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凶行
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神殿内に監禁されて五日、エルヴィーラは焦りと疲労感を覚えていた。以前に人質として捕らえられていた時よりも遥かに精神的な負荷が掛かっている。
フリッツの安否の確認出来ておらず、ダミアーノとも初日以降顔を合わせていない。
(あの方のことだからすぐにエリー様の力を利用するかと思っていたわ……)
ただ部屋に閉じ込められているだけの状況は完全に予想外だった。これではダミアーノの目的を探ることはもちろん、フリッツを救出することも叶わない。
身じろぎすればじゃらりと鎖が音を立てて、罪人のような扱いに気分が塞ぐ。
とはいえ聖女の力を封じるという手枷を付けられているおかげで、まだエルヴィーラが聖女ではないと疑われていないはずだ。
「少し外の空気が吸いたいのだけど……」
「申し訳ございません。ご要望にはお応えいたしかねます」
部屋の隅に控えている侍女に声を掛ければ平坦な謝罪が返ってくる。
(せめて部屋から出ることが出来れば、何かの手がかりを得ることが出来るかもしれないのに……)
時計を見ればヴィクトールとの面会時間が迫っており、ますます憂鬱な気分になった。
エリーの好きそうな菓子や花束などを持ってくるようになったあたり、少しは気持ちに寄り添うようになったのかもしれないが、相手の自由を奪った状態で好意を伝えてくるのは神経を疑ってしまう。
素っ気ない態度を取れば、嬉しそうに微笑む様子に最初のうちは恐怖すら感じたが、どうやら飾りげのないありのままの自分を見せてくれていると思い込んでいるようだ。
唯一の王子として周囲から大事に育てられたヴィクトールは、本気で自分が嫌われることなど思いもしないらしい。
さりげないスキンシップが増えつつある中で、不快感を示しながらも完全に拒絶することがは流石に恐ろしく、毎回綱渡りをしているかのような緊張感がある。
(とはいえ、どうにかして殿下を味方につけられないかしら?)
ダミアーノより身分が上で現状まともに話ができる人物はヴィクトールしかいない。何か良い懐柔策がないかと思案していると、ノックの音が聞こえてヴィクトールが入ってきた。意外なことに背後にはダミアーノの姿もあり、エルヴィーラはいつもと違う空気を感じ取って居住まいを正す。
「お待たせいたしました、聖女様。ようやく準備が整いましたのでご案内いたします」
ダミアーノの言葉に何故か身体が震えたが、エルヴィーラには無言で従うしかなかった。
黴臭さが漂う薄暗い地下牢の奥に進むと、僅かに明るい牢屋の一角に一人の少年の姿があった。こちらを向いてはっとしたように目を瞠ったことから、恐らくは彼がフリッツ少年なのだろう。
「暴れていたのでこんな場所でしか保護することが出来なかったのですよ」
そう嘯くダミアーノに目もくれず、エルヴィーラは少年に目を走らせる。乱暴に扱われたせいで服の一部が破れ、顔には痣が出来ていたがその瞳の輝きは失われていなかった。
フリッツが鉄格子に手を伸ばした時、背後に立っていた男が乱暴に首元を掴み引き剥がす。
「止めて!その子に暴力を振るわないでください!」
鉄格子を隔てた牢内にいるフリッツを庇ってやれないことにもどかしさを感じながら、エルヴィーラは声を上げることしか出来ない。
同じ光景を見ているはずなのに、眉一つ動かすことのないダミアーノやヴィクトールに恐ろしさを感じた。自分の贖罪ために、エリーの役に立つために身代わりとして来たが、何かを間違えたような嫌な予感を覚える。
「エリー、魔王に蹂躙されればどれだけの民が犠牲になると思う?彼らの平穏を守るには君の力が不可欠なんだよ」
「彼も王太子殿下が護るべき大切な民の一人です。どうかフリッツを解放してください」
エリーだったらどう振舞うかという考えはすっかり頭から抜け落ちていた。暴力の気配に焦ってしまい、考えるよりも先に言葉が出てしまったのだ。
「それほどお気に入りだとは。聖女様が考えを改め、この国のために尽力することを誓言して頂けるなら、彼を解放してあげましょう」
誓言は女神様への誓いの言葉で、軽々しく用いるものではない。
