「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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一章

56話

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「ふごごっ!」
「ふがふご!」

 フォスターとエルローディアは、声にならない声を上げ、ソファの上で暴れているが男性の魔法で出現した蔦がじわじわと二人の体を締め上げている。

 抵抗という抵抗が全くできなくなった二人は、ソファの上にごろり、と転がされている。

「何をそんなに驚いている? お前達は、この森にある邸に住む賢者に会いに来たのではないのか?」
「賢者──!?」

 きょとん、と目を瞬かせて首を傾げる男性に、ウェンディもヴァンもぎょっとして声を上げる。
 そして、ウェンディが慌てて言葉を返した。

「け、賢者様が住んでいるとは聞いておらず……。その、私たちはこの森──アヌジュの森に、契約魔法に精通した方が居る、と聞いて」
「ウェンディが言う通りです……。ただ、我々は魔法に明るい方がいると言う情報を聞き、参りました」

 ウェンディの言葉に、ヴァンが続く。

 すると、先程までウェンディにしか興味を示していなかった男性が、そこで初めてヴァンにひたり、と視線を定めた。

 何もかもを見透かすような真っ直ぐな視線に、ヴァンの背筋に汗が伝う。

 男性のブルーサファイアのような瞳が、ヴァンを射抜くように見つめ、そして納得したように頷いた。

「なるほど、理解した。ウェンディ、と呼ばれたお前がこの護衛騎士の主人か。確かに強い絆で結ばれているな。私の契約魔法が正しく作用しているのを見れて安心した」
「──っ!?」
「私の魔法……っ!?」

 ウェンディとヴァンは男性の言葉にぎょっとして声を荒らげる。

 ウェンディとヴァンの驚いた顔に楽しげに笑った男性は、優雅に足を組み換え、ゆったりと口を開いた。

「私の名前はヒュフースト。大昔には、人間は私の事を大賢者と呼んでいた。見ての通り私はハイエルフの血が入っている。……軽薄な人間は嫌いだが、純粋で人を裏切らぬ人間は……まあ、好ましい。契約魔法について聞きたいのだろう? 何でも聞け」





 ハイエルフの男性──ヒュフーストは、パチンと指を鳴らし、ウェンディとヴァン。そしてナミアの紅茶を魔法で用意した。

 何も無かった空間に、まるで本当に「魔法」のように温かい紅茶が入ったカップが現れ、三人は落とさないように慌てて両手でそれを受け取った。

 温かいカップを両手で包んだまま、ウェンディは
ヒュフーストに視線を向ける。

「──私たちは、魔法と言うものを……殆ど知らないんですね。魔法で、こんな事ができる事も。無詠唱で魔法が発動する事も、知りませんでした」
「……俺たちは、最初から魔法は詠唱言葉に呼応して発動する、と教えられてきました。……魔法に、こんな事までできるなんて……」

 ウェンディとヴァンを見やったヒュフーストは、一つ頷いてから二人に分かりやすく説明するように、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「そもそも、魔法は無限大の可能性を秘めている。魔法に限界なんてものは、無い。生まれ持った魔力によって、多少なりとも違いはあるが……その魔力の少なさを補うために創り出したのが、お前達が結んでいる契約魔法だ」
「この、専属護衛騎士契約が……?」

 ヴァンの言葉に、ヒュフーストは頷く。

「ああ。我々エルフに比べ、人間の魔力はちっぽけだ。だからこそ魔力が増幅し、長大な魔法を使えるようになる魔法を創った」
「んむーっ!! むごご! ふごふご!」

 それまですっかり存在を忘れられていたフォスターとエルローディア。
 そのフォスターが、ヒュフーストの言葉を聞いて激しく暴れ始めた。
 何かを訴えたいようなフォスターの行動に、それを感じ取ったヒュフーストが「何だ」と言いつつ、指先をちょい、と動かした。

 すると、それまでフォスターの口を覆っていた蔦がしゅるりと解けた。
 口の自由を得て、フォスターは叫んだ。

「なっ、ならば! 増幅する魔法なのであれば、どうして私と契約していたウェンディ様の魔力も、魔法の腕も落ちる一方だったのですか!? ウェンディ様の成長だって、長年止まったままだった! 増幅してくれる魔法なのであれば、私と契約していたウェンディ様の魔法の腕が落ちるはずがない!!」

 ぎゃん! と必死の形相で叫ぶフォスターに、ヒュフーストは汚いものを見るような目で見下ろしつつ、口を開く。


「それはお前がウェンディを裏切るからだろう。全てお前のせいだ、この愚か者が」
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