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二章
6話
しおりを挟む「──ウェンディ、そろそろ時間じゃないか?」
「あっ、確かにそうですね。今日も教えて下さってありがとうございました、ヒュフースト様!」
「礼はいい。私も久々に人間に魔法を教えるのは良い刺激になる」
「ふふっ、それだったら良かったです。またよろしくお願いしますね、ヒュフースト様!」
「ああ」
こくりと頷くヒュフーストに手を振って、ウェンディはヒュフーストが作った転移魔法魔道具へ歩いて行く。
魔法術式が構築されている輪の中にウェンディが足を踏み入れると、魔法が発動してパッと明るく光る。
ウェンディが瞬きする間に、景色は一変し、見知ったハーツラビュル伯爵家の自室に転移していた。
「何度体験しても、ヒュフースト様のこの転移魔法は凄いわね……」
体への負荷もなく、あっという間に移動している。
ウェンディは自室に荷物を置いて、部屋を出た。
「──うわっ、と。ウェンディ、お帰り」
「ヴァン? ごめんなさい、驚かせてしまったわね」
ちょうど、ウェンディの部屋の扉をノックしようとしていたのだろう。
その時ウェンディが扉を開けてしまったので、ヴァンは驚いて半歩後ろに退がっていた。
だがヴァンはウェンディの顔を見るとすぐに優しく微笑み、一通の手紙をウェンディに見えるように掲げた。
「ウェンディ、レックス卿から手紙が届いた。パーティーの招待状も同封されていたよ」
「──本当!? お兄様の忙しさが落ち着いたのかしら?」
「そうかもしれない。ウェンディの名前も招待状には記載されていたから、一緒にパーティーに参加しよう」
ウェンディはヴァンと話しつつ、入室を促す。
二人は部屋のソファに腰を下ろして、レックスから届いた招待状の内容を確認した。
「……開催は、ひと月後か。時間があるからしっかり準備が出来るな」
「そうね。お兄様の記念すべきお披露目のパーティーだわ! 贈り物も素晴らしい物を用意したいわね、ヴァン!」
キラキラと興奮したように瞳を輝かせるウェンディに、ヴァンは苦笑い混じりに答えた。
「レックス卿への贈り物に気合いを入れるのはいいが、ウェンディ。ウェンディのドレスや装飾品も気合いを入れて用意しないとな? ウェンディは久しぶりの夜会だろう? 当日ウェンディが身に付ける物を、全部俺にプレゼントさせてくれ」
「──えっ、で、でも悪いわヴァン。その、私身長が伸びたから、本当に全部体に合わなくなっちゃったの。靴も、ドレスも、今まで着けていたアクセサリーも全部新調しなくちゃいけなくなっちゃったから……」
「うん。だからこそ、だよ。ウェンディが当日身に付ける物は、全部俺が用意したい」
ヴァンの言葉に、ウェンディは嬉しそうにしてはいるが、それでもまだ遠慮の方が気持ちが勝っているようで。
眉は困ったようにへにょり、と垂れている。
そこでヴァンは良い案を思い付いた。
「なら、ウェンディ。全部俺に贈られるのが引っかかっているなら、俺にもウェンディからプレゼントしてくれないか?」
「ヴァンに……?」
「ああ。ウェンディと揃いに出来るアクセサリーが
欲しい。ウェンディは昔からセンスがあるだろ? 俺にお洒落なアクセサリーを一つプレゼントしてくれない?」
ヴァンの提案に、ウェンディはぱっと表情を明るくさせる。
「わ、分かった! 私がヴァンに似合うアクセサリーをプレゼントするわね!」
「良かった、それじゃあ、俺とウェンディの仕事が休みの日に街へ買い物に行かないか?」
「ええ、分かったわ!」
こくこくと頷いてくれるウェンディに、ヴァンはほっと胸を撫で下ろす。
(よし……これでウェンディの意識を逸らせた……。これでもうウェンディの頭の中には俺に似合うアクセサリーの事でいっぱいだろう……)
ヴァンはウェンディには見えない角度で小さくガッツポーズをする。
ウェンディの頭の中は、ヴァンが目論んだ通り既にヴァンに似合うアクセサリーの事でいっぱいになっており、ドレスやその他装飾品、靴に至るまで全てヴァンがプレゼントすると言う話は頭の隅に追いやられてしまっている。
ヴァンは楽しそうにプレゼントの事を考えているウェンディを愛おしげに見つめる。
(これで、ウェンディとデートも出来るし……。当日が待ち遠しいな)
にこにこと楽しそうにしているウェンディはとても可愛らしい。
可愛らしいけど、美しさも備わっているウェンディに、どんなドレスが似合うか。どんなイヤリングが似合うか。
パーティー会場で、ウェンディはきっとその日参加する女性の中で最も輝くだろう。
そんな想像をしながら、ヴァンは楽しそうにしているウェンディを見つめていた。
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