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一章
21話
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自室に戻った後、ウェンディは急激な体調の変化に、倒れてしまった。
突然体を襲う高熱に、体中の痛み。頭の痛みに、ウェンディが呻いていると、異変を察したメイドのナミアが、侯爵に知らせた。
一応、医者を呼んでくれたのだろう。
呼ばれた医者も首を捻るほど、ウェンディの体調不良の原因は不明で。
「──うぅ、……っ」
「お嬢様、お嬢様……」
呻くウェンディの手を、心配そうにナミアが握る。
ぽかぽかとしたナミアの手の温かさが、今のウェンディには涙が出そうなほど嬉しかった。
高熱のせいで朦朧とする意識の中、ナミアの他に見知った顔があるように思えたが、ぼんやりとした視界ではそれが誰だか分からず、ウェンディは再び意識を手放した。
それを、何度繰り返しただろうか。
目が覚める度、メイドのナミアは常に傍に居てくれたように思える。
ウェンディがぱちり、と目を開くと、視界は未だぼんやりとしているが、高熱も引き、体の辛さも良くなっていた。
「──お嬢様!? 良かった、お目覚めですか!?」
「ナミ、ア……?」
ナミアの声が聞こえ、ウェンディは彼女の名前を呼ぼうとしたのだが、喉がカラカラに乾いてしまっていたらしい。
激しく咳き込むウェンディの耳に、見知った声が飛び込む。
「──ウェンディ! 大丈夫か!?」
「え……、ヴァン……?」
ヴァンの声が聞こえるなんて、幻聴だろうか──。
そう考えたウェンディが、声の聞こえた方へ顔を向ける。
すると、そこには祭典の間中、ずっと探していたヴァンの姿があった。
ヴァンの姿にウェンディはほっとしたのだが、彼の姿を見た瞬間、ウェンディの安堵はどこかに行ってしまった。
喉が枯れているというのに、ヴァンの悲惨な姿に、ついつい叫んでしまった。
「ヴ、ヴァン……っ! あなた、その姿一体どうしたの!?」
ウェンディがぎょっとするのも無理は無い。
ヴァンの顔には幾つもの擦り傷や打撲の痕が痛々しく残っており、腕や足などは包帯でガチガチに固められている。
手や足は、間違いなく骨折しているのだろう。
歩く事すら辛いだろう、そんな状況で、なんとヴァンはウェンディが倒れた、と聞き及ぶなり痛む体を何とか動かし、見舞いに訪れてくれていたのだ。
ヴァンは苦笑い混じりに「何でもないよ」とウェンディに向かって答える。
だが、傍にいるナミアが悔しそうに唇を噛んでいるのを見たウェンディは、ナミアに問いただした。
「ナミア、あなたヴァンの怪我の事を知ってるの? 何があったのか、教えてちょうだい?」
「──お嬢様」
ウェンディの言葉に、ナミアが答えようとした。
だがその動きを察知したヴァンがナミアを止めようとする。
「……ナミア、ウェンディには言わないでくれと……」
「ですが、ハーツラビュル卿……! 私はとても黙っている事など……っ! お嬢様の身を案じてくださったハーツラビュル卿に対して、フォスター様の行いは目に余ります……っ!」
悔しそうに泣くナミアに、ウェンディは眉を顰める。
「……フォスター? どうして、フォスターが?」
そう言えば、ヴァンが姿を見せなくなったのはいつ頃からだろうか。
確か、とウェンディは考える。
祭典の魔法演術。そのために鍛錬場で鍛錬をしたあの日。
ウェンディは魔力が尽きそうになるまで、鍛錬をしていた。その日、確か意識を失ってしまったのだ。
目が覚めた時、ナミアがいたのでてっきりナミアが部屋まで運んでくれたのだ、とウェンディは今日までそう思っていた。
だけど、あの日。意識を失う前。ウェンディは確かに聞いた気がするのだ。ウェンディの名前を叫ぶヴァンの声を。
(もしかして……やっぱりあの日、ヴァンが助けてくれたの……? フォスターに用があって、ヴァンはうちに来たのかも……。それで、私の様子を見に来て……?)
だが、どうしてそれでヴァンがこんな酷い怪我をするに至ったのか。
それがウェンディには分からなくて。
その答えをくれるように、ナミアが悔し気に言葉を発した。
「フォスター様は、お仕事よりもお嬢様を優先されたハーツラビュル卿に大層お怒りになり……っ! 鍛錬場でっ!」
「──っ、まさかフォスターはヴァンに鍛錬と称して酷い指導をしたの!?」
まさか。
そんな、私情を持ち込むなんて。
ウェンディはそう思ったが、どうやらウェンディの考えは当たっていたようで。
ナミアがこくり、と頷いた姿を見て、ウェンディは言葉を失ってしまった──。
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