56 / 86
一章
56話
しおりを挟む「ふごごっ!」
「ふがふご!」
フォスターとエルローディアは、声にならない声を上げ、ソファの上で暴れているが男性の魔法で出現した蔦がじわじわと二人の体を締め上げている。
抵抗という抵抗が全くできなくなった二人は、ソファの上にごろり、と転がされている。
「何をそんなに驚いている? お前達は、この森にある邸に住む賢者に会いに来たのではないのか?」
「賢者──!?」
きょとん、と目を瞬かせて首を傾げる男性に、ウェンディもヴァンもぎょっとして声を上げる。
そして、ウェンディが慌てて言葉を返した。
「け、賢者様が住んでいるとは聞いておらず……。その、私たちはこの森──アヌジュの森に、契約魔法に精通した方が居る、と聞いて」
「ウェンディが言う通りです……。ただ、我々は魔法に明るい方がいると言う情報を聞き、参りました」
ウェンディの言葉に、ヴァンが続く。
すると、先程までウェンディにしか興味を示していなかった男性が、そこで初めてヴァンにひたり、と視線を定めた。
何もかもを見透かすような真っ直ぐな視線に、ヴァンの背筋に汗が伝う。
男性のブルーサファイアのような瞳が、ヴァンを射抜くように見つめ、そして納得したように頷いた。
「なるほど、理解した。ウェンディ、と呼ばれたお前がこの護衛騎士の主人か。確かに強い絆で結ばれているな。私の契約魔法が正しく作用しているのを見れて安心した」
「──っ!?」
「私の魔法……っ!?」
ウェンディとヴァンは男性の言葉にぎょっとして声を荒らげる。
ウェンディとヴァンの驚いた顔に楽しげに笑った男性は、優雅に足を組み換え、ゆったりと口を開いた。
「私の名前はヒュフースト。大昔には、人間は私の事を大賢者と呼んでいた。見ての通り私はハイエルフの血が入っている。……軽薄な人間は嫌いだが、純粋で人を裏切らぬ人間は……まあ、好ましい。契約魔法について聞きたいのだろう? 何でも聞け」
◇
ハイエルフの男性──ヒュフーストは、パチンと指を鳴らし、ウェンディとヴァン。そしてナミアの紅茶を魔法で用意した。
何も無かった空間に、まるで本当に「魔法」のように温かい紅茶が入ったカップが現れ、三人は落とさないように慌てて両手でそれを受け取った。
温かいカップを両手で包んだまま、ウェンディは
ヒュフーストに視線を向ける。
「──私たちは、魔法と言うものを……殆ど知らないんですね。魔法で、こんな事ができる事も。無詠唱で魔法が発動する事も、知りませんでした」
「……俺たちは、最初から魔法は詠唱言葉に呼応して発動する、と教えられてきました。……魔法に、こんな事までできるなんて……」
ウェンディとヴァンを見やったヒュフーストは、一つ頷いてから二人に分かりやすく説明するように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「そもそも、魔法は無限大の可能性を秘めている。魔法に限界なんてものは、無い。生まれ持った魔力によって、多少なりとも違いはあるが……その魔力の少なさを補うために創り出したのが、お前達が結んでいる契約魔法だ」
「この、専属護衛騎士契約が……?」
ヴァンの言葉に、ヒュフーストは頷く。
「ああ。我々エルフに比べ、人間の魔力はちっぽけだ。だからこそ魔力が増幅し、長大な魔法を使えるようになる魔法を創った」
「んむーっ!! むごご! ふごふご!」
それまですっかり存在を忘れられていたフォスターとエルローディア。
そのフォスターが、ヒュフーストの言葉を聞いて激しく暴れ始めた。
何かを訴えたいようなフォスターの行動に、それを感じ取ったヒュフーストが「何だ」と言いつつ、指先をちょい、と動かした。
すると、それまでフォスターの口を覆っていた蔦がしゅるりと解けた。
口の自由を得て、フォスターは叫んだ。
「なっ、ならば! 増幅する魔法なのであれば、どうして私と契約していたウェンディ様の魔力も、魔法の腕も落ちる一方だったのですか!? ウェンディ様の成長だって、長年止まったままだった! 増幅してくれる魔法なのであれば、私と契約していたウェンディ様の魔法の腕が落ちるはずがない!!」
ぎゃん! と必死の形相で叫ぶフォスターに、ヒュフーストは汚いものを見るような目で見下ろしつつ、口を開く。
「それはお前がウェンディを裏切るからだろう。全てお前のせいだ、この愚か者が」
2,198
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
次は絶対に幸せになって見せます!
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢マリアは、熾烈な王妃争いを勝ち抜き、大好きな王太子、ヒューゴと結婚したものの、結婚後6年間、一度も会いに来てはくれなかった。孤独に胸が張り裂けそうになるマリア。
“もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…”
そう願いながら眠りについたのだった。
翌日、目が覚めると懐かしい侯爵家の自分の部屋が目に飛び込んできた。どうやら14歳のデビュータントの日に戻った様だ。
もう二度とあんな孤独で寂しい思いをしない様に、絶対にヒューゴ様には近づかない。そして、素敵な殿方を見つけて、今度こそ幸せになる!
そう決意したマリアだったが、なぜかヒューゴに気に入られてしまい…
恋愛に不器用な男女のすれ違い?ラブストーリーです。
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる