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第十三章 呪われた大地の調査
結界解除
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――遺跡探索・入口
探索の準備が終え、私たちとマスティフ・マフィンは周囲の者たちに気取られぬよう、適当な言い訳をし、二日を掛け、古代人の遺跡の入口前にやってきた。
大地が盛り上がり生れ出た洞窟のような入口は、涸れ果てた音のない大地に囲まれ、命の輝き一つなく佇んでいる。
そこへ、輝きと響きを持つ、私・エクア・フィナ・親父・マスティフ・マフィンの六名が前に立つ。
フィナは早速、人頭ほどの大きさの正十二面体の深紅のナルフを取り出す。
「これのおかげでナルフ改良の手間が省けたけど……向こうでは一から改良したんだろうなぁ」
と、妙なことを呟き、遺跡を覆っている結界を覗き見る。
「結界枚数三十二。侵入の形跡なし。ま、変わらないでしょうね。じゃ、簡単に説明するから聞いてて」
フィナは結界を破る手順を述べる――以下の通り。
強化された赤い正十二面体のナルフで内部の様子を探る。
安全が確認されたら、結界の周波数の特定に掛かる。
特定後、フィナは同じ周波数の結界で身を包む。
これにより、結界を素通りできる。
内部に侵入し、結界の動力源である充填石を操作して、結界を小規模化。充填石の周りだけを覆うようにする。
――なぜ、最小化に留め充填石の動力を落とさないのか?
それは結界消去および不具合を充填石に探知されるとヴァンナスに警報が届くからだ。
そうなれば、転送で兵士が現れ、私たちは捕らわれてしまう。
そのようなことにならないように、あくまでも結界は作動していると偽装し、勘違いさせる。
これで結界の邪魔はなくなり、遺跡内部の探索が可能となる。
最後に、私たち以外出入りできないようにフィナがオリジナルの結界を張る、と。
説明を受けた私たちはこくりと頷き、フィナはナルフを使い結界内部を調査。
「よし、このナルフだと内部まで確認できる……入り口そばに病原体なし。生命反応もなし。放射線量は……人体に影響のないレベル。結界内に入っても害はない。ケントっ」
彼女はいつも使用している、手のひらサイズの青いひし形のナルフを投げ寄こした。
「ナルフは扱えるよね? それは魔導型だけど大丈夫?」
「ああ、錬金の道具類は一通り扱えるぞ。魔導型も機構はともかくユーザーインタフェースの基本は変わらないだろうから大丈夫だ」
「そう。それじゃ、サポートをよろしく。結界にダブルスキャンをかけて周波数を特定するから」
「了解だ」
私たちはそれぞれナルフを浮かべ、結界を走査する。
フィナは赤のナルフの水晶に浮かぶ波形と数字を睨みながら、基準とする周波数を読み上げる。
「結界三十二のうち第一壁の周波数特定。第一の周波数、2.7561レスル。これに基準を合わせるから」
「2.7561だな。第五・第十七・第二十三にランダムの変動パターン。魔力を感知して周波数を変えているようだ」
「私たちの存在に反応しているのね。それなら、その部分はナルフで制御して隔離。魔力を感知できないようにする」
「第十三・第三十・第六~第十に、他属性パターン。属性を分離して整理する……整理成功。周波数2.7561を維持」
「全結界のうち、変動パターンが安定しないのは、第十五・第二十・第二十八・第三十一。他結界の干渉波を読み取り、周波数を常に変化させてる」
「固定は?」
「無理。これらの結界に偽装干渉波を送り、周波数2.7561レスルになるよう調整してみる…………調整完了。2.7561を維持。それじゃ、次ねっ」
フィナは青色に輝く魔力で全身を包み、結界を生み出す。
私がその結界をナルフで読み取り、周波数を読み上げる。
「結界周波数2.7561」
「よし、この周波数を私のナルフと同期させて維持。これで通り抜けられる」
準備はできた。
この一連の流れを見ていたエクア・親父・マスティフ・マフィンが唸るような声を上げてきた。
「なんだかよくわかりませんけど、凄いですね……」
「今更ながら、旦那があのアーガメイトの息子なのを肌に感じますよ」
「ワシは魔導や錬金のことはさっぱりなので、何をやっているかもわからぬな。それにしてもフィナ殿はともかく、ケント殿もこのようなことができるとは」
