銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
70 / 359
第六章 活気に満ちたトーワ

ギウと銃と銀眼と

しおりを挟む
 フィナにギウのことについて尋ねると、彼女はこう答えてきた。


「私もそんなに詳しいわけじゃないよ。ただ、さっきのギウが私の知るギウと少し違うってくらい」
「それで構わない。教えてくれ」

「そう? じゃあまずは、さっき見ての通り、桁違いに強い。普通のギウは魔族を一対一で倒せる程度の実力。いわゆる、一流の戦士と呼べるくらいの強さでしかない」

「それでも十分凄いが、ギウはそれ以上と?」
「ええ。私は錬金術師だけど、それでも並みの魔族なら一度に三匹くらい相手にしても勝てる自信がある。でも、正直さっきのギウには勝てないと思う」

「何気に君も凄いが、ギウはそれを超えるというのかっ?」
「うん。それに彼、軍か警備かの正式な訓練を受けた経験があると思う」
「軍の?」

「歩く歩幅が一定で、体幹が訓練によって作られたって感じがするから」
「ギウが、軍に所属? ギウが戦争に参加することはあるのか?」
「聞いたことない。だから不思議」


 フィナはそう言って首をかしげた。私も彼女と同じく奇妙な思いだ。
 特にギウのことを知る私は、彼が昔、軍にいたなど到底信じられない。
 フィナはこの不思議に、さらなる不思議を被せる。

「これも不思議なんだけど、彼からは他のギウにはない、知性を感じる」
「知性?」

「他のギウももちろん、時にそこらの人なんかよりも知的な感じがするけど……なんていうかなぁ、あんたの友人のギウはもっと何か、深い感じがする。これは錬金術師としての勘みたいなものかな」

「そうか……」
「あのギウは、ギウ界の天才とか?」
「ふふ、それは面白いな。だが、天才であろうがなかろうが、私の大切な友人だ」

 
 私はジロリとフィナを睨む。

「うへ、そこに話が戻るの……ん? あんたの目って……」
 フィナは私の銀の瞳を覗き込んでくる。ご丁寧に懐からルーペまで出して。
 私はすぐに視線を切り、顔を下へ背けた。

「やめろ、許可もなく人を調べようとするんじゃない」
「許可を求めてもくれないくせに……その瞳って、人間の瞳じゃないよね? 何らかの人工物? でも、義眼じゃない……もしかして、古代人の技術に関係してる?」

 まさか、瞳を見られただけでここまで深く切り込まれようとは……テイローの名は伊達ではないらしい。
 彼女の見立て通り、たしかにこれは普通の人間の瞳ではない。だからといって、完全な人工物とも言えない。
 人間の瞳に、あるモノが宿っているだけだ。

 これらはヴァンナスの機密事項に関係するので、私は冷たく彼女をあしらう。


「さてな……」
「調べたいなぁ~」
「駄目だ」
「言うと思った。いつか隙を見て調べようっと」
「君というやつは……調べるなら、こちらを調べてもらいたい」

 腰に付けたホルスターから銃を抜き、弾丸を収めるシリンダーを押し出し弾丸を取り出してから、それらを机に並べた。
 フィナはクッキーを貪りながら銃と弾丸を観察する。

「ぼりぼり、そうそれ、気になってたんだよねぇ。腰にぶら下げてる銃」
「食べかすを零すな」
「大丈夫。私、そういうの気にしないから」
「私が気にするんだ。それで、弾丸の製造を依頼したいんだが」

「弾丸ねぇ。でも、これって私たちが作る銃とは形式が違うよね?」
「土産屋の親父曰く、古代人のおもちゃらしい」
「は?」
「古代人のものって話だ」
「古代人が、銃ねぇ……見せてもらってもいい?」
「ああ、構わん。ただし、ナイフのようにいきなり発砲するのはよしてくれよ」
「しないよっ」


 フィナは銃を手に取り、じっくりと観察する。
 次に、弾丸を指先で挟み、持ち上げる。


「見た目は普通の銃っぽいけど、本当に古代人のなの?」
「さぁ? だが、少なくともこれを納めていた器は我々の技術を大きく凌駕するものだった」
「え!? そっちの方も見たい!」
「そのうちにな……話を戻すが、弾丸が六発しかないため、なかなか使いづらい。そこで、弾丸の製造を依頼したいのだが」
「なるほど……はぁ~あ」

 急にフィナはがっくりと頭を落とした。
 どうしたというのだろう?

