「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

28話

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「ウェンディ!!」
「お嬢様!」

 ヴァンとナミアが叫ぶ。
 ヴァンに抱き留められたウェンディの顔は、まるで高熱を出したかのように真っ赤に染まっており、ウェンディの体を支えていたヴァンにまで、ウェンディの体が発熱しているかのような熱を放っているのが分かった。

「ハ、ハーツラビュル卿! お嬢様を急いでお部屋まで……!」
「ああ、分かった! すぐにウェンディを休ませよう!」

 ナミアの先導のもと、ヴァンはウェンディを抱えたまま廊下を駆ける。



 ウェンディの部屋に無事戻って来たヴァンとナミア。
 ヴァンは、優しく丁寧にウェンディをベッドに寝かせると、すぐに伯爵家に連絡を入れ、医者を手配してもらう。
 侯爵家専属の医者は、当主である侯爵の許可が必要になってくる。
 今、フォスターとエルローディアの契約パーティーに参加して上機嫌な侯爵に、ウェンディの事を伝えてもきっとすぐには手配してもらえない。
 それどころか、無視をされる恐れだってあった。

 それならば、とヴァンは自分の家の専属医を呼んだ方が早いと即座に判断し、魔法で自分の父親に知らせた。
 すると、すぐに伯爵家の専属医をウェンディの下に遣わせると返事があり、ヴァンとナミアはそこでようやくほっと安堵の息をついた。

 熱で苦しそうに呻くウェンディの汗を拭ってやりながら、ヴァンはウェンディとの絆を確かに感じた。
 今までとは確実に違う、確かなウェンディとの繋がり。
 胸に広がる歓喜や、ウェンディに対する忠誠心。守りたい、と想う気持ちが一層強くなっている事を自覚する。

 ヴァンの様子を心配そうに見守っていたナミアは、ウェンディに付きっきりになっている彼に声をかけた。

「ハーツラビュル卿、ハーツラビュル卿もお怪我は大丈夫ですか? 痛みが増しておりませんか?」
「──あ」

 そう言えば、そうだったとヴァンは思い出す。
 ウェンディを抱き留め、全速力で走った。

 ヴァンは信じられない思いで、自分の腕と足を見下ろす。
 あれだけ、さっきまでは痛みを感じていたのに。
 それなのに、どうして今は痛みを感じなくなっているのか──。

 ヴァンは両手を見下ろし、信じられない思いで呟く。

「……そう言えば、今はちっとも痛みが無い……どうなってるんだ?」
「──えっ!?」

 ヴァンの言葉に、ナミアもぎょっとする。

「確かに……、さっきまでは痛みを感じていたんだ。だが、ウェンディを抱き留めた後、ここまで走ってきたが──」

 そこでヴァンは自分の腕をくるくると肩から回してみたり、足を床に突いたり、屈伸してみたりとしたが。
 驚いたような顔で、ナミアと顔を合わせる。

「……今は何も痛みを感じない」
「え……どうして……」
「分からない……分からないが……。これも、契約が無事に成立した事が影響している、のか?」
「そう、なんですかね……? いくら魔法でも、怪我までは治せませんからね……。かつては、治癒魔法を使う人がいた時代はあったそうですが……」
「治癒魔法なんて、数百年前の話だろう? 今現在、使える者なんてこの国にはいないだろう……。だが、魔法契約は不明な部分が多いから……契約成立の副産物、のようなものなのだろうか?」

 二人で首を捻り考えるが、如何せん魔法の歴史に詳しくは無い二人だ。それに、魔法契約についても詳しくない。

「俺たちで考えても仕方ないな。俺の父が手配した医者がもうすぐ到着するはずだ。医者に聞いてみよう」
「ええ、それがよろしいですね。お嬢様を診ていただかないと」

 ヴァンとナミアは、苦しそうに顔を歪めるウェンディを心配そうに見つめた。
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