無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ

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第11話

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 ネコノはその後も戦闘を続けた。

「カケルさんは後ろで見てて!」
「分かった」

 ネコノが4体のアリを倒していく。

『カケルがいると頼もしいな』
『いざとなれば瞬殺&気功があるからな』
『しかし1回目、2回目、3回目とアリだけだな』
『ムカデとクモ、ダンゴムシまだあ?』
『アリは距離を取って連携したりするから、1度当たれば何度も当たるのはよくあるで』
『まあ、カマキリよりもアリは安心して見てられるわ。アリの連戦は悪くない』

「はあ、はあ、倒したよ!」

『おめ~』
『お疲れー!』
『リコの動きが綺麗で良いな』

「ネコノ、大穴を出ようか。息が上がっている」
「そ、そうだね。配信を終わるね」

『大穴を出るまで継続希望』
『同じく』
『俺も同じく』

「……大穴を出るまで配信を続けるね」
「分かった」

 きゅうとネコノが反応した。

「アリが13体いるよ!」
「俺がやろう」

 俺はアリ13体を拳で倒した。
 魔石に変わった瞬間に空中で魔石をキャッチする。

『あっけないくらいサクッと倒すよな』
『倒すのが速いよ!』
『倒した瞬間に魔石をキャッチするのがかっこいいな』
『なんだろう。作業のように無駄がない感じがする』
『カケルが倒すとアリが弱く見えてしまうから不思議だ』

 少し目立ってしまったが、これで良かったと思う。
 隠れていると会社時代に部長に気を使っていた頃を思い出してしまうのだ。
 顔出しは、会社と決別する儀式のように利用する、これでいいのだ。

 もう俺は会社とは関係ない、自由にしていいのだ。
 俺達は歩いて大穴を出た。

「チャンネル登録といいねをよろしくね!バイバイ!」

 昼前に大穴を出て配信を終わらせた。

「お腹空いた?」
「きゅう!」
「空いたみたいだな」
「うん、きゅうもだけど、カケルさんはお腹空いた?」

「そうだな。空いた」
「じゃあ私が作っていい?」

 反射的に断ろうと思った。
 でも、断っても昨日と同じ流れになるだろう。
 受け入れた上でお金を払おう。

「……お願いします」
「2人は何が好きなの?」
「俺はカレーパンと、後、何でも食べるな。きゅうは、俺と同じで何でも食べるけど、きゅうもカレーパンが好きだ」

「スパイスカレーは好きかな?」
「俺もきゅうも大好きだ」
「カツカレーは?」
「好きだ」

「スパイスカツカレーにしよ」
「きゅう♪」
「きゅうも大喜びだ」
「きゅうは分かりやすいよね」

「お金は払うから」
「いいよいいよ、それを言うならカケルさんときゅうのおかげで登録者数が増えたから、私がお金を払わないといけなくなっちゃう」

 そう言って俺を見つめる。
 ネコノが作ってくれて何が食べたいかもちゃんと聞いてくれる。
 とてもやりやすい。

「そっか、うん、ご馳走になります」
「よろしい」

 2人でネコノの家に着くと中に入ってキッチンに座って待つ。

「あ、お肉が無い、ちょっと時間がかかるかも」
「買って来るぞ」

 丁度いい、肉代位は払おう。
 ごちそうになってばかりだと悪い気がしてくるのだ。

「お願い。ひき肉のスパイスカレーなら早く出来るけど、どうだろ?」
「きゅう、大丈夫か」
「きゅう」

 きゅうがこくりと頷いた。
 まるで重鎮のようにテーブルに佇む。

「買って来る」
「600グラム以上でお願い、出来ればあいびき肉で」
「分かった。何か飲むか?」
「野菜ジュースで」
「買って来る」

 スーパーで買い物をして帰ると玉ねぎを炒めるいい匂いがした。

「お帰り」
「……ただいま」

 お帰りと声をかけられて不思議な気持ちがした。
 きゅうがネコノの頭に乗って炒めて色がついていく玉ねぎをじっと見つめている。
 ……きゅうは、凄く楽しみにしてるじゃないか。
 俺は思わず笑ってしまった。

「え?なになに?」
「きゅうが、スパイスカレーが出来るのを今か今かと待ってて面白かった」

「ふふふ、きゅう、楽しみなの?」
「きゅう♪」
「きゅうが頭に乗ると頭がぽかぽかしてくるね」
「体温が高いんだ」
「きゅうカイロだね」

 俺は笑った後冷静になった。
 今までちゃんとした料理を作ってやれなかった。
 時間さえあれば料理は出来るんだけど……
 これからはきゅうに手の込んだ料理を作ろう。

