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【おまけ】悩み
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また思考が目下の悩みごとに引きづられていることに気づいて、瑛莉は溜息を吐いた。これまでの経緯から考えれば贅沢な悩みだとも思う。
(エルヴィーラは私に甘いし、エーヴァルトはその手の話題には疎いだろうしな)
誰かに相談できればいいのだが、残念ながら適任者が思いつかない。
自分がこの手の問題――恋愛に関してこんなに思い悩む日が来るなんて、想像したこともなかった。
気持ちを打ち明けてからというもの、ディルクはこれまで以上に瑛莉を甘やかすようになった。嬉しさと恥ずかしさで逃げ出したくなる瑛莉を微笑んで見つめる眼差しには愛情がこもっている。
だからディルクの好意は疑っていないが、問題はそれがどの種類の愛情なのかということだ。
翻弄されているように感じるのはディルクのほうが年上だし、恋愛の経験だってそれなりにあるのだろうから仕方がない。
でもだからこそ恋人同士の触れ合いがないことに、不安を覚えるようになってしまったのだ。最初のうちは自分がまだ慣れていないからだろうと思っていた。
落ち込んでいる時には抱きしめてくれるし、時折おでこや頬にキスをしてくれるが、それ以上触れることはない。
頭を撫でてもらうのも好きだったが、ディルクの好意と自分の好意が同じものなのか考えるようになってからは、素直に喜べないでいる。
女性として見られていないのではないかと考えていると、ある記憶に思い至った。
「そういえば、ディルクの第一印象はチャラい奴だった……」
召喚後に気絶した振りをした瑛莉を運ぶ際に、エルヴィーラを口説いていた。あれは全て演技だったのだろうか。すらすらと出てくる褒め言葉や口調は妙に手慣れていたのだ。
真面目で責任感が強い性格を知ってはいるものの、ディルクだってたまには気を緩めたいときだってあるだろう。
そんな自分の思考にまた落ち込む。ディルクはいつだって瑛莉を気遣い甘やかそうとするが、ディルクが瑛莉を頼ることも弱みを見せることはない。
年下だからだろうかと考えるが、「りっちゃん」には「先生」も普段と違う一面を見せていたように思う。
だからディルクの好意は恋愛感情ではなくて、同情や責任感によるものではないかと考えてしまうのだ。
(……胸も、あんまり大きくないし)
これまで気にしていなかったのに、自分の体形や容姿がディルクの好みではないのかもしれないと思うと溜息が漏れる。エルヴィーラも一度だけ見た幼馴染の女性も自分よりもすらりとした体型で胸も豊かだったはずだ。
うじうじと考える自分に、だんだん腹が立ってくる。
(考えたって仕方ないよね。「りっちゃん」に昔教えてもらった秘訣を覚えているから、取り敢えず全部試してみるしかない!)
そう意気込んだ瑛莉は、早速そのための準備に取り掛かることにした。
「旨そうだな。エリーが作ったのか?」
ディルクがそう言ったのは普段と違う料理が並んでいるからだろう。大抵はエルヴィーラが準備してくれるが、今日だけは自分で作らせてほしいとエルヴィーラに頼み込んだのだ。
料理は労働であり主人にそのようなことはさせられないというエルヴィーラの主張に対し、好きな人に手料理を振舞うのは瑛莉の世界では一般的だと訴えると、渋々ながら折れてくれたのだ。
少しだけ元の世界風にアレンジされた料理を、ディルクは美味しそうに平らげてくれた。立場は逆だが、「りっちゃん」は「先生」の料理に胃袋を掴まれたと言っていたので、まずは一つ目標クリアだ。
「美味しいお酒をもらったんだ。良かったら一緒に飲まない?」
「ああ、珍しいな。……エリーが酒を飲んでいるところは見たことなかったが」
大丈夫なのだろうかと心配そうに眉を下げるディルクに、瑛莉は笑顔で頷いた。
「大丈夫。以前飲んだことあるから」
お酒を飲むと本音を溢しやすいと「りっちゃん」が教えてくれた。ディルクの本音を聞くのは少し怖いけれど、いい加減にはっきりさせないといけない。自分を奮い立たせるためにも、瑛莉は杯に注いだお酒に口を付けた。
にっこりと得意そうな笑顔を浮かべたエリーに何の疑問も持たなかった自分が悪いのだ。ディルクはもう何度目か分からない後悔を胸の中で呟いた。
「……ディルク?」
とろんとした瞳と上気した頬、いつもより無防備で近い距離にディルクはさりげなく視線を外す。このままだと間違いなく理性を保てない。
「……あんまり美味しくなかった?」
「そんなことはない。……ただちょっと度数が高めだから、水を飲んだ方がいいかもしれないな」
しょんぼりと肩を落とすエリーを宥めつつ、頭を冷やすためにも水を取りに行こうと立ち上がると、小さな手が服の裾を掴んだ。
「一緒にいく」
酔いが回っているせいか少し拙く、甘えるような口調はとても可愛い。だが外では酒を飲まないよう後日しっかりと伝えておこうとディルクは心の中で誓った。
「エリーは少し飲み過ぎだな。すぐに戻ってくるから、いい子で待っていてくれるか?」
「……やだ。置いて行かないで」
普段は言わない我儘とそこに切実な響きを感じ取って、ディルクは動きを止めた。不安そうに揺れる瞳にはうっすらと涙が滲んでいて、邪な気持ちを抱えていた自分を殴り飛ばしたい。
「エリーを置いて行くわけがないだろう?……何か怖いことでもあったか?」
飲酒することで気持ちを紛らわせようとしていたのかもしれない。思い出すのは家に帰りたいとベッドの中で声を上げて泣くエリーの姿だ。
他人に迷惑を掛けることが苦手で、我慢しがちなエリーを甘やかしたいと常々思っているのだが、本人曰く慣れていないからという理由でなかなか弱い部分を見せてくれない。
だからこそゆっくりと関係性を深めていくべきだろうと思っていたのだが、肝心な時に気づかない自分の愚鈍さが嫌になる。
俯いた顔が意を決したかのように勢いよく上がった。何かを訴えるような瞳とディルクの手の上に温かな指先が重なったのを感じて、身体が一瞬で熱くなる。
そのまましばらく見つめ合った状態で固まっていると、エリーの瞳に涙が盛り上がったかと思うと、ほろほろと零れていく。
「っ、エリー?大丈夫だ、側にいるからな?」
焦ったディルクの声に、エリーはぶんぶんと首を横に振る。側にいるのが嫌なのかと少し距離を置けば、歪んだ表情が痛々しくて反射的に抱きしめた。
身体がびくりと怯えたように震えたが、大丈夫だと言う想いを込めてゆっくり背中をさすれば、すがりつくようにしがみ付いてくる。
「……ディルクは、っく……どういう女性だったら、好き?」
嗚咽交じりに訊ねられた内容に、思考が停止した。何かがとんでもなくかみ合っていない気がする。恋人同士だと思っていたのは自分だけなのだろうか。
「エリー、俺はエリーが好きだから、その質問には答えようがないな。どうしてそんなことを聞くんだ?」
「だって……だって、ディルクの好きと、私の好きは一緒じゃない……っ」
しゃくりあげながら一生懸命伝えるエリーにディルクはますます困惑してしまう。愛情表現や言葉で示していたつもりだが、きちんと伝わっていなかったのだろうか。
「二人きりでいて上目遣いとボディタッチしても、手を出してこない男は脈無しだって「りっちゃん」が言ってたもん!」
「誰だ、そんなこと言った奴は!そんな簡単に手を出すような男のほうが信用ならんだろう。大切だからこそ我慢してるっていうのに……」
