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第六章 活気に満ちたトーワ
二人の狂戦士
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――執務室
実践派の長である、フィナを執務室に通した。
彼女は部屋に入るなり、右隅に置いてあるベッドを見て軽く笑いを漏らす。
「クスッ。これあれでしょ。寝室に戻るのが面倒でここに置いたのね」
「よくわかるな。部屋の整備が追いついていないという理由もあるが」
「ふふん、研究者の類ってみんなそんな感じだから。それで、依頼って?」
「そうだな。まず、話の前にお茶を淹れよう」
――コンコン
ノックが響く。誰だろうか?
「構わない、入ってくれ」
そうノックに言葉を返すと、木製のトレイにお茶とクッキーを乗せたギウが入ってきた。
ギウはフィナを見て、ペコリと身体を正面に振った。
「ギウギウ」
「あら、ご丁寧にどうも……ギウを雇ってるの、ケント?」
「雇っているわけじゃない。友として、一緒に暮らしている」
「へぇ~、珍しい。ギウが人とつるむなんて」
ギウはフィナの言葉に軽く会釈をしたあと、お茶とクッキーを執務机に置き、本棚の近くに置いてあった椅子を執務机と向き合う形で置いた。
私はギウに尋ねる。
「お茶の用意を頼んだ覚えはないのだが、いったいどうして?」
「ギウギウ、ギウ」
「ああ、エクアから聞いたのか。だが、あの子は客室の準備をしていたはずだが?」
「ギウ、ギウギウギウギウ」
「ふむふむ、エクアが浴場に訪れて、おそらく客人を執務室に通すだろうから、お茶とお菓子を。自分は客室の準備があるから、と……ふふ、侮れないな、あの子は。ありがとう、ギウ」
「ギウ~」
ギウは尾っぽをパタっと軽く振る。
その尾っぽの後ろでは、私とギウのやり取りを見ていたフィナが指先を顎に当てていた。
「凄いね。ギウと会話ができるなんて」
「それについてはよく言われるが、返しとしてはなんとなくわかっているだけだ。因みに、この城にいるエクアや大工衆も、私ほどではないが多少はわかる。要は慣れだろう」
「ふ~ん、面白い。そして、面白いと言えば、そっちのギウ。他のギウとはちょっと雰囲気が違う感じ。そしてっ」
フィナは紫が溶け込む蒼の瞳をきらりと光らせる。
すると、私がその光の意味を尋ねる間もなく、フィナは突然、ギウにナイフを放った。
「なっ!?」
私の驚きに反して、ギウは冷静にナイフの刃を指で挟み、次にそのナイフをフィナに返す。
フィナは別のナイフの刃先でギウの放ったナイフを受け止め上に弾き、それを手の中に納めた……。
「やるぅ~。普通のギウの戦闘力も半端ないけど、あんたは桁違いね」
「ギウ、ギウ」
「いえいえ、どういたしまして。ふふ、なるほど。たしかに言葉はわからなくても、なんとなくわかるものね」
二人は互いに熟練の戦士のような掛け合いをしている。
だが、私は彼らの様子とはかけ離れ、怒りと驚きを込めてフィナに声を荒げた。
「君はいきなり何をやっている!?」
「あ、ごめんなさい。ついね」
「君は『つい』で、人にナイフを投げるのかっ?」
「そんなに怒んないでよ。ちゃんと、防げるくらいの力量があるかくらいはわかってやってるんだし」
「そういう問題ではない! 仮にも領主の前で刃物を抜き、その友人に攻撃を仕掛けたんだぞ。私じゃなかったら、君をっ」
「ケントは何もしないんでしょ? なら、問題ないじゃない」
「あのな、もう!」
悪びれることなくフィナは私を見ている。
こいつは相当な問題児のようだ。
よくもまぁ、ファロム様はこのような人物に……いや、ファロム様もそういったところがあるにはあったが、それ以上にやんちゃが過ぎる!
「フィナ! はっきり言っておくが、非常識な真似はやめろ。冗談でナイフを投げるなどもってのほかだ!!」
「ちょ、ちょっと、そこまで本気にならなくても」
「なる! もし、大切な友人が怪我でもしたら、私は君を許さない。わかったなっ!」
「わ、わかったよ。もう、口やかましいんだから」
とりあえず、私の言うことは理解したようだが、納得している素振りはない。
私はため息とともにギウに顔を向ける。
「怪我はないか?」
「ギウ」
「言っておくが君も君だ。相手が仕掛けたとはいえ、ナイフを投げ返す必要はないだろっ」
「ぎ、ぎう~」
「相手は凄腕のようだが、まだ子どもだ。軽々しく挑発に乗るんじゃない」
「ちょっと、子どもって何よ!?」
「君のことだっ!」
「うわっ、こわ……」
「まったく、君たちは狂戦士か。どうしても互いの力量が知りたいなら、せめて場所を選べ。わかったな」
「ギウ」
「はい……って、なんで私があんたなんかに」
「なんだっ?」
「いえ、なんでもないです……」
私は大きくため息をつき、ギウに下がるよう言った。
その際、フィナがキサからまんまと売りつけられた野菜を渡す。
野菜たちは今日の夕飯に生まれ変わるだろう。
ギウが去り、執務室には私とフィナの二人になる。私は彼女に椅子へ座るよう促し、私も執務机の椅子に座った。
「とにかく、椅子に。今のような無茶をしないと誓うならば歓迎しよう」
「悪かったよ。ここまで怒られるとは思わなかった……」
「なに?」
「なんでもないで~す」
「まったく……一つ、質問をしてもいいか?」
「なに?」
「先程、ギウは他のギウとは違う、と言っていたな。何がどう違う? 私はあまりギウの種族について詳しくないので教えて欲しい」
実践派の長である、フィナを執務室に通した。
彼女は部屋に入るなり、右隅に置いてあるベッドを見て軽く笑いを漏らす。
「クスッ。これあれでしょ。寝室に戻るのが面倒でここに置いたのね」
「よくわかるな。部屋の整備が追いついていないという理由もあるが」
「ふふん、研究者の類ってみんなそんな感じだから。それで、依頼って?」
「そうだな。まず、話の前にお茶を淹れよう」
――コンコン
ノックが響く。誰だろうか?