「錬金は魔導を数値化する学問ニャ。魔導を知る俺はちょっとは理解できるけど、道具をあんな風に扱うのは無理ニャね。マスティフじゃニャいけど、ケントが扱えるのには驚いたニャ」
「私はアーガメイトの息子で、ドハ研究所に勤めていたこともあるからな。道具類を扱うことぐらいはできる。それに習いさえすれば、みんなも扱うことはできるぞ」
「ねぇ、次に進めていい? 結界の周波数維持は長く持たないんだから」
「そうだったな」
「じゃ、モニター頼むよ、ケント」
「了解」
フィナは洞窟の結界に近づき、前へ乗り出そうとしている。
私はその様子をナルフを通してモニターしてたのだが……。
「ん? これはっ! フィナ、待て!」
「な、なに、どうしたのっ!?」
「周波数が書き換えられている!」
「え、嘘っ?」
フィナは慌てて自分の赤のナルフの表面を見つめる。
しかし……。
「ケント、周波数は2.7561のままだけど?」
「表面上はなっ」
私は青色のひし形のナルフをくるくると回して面を指先で叩き、計算をやり直していく。
「浮かび上がっている波形は偽物だ。波形に重なるようにもう一つの波形が存在する。それが本物の周波数。これは同位周波帯による偽装工作だ!」
「もう一つの波形? 見てみる…………ほんとだっ! 私の設定した周波数に重なるように別の周波数が存在するっ。波に波をかぶせて偽装するなんて、なんて技術なの! ケント、よくこれを見破れたね」
「見破れるさ。これは父が得意としていた悪戯だ」
「父? アステ=ゼ=アーガメイトの!?」
「そうだ。目に見えるものが全てではない。答えは視線を越えた先にある。及ばぬ場所にある。父の言葉だ」
「結界の開発にはアーガメイトが関わっているわけか。まぁ当然よね。中に誰かが入った形跡はないから、外部から結界に何らかのシステムを追加したってところかな?」
「だろうな。思い返せば、父が一時期、ビュール大陸に出張していたころがある。おそらくその時だろう」
「人の親を悪く言いたくないけど、面倒なことするなぁ~」
「私としては久しぶりに父の影を見れて嬉しいが」
「ファザコン。で、本物の周波数は?」
「2.7569だっ。ファザコンで悪かったな」
「2.7569ね。ファザコンは認めるんだ。えっと、周波数を調整……調整終了。最終確認……問題なし。ケントは?」
「……問題なし。行けるぞ」
「それじゃあ~、行きますかっ!」
フィナが結界へ手を伸ばす。
手は結界を素通りして、指先は内部に届く。
足を一歩踏み出して、体ごと結界に埋めていく。
強固な三十二の結界は反発することなく、フィナを同志として迎い入れた。
結界を通り抜けて、岩の姿を象った充填石に向かい、ナルフを脇に浮かべる。
「よ~し、不審な兆候を見せずに結界を縮小しないと……ナルフと充填石を同期して、操作権限をオーバーライド……そして~、周波数2.7569を維持したまま、結界の縮小開始」
遺跡の入口を覆っていた結界はみるみるうちに小さくなっていく。
結界は内部にいた同じ周波数のフィナを突き通し、充填石だけを囲むように固定された。
トーワに訪れた実践派の錬金術師・フィナ=ス=テイロー。
彼女の誉れ輝く才と努力によって、ついに遺跡の扉が開かれたのであった。
探索の準備が終え、私たちとマスティフ・マフィンは周囲の者たちに気取られぬよう、適当な言い訳をし、二日を掛け、古代人の遺跡の入口前にやってきた。
大地が盛り上がり生れ出た洞窟のような入口は、涸れ果てた音のない大地に囲まれ、命の輝き一つなく佇んでいる。
そこへ、輝きと響きを持つ、私・エクア・フィナ・親父・マスティフ・マフィンの六名が前に立つ。
フィナは早速、人頭ほどの大きさの正十二面体の深紅のナルフを取り出す。
「これのおかげでナルフ改良の手間が省けたけど……向こうでは一から改良したんだろうなぁ」
と、妙なことを呟き、遺跡を覆っている結界を覗き見る。
「結界枚数三十二。侵入の形跡なし。ま、変わらないでしょうね。じゃ、簡単に説明するから聞いてて」
フィナは結界を破る手順を述べる――以下の通り。
強化された赤い正十二面体のナルフで内部の様子を探る。
安全が確認されたら、結界の周波数の特定に掛かる。
特定後、フィナは同じ周波数の結界で身を包む。
これにより、結界を素通りできる。
内部に侵入し、結界の動力源である充填石を操作して、結界を小規模化。充填石の周りだけを覆うようにする。
――なぜ、最小化に留め充填石の動力を落とさないのか?
