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第十三章 呪われた大地の調査
トーワの防壁は海まで続く?
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明日には遺跡へ向かう。
その前に私は銃の試し撃ちを行うべく砂浜に立っていた。
これは銃の感触をしっかり覚え、遺跡での不測の事態に対応するためだ。
10m先に的を描いた分厚め台紙を固定して、引き金を引く。
その際、銀の瞳を発動。これにより、的が見やすく、弾の軌道がわかりやすくなる。
パンっと、乾いた音が響く。
弾丸は見事、的のど真ん中を射抜いた。
「ふん、我ながら良い腕だ」
銃をくるくると回しながらエクアお手製のホルスターへ納める。
そこへ、エクアと赤いナルフを浮かべたフィナがやってきた。
「あ、ケント様」
「エクアか。フィナも……どうした?」
フィナは右斜め上に浮かんでいる、正十二面体の赤のナルフをぼ~っと見つめている。
もう一度、問いかける。強めに。
「フィナッ」
「え、あ、なに?」
「それはこっちのセリフだ。何やら、ナルフに注視していたようだが?」
「うん、ちょっとね。遺跡へ向かう前に試運転」
「試運転?」
「なんでもない。それよりも、ここ、妙だよ」
「妙?」
そう尋ねると、エクアが声を上げてきた。
「フィナさん、一度防壁の方に戻って説明した方がわかりやすいのでは?」
「そうね。まずは見てもらってからでいっか」
一体、何がどうしたのかわからないが、二人に連れられ第三の防壁に向かった。
――第三の防壁
歯車のような形をした防壁のそばで、私はエクアとフィナに問いかけた。
「で、何か問題でもあるのか?」
「問題というか、ちょっと不思議なことがありまして」
「ま、これを見て」
フィナは右手に魔力を宿し、魔法弾を産んだ。
それを防壁に沿って打ち出す。
魔法弾は防壁の壁をなぞるように進み、凹みの空白の部分に吸い込まれ、くるくると回転している。
私はこの奇妙な現象を尋ねる。
「どうなっているんだ?」
「何がってのはわからないけど、この防壁はエネルギーを流す道のような作りになってるみたい」
「流す?」
「うん。んで、壁の凹みの部分で滞留するの。ナルフでその状態を調べたけど、あの状態だと少しだけ魔力が増幅されてる感じ」
「いったいどんな意味が?」
「それは謎ね。いまんところ、凹みで滞留させ増幅することで魔力の障壁を高めてるってところかなぁ。で、その増幅だけど、この現象を起こしてるのは防壁じゃない。防壁の下に眠る何か?」
「防壁の下?」
「ちょうど防壁に沿って、よくわかんない力が走ってる。たぶん、古代人の技術」
「何故そう思う?」
「ここって、ランゲンが作った城でしょ。防壁もそう。おそらくだけど、ランゲンはよくわかんない力が走る上に防壁を築いて、壁に魔力を流して、障壁なりを展開してたんじゃないかと思うの」
「言われてみれば、現在の古城トーワはランゲンの作ったものが原型だったな。それ以前は古代人が拠点として使っていた。ランゲンはこのトーワに古代人の技術が眠っていると知って、ここに城を建てたというわけか」
「たぶんね。証拠はないけど」
「ふむ、二百年前のヴァンナスとランゲンの戦争で資料の大部分が失われた。おそらく、この壁に沿って存在する不可思議な力はヴァンナスも知るまい。フィナ、よく見つけた」
「見つけたのは私じゃない。エクアよ」
「そうなのか?」
顔をエクアへ向ける。そのエクアは海が見える南側に顔を振って、そこから東にある砂浜の方へ体を向けた。
「私、毎日のように砂浜で絵を描いてますので、海に一定の変化があるのに気づいたんです。海流が一定方向に流れているような……」
「ん? なぜ、海を見ていて防壁のことが?」
この疑問にはフィナが答えた。
「防壁は城を要において扇状に広がってるけど、壁の下に走っている力は海まであるの。この歯車みたいな形をした力の流れが城を囲むように存在する。正確には城より少し後ろが中心点っぽいけど」
「理由は?」
「障壁、だと思うんだけど、はっきりとしたことは。障壁だとしたら、この城、海への備えも万全ってことね」
「古代人の力とするならば、それだけ強固な守りが必要な敵を相手にしていた。と、いうことか……相手は魔族?」
「さぁ?」
「謎というわけか……」
私は目に見えぬ壁を追うように、近くの防壁から海を臨む。そして、ぽつりと呟く。
「障壁は、使えるのか?」
「無理。ナルフで調べた限り、微弱な力でしかない。動力源がどこにあるかは未特定だけど、見つけても様子からして動力切れ寸前」
「そうか。動力の供給、もしくは何らかの応用は?」
「動力は魔力じゃない。未知のものだからどんな力を供給すればいいのかわからない。もちろん、応用もできない」
「動力は魔力ではないのに、魔力を増幅させる効果があると?」
「魔力だから増幅できたんじゃない。エネルギーであればなんでも増幅するのよ」
「なるほど。なかなかにわけがわからん」
「まぁ、明日の遺跡探索で何かわかればいいけどね。特に動力源」
「そうだな」
私は顔をエクアへ向ける。
「エクア、お手柄だ」
「いえ、ただ、妙だなと思っただけですから」
「それがお手柄なんだ、ふふ。それでは、私は銃の練習に戻るか」
私は足を砂浜へ向けて戻ろうとした。
すると、フィナはからかうような口調を見せてきた。
「銃の練習ねぇ。ふふ、ちゃんと狙えてるの~?」
「ふふん、私と銃は思いのほか相性が良くてね。百発百中と自信を持って言えるぞ」
「ほんとう~?」
「本当だとも。余裕ができたから、ちょっとした芸もできるようになったしな」
「芸?」
「見ててくれ」
私はシリンダーから弾丸を取り出して空にする。
そして、シリンダーを横に出した状態で六発の銃弾を左手で放り投げる。
弾丸の動きや方向を銀の瞳で見極め、銃弾と銃を交差させる。
すると、銃弾は見事にシリンダーへ納まった。
「どうだっ。ちょっとした芸だろっ」
自慢顔で二人に顔を向ける。
エクアはパチパチと拍手を送ってくれたがフィナは……。
「あんまり馬鹿なことやらないでよね」
「馬鹿とはご挨拶だな。弾丸の入れ替えを短時間で終わらせるのは生存率を上げる行為だろ」
「生存率……そうね、その通りよ……」
突然、フィナの声が沈む。
心配になり私が彼女の名を呼ぶと、強い声で私の名を返してきた。
「フィナ?」
「ケントっ」
「ど、どうした?」
「い、いえ、とにかく、遺跡の探索、頑張りましょうねっ」
そう言い残して、フィナは足早にここから立ち去った。
残された私とエクアは言葉を掛け合う。
「フィナは一体どうしたんだ?」
「実は、遺跡の探索が決定してから妙に変なんですよ。時々、私をなんだか辛そうに見ることもあるし」
「それは?」
「わかりません」
「ふむ、先ほどのフィナもそうだったな。声は強かったが、なんだか辛そうな思いもあったような……同時に覚悟めいたものも」
「遺跡を前にして、気負っているんでしょうか?」
「かもしれない。探索メンバー選出の時も変だったしな。私たちが気をつけて彼女を見ているとしよう」
「そうですね」
その前に私は銃の試し撃ちを行うべく砂浜に立っていた。
これは銃の感触をしっかり覚え、遺跡での不測の事態に対応するためだ。
10m先に的を描いた分厚め台紙を固定して、引き金を引く。
その際、銀の瞳を発動。これにより、的が見やすく、弾の軌道がわかりやすくなる。
パンっと、乾いた音が響く。
弾丸は見事、的のど真ん中を射抜いた。
「ふん、我ながら良い腕だ」
銃をくるくると回しながらエクアお手製のホルスターへ納める。
そこへ、エクアと赤いナルフを浮かべたフィナがやってきた。
「あ、ケント様」
「エクアか。フィナも……どうした?」
フィナは右斜め上に浮かんでいる、正十二面体の赤のナルフをぼ~っと見つめている。
もう一度、問いかける。強めに。
「フィナッ」
「え、あ、なに?」
「それはこっちのセリフだ。何やら、ナルフに注視していたようだが?」
「うん、ちょっとね。遺跡へ向かう前に試運転」
「試運転?」
「なんでもない。それよりも、ここ、妙だよ」
「妙?」
そう尋ねると、エクアが声を上げてきた。
「フィナさん、一度防壁の方に戻って説明した方がわかりやすいのでは?」
「そうね。まずは見てもらってからでいっか」
一体、何がどうしたのかわからないが、二人に連れられ第三の防壁に向かった。
――第三の防壁
歯車のような形をした防壁のそばで、私はエクアとフィナに問いかけた。
「で、何か問題でもあるのか?」
「問題というか、ちょっと不思議なことがありまして」
「ま、これを見て」
フィナは右手に魔力を宿し、魔法弾を産んだ。
それを防壁に沿って打ち出す。
魔法弾は防壁の壁をなぞるように進み、凹みの空白の部分に吸い込まれ、くるくると回転している。
私はこの奇妙な現象を尋ねる。
「どうなっているんだ?」
「何がってのはわからないけど、この防壁はエネルギーを流す道のような作りになってるみたい」
「流す?」
「うん。んで、壁の凹みの部分で滞留するの。ナルフでその状態を調べたけど、あの状態だと少しだけ魔力が増幅されてる感じ」
「いったいどんな意味が?」
