28 / 86
一章
28話
しおりを挟む「ウェンディ!!」
「お嬢様!」
ヴァンとナミアが叫ぶ。
ヴァンに抱き留められたウェンディの顔は、まるで高熱を出したかのように真っ赤に染まっており、ウェンディの体を支えていたヴァンにまで、ウェンディの体が発熱しているかのような熱を放っているのが分かった。
「ハ、ハーツラビュル卿! お嬢様を急いでお部屋まで……!」
「ああ、分かった! すぐにウェンディを休ませよう!」
ナミアの先導のもと、ヴァンはウェンディを抱えたまま廊下を駆ける。
ウェンディの部屋に無事戻って来たヴァンとナミア。
ヴァンは、優しく丁寧にウェンディをベッドに寝かせると、すぐに伯爵家に連絡を入れ、医者を手配してもらう。
侯爵家専属の医者は、当主である侯爵の許可が必要になってくる。
今、フォスターとエルローディアの契約パーティーに参加して上機嫌な侯爵に、ウェンディの事を伝えてもきっとすぐには手配してもらえない。
それどころか、無視をされる恐れだってあった。
それならば、とヴァンは自分の家の専属医を呼んだ方が早いと即座に判断し、魔法で自分の父親に知らせた。
すると、すぐに伯爵家の専属医をウェンディの下に遣わせると返事があり、ヴァンとナミアはそこでようやくほっと安堵の息をついた。
熱で苦しそうに呻くウェンディの汗を拭ってやりながら、ヴァンはウェンディとの絆を確かに感じた。
今までとは確実に違う、確かなウェンディとの繋がり。
胸に広がる歓喜や、ウェンディに対する忠誠心。守りたい、と想う気持ちが一層強くなっている事を自覚する。
ヴァンの様子を心配そうに見守っていたナミアは、ウェンディに付きっきりになっている彼に声をかけた。
「ハーツラビュル卿、ハーツラビュル卿もお怪我は大丈夫ですか? 痛みが増しておりませんか?」
「──あ」
そう言えば、そうだったとヴァンは思い出す。
ウェンディを抱き留め、全速力で走った。
ヴァンは信じられない思いで、自分の腕と足を見下ろす。
あれだけ、さっきまでは痛みを感じていたのに。
それなのに、どうして今は痛みを感じなくなっているのか──。
ヴァンは両手を見下ろし、信じられない思いで呟く。
「……そう言えば、今はちっとも痛みが無い……どうなってるんだ?」
「──えっ!?」
ヴァンの言葉に、ナミアもぎょっとする。
「確かに……、さっきまでは痛みを感じていたんだ。だが、ウェンディを抱き留めた後、ここまで走ってきたが──」
そこでヴァンは自分の腕をくるくると肩から回してみたり、足を床に突いたり、屈伸してみたりとしたが。
驚いたような顔で、ナミアと顔を合わせる。
「……今は何も痛みを感じない」
「え……どうして……」
「分からない……分からないが……。これも、契約が無事に成立した事が影響している、のか?」
「そう、なんですかね……? いくら魔法でも、怪我までは治せませんからね……。かつては、治癒魔法を使う人がいた時代はあったそうですが……」
「治癒魔法なんて、数百年前の話だろう? 今現在、使える者なんてこの国にはいないだろう……。だが、魔法契約は不明な部分が多いから……契約成立の副産物、のようなものなのだろうか?」
二人で首を捻り考えるが、如何せん魔法の歴史に詳しくは無い二人だ。それに、魔法契約についても詳しくない。
「俺たちで考えても仕方ないな。俺の父が手配した医者がもうすぐ到着するはずだ。医者に聞いてみよう」
「ええ、それがよろしいですね。お嬢様を診ていただかないと」
ヴァンとナミアは、苦しそうに顔を歪めるウェンディを心配そうに見つめた。
2,316
あなたにおすすめの小説
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
次は絶対に幸せになって見せます!
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢マリアは、熾烈な王妃争いを勝ち抜き、大好きな王太子、ヒューゴと結婚したものの、結婚後6年間、一度も会いに来てはくれなかった。孤独に胸が張り裂けそうになるマリア。
“もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…”
そう願いながら眠りについたのだった。
翌日、目が覚めると懐かしい侯爵家の自分の部屋が目に飛び込んできた。どうやら14歳のデビュータントの日に戻った様だ。
もう二度とあんな孤独で寂しい思いをしない様に、絶対にヒューゴ様には近づかない。そして、素敵な殿方を見つけて、今度こそ幸せになる!
そう決意したマリアだったが、なぜかヒューゴに気に入られてしまい…
恋愛に不器用な男女のすれ違い?ラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる