1歳児天使の異世界生活!

春爛漫

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 もう、深い夜だ。

 サチは身綺麗にしてから、ラズ達の元へ転移する。
 見た事の無い何処かの宿だ。

 皆がいきなり現れたサチに注目した。

「サチ様!」

「サチ様、どうしたんだよ。こんな時間まで?」

「サチ様、心配したんだから!」

 三者三様にサチを心配してくれる。

「みんにゃ、ごめんにゃしゃい。でも、しにゃきゃ、いけにゃいことがあったにょ」

 ラズが次は消えないかと恐る恐るサチを抱きしめてくる。
 そんなラズを抱きしめ返すサチ。
 ラズは体をビクッとさせたが、涙がぽろぽろとサチの上に、床にと溢れていく。

 さすがのサチもラズを見上げて罪悪感を覚える。

「りゃず、ごめんにゃしゃい。ごめんにゃしゃい」

「サチ様、サチ様はラズが要らないのですか?」

 今だに恐れるようにサチを壊れもののように抱きしめるラズは、サチに本心を吐露した。

 それを聞いたサチは、いつもあまり変わらないラズの表情の変化と声音に気がつき、胸がきゅっと痛くなる気持ちになった。

「いりましゅ。りゃずが、たいしぇつだかりゃ、ちゅりぇていかにゃかったんでしゅ」

 サチとしてはココは、この3人との旅の関係を崩したくはなく、残酷な場面を見せないように報復を終わらせてきたつもりだった。

 そんなサチの思いはラズには関係なかったようである。

「それでも、ぐずっ、ラズは、ぐずっ、一緒に行きたかったのです。ずずーっ」

 感情が昂って鼻水が垂れてきてしまったラズだ。
 もう、ボロ泣きだ。

「りゃず、りゃず、にゃきやんでくだしゃい。りゃず、おうちにいきましゅよ」

 とりあえずサチは落ち着けるおうちを出すして、ラズがサチを離さないと抱っこして扉を潜る。
 礼拝堂をぬけて、お風呂場も通り過ぎてラズの部屋に行く。

 ベッドの上でサチはラズに思いっきり抱きしめられる。

「サチ様が、ぐず、行く場所には、ずずっ、ラズもついて、ぐず、行きます!」

「りゃず、りゃず」

 心配しすぎて疲れていたのだろう、ラズは同じことを言っていたが、涙と鼻水を垂らしたまま、サチを抱きしめて寝てしまった。

 サチはラズの顔と体を綺麗にしてから一緒に眠った。

 ◇◇◇

 サチは夢を見た。
 とても、久しぶりの夫と赤子の娘だ。
 幸せだった。
 家族が増えて、夫が笑って、抱きしめ合って。

 だけど、次に帰って来た姿は変わり果てた夫の姿。
 魂の無い夫に泣いても、自分には幼い娘がいる。
 幸子は気がおかしくなりそうだった。

 夫の実家には娘をよこせと言われ、それを断ったら新築の家を追い出された。
 実家を頼り娘を育てて、なんとか自分の心の中で折り合いをつけた。
 ーーつけるしか、なかった。

 夫はもういない。
 私の為に建ててくれた家も車も無い。

 娘が小学校に入る頃だったか、幸子の父親が心筋梗塞で倒れて、そのまま亡くなった。
 母親と悲しみに暮れた。

 娘が「じーじは?」と言うと涙が溢れた。
 私は悲しみから逃げるように働いた。
 娘が中学生の頃に母親が癌検診に引っかかった。
 調べたら、ステージ4だった。
 実質の死の宣告だった。

 母親は最期を家にいたがった。
 幸子は仕事を辞めて母親の側にいた。
 延命治療は母親の希望でしなかった。

 母親が亡くなって、仕事もしなくなって、初めて娘に母親らしいことをしてあげれるようになった。
 遅い親子2人きりの生活だ。

 娘が大学を卒業して就職して余裕が出来て、仕事を辞めてから初めて健康診断に行ったら、即入院だと言われた。
 私も癌だった。
 娘と2人で呆然とした。
 癌になって分かった母親の気持ち。

 『日常に帰りたい』

 幸子も延命はしなかった。

 最期は娘に看取られて幸せだった。

 幸せだったと知るのは、いつも亡くなる前か、無くなってからだ。

 ◇◇◇


 男達の悲痛な悲鳴が聞こえる。

 あの親子の為に必要だった。
 いや、私が許せなかった。
 未来がある者の命をもて遊ぶだなんて!

 後悔なんてしていないっ!
 するべき事をしたまでだ!

 ーーそれなのに、なぜ、心が、軋むのか?

 ◇◇◇

 ーーさま、さちさま

 サチは、ぼんやりと、目を、開けた。

 必死そうなラズの顔が見える。

「サチ様! 起きられましたか? 大丈夫ですか? うなされてましたよ」

「……りゃず?」

「そうですよ、ラズです。お水を飲んでください。もう少し眠れる時間はありますからね」

「うん、りゃず、ありがとう」

 サチはぼんやりとした頭でラズから少しずつ水を飲ませてもらい、ベッドに横になった。
 サチは汗はかかないが、寝ていてうなされていたのは本当らしかった。
 嫌な気分が心に残っている。

「サチ様のラズですから。どうぞ、おやすみください」

 サチはラズの声に誘われるように、逃避するかのように、意識を失った。

 ラズは静かに部屋を出て、お風呂の前のソファに座った。
 ソファには少し寝てから起きたカイザーとエレナもいた。

 護衛は睡眠管理も出来ての護衛だ。

 そう『おうちの中は安全』。

「で、サチ様の様子はどうなんだよ」

 口火を切ったのはカイザーだった。

「夢でうなされたようです。やっぱり心身に負担があるような事をしてきたんじゃ……」

 ラズがうなされて寝ていた、苦しそうなサチを思い出して言った。
 昨日までは、サチは普通に寝て起きていた。

「明日、今日ね私が警備隊の所で聞いてくるわ。何があったか」

「よろしくお願いします」

 調査はエレナがすることになった。
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