一拍置いて、こてんとエリーが首を傾げているのを見て気づく。国どころか異なる世界から来たエリーとは文化や常識が違うのだ。
「結婚式での誓いまで初めての口づけを取っておくのが、女性の憧れだと思っていたんだが、エリーの世界では違うのか?」
驚いたように目を見開いて、エリーはゆっくりと首を横に振る。
「……じゃあディルクが手を出さないのは、私の胸――じゃなくて、魅力がないからではないの?」
そんなことを気にしていたのかと内心驚きながらも、慎重に言葉を重ねる。
「口づけはともかく、婚姻前に身体を重ねるのはあまり推奨されないな。特にエルヴィーラは神殿育ちだから、もしもエリーに手を出したら接近禁止を言い渡されかねない」
ディルクの説明にこくりと頷いたのでほっとした矢先、エリーからはにかんだ笑みで爆弾が落とされた。
「口づけだけならしてもいい?」
「……あまり煽らないでくれ。自制が効かなくなる」
きょとんとした顔に、酷く弄ばれているような気がする。無自覚なのが質が悪い。相手は酔っ払いだからとか、口づけだけで留まれるのかと頭の中で色々な言葉が浮かぶが、頬に手を当てると目を閉じたエリーを前に、余計なことを考えるのを止めた。
背中に腕を回して顔を近づけた瞬間、ノックの音がして心臓が跳ねる。
「失礼します。そろそろお休みにならないと明日に差し支えるかと……あら、エリー様は眠っていらっしゃるのですか?」
「いや――ああ、少し飲み過ぎたらしい」
いつの間にかすやすやと寝息を立てているエリーは、一体いつから眠ってしまったのだろう。意識がない時に口づけをしなくて良かったと安堵すると同時にエルヴィーラの視線が厳しく感じるのは疚しさのせいだろうか。
「エリー様を寝室に運んでいただけますか。ディルク様なら問題ないでしょうから」
釘を刺されたと思いながらも頷いてエリーを運ぶ。酔いつぶれてしまったのは予想外だが、エリーの本音を聞けたのだから良しとしよう。
ベッドの上で穏やかな表情を浮かべるエリーの頬に、ディルクは優しく口づけを落としたのだった。
(エルヴィーラは私に甘いし、エーヴァルトはその手の話題には疎いだろうしな)
誰かに相談できればいいのだが、残念ながら適任者が思いつかない。
自分がこの手の問題――恋愛に関してこんなに思い悩む日が来るなんて、想像したこともなかった。
気持ちを打ち明けてからというもの、ディルクはこれまで以上に瑛莉を甘やかすようになった。嬉しさと恥ずかしさで逃げ出したくなる瑛莉を微笑んで見つめる眼差しには愛情がこもっている。
だからディルクの好意は疑っていないが、問題はそれがどの種類の愛情なのかということだ。
翻弄されているように感じるのはディルクのほうが年上だし、恋愛の経験だってそれなりにあるのだろうから仕方がない。
でもだからこそ恋人同士の触れ合いがないことに、不安を覚えるようになってしまったのだ。最初のうちは自分がまだ慣れていないからだろうと思っていた。
落ち込んでいる時には抱きしめてくれるし、時折おでこや頬にキスをしてくれるが、それ以上触れることはない。
頭を撫でてもらうのも好きだったが、ディルクの好意と自分の好意が同じものなのか考えるようになってからは、素直に喜べないでいる。
女性として見られていないのではないかと考えていると、ある記憶に思い至った。
「そういえば、ディルクの第一印象はチャラい奴だった……」
召喚後に気絶した振りをした瑛莉を運ぶ際に、エルヴィーラを口説いていた。あれは全て演技だったのだろうか。すらすらと出てくる褒め言葉や口調は妙に手慣れていたのだ。
真面目で責任感が強い性格を知ってはいるものの、ディルクだってたまには気を緩めたいときだってあるだろう。
そんな自分の思考にまた落ち込む。ディルクはいつだって瑛莉を気遣い甘やかそうとするが、ディルクが瑛莉を頼ることも弱みを見せることはない。
年下だからだろうかと考えるが、「りっちゃん」には「先生」も普段と違う一面を見せていたように思う。
だからディルクの好意は恋愛感情ではなくて、同情や責任感によるものではないかと考えてしまうのだ。
(……胸も、あんまり大きくないし)
これまで気にしていなかったのに、自分の体形や容姿がディルクの好みではないのかもしれないと思うと溜息が漏れる。エルヴィーラも一度だけ見た幼馴染の女性も自分よりもすらりとした体型で胸も豊かだったはずだ。
うじうじと考える自分に、だんだん腹が立ってくる。
(考えたって仕方ないよね。「りっちゃん」に昔教えてもらった秘訣を覚えているから、取り敢えず全部試してみるしかない!)