「丁度良かった」
 
 俺はひき肉を渡すと、ひき肉を投入して炒めた。
 更にトマトの缶詰を入れて水分を飛ばしている。

「ゆっくりしてて」
「ああ、後はよろしく」

 制服の上からエプロンをつけて料理をするネコノを後ろから見つめる。
 動きが綺麗で見ていて飽きない。

 スパイスの匂いが部屋中に広がってサラダ・スープ・ご飯にスパイスカレーが盛られて運ばれてきた。

「私がきゅうに食べさせていい?」
「いいけど、きゅうは顔で食べるからなあ」

「カレーで顔が汚れちゃうよね……あ!動画にしていい?」
「いいぞ」

 いつもの挨拶をして撮影を始める。

「ネコリコチャンネルのリコです。カケルさんもいます」
「あ、どうも、カケルです」
「今日はきゅうコラボできゅうにスパイスカツカレーを食べさせていくよ」

 これって、炎上しないか?
 ネコノと同じ建物の中にいる。
 でも、ネコノは炎上を気にしていないようだった。

 後、食べさせる企画なら、ネコノが作る所から動画を撮った方がいいと思った。
 あ、今思いついて始めたのか。

『うおおおおぉ!うまそう!』
『ぱんにゃんのカレーパンを食べた事がある。拙論絶対にうまい奴!』
『きゅうの目が輝いておられる』
 
 ネコノはテーブルに座るきゅうに向き合い、右手にスプーン、左手にスマホを構えて食べさせる。

「は~い、今からきゅうがカレーを食べま~す。あーん」

 きゅうは顔をカレーまみれにしながら食べる。

『きゅうの口にカレーの髭が付いとる』
『可愛いな』
『きゅうはマジ天使だわ』

「ふふふふ、顔で食べてる、ふふふふふ」

『リコの声がエロいな』
『音声をリピートしよ』
『お前ら、自分がきゅうになったつもりで、後は分かるな?』

 ネコノの声もいいんだよな。
 きゅうを見ない層にも見て貰える動画になる気がする。

 撮影が終わると、ネコノが叫んだ。

「あ!そうだ!」
「どうした?」
「そう言えば、きゅうの1日ルーティンの要望があったよ。カケルさん、作ろうよ。絶対に伸びるよ!」

「その前に、ネコノはチャンネル登録者数を増やしたいか?」
「増やしたいよ?」
「なら、ネコノの動画で撮ろう」

「え?でも、作ればお金になるよ?多分、再生数は伸びるよ?」
「いや、いいんだ。コラボしようか」

「……ありがとう」

 ネコノが俺の手を両手で握って抱きしめるように胸に近づけた。
 ネコノは、俺が本気で嫌がっていなければ遠慮しないんだろうな。
 ……俺は、ネコノとぶつかりそうになった時も、本気で嫌がっていなかったのか? 
 心にもやがかかったような感覚がする。

「じゃ、いこっか」
「ん?」
「カケルさんの家」
「んん?」

 1日ルーティン、きゅうが起きてから寝るまで、つまり俺の家か。
 そう言えばそうなる。

 食後に俺の家に向かった。

「お邪魔します……ガランとしてるね」
「物が増えると掃除が面倒だし、節約してたから」

 掃除をしておいて良かった。

「え?節約して何か欲しい物でもあるのかな?」
「無いけど急に会社を辞める事になったり何が起きるか分からないのと、後は」
「ごめんごめん!もういいよ!」

「暗い話をしてしまった。動画撮影を始めようか。きゅうも準備できてるか?起きる所から体を洗って寝る所までを撮影するぞ」
「きゅう♪」

「嬉しそうだね」
「洗われるのが好きだから」

 きゅうがベッドに乗って目を閉じた。

「ふふふ、もうスタンバイ出来てる」

 俺もベッドで寝る。

「あ、待って」

 ネコノが俺の髪を触る。
 そして髪を手櫛でセットした。
 ネコノは不意打ちのようなボディタッチがたまにある。
 触られるたびにドキッとする。

「寝起きでも、髪を整えるよ。カーテンも閉めるね」

 俺ときゅうが寝てネコノがスマホを構える。

「いいよ」

 きゅうが起きて俺の顔をすりすりする。

「きゅう、おはよう」
「いいよ!いい!どんどん行こう」
「続けて撮るんだな」
「後で編集するから気にせず続けて」

 きゅうが俺の手に乗った。
 洗面所にお湯を溜めてきゅうを入れる。きゅうは目を閉じて俺に体を委ねなすがまま洗われた。

 その後はコーンフレークタイム、そして大穴に行くためきゅうを乗せて玄関のドアを開けて部屋を出た。
 すぐ戻ってきて食事、そして俺の頭に乗る。

「お風呂なんだけど、下にズボンを履いて上だけ裸になってきゅうを洗えば問題無いよな?会社時代はシャワーで済ませてたけど、浴槽で下半身は隠しておきたいし、湯気で動画が曇るからお湯は貯めずにきゅうを洗っている所だけ見せるか」
「それでいこ」

 俺は上を脱いだ。
 ネコノの顔が赤い様な気がしたがそのまま続けた。
 急に服を脱がれたらびっくりするよな。

「きゅう、次はお風呂であわあわマッサージだ」
「きゅう♪」

 きゅうを桶に入れて泡で洗い、乾かしてベッドに入る。

「はい、お疲れ様」
「いやいや、これからの編集の方が大変だからな」

「いい動画にするよ」
「俺の方で、適当にネコリコチャンネルを宣伝していいか?」
「え?いいの?」
「うん」
「お願いするね。後でお返しするよ」

「いいって、家まで送ろう」
「大丈夫、まだ外は明るいよ」
「でも、ヤバそうな人に絡まれてたばかりだ。違うな、このまま一人で帰して何かあったら嫌なんだ。送っていこう」

 俺は遠慮するネコノを強引に家まで送った。

「今日はありがと、明日も時間はあるかな?」
「どうだろ?きゅうの気分や会社を辞めた後の整理次第で変わるかな」

 嘘である。
 作ろうと思えば時間は作れる、でも、心に引っ掛かりがあった。
 部長との関係でまだ俺は疲れているのかもしれない。

 また会いたいような、距離を置きたいような、2つの想いが混ざり合うような感覚だ。

「そっか、バイバイ」
「また」

 また、か。
 俺はアパートに帰った。

 ネコノと、ネコノママの事を思い出す。
 2人は楽しそうに話をしていた。
 あれが、普通の家族なんだろうか?

 ネコノが料理を作る姿を思い出す。
 笑顔で美味しい料理を作って貰って、不思議な感覚になった。

 俺はまたネコノと会うのを躊躇している。
 でも、心が温かくなって、楽しかった。

「俺は、俺は、どうしたいんだ?」

 正反対の想いがぶつかり合い、俺の心は揺れていた。
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