「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

46話

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 表から聞こえてきた叫び声や悲鳴に、ウェンディとヴァンはお互い顔を見合せたが、慌てて外へと駆け出した。

 魔封じの枷もしたため、もう大丈夫だろうと隊員に移送を頼んだのだが、それでも暴れているのだろうか、と大慌てで外に向かったウェンディとヴァンは、目の前の光景に驚きに目を見開いた。

 この騒ぎで、民や貴族達が集まっているのはまだ分かる。

 だが、どうしてここにフォスターが居るのか──。

「ヴァン・ハーツラビュル! お前か、勝手な行動を!!」
「フォスター隊長? どうしてここに……っ」
「私の許可も得ず、勝手に捕縛などするな! 私への報告はどうした!? お前には何の権限も無いだろう!」

 フォスターはわざとらしく大勢の前でヴァンを叱責する。

「この男の罪状は本当なのか!? 誤認で捕縛していたのなら、重大な過失だぞ!」
「何を訳の分からない事を……っ」

 犯人が暴れ回り、隊舎を損壊しているのは明確だ。
 それだけでも十分捕縛対象である。
 それなのに、フォスターはヴァンが捕縛した事が気に入らないのか、ただただ難癖をつけているように見えて、ウェンディは冷たい視線をフォスターに送った。

「ちっちゃい人……。こんな人だったなんて……」
「ウェンディ様……!? なんて酷い事を仰るのか……! そんな男の傍にいるから、ウェンディ様が暴力的になられてしまった。嘆かわしい事だ」

 やはり、私の元に戻って頂かねば! そう叫ぶフォスターに、周囲に集まった民や貴族達は面白そうに見物している。

 人々は好き勝手に噂話をして、ウェンディがヴァンとフォスター、どちらを選ぶのか、などと楽しげに話してすらいる。

 だが、フォスターに邪魔をされ、移送が途中で止まってしまった犯人の男は、再び胸を襲う激痛に苛立ちが最高潮に上ったのだろう。
 怒声を上げ、フォスターに突進した。

「ごちゃごちゃうるせえ! 早く移送してくれよ!」
「──愚かな」

 丸腰で自分に突進してくるとは思わなかったのだろう。
 フォスターは余裕そうに鼻で笑い、自らの長剣から手を離す。
 騎士として、丸腰の相手に武器を使う事はしない。
 フォスターは、体術にも自信があった。
 そのため、突進してくる犯人をいなし、地面に転がしてやろうと思ったのだが──。

「──ぐっ!?」
「あああああ!」

 突進する犯人の勢いを殺す事が出来ず、フォスターの体はそのまま無様に後方に吹き飛んでしまう。
 地面を転がり、砂埃を上げながらようやく止まったフォスターを、周囲に集まった民や貴族達は信じられないものを見るようにあんぐりと口を開けて見下ろした。

「なっ、何故っ、力が出ない……っ」

 魔法のみならず、どうして身体能力まで著しく低下しているのか──。
 フォスターが唖然としている内に、痛みに気が狂った犯人の男は、集まった周囲の群衆に向けて突進する。

 きゃああ! と悲鳴が上がる中、即座に反応したのはウェンディだ。

「──止まりなさい! 氷よ! 檻となって閉じ込めろ!」

 ウェンディが澄んだ声で叫ぶ。
 すると、犯人の男の体を覆うように目にも止まらぬ速さで氷が出現し、まるでそれが檻のように男を閉じ込める。

「ウェンディ、すまないありがとう」
「気にしないで、ヴァン。私でも協力出来るって言ったでしょう?」

 ふふん、と誇らしげに胸を張るウェンディに、ヴァンは苦笑いを浮かべつつ、ウェンディの頭を優しく撫でる。
 そしてウェンディを隊員に頼むと、自らは犯人の男に向かって駆け出した。


 その光景を地面に転がりながら見ていたフォスターは、唖然とした。

 魔法の発動までの速さ。
 そして、完成した魔法の美しさ。
 魔法を放つウェンディの美しさ。

 どれもが奇跡のように美しく、幻を見ているかのような心地に陥ったフォスターは、ただただウェンディに見蕩れた。

 自身が嘲笑われている事にも気づかず、フォスターの視線はウェンディに集中している。

 そんなフォスターと、ウェンディを憎しみを込めて見つめていたエルローディアは、ふいっと身を翻し、その場を去っていった。
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