「それは謎ね。いまんところ、凹みで滞留させ増幅することで魔力の障壁を高めてるってところかなぁ。で、その増幅だけど、この現象を起こしてるのは防壁じゃない。防壁の下に眠る何か?」
「防壁の下?」
「ちょうど防壁に沿って、よくわかんない力が走ってる。たぶん、古代人の技術」
「何故そう思う?」
「ここって、ランゲンが作った城でしょ。防壁もそう。おそらくだけど、ランゲンはよくわかんない力が走る上に防壁を築いて、壁に魔力を流して、障壁なりを展開してたんじゃないかと思うの」
「言われてみれば、現在の古城トーワはランゲンの作ったものが原型だったな。それ以前は古代人が拠点として使っていた。ランゲンはこのトーワに古代人の技術が眠っていると知って、ここに城を建てたというわけか」
「たぶんね。証拠はないけど」
「ふむ、二百年前のヴァンナスとランゲンの戦争で資料の大部分が失われた。おそらく、この壁に沿って存在する不可思議な力はヴァンナスも知るまい。フィナ、よく見つけた」
「見つけたのは私じゃない。エクアよ」
「そうなのか?」
顔をエクアへ向ける。そのエクアは海が見える南側に顔を振って、そこから東にある砂浜の方へ体を向けた。
「私、毎日のように砂浜で絵を描いてますので、海に一定の変化があるのに気づいたんです。海流が一定方向に流れているような……」
「ん? なぜ、海を見ていて防壁のことが?」
この疑問にはフィナが答えた。
「防壁は城を要において扇状に広がってるけど、壁の下に走っている力は海まであるの。この歯車みたいな形をした力の流れが城を囲むように存在する。正確には城より少し後ろが中心点っぽいけど」
「理由は?」
「障壁、だと思うんだけど、はっきりとしたことは。障壁だとしたら、この城、海への備えも万全ってことね」
「古代人の力とするならば、それだけ強固な守りが必要な敵を相手にしていた。と、いうことか……相手は魔族?」
「さぁ?」
「謎というわけか……」
私は目に見えぬ壁を追うように、近くの防壁から海を臨む。そして、ぽつりと呟く。
「障壁は、使えるのか?」
「無理。ナルフで調べた限り、微弱な力でしかない。動力源がどこにあるかは未特定だけど、見つけても様子からして動力切れ寸前」
「そうか。動力の供給、もしくは何らかの応用は?」
「動力は魔力じゃない。未知のものだからどんな力を供給すればいいのかわからない。もちろん、応用もできない」
「動力は魔力ではないのに、魔力を増幅させる効果があると?」
「魔力だから増幅できたんじゃない。エネルギーであればなんでも増幅するのよ」
「なるほど。なかなかにわけがわからん」
「まぁ、明日の遺跡探索で何かわかればいいけどね。特に動力源」
「そうだな」
私は顔をエクアへ向ける。
「エクア、お手柄だ」
「いえ、ただ、妙だなと思っただけですから」
「それがお手柄なんだ、ふふ。それでは、私は銃の練習に戻るか」
私は足を砂浜へ向けて戻ろうとした。
すると、フィナはからかうような口調を見せてきた。
「銃の練習ねぇ。ふふ、ちゃんと狙えてるの~?」
「ふふん、私と銃は思いのほか相性が良くてね。百発百中と自信を持って言えるぞ」
「ほんとう~?」
「本当だとも。余裕ができたから、ちょっとした芸もできるようになったしな」
「芸?」
「見ててくれ」
私はシリンダーから弾丸を取り出して空にする。
そして、シリンダーを横に出した状態で六発の銃弾を左手で放り投げる。
弾丸の動きや方向を銀の瞳で見極め、銃弾と銃を交差させる。
すると、銃弾は見事にシリンダーへ納まった。
「どうだっ。ちょっとした芸だろっ」
自慢顔で二人に顔を向ける。
エクアはパチパチと拍手を送ってくれたがフィナは……。
「あんまり馬鹿なことやらないでよね」
「馬鹿とはご挨拶だな。弾丸の入れ替えを短時間で終わらせるのは生存率を上げる行為だろ」
「生存率……そうね、その通りよ……」
突然、フィナの声が沈む。
心配になり私が彼女の名を呼ぶと、強い声で私の名を返してきた。
「フィナ?」
「ケントっ」
「ど、どうした?」
「い、いえ、とにかく、遺跡の探索、頑張りましょうねっ」
そう言い残して、フィナは足早にここから立ち去った。
残された私とエクアは言葉を掛け合う。
「フィナは一体どうしたんだ?」
「実は、遺跡の探索が決定してから妙に変なんですよ。時々、私をなんだか辛そうに見ることもあるし」
「それは?」
「わかりません」
「ふむ、先ほどのフィナもそうだったな。声は強かったが、なんだか辛そうな思いもあったような……同時に覚悟めいたものも」
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