そう意気込んだ瑛莉は、早速そのための準備に取り掛かることにした。
「旨そうだな。エリーが作ったのか?」
ディルクがそう言ったのは普段と違う料理が並んでいるからだろう。大抵はエルヴィーラが準備してくれるが、今日だけは自分で作らせてほしいとエルヴィーラに頼み込んだのだ。
料理は労働であり主人にそのようなことはさせられないというエルヴィーラの主張に対し、好きな人に手料理を振舞うのは瑛莉の世界では一般的だと訴えると、渋々ながら折れてくれたのだ。
少しだけ元の世界風にアレンジされた料理を、ディルクは美味しそうに平らげてくれた。立場は逆だが、「りっちゃん」は「先生」の料理に胃袋を掴まれたと言っていたので、まずは一つ目標クリアだ。
「美味しいお酒をもらったんだ。良かったら一緒に飲まない?」
「ああ、珍しいな。……エリーが酒を飲んでいるところは見たことなかったが」
大丈夫なのだろうかと心配そうに眉を下げるディルクに、瑛莉は笑顔で頷いた。
「大丈夫。以前飲んだことあるから」
お酒を飲むと本音を溢しやすいと「りっちゃん」が教えてくれた。ディルクの本音を聞くのは少し怖いけれど、いい加減にはっきりさせないといけない。自分を奮い立たせるためにも、瑛莉は杯に注いだお酒に口を付けた。
にっこりと得意そうな笑顔を浮かべたエリーに何の疑問も持たなかった自分が悪いのだ。ディルクはもう何度目か分からない後悔を胸の中で呟いた。
「……ディルク?」
とろんとした瞳と上気した頬、いつもより無防備で近い距離にディルクはさりげなく視線を外す。このままだと間違いなく理性を保てない。
「……あんまり美味しくなかった?」
「そんなことはない。……ただちょっと度数が高めだから、水を飲んだ方がいいかもしれないな」
しょんぼりと肩を落とすエリーを宥めつつ、頭を冷やすためにも水を取りに行こうと立ち上がると、小さな手が服の裾を掴んだ。
「一緒にいく」
酔いが回っているせいか少し拙く、甘えるような口調はとても可愛い。だが外では酒を飲まないよう後日しっかりと伝えておこうとディルクは心の中で誓った。
「エリーは少し飲み過ぎだな。すぐに戻ってくるから、いい子で待っていてくれるか?」
「……やだ。置いて行かないで」
普段は言わない我儘とそこに切実な響きを感じ取って、ディルクは動きを止めた。不安そうに揺れる瞳にはうっすらと涙が滲んでいて、邪な気持ちを抱えていた自分を殴り飛ばしたい。
「エリーを置いて行くわけがないだろう?……何か怖いことでもあったか?」
飲酒することで気持ちを紛らわせようとしていたのかもしれない。思い出すのは家に帰りたいとベッドの中で声を上げて泣くエリーの姿だ。
他人に迷惑を掛けることが苦手で、我慢しがちなエリーを甘やかしたいと常々思っているのだが、本人曰く慣れていないからという理由でなかなか弱い部分を見せてくれない。
だからこそゆっくりと関係性を深めていくべきだろうと思っていたのだが、肝心な時に気づかない自分の愚鈍さが嫌になる。
俯いた顔が意を決したかのように勢いよく上がった。何かを訴えるような瞳とディルクの手の上に温かな指先が重なったのを感じて、身体が一瞬で熱くなる。
そのまましばらく見つめ合った状態で固まっていると、エリーの瞳に涙が盛り上がったかと思うと、ほろほろと零れていく。
「っ、エリー?大丈夫だ、側にいるからな?」