それは結界消去および不具合を充填石に探知されるとヴァンナスに警報が届くからだ。
そうなれば、転送で兵士が現れ、私たちは捕らわれてしまう。
そのようなことにならないように、あくまでも結界は作動していると偽装し、勘違いさせる。
これで結界の邪魔はなくなり、遺跡内部の探索が可能となる。
最後に、私たち以外出入りできないようにフィナがオリジナルの結界を張る、と。
説明を受けた私たちはこくりと頷き、フィナはナルフを使い結界内部を調査。
「よし、このナルフだと内部まで確認できる……入り口そばに病原体なし。生命反応もなし。放射線量は……人体に影響のないレベル。結界内に入っても害はない。ケントっ」
彼女はいつも使用している、手のひらサイズの青いひし形のナルフを投げ寄こした。
「ナルフは扱えるよね? それは魔導型だけど大丈夫?」
「ああ、錬金の道具類は一通り扱えるぞ。魔導型も機構はともかくユーザーインタフェースの基本は変わらないだろうから大丈夫だ」
「そう。それじゃ、サポートをよろしく。結界にダブルスキャンをかけて周波数を特定するから」
「了解だ」
私たちはそれぞれナルフを浮かべ、結界を走査する。
フィナは赤のナルフの水晶に浮かぶ波形と数字を睨みながら、基準とする周波数を読み上げる。
「結界三十二のうち第一壁の周波数特定。第一の周波数、2.7561レスル。これに基準を合わせるから」
「2.7561だな。第五・第十七・第二十三にランダムの変動パターン。魔力を感知して周波数を変えているようだ」
「私たちの存在に反応しているのね。それなら、その部分はナルフで制御して隔離。魔力を感知できないようにする」
「第十三・第三十・第六~第十に、他属性パターン。属性を分離して整理する……整理成功。周波数2.7561を維持」
「全結界のうち、変動パターンが安定しないのは、第十五・第二十・第二十八・第三十一。他結界の干渉波を読み取り、周波数を常に変化させてる」
「固定は?」
「無理。これらの結界に偽装干渉波を送り、周波数2.7561レスルになるよう調整してみる…………調整完了。2.7561を維持。それじゃ、次ねっ」
フィナは青色に輝く魔力で全身を包み、結界を生み出す。
私がその結界をナルフで読み取り、周波数を読み上げる。
「結界周波数2.7561」
「よし、この周波数を私のナルフと同期させて維持。これで通り抜けられる」
準備はできた。
この一連の流れを見ていたエクア・親父・マスティフ・マフィンが唸るような声を上げてきた。
「なんだかよくわかりませんけど、凄いですね……」
「今更ながら、旦那があのアーガメイトの息子なのを肌に感じますよ」
「ワシは魔導や錬金のことはさっぱりなので、何をやっているかもわからぬな。それにしてもフィナ殿はともかく、ケント殿もこのようなことができるとは」
「錬金は魔導を数値化する学問ニャ。魔導を知る俺はちょっとは理解できるけど、道具をあんな風に扱うのは無理ニャね。マスティフじゃニャいけど、ケントが扱えるのには驚いたニャ」
「私はアーガメイトの息子で、ドハ研究所に勤めていたこともあるからな。道具類を扱うことぐらいはできる。それに習いさえすれば、みんなも扱うことはできるぞ」
「ねぇ、次に進めていい? 結界の周波数維持は長く持たないんだから」
「そうだったな」
「じゃ、モニター頼むよ、ケント」
「了解」
フィナは洞窟の結界に近づき、前へ乗り出そうとしている。
私はその様子をナルフを通してモニターしてたのだが……。
「ん? これはっ! フィナ、待て!」
「な、なに、どうしたのっ!?」
「周波数が書き換えられている!」
「え、嘘っ?」
フィナは慌てて自分の赤のナルフの表面を見つめる。
しかし……。
「ケント、周波数は2.7561のままだけど?」
「表面上はなっ」
私は青色のひし形のナルフをくるくると回して面を指先で叩き、計算をやり直していく。
「浮かび上がっている波形は偽物だ。波形に重なるようにもう一つの波形が存在する。それが本物の周波数。これは同位周波帯による偽装工作だ!」
「もう一つの波形? 見てみる…………ほんとだっ! 私の設定した周波数に重なるように別の周波数が存在するっ。波に波をかぶせて偽装するなんて、なんて技術なの! ケント、よくこれを見破れたね」
「見破れるさ。これは父が得意としていた悪戯だ」
「父? アステ=ゼ=アーガメイトの!?」
「そうだ。目に見えるものが全てではない。答えは視線を越えた先にある。及ばぬ場所にある。父の言葉だ」
「結界の開発にはアーガメイトが関わっているわけか。まぁ当然よね。中に誰かが入った形跡はないから、外部から結界に何らかのシステムを追加したってところかな?」
「だろうな。思い返せば、父が一時期、ビュール大陸に出張していたころがある。おそらくその時だろう」
「人の親を悪く言いたくないけど、面倒なことするなぁ~」
「私としては久しぶりに父の影を見れて嬉しいが」
「ファザコン。で、本物の周波数は?」
「2.7569だっ。ファザコンで悪かったな」
「2.7569ね。ファザコンは認めるんだ。えっと、周波数を調整……調整終了。最終確認……問題なし。ケントは?」
「……問題なし。行けるぞ」
「それじゃあ~、行きますかっ!」
フィナが結界へ手を伸ばす。
手は結界を素通りして、指先は内部に届く。
足を一歩踏み出して、体ごと結界に埋めていく。
強固な三十二の結界は反発することなく、フィナを同志として迎い入れた。
結界を通り抜けて、岩の姿を象った充填石に向かい、ナルフを脇に浮かべる。
「よ~し、不審な兆候を見せずに結界を縮小しないと……ナルフと充填石を同期して、操作権限をオーバーライド……そして~、周波数2.7569を維持したまま、結界の縮小開始」
遺跡の入口を覆っていた結界はみるみるうちに小さくなっていく。
結界は内部にいた同じ周波数のフィナを突き通し、充填石だけを囲むように固定された。
トーワに訪れた実践派の錬金術師・フィナ=ス=テイロー。
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