(ましてやエリー様でもない私が聖女として誓いを立てるなんて女神様への冒涜だわ)
躊躇いがないと言えば嘘になるが、フリッツを助けるためだ。誓言を行うのはあくまでエルヴィーラなのだから、エリーにとって不利益に働くこともないだろう。
「これを嵌めて女神様に誓って頂ければ、その拘束も解いてあげましょう」
細いシルバーのチョーカーにエルヴィーラは嫌悪感を覚えた。一見ただの装飾品のようだが、どこか両手に嵌められている手枷と同じような嫌な感じがしたのだ。誓言だけで好き勝手に利用できるとは思えないため、あのチョーカーにこそ何か仕掛けがあるのかもしれない。
慎重に動かなければ、とエルヴィーラがそちらに気を取られていると、視界の片隅によぎるものがあった。何かが反射したのだと、目が自然にそれを追いかけたエルヴィーラは、その光景に息を呑んだ。
鈍い輝きを放つナイフ、突然の出来事に目を見開くフリッツの顔、瞬く間にシャツが濡れたように暗く染まり、そこから溢れた鮮血が冷たい床に零れ落ちていく。
「――――フリッツ!!!」
床に倒れたフリッツに駆け寄り、格子の隙間から手を握りしめた。その感触にフリッツが顔を僅かに上げると血の気が引いていくのが分かる。
「ソフィアは……」
「大丈夫、あの娘は無事よ」
安心させるために力強く答えれば、フリッツは安心したように口の端を上げた。
「俺のせいでごめんな、聖女様。ありがとう」
「――もう喋らないで。出血がひどくなるわ」
ひたひたと広がっていく血液に、エルヴィーラは後悔と罪悪感に襲われていた。
(エリー様なら癒すことが出来るのに……!)
自分が身代わりになったことで、幼い命が失われてしまうのだという事実に視界が揺れる。例え誓言して拘束を解かれたとしても、自分にフリッツを癒すことが出来ないばかりか偽者であることが露見してしまう。
ただ手を握りしめることしか出来ないエルヴィーラに冷ややかな声が落ちた。
「ふん、やはりはエルヴィーラだったか。その手枷はな、聖女であれ魔物であれ力を使え反応を示すものだ。その聖女の姿は魔王の力によるものだな?」
髪を強く引っ張られて生理的な涙がにじむ。だがこれぐらいフリッツの痛みを考えれば何てことはない。
(フリッツを……助けないと。でもどうやって……)
聖女だと認識されていれば、自分の命を盾にフリッツの解放を要求するつもりだった。一度きりのチャンスであるためフリッツが本当に無事かどうか、確かめるまではと実行できずにいたのだ。
「待て、どういうことだ。最初から偽者だと分かっていたのか?エリーが見つかったと知らせてきたのはお前だろう!私はずっと侍女風情の相手をしていたというのか!」
激昂するヴィクトールにダミアーノは感情のこもらない瞳を向ける。
「わざわざ子供一人のために聖女がくるはずがないでしょう。魔王にとっても有益な存在のようですから、そう簡単に手放すことなどあり得ないのでは?殿下は些か素直過ぎるきらいがありますな」
そんなやり取りの中、ヴィクトールの後方に控えていた兵士が静かに動いた。
「――殿下!お逃げください!」
切迫した声に異変を感じ取ったヴィクトールは背後を振り返ったが、遅かった。
「ぐっ……何を」
短刀が脇腹を掠め血が舞った。兵士は顔色を変えることなく短刀を突き出してヴィクトールに向かい、ヴィクトールも腰の剣に手を伸ばすが、兵士のほうが早い。濃密な血の臭いが辺りに広がっていく。
「なぜ、殿下を……」
王族相手の凶行を目の当たりにして、無意識に声が漏れた。
「元よりそのつもりだったからな。流石に王都では手を出せないから聖女を餌にスファリまでお越し頂いたのだ。いかに陛下とて我が子が魔王に殺されたとなれば挙兵せざるを得まい」
「そんなこと――っ、貴方はエリー様に罪を被せるつもりですね」
「聖女がいなければ適当な魔物を生け捕りにして殿下に仕向けるつもりだったが、都合のよい駒が手に入ったなら、使わない手はないだろう?」
神殿に侵入した聖女が自国の王太子を手に掛けたとなれば、ただでさえ悪評が高まっている聖女に対して人々の反感は一気に高まり、哀れな王太子の敵討ちとばかりに世論は戦争へと大きく傾くだろう。
そして真実を知らされたフリッツとエルヴィーラはここで始末されるのだ。
(どうして、こんなに無力なの……)
交渉材料もなければ、何の役にも立てない自分が悔しくてエルヴィーラは歯噛みした。
「貴方の思い通りになどなりません。エリー様も魔王陛下も貴方のような方に負けるものですか」
「何の力もない小娘が戯言を。どれほど強い相手でも、数の前には無力なのだ。まあお前を生かしておけばあの聖女への嫌がらせぐらいにはなるかのう。――逃げぬよう片足を切り落としておけ」
ヴィクトールを刺した兵士が今度は腰から剣を抜く。足元に倒れたヴィクトールはまだ息があるようだが、呼吸は浅く危険な状態だ。
エルヴィーラにもはや選択肢はなく、心の中で祈りを捧げた。
(女神様、神殿での非道な振る舞いを止められず申し訳こざいません。どうか無垢な幼子に慈悲をお恵みくださいますよう、お願い申し上げます)
変化の魔法をかける時に髪に刺した簪を見えないようにして、忍ばせていた。身を護るための武器で自害用ではなかったが、自分にできる最後の抵抗として首元に狙いを付ける。
(エリー様、どうかお幸せに……)
一瞬後、地下牢に絶叫が響き渡った。
フリッツの安否の確認出来ておらず、ダミアーノとも初日以降顔を合わせていない。
(あの方のことだからすぐにエリー様の力を利用するかと思っていたわ……)
ただ部屋に閉じ込められているだけの状況は完全に予想外だった。これではダミアーノの目的を探ることはもちろん、フリッツを救出することも叶わない。
身じろぎすればじゃらりと鎖が音を立てて、罪人のような扱いに気分が塞ぐ。
とはいえ聖女の力を封じるという手枷を付けられているおかげで、まだエルヴィーラが聖女ではないと疑われていないはずだ。
「少し外の空気が吸いたいのだけど……」
「申し訳ございません。ご要望にはお応えいたしかねます」
部屋の隅に控えている侍女に声を掛ければ平坦な謝罪が返ってくる。
(せめて部屋から出ることが出来れば、何かの手がかりを得ることが出来るかもしれないのに……)
時計を見ればヴィクトールとの面会時間が迫っており、ますます憂鬱な気分になった。
エリーの好きそうな菓子や花束などを持ってくるようになったあたり、少しは気持ちに寄り添うようになったのかもしれないが、相手の自由を奪った状態で好意を伝えてくるのは神経を疑ってしまう。
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「暴れていたのでこんな場所でしか保護することが出来なかったのですよ」
そう嘯くダミアーノに目もくれず、エルヴィーラは少年に目を走らせる。乱暴に扱われたせいで服の一部が破れ、顔には痣が出来ていたがその瞳の輝きは失われていなかった。
フリッツが鉄格子に手を伸ばした時、背後に立っていた男が乱暴に首元を掴み引き剥がす。
「止めて!その子に暴力を振るわないでください!」
鉄格子を隔てた牢内にいるフリッツを庇ってやれないことにもどかしさを感じながら、エルヴィーラは声を上げることしか出来ない。
同じ光景を見ているはずなのに、眉一つ動かすことのないダミアーノやヴィクトールに恐ろしさを感じた。自分の贖罪ために、エリーの役に立つために身代わりとして来たが、何かを間違えたような嫌な予感を覚える。
「エリー、魔王に蹂躙されればどれだけの民が犠牲になると思う?彼らの平穏を守るには君の力が不可欠なんだよ」
「彼も王太子殿下が護るべき大切な民の一人です。どうかフリッツを解放してください」
エリーだったらどう振舞うかという考えはすっかり頭から抜け落ちていた。暴力の気配に焦ってしまい、考えるよりも先に言葉が出てしまったのだ。
「それほどお気に入りだとは。聖女様が考えを改め、この国のために尽力することを誓言して頂けるなら、彼を解放してあげましょう」
誓言は女神様への誓いの言葉で、軽々しく用いるものではない。
(ましてやエリー様でもない私が聖女として誓いを立てるなんて女神様への冒涜だわ)
躊躇いがないと言えば嘘になるが、フリッツを助けるためだ。誓言を行うのはあくまでエルヴィーラなのだから、エリーにとって不利益に働くこともないだろう。
「これを嵌めて女神様に誓って頂ければ、その拘束も解いてあげましょう」
