「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

47話

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◇◆◇

 ──信じられない! 馬鹿じゃないの! 格好悪い!!

 エルローディアは羞恥に顔を真っ赤に染め、怒りに目を潤ませて唇を噛んだ。
 ガツガツ、と怒りに任せてヒールを鳴らしながら歩く。

「エ、エルローディア様……っ! どちらへ!」
「──~帰るのよ! 信じられないわ、あんなに格好悪い男と専属護衛騎士契約を結ぼうと思っていたなんて! あんな、拘束された男にすら転がされる国随一の騎士ってどう言う事よ! お父様に言って、我が侯爵家の騎士をクビにしてやるわ!」

 エルローディアは周囲の視線を気にしつつ、急いでホプリエル侯爵家の馬車に戻る。
 急いで家に戻り、義父と義母に泣きつき、どうやってフォスターとの関係を切るか、頭を悩ませた。

◇◆◇

 ──ねえ、見てよあの無様な格好。
 ──嘘だろう? 武器も何も持っていない、素手の相手に転ばされたぞ。
 ──それに比べ、ウェンディ様は出来損ないじゃなかったのか? あんなに美しくなった上に、魔法まで……。
 ──出来損ないはあのフォスター騎士の方じゃないか。

 くすくす、とフォスターを嘲笑う声があちらこちらから聞こえる。

 今までは、ウェンディに向けられてきた言葉。
 それが、今では手のひらを返したようにフォスターに向けられていて。

 その声がはっきりと耳に届いていたウェンディは、不快感に眉を顰めた。

「ウェンディ……? どうした、大丈夫か?」
「──ヴァン」

 今度こそ犯人の移送を最後まで見送ったヴァンが、ウェンディに駆け寄る。
 ウェンディはヴァンの服の裾を縋るようにきゅう、と握り、呟いた。

「ここに居たくないわ……。人って……、簡単に手のひらを返すのね……。嫌な言葉をこれ以上聞きたくない」
「そうだな。人の醜い部分なんて、ウェンディは聞かなくて良いよ。伯爵邸に戻ろう」

 自分を無視してそのまま去ろうとするウェンディとヴァンに、フォスターは咳き込みながら叫び声を上げ、二人を呼び止める。

「──待てっ! お前っ、私の部下のくせに上官を放っておくのか! ウェンディ様、ウェンディ様! 私を再びあなたの専属護衛騎士に選んでください!」

 恥ずかしげもなく手のひらを返し、そのような事を宣うフォスターにウェンディは顔を顰めた。
 ウェンディを背に隠し、フォスターの目に入らないようにしたヴァンは彼を見下ろしながら告げる。

「もういい加減ウェンディに執着しないでください、フォスター隊長。あなたは、エルローディア様と契約を結ぶと決めたのでしょう。それで、ウェンディとの契約を破棄したのに……今更……」
「うるさい、黙れ! ウェンディ様の力が戻るなら! これだけ美しい美女に成長するのが分かっていたら、契約の破棄などしなかった! お前だってそうだろう! ウェンディ様がこれだけ美しいから! 魔法の力が素晴らしいから──」
「彼女を自分の物差しで測るな、フォスター・シュバルハーツ! ウェンディの見た目が変わったから? ウェンディの力が戻ったから? そんなくだらない理由で再びウェンディと契約を結ぼうとする性根の腐った考えは捨ててくれ!」

 ヴァンの怒声は、その場に響き渡る。
 ヴァンの気迫に、圧迫感に、フォスターだけではなく、それまで好き勝手に噂話をして楽しんでいた群衆も、息を呑んだ。

「ウェンディはウェンディだ! 彼女は昔から何一つ変わらない! 見た目が変わっただけで! 能力が戻っただけで、彼女の価値をお前が語るな!!」

 ヴァンの言葉が、一つ一つウェンディの胸に染み込んで行く。
 ヴァンの言葉が、どれだけウェンディにとって嬉しいか。
 どれだけ、救いになっているか。

 ウェンディは、嬉しくて涙を滲ませながらヴァンに近付く。

「ヴァン、ありがとう。もう良いよ。こんな人放っておいて、帰ろう?」
「──ウェンディ。すまない、怖がらせた?」
「ううん。ヴァンはいつも優しいから怖くない」
「良かった……。じゃあ帰ろうか、ウェンディ」

 笑顔で頷くウェンディを愛おしげに見つめたヴァンは、そのままウェンディの手を取って歩いて行く。

 その場に残されたフォスターは悔しくて惨めで、憤死してしまいそうだった。
 だが、それでもヴァンの隣で幸せそうに美しく笑うウェンディから目が離せない。

「──あの場所は、俺のだった! 俺こそが、ウェンディ様に相応しい騎士だ……っ、あいつさえ、あいつさえいなければ……っ!」

 フォスターは、地面に倒れたまま何度も何度も拳を打ち付けた。
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