「フィナ?」
「いえ、ごめんなさい。弾丸如き製造できないなんて、本当に錬金術士じゃないんだぁ、と思っちゃったわけ」
「まだ、疑っていたのか」
「アーガメイトの息子だもん。さすがに錬金術の何かくらい知ってると思うでしょ」
「すまないな、ご期待にとことん添えなくて……で、可能か?」

「それはもちろん。だけど、雷管の製造は面倒だから、そこは魔法石型点火装置に置き換えてもいい? そっちの方が安価だし、簡単に作れるから」
「こちらとしては弾丸が飛びさえすればいい。好きにしてくれ」
「火薬は調合するとして……あとは薬莢と弾頭だけど、これは私より『ワントワーフ』に依頼した方が早いと思う」


 ワントワーフ――鍛冶や金属の扱いに長けた種族。主に山を縄張りとし、大柄な者が多い。だが、少ないながらも草原に住む者もおり、彼らは山に住む者とは違いかなりスマート。
 見た目は犬そっくりで、山に住む者・草原に住む者、双方ともに、どの種族に対しても好意的な種族である。


「ワントワーフか。この半島だと……」
「半島とビュール大陸を仕切る、『ファーレ山脈』の袂に彼らの鉱山があるよ。彼らに依頼するとなったら最低でも百発単位じゃないと無理だけど」

「今後何があるかわからないから練習用も含めて、それくらいは欲しいな。問題は依頼料だが……君とワントワーフ、どの程度支払えばいい?」
「私は別にいらない」
「しかし」

「遺跡の探索許可とケツ持ちをお願いしてるから、それを依頼料にしてあげる」
「探索は許可していない。見るだけだ。それと、女性がケツ持ちなんて言葉を使うな」
「うわ~、男は~、女は~、とかいうタイプ。さすがおっさん」
「二十二っ。男女がどうとかという表現に問題があるならば、言い方を変えよう。男であれ、女であれ、あまり下品な言葉を使うものではない」

「その言葉もおっさんくさいよ」
「うるさい……それでワントワーフの依頼料だが、こちらの台所事情は芳しくなく、できれば安く済ませたいのだが。相場はわかるか?」
「まぁ、それなり~に?」
「その様子だと微妙みたいだな。仕方ない、何とか交渉で頑張ってみるか」


 私は机に置いた銃と弾丸を回収しようとした。
 だが、フィナがそれを止めに入る。

「ちょっと待ってっ」
「どうした?」
「一応、詳しく調べておこうっと思って。古代人の名前が出たのならね~」

 彼女はポシェットから、手のひらサイズのひし形の青水晶を取り出し、ふわりと浮かべる。
 私はその水晶の名を唱える。


「その水晶は、探査や分析、そして記録が可能な道具。真実の瞳ナルフか」
「そ、錬金術士には必須なアイテム。魔力を読んだり、エネルギーを捉えたり、成分を分析したり、ま、色々ね」

 フィナはナルフを使い、弾丸のチェックを始める。
 そして、水晶に映し出される波形をじっと見つめると、彼女は突然、ぞわりと産毛を逆立て、声を詰まらせた。


「こ、これ、中に詰まってるの火薬じゃない……」
「なに?」
「うそ……なに? この馬鹿げたエネルギー量は……ケント、あんたは一度も弾を撃ってないのよね?」
「ああ、そうだが」
「撃たなくてよかったね。撃っていたら、この城くらいなら軽く消滅させてた……」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...