「構わない、入ってくれ」
そうノックに言葉を返すと、木製のトレイにお茶とクッキーを乗せたギウが入ってきた。
ギウはフィナを見て、ペコリと身体を正面に振った。
「ギウギウ」
「あら、ご丁寧にどうも……ギウを雇ってるの、ケント?」
「雇っているわけじゃない。友として、一緒に暮らしている」
「へぇ~、珍しい。ギウが人とつるむなんて」
ギウはフィナの言葉に軽く会釈をしたあと、お茶とクッキーを執務机に置き、本棚の近くに置いてあった椅子を執務机と向き合う形で置いた。
私はギウに尋ねる。
「お茶の用意を頼んだ覚えはないのだが、いったいどうして?」
「ギウギウ、ギウ」
「ああ、エクアから聞いたのか。だが、あの子は客室の準備をしていたはずだが?」
「ギウ、ギウギウギウギウ」
「ふむふむ、エクアが浴場に訪れて、おそらく客人を執務室に通すだろうから、お茶とお菓子を。自分は客室の準備があるから、と……ふふ、侮れないな、あの子は。ありがとう、ギウ」
「ギウ~」
ギウは尾っぽをパタっと軽く振る。
その尾っぽの後ろでは、私とギウのやり取りを見ていたフィナが指先を顎に当てていた。
「凄いね。ギウと会話ができるなんて」
「それについてはよく言われるが、返しとしてはなんとなくわかっているだけだ。因みに、この城にいるエクアや大工衆も、私ほどではないが多少はわかる。要は慣れだろう」
「ふ~ん、面白い。そして、面白いと言えば、そっちのギウ。他のギウとはちょっと雰囲気が違う感じ。そしてっ」
フィナは紫が溶け込む蒼の瞳をきらりと光らせる。
すると、私がその光の意味を尋ねる間もなく、フィナは突然、ギウにナイフを放った。
「なっ!?」
私の驚きに反して、ギウは冷静にナイフの刃を指で挟み、次にそのナイフをフィナに返す。
フィナは別のナイフの刃先でギウの放ったナイフを受け止め上に弾き、それを手の中に納めた……。
「やるぅ~。普通のギウの戦闘力も半端ないけど、あんたは桁違いね」
「ギウ、ギウ」
「いえいえ、どういたしまして。ふふ、なるほど。たしかに言葉はわからなくても、なんとなくわかるものね」
二人は互いに熟練の戦士のような掛け合いをしている。
だが、私は彼らの様子とはかけ離れ、怒りと驚きを込めてフィナに声を荒げた。
「君はいきなり何をやっている!?」
「あ、ごめんなさい。ついね」
「君は『つい』で、人にナイフを投げるのかっ?」
「そんなに怒んないでよ。ちゃんと、防げるくらいの力量があるかくらいはわかってやってるんだし」
「そういう問題ではない! 仮にも領主の前で刃物を抜き、その友人に攻撃を仕掛けたんだぞ。私じゃなかったら、君をっ」
「ケントは何もしないんでしょ? なら、問題ないじゃない」
「あのな、もう!」
悪びれることなくフィナは私を見ている。
こいつは相当な問題児のようだ。
よくもまぁ、ファロム様はこのような人物に……いや、ファロム様もそういったところがあるにはあったが、それ以上にやんちゃが過ぎる!
「フィナ! はっきり言っておくが、非常識な真似はやめろ。冗談でナイフを投げるなどもってのほかだ!!」
「ちょ、ちょっと、そこまで本気にならなくても」
「なる! もし、大切な友人が怪我でもしたら、私は君を許さない。わかったなっ!」
「わ、わかったよ。もう、口やかましいんだから」
とりあえず、私の言うことは理解したようだが、納得している素振りはない。
私はため息とともにギウに顔を向ける。
「怪我はないか?」
「ギウ」
「言っておくが君も君だ。相手が仕掛けたとはいえ、ナイフを投げ返す必要はないだろっ」
「ぎ、ぎう~」
「相手は凄腕のようだが、まだ子どもだ。軽々しく挑発に乗るんじゃない」
「ちょっと、子どもって何よ!?」
「君のことだっ!」
「うわっ、こわ……」
「まったく、君たちは狂戦士か。どうしても互いの力量が知りたいなら、せめて場所を選べ。わかったな」
「ギウ」
「はい……って、なんで私があんたなんかに」
「なんだっ?」
「いえ、なんでもないです……」
私は大きくため息をつき、ギウに下がるよう言った。
その際、フィナがキサからまんまと売りつけられた野菜を渡す。
野菜たちは今日の夕飯に生まれ変わるだろう。
ギウが去り、執務室には私とフィナの二人になる。私は彼女に椅子へ座るよう促し、私も執務机の椅子に座った。
「とにかく、椅子に。今のような無茶をしないと誓うならば歓迎しよう」
「悪かったよ。ここまで怒られるとは思わなかった……」
「なに?」
「なんでもないで~す」
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