「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

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二章

7話

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 街歩きの日。
 その日は、天気も良く穏やかな気候だった。

 空は晴れ渡り、雲一つ無い。

 ウェンディとヴァンは、街へレックスへの贈り物と、揃いのアクセサリーを買いに街へ向かった。

 馬車で貴族街へ向かったウェンディとヴァンは、馬車から降りると貴族街で今一番人気の小間物屋に向かった。

「ウェンディ、レックス卿にプレゼントする物は決まっているのか?」

 隣を歩くヴァンに話しかけられ、ウェンディは笑顔で頷いた。

「ええ、お兄様には万年筆をプレゼントしようと思っているの。これから侯爵として忙しくなるでしょう? だから、実用的な物をお贈りすれば、喜んでくれるかな、って」
「そうか、とても良いと思う。レックス
卿もきっと喜んでくれるさ」
「へへ……そうだと良いなぁ」

 照れたように、嬉しそうに笑うウェンディにヴァンが見惚れていると。
 周囲に居た男性貴族達も、ヴァンのようにウェンディの可憐な笑顔に見蕩れていた。

 ヴァンが牽制するように周囲を見回すと、すぐにその貴族達は顔を逸らし、誤魔化すように別の店に入って行く。
 その姿を見て、ヴァンは苛立ちを覚えた。

 以前──、ウェンディがまだ幼い見た目をしていた時はあれだけ嘲笑の対象にしていたくせに。
 フォスターとの契約を破棄し、ウェンディの止まっていた成長が正常に戻り、魔力も魔法の能力も取り戻したウェンディ。
 美しい姿のウェンディを見て、周囲の貴族達はウェンディとどうにか接触を計れないか、と今までに沢山の手紙や、パーティーの招待状がヴァンの伯爵家に届いていた。

 ウェンディ宛の手紙は、ウェンディから事前に許可を貰い、重要な手紙以外は伯爵の手で処理している。

 ウェンディ自身も、分かっていたのだ。
 自分の成長が正常に戻り、周囲の自分を見る目が変わった事。
 時折熱の篭った目で見られている事。
 男性からのいやらしい視線。
 値踏みするような視線。

 昔から人の視線を嫌な意味でウェンディは集めていた。
 だから注目される事には慣れていたけれど、今回のような注目の仕方には慣れておらず、ウェンディはぞわりとした嫌な視線に、隣にいるヴァンに無意識にすすす、と近寄った。

「──ウェンディ?」

 どうした? と、すぐにウェンディの心配をしてくれるヴァン。
 ウェンディはヴァンの腕に自分の腕を絡ませ、ちらりと後方を見やった。

「視線が、気持ち悪い……」
「──ああ」

 ウェンディの言いたい事を悟ったのだろう。
 ウェンディの顔を曇らせる貴族達に、ウェンディの笑顔を影らせる貴族達に、ヴァンは怒りを覚える。
 今まで散々ウェンディを笑い物にしてきたくせに、ウェンディの魔力が、魔法能力が戻ったと言うだけで。見た目が変わっただけで、こうして手のひらを返す。

 ヴァンはウェンディの頭を優しく撫でる。

「気にしないでくれ、と言っても無理だよな……。視線があからさま過ぎる」
「うん。ヒュフースト様に視線を遮るような魔法がないか、今度聞いてみようかな」
「そんな魔法まであるのか!?」
「分からないけど、ヒュフースト様は魔法には限界が無いって言っていたでしょう? きっと、人の想像力次第でどんな魔法だって作る事が出来ると思うの」
「魔法には際限が無いって事か。もし本当にそんな事が出来るようになったら、凄い発見だよな」
「ええ! とっても素晴らしい事だわ」

 にこにこと嬉しそうに笑うウェンディ。
 ヴァンは「そうだな」と返しつつ、もし本当にウェンディがそんな素晴らしい魔法を発動出来るようになったら。

 魔法に限界はない、と証明出来るようになってしまったら。

(ウェンディが、王家に目をつけられるかもしれない……。それだけは防がないと……)

 もし、万が一王家がウェンディを欲したら──。

(ウェンディの今の身分は貴族籍から抜かれたから、ただの一般国民の扱いだが……元は侯爵令嬢だ。……美しく、魔法に明るいウェンディは、王子の婚約者に相応しいと思われるかもしれない。それだけは避けないと……)

 王太子には既に婚約者もおり、結婚の時期も決まっている。
 だけど、今の国王には王子は三人居るのだ。
 第一王子の王太子は、ウェンディより五歳年上。
 第二王子はウェンディより二歳年上。
 第三王子は、ウェンディより四歳年下。

(第二王子との年の差だと、丁度釣り合いが取れると考えられそうだ……。それだけは避けないと)

 もし、万が一。
 王族の目にウェンディが止まってしまったら。

 これだけ美しく、心根も強く清らか。
 そして、元侯爵令嬢のため高位貴族としてのマナーも備えている。

(父上と、兄上に相談しておかないと、な……)

 ヴァンがそう考えている内に、目的の店に着いた二人はベルを鳴らしながら店に入った。
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