細いシルバーのチョーカーにエルヴィーラは嫌悪感を覚えた。一見ただの装飾品のようだが、どこか両手に嵌められている手枷と同じような嫌な感じがしたのだ。誓言だけで好き勝手に利用できるとは思えないため、あのチョーカーにこそ何か仕掛けがあるのかもしれない。
慎重に動かなければ、とエルヴィーラがそちらに気を取られていると、視界の片隅によぎるものがあった。何かが反射したのだと、目が自然にそれを追いかけたエルヴィーラは、その光景に息を呑んだ。
鈍い輝きを放つナイフ、突然の出来事に目を見開くフリッツの顔、瞬く間にシャツが濡れたように暗く染まり、そこから溢れた鮮血が冷たい床に零れ落ちていく。
「――――フリッツ!!!」
床に倒れたフリッツに駆け寄り、格子の隙間から手を握りしめた。その感触にフリッツが顔を僅かに上げると血の気が引いていくのが分かる。
「ソフィアは……」
「大丈夫、あの娘は無事よ」
安心させるために力強く答えれば、フリッツは安心したように口の端を上げた。
「俺のせいでごめんな、聖女様。ありがとう」
「――もう喋らないで。出血がひどくなるわ」
ひたひたと広がっていく血液に、エルヴィーラは後悔と罪悪感に襲われていた。
(エリー様なら癒すことが出来るのに……!)
自分が身代わりになったことで、幼い命が失われてしまうのだという事実に視界が揺れる。例え誓言して拘束を解かれたとしても、自分にフリッツを癒すことが出来ないばかりか偽者であることが露見してしまう。
ただ手を握りしめることしか出来ないエルヴィーラに冷ややかな声が落ちた。
「ふん、やはりはエルヴィーラだったか。その手枷はな、聖女であれ魔物であれ力を使え反応を示すものだ。その聖女の姿は魔王の力によるものだな?」
髪を強く引っ張られて生理的な涙がにじむ。だがこれぐらいフリッツの痛みを考えれば何てことはない。
(フリッツを……助けないと。でもどうやって……)
聖女だと認識されていれば、自分の命を盾にフリッツの解放を要求するつもりだった。一度きりのチャンスであるためフリッツが本当に無事かどうか、確かめるまではと実行できずにいたのだ。
「待て、どういうことだ。最初から偽者だと分かっていたのか?エリーが見つかったと知らせてきたのはお前だろう!私はずっと侍女風情の相手をしていたというのか!」
激昂するヴィクトールにダミアーノは感情のこもらない瞳を向ける。
「わざわざ子供一人のために聖女がくるはずがないでしょう。魔王にとっても有益な存在のようですから、そう簡単に手放すことなどあり得ないのでは?殿下は些か素直過ぎるきらいがありますな」
そんなやり取りの中、ヴィクトールの後方に控えていた兵士が静かに動いた。
「――殿下!お逃げください!」
切迫した声に異変を感じ取ったヴィクトールは背後を振り返ったが、遅かった。
「ぐっ……何を」
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「そんなこと――っ、貴方はエリー様に罪を被せるつもりですね」
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(どうして、こんなに無力なの……)
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「貴方の思い通りになどなりません。エリー様も魔王陛下も貴方のような方に負けるものですか」
「何の力もない小娘が戯言を。どれほど強い相手でも、数の前には無力なのだ。まあお前を生かしておけばあの聖女への嫌がらせぐらいにはなるかのう。――逃げぬよう片足を切り落としておけ」
ヴィクトールを刺した兵士が今度は腰から剣を抜く。足元に倒れたヴィクトールはまだ息があるようだが、呼吸は浅く危険な状態だ。
エルヴィーラにもはや選択肢はなく、心の中で祈りを捧げた。
(女神様、神殿での非道な振る舞いを止められず申し訳こざいません。どうか無垢な幼子に慈悲をお恵みくださいますよう、お願い申し上げます)
変化の魔法をかける時に髪に刺した簪を見えないようにして、忍ばせていた。身を護るための武器で自害用ではなかったが、自分にできる最後の抵抗として首元に狙いを付ける。
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