焦ったディルクの声に、エリーはぶんぶんと首を横に振る。側にいるのが嫌なのかと少し距離を置けば、歪んだ表情が痛々しくて反射的に抱きしめた。
身体がびくりと怯えたように震えたが、大丈夫だと言う想いを込めてゆっくり背中をさすれば、すがりつくようにしがみ付いてくる。
「……ディルクは、っく……どういう女性だったら、好き?」
嗚咽交じりに訊ねられた内容に、思考が停止した。何かがとんでもなくかみ合っていない気がする。恋人同士だと思っていたのは自分だけなのだろうか。
「エリー、俺はエリーが好きだから、その質問には答えようがないな。どうしてそんなことを聞くんだ?」
「だって……だって、ディルクの好きと、私の好きは一緒じゃない……っ」
しゃくりあげながら一生懸命伝えるエリーにディルクはますます困惑してしまう。愛情表現や言葉で示していたつもりだが、きちんと伝わっていなかったのだろうか。
「二人きりでいて上目遣いとボディタッチしても、手を出してこない男は脈無しだって「りっちゃん」が言ってたもん!」
「誰だ、そんなこと言った奴は!そんな簡単に手を出すような男のほうが信用ならんだろう。大切だからこそ我慢してるっていうのに……」
一拍置いて、こてんとエリーが首を傾げているのを見て気づく。国どころか異なる世界から来たエリーとは文化や常識が違うのだ。
「結婚式での誓いまで初めての口づけを取っておくのが、女性の憧れだと思っていたんだが、エリーの世界では違うのか?」
驚いたように目を見開いて、エリーはゆっくりと首を横に振る。
「……じゃあディルクが手を出さないのは、私の胸――じゃなくて、魅力がないからではないの?」
そんなことを気にしていたのかと内心驚きながらも、慎重に言葉を重ねる。
「口づけはともかく、婚姻前に身体を重ねるのはあまり推奨されないな。特にエルヴィーラは神殿育ちだから、もしもエリーに手を出したら接近禁止を言い渡されかねない」
ディルクの説明にこくりと頷いたのでほっとした矢先、エリーからはにかんだ笑みで爆弾が落とされた。
「口づけだけならしてもいい?」
「……あまり煽らないでくれ。自制が効かなくなる」
きょとんとした顔に、酷く弄ばれているような気がする。無自覚なのが質が悪い。相手は酔っ払いだからとか、口づけだけで留まれるのかと頭の中で色々な言葉が浮かぶが、頬に手を当てると目を閉じたエリーを前に、余計なことを考えるのを止めた。
背中に腕を回して顔を近づけた瞬間、ノックの音がして心臓が跳ねる。
「失礼します。そろそろお休みにならないと明日に差し支えるかと……あら、エリー様は眠っていらっしゃるのですか?」
「いや――ああ、少し飲み過ぎたらしい」
いつの間にかすやすやと寝息を立てているエリーは、一体いつから眠ってしまったのだろう。意識がない時に口づけをしなくて良かったと安堵すると同時にエルヴィーラの視線が厳しく感じるのは疚しさのせいだろうか。
「エリー様を寝室に運んでいただけますか。ディルク様なら問題ないでしょうから」
釘を刺されたと思いながらも頷いてエリーを運ぶ。酔いつぶれてしまったのは予想外だが、エリーの本音を聞けたのだから良しとしよう。
ベッドの上で穏やかな表情を浮かべるエリーの頬に、ディルクは優しく口づけを落としたのだった。
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