銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第四章 権謀術策 

裏口から屋敷へ

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 戦力の少ない私たちが唯一勝ち得る手段――それは敵の頭を押さえること!
 そのために、ムキから傭兵たちを引き離した。
 だが、それだけでは足りない……その不安はエクアも感じ取っているようだ。


「ムキ=シアンを捕えても、黙って言うことを聞いてくれるでしょうか? その場で頷いたとしても、傭兵が戻ってきたら……」
「ふふ、その心配無用だ。もう、手は打ってある」
「え、そうなんですか? それは?」

「まず、ムキたちは大きな間違いを犯している」
「間違い?」
「理由はどうあれ、彼らは古城トーワに攻め込んだ。王都へ上奏もせずに、他の領主の領地に攻め込んだとががある」

 
 我々領主は、ヴァンナス国からめいを受けて土地を預かる。
 預かった土地にあるものは全て領主のものとなり、領主には自治権が与えられ、領内において王の如き振舞いを行える。

 だが、大枠はヴァンナス国に所属していることを忘れてはならない。

 大きな事を成す時は、王都の中央議会に上奏する義務がある。
 今回の諍いもそれに該当する。
 領主同士が諍いを起こした場合、中央議会に調停を申し込むか、剣を以って収めるかを選ぶことになる。

 どちらの場合も中央議会に上奏し、判断を仰がなければならない。
 だが、ムキはそれを行わず、勝手な判断で他領地に攻め込んだ。たとえ、それが少人数であっても、この事実は消せない……。


 ここまでの話を聞いて、エクアが質問を投げかける。
「もし、ムキ=シアンが上奏していたらどうなっていたんでしょう?」
「通常は中央議会が調停役を買って出て、無理やり治めることになるな。だが、互いもしくはどちらか一方が矛を収めない時は、戦争を許可することもある」
「そんな……」

「同じヴァンナス国に所属しながら何故と思うだろうが、ヴァンナス国の領地は広大で手の回らない場所もある。領主同士が争い、話し合いで解決しない場合は、そろばんを弾いて放置することもあるというわけだ」
「損得勘定ということですか?」

「有用な技術や資源がある領地は優遇されやすいな。因みにそういったこととは別に、議会が一方にだけ肩入れをして援軍を送る場合もある」
「一方に?」

「二十年ほど前、凶王という通り名の付いた領主が無茶をして他領地に攻め込み、相手方の領民を虐殺したことがあってな。そこで、王都から数万を派兵して討伐したことがある」
「そんなことが……」

「残念な話ではあるが、ヴァンナス国は強大だが万能ではない。だから、多くの問題を抱えている。これらの問題は中央議会が様々な施策を打ち出し解決しようと試みているが……うまくいっていないのが実情だ」
「よくわかりませんけど、色々大変そうですね」

「そうだな。私も短い間とはいえ中央で議員をやっていたから、中央議会の混沌ぶりは誰よりも理解しているよ。まぁ、混沌の原因のほとんどが『ネオ陛下』なんだが……」
「はぁ?」
「っと、最後の部分は忘れてくれ。ははは」


 私は陛下の名を使い、話を誤魔化した……原因なのは事実だが……。
 それはさておき、誤魔化したものとはエクアの質問――『傭兵が戻ってきたらどうなるのか?』

 もちろん、手を打っているのは本当だが、詳しい話をエクアにしたくはなかった。
 話せば、ムキの末路にまで繋がる。
 作戦完遂後、彼は己の犯した以上の罪を背負うことになるからだ。
 
 これらのことはいずれエクアの知ることになるだろうが、今は時ではない。
 知れば、少女に迷いが出る……また、知って行動すれば、大きな重荷を背負うことになる。

 私は軽い笑いを上げながら、ギウをチラリと見る。
 ギウは『ギウ?』と言って、とぼけた振りを見せた。
 だが、彼はとても賢い。なんとなく、結末を感じ取っているように見える。
 それでも、黙って私の隣に立ってくれている。

 
 彼とは出会って間もない。
 でも、何故か、彼とは心の奥底から理解し合っているように感じる。
 まるで、とても昔からの友であるかのように。
 

 私は小さく息をつき、暖かくも不可思議な感情を胸の奥にしまい正面を見据えた。

「裏口が見えたぞ。ここからはお喋りは抜きだ」



――ムキ=シアンの屋敷・裏口 


 さすがに深夜であるため、裏口の扉は閉まっていた。
 しかし、老翁の話しどおり、日頃業者の出入りが激しい裏口は人の出入りのチェックが面倒なためか、警備の意識は緩んでいるようだった。

 私たちは業者を騙り、ムキから緊急の用事で呼び出されたと伝えると、彼らは何の疑いもなく扉を開ける。
 扉からは二人の警備が顔を出した。

「ん、見ない顔だな?」
「ええ、なにせ緊急なんで。今日の警備は二人だけですか?」
「あん、そうだが……ん、なんでギウが?」
「あはは、それは私たちが――招かれざる客ですから」
「は? あ、その銀の眼はっ?」

「ギウ、行くぞ!」
「ギウギウ!」

 私とギウは扉から飛び込み、二人の警備を瞬く間に制圧する。
 彼らに猿轡を噛ませ、縄でふんじばり、人の目がつかなそうな草陰に転がした。


「侵入成功、と」

 私は一仕事を終えたとばかりに両手をはたきながら屋敷を見上げる。
「デカい……ここからムキを探すとなると骨が折れるな」
「ギウ?」
 ギウが草陰で芋虫のように悶えている警備に銛を向ける。

「いや、止そう。彼らから場所を聞き出しても本当かどうか確認できない上に、無理やり案内させても、ちょっとした隙に何をしでかすかわからない」

 と言い、エクアに気づかれないように彼女へ瞳を動かした。
 私とギウだけであれば警備を脅し案内させてもよかったが、警備もまた荒くれ者。
 何かの拍子に私たちの手からすり抜けて、エクアを危険に晒す可能性がある。

「それじゃあ、どうやってムキ=シアンの居場所を?」
 不安の混じる声を上げたのはエクア。
 私は彼女へ自信をもって答える。

「何も問題はない。他の者に堂々と尋ねればいいだけのことだ」
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