。気持ちだけいただきます」

 私は、また自分の平らな胸を見る。

 高貴?

 ラズは遠慮しいだな。私の胸なんて安い安い。
 ぼいんになるまで18年はあるんだぞ。
 自慢のぼいんは今は無いけど。

「りゃず、しょくじにいきましゅ」

「はい、行きましょう」

 ラズが抱っこしてくれた。
 いつもは飛んでいくけど、今日はこれでいいや。

 ラズの体温が温かい。
 生きている証拠だ。
 私も反省しなきゃな。
 聖騎士に危ない場面を全部任せてしまった。
 刃物を持った男に突っ込ませてしまった。
 自分の行動の結果の責任をとれていない。
 聖騎士にも結界が必要だった。
 次からは聖騎士にも結界のネックレスをつけてもらおう。


 食堂のお誕生日席に座らせてもらうとラズが食事を取りに離れていく。
 温かな体温が離れて寂しいと思っちゃう。
 幼児の身体はままならないものだな。
 心をしっかりと持たないと。

 ラズが帰って来て、朝食を食べさせてもらう。
 いつもの朝だ。
 幸せってこんな時。
 平和が1番だ。

 大司教様がやって来て私の斜め右の椅子に座ってきた。
 ちょっとの間、無言で見つめられる。
 視線が痛いくらいだ。

「おはようございます、サチ様」

「ごくん。おはようごじゃいましゅ。だいしきょしゃま」

「サチ様は、つ、つ、つ、次は、いつ、出かけ、られるのですか、な?」

 大司教様の顔が引き攣っていて、無理矢理、大丈夫そうな顔を貼り付けているが失敗している。

 昨日の事件を引きずっている人が、ここにもいた。

「きょうのおひりゅかりゃ、でかけましゅ」

「きょう!? んんっ! 失礼しました。ご、ご無事の、お帰りをお待ち、しております! 失礼します!」

 大司教様はこらえきれない! というふうに去って行った。
 大司教様は昨日の事がトラウマになってそうだ。
 心配症の父ちゃんだなぁ。
 あ、お土産渡し忘れた。
 芋だけど。
 買った時はいいかなぁと思ったけど、大司教様に芋はないかなぁ。
 あげるのやーめた。

「サチ様は、今日も、出かけられるのですか?」

 あー。
 こっちも拗らせてるようだな。
 新しい記憶で上書きするのが一番だ!

「でかけましゅ。てはいをよりょしく、おにぇがいしましゅ」

「かしこまりました。サチ様、あーんです」

「あーん」



 朝食を食べ終わったらお風呂に入ることにした。今日は男湯だ。
 脱衣所に入るとアメニティグッズが1つも無い。
 補充だ! 補充! タオルも無いとはどういう事だ!?

 もう、いらん! と言われるぐらいアメニティグッズを詰め込んだ。
 これで安心だ。
 あ、ラズが裸だ。
 私も服を脱がしてもらおう。

 シャワーで、まるっと綺麗に洗われたら、昨日の血臭が落ちた気がした。
 浴槽に浸かる。
 と言うか、翼で浮かぶ。
 ふぃー。
 ごくらく、ごくらく。

 ラズが入ってきたので、隣に並ぶ。
 カポーンと音がしたら完璧だったな。

 〈ラズを癒せ。ラズを癒せ。〉

「サチ様、何かしましたか?」

「んーん、にゃにもしてにゃいよ」

 とぼけてみる。
 さて、露天風呂に行くかな。
 飛ぼうとしたら、ラズに抱っこされて露天風呂に行く。
 は、裸の付き合いじゃー! きゃー!

 露天風呂に着いたらお湯に浮かされた。
 何がしたかったんだ? ラズは。

 バタ足をしてみる。
 短い足じゃ溺れているようにしか見えないな。
 やめよ。
 朝風呂、良い。

 ふよふよしてると、また抱っこされた。
 もう上がるのかな?

 身体を拭かれる。
 いつもより丁寧な感じがする。
 いつも丁寧だけど。
 服を着せてもらったら、鏡の前に行きドライヤーを両手で構える。
 いつでもいらっしゃーい、ラズ。

 素直に椅子に座っていい子よのう。
 温風じゃ!
 ラズも慣れてきたのか自分で髪をとかしている。
 余裕だな。
 髪が乾いたら交代。
 あー、頭皮を触られるのって何で気持ちいいんだろ。

 あー。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~

こじまき
ファンタジー
【読んでいただいて♡いただいて、ありがとうございます。王城編準備中のため、12月12日からしばらく更新お休みします。考えてた構成が「やっぱなんか違う」ってなり、慌てております…汗】 「こんな転生先だなんて聞いてないっ!」六年間付き合った彼氏に婚約を解消され、傷心のまま交通事故で亡くなった保育士・サチ。異世界転生するにあたり創造神に「能力はチートで、広い家で優しい旦那様と子だくさんの家庭を築きたい」とリクエストする。「任せといて!」と言われたから安心して異世界で目を覚ましたものの、そこはド田舎の山小屋。周囲は過疎高齢化していて結婚適齢期の男性なんていもしないし、チートな魔法も使えそうにない。創造神を恨みつつマニュアル通り街に出ると、そこで「魔力持ち」として忌み嫌われる子どもたちとの出会いが。「子どもには安心して楽しく過ごせる場所が必要」が信条のサチは、彼らを小屋に連れ帰ることを決め、異世界で保育士兼りんご農家生活を始める。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...