銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
162 / 359
第十五章 未熟なる神の如き存在

浄化機構

しおりを挟む
 その後、私たちは部屋を占拠した本たちへ立ち退きを迫る。どちらかというと彼らの方が家主かもしれないが。
 
 とにかく、本の大部分を追い出して廊下にまとめ、そこからどこか別の場所へ運ぶことにした。
 フィナだけは部屋に残した本の内容から施設について調べることになった。

 部屋から追い出された本たちは移住先を変えても存在できるようなので、彼らを別の部屋に押し込めて一応の整理が終える。
 そうして執務室に戻ってくると、フィナは執務机の椅子に座って赤の線で形作られた立体映像を浮かべていた。

「フィナっ?」
「あ、お疲れ様」
「ああ……それは?」
「この施設のマップ。本棚の地図の棚にあった本からね」
「本から? どうやって?」
「こんな風に?」


 フィナは一冊の本を開き、いきなりページを破り始めた。
 その奇行に対して驚きの声を上げる間もなく、彼女はページを放り投げる。
 すると、ページは光に包まれ、フィナの前に浮かんでいる立体映像と同じものへと変わった。

「こ、これは?」
「正直、凄いよっ。古代人のインターフェースは! ある一定の知力。知識じゃなくて知力ね。ある程度の知力があれば、直感で扱えるようになっているっ。それどころか、こちらの行動を学習して、それに見合ったインターフェースへ変化するのっ!」

 フィナは興奮気味に言葉を弾ませる。
 インターフェースもさることながら、システムを扱えるようになったところにも興奮しているのだろう。
 ただ私としては、何をすれば本を破くという直感が生まれるのだろうか? という疑問の方が前に出るが……。


「色々と聞きたいが……何がわかった? 君の判断で優先事項を伝えてくれ」
「そ? それじゃ、説明させてもらうよっ」


 フィナは施設の全体マップを浮かべる。
 マップの形は球体を真ん中から切断したようなもの。切断面の階層は三十あり、中心には大きな円形状の部屋が見える。

 私たちがいる階層は上から三段目。
 フィナは私たちが存在する階層よりも下の階層を指差す。
 そこは真っ赤になっており、半透明な檻で囲まれていた。

「真っ赤なところは汚染区域。ここから下の階、施設の九割くらいに汚染が残ってる。で、半透明の檻は結界。汚染物質――放射線だろうけどそれが漏れないようにしてる。球体の外や上階は浄化できてるけど、施設全体の浄化は無理だったみたい」

 これにマフィンが答える。
「結界なら確認したニャ。階下に進む階段に結界が張ってあったニャ」
 私が研究所に閉じ込められる直前、マフィンは鈴を使い、見えない壁があることを伝えていた。

 フィナは次の説明に移る。
 マップの映像を指先で操り、施設を外側から見た全体像に切り替える。
 真っ黒な球体の施設。
 それは一つではなくて、二つ。
 二つの球体が、廊下で繋がっている。


「どうやらこの施設って、二つの球体だったぽいね。で、一つはどこかへ消えちゃった」
「どこへ?」

 フィナは映像の球体に触れる。
 すると、映像は大陸を表す。その大陸の形を私は知っている。

「これは、クライエン大陸か?」
「そっ。もう一つの球体はクライエン大陸の古代人の遺跡。分裂した理由はわからないけど」
「分裂したとしても、なぜこれほど距離が離れているのか?」
「謎よねぇ。でも、今はわかることだけにしよう」

 と言って、フィナは球体の屋上部分に指先を置き、その指を動かして白い線が生んだ。
 その線を入り口の洞窟と結ぶ。


「これで、出入り口が結ばれたはず。これは帰りに確認しましょっ」
 
 次に別の本を取り出して、またもやページ破き、投げた。
 破り捨てられた紙は立体的な映像に変わり、トーワ城とその領地の形を表した。
 北の荒れ地の部分が真っ赤に染まり、周囲は半透明の壁に囲まれている。


「これは?」
「赤いところは汚染部分で壁は結界ね。と、これから……」

 フィナは赤いところに指を置いて、ピンと弾いた。
 すると、映像から別の映像が飛び出す。
 それは光の球体で、内部では日本語らしき文字がごちゃごちゃになって動いている。
 フィナはその文字を見ながら、これでもかと口元を上げて、にやりとした笑みを見せた。

「ふふん、これ、北の荒れ地の浄化機構」
「何!? ということは、つまりっ」
「待って。浄化機構は突き止めた。でも、現時点では扱い方がわからないの」
「そうか……いや、浄化機構があるとわかっただけでも素晴らしい!」
「ふふ、こんな感じで古代人の知識の表面を引っ掻くことはできるようになった。でも、理解できるとまではいかない。そこで……ケントっ」


 フィナは青いナルフを取り出して、私に投げ寄こす。

「私はしばらくここに残って施設を調べてみる。何か用があったらそのナルフで連絡してきて。私も何か見つけたら連絡するから」
「残る? 一人でか?」
「うん」
「しかし……」
「大丈夫よ。ここまで誰かがいたわけでもないし、危険区画は封印されてるし」


 と、ここで、親父が初めてこの部屋に訪れた時に見たものを思い出す。

「あ、そういえば、この部屋に窓がありましたよね、旦那?」
「ああ、そうだったな」
「窓?」

 フィナは首を捻る。
 私は王都を見渡せる窓になってしまった場所を指差す。


「父の書斎に変化する前に、親父がちょうどいま窓になっている場所に窓らしき窪みを見つけてな。そこにはシャッターが降りていた」
「いま窓になっているところ? ちょっと待って」

 フィナが空中に浮かんでいる遺跡のマップを操る。

「……たしかに、この先に空間があるみたい。でも、アクセスができない。これは時間が掛かりそう」
「そうか……」


 私は親父とエクアに顔を向けて、ある頼みごとを行う。それをフィナが嫌がり断ろうとした。

「二人はしばらくフィナについていてくれるか? どうやらこの遺跡にはまだまだ未知の部分があるようだ。フィナ一人をここに残すというのは不安がある。なにせ、先ほど、私が死にかけたばかりの場所だからな」

「ケント、それはあの部屋に不具合があっただけで」
「他にもないとは言えないだろう?」
「そうかもしれなけど。だからこそ、私一人でいいじゃん。それにさ、未来の私とエクアはこの施設を探索して死んでないわけだし。いずれにせよ、しっかり探索しないとどうしようもないよ」


 たしかにフィナの言うとおり、探索しないと遺跡のことはわからない。
 だからとって、私も一緒にここに残るという選択肢は難しい。
 領主としてトーワを何日も空けるわけにはいかない。それに何より、今回私はここに長期滞在するつもりで訪れたわけでもない。

「わかった。だが、君のことだ。研究に没頭するだろう。そんな君の世話役が必要だ。エクアは君の世話のため。親父さんはエクアの護衛のために残ってもらいたい。二人とも構わないか?」
「はい、私は大丈夫ですが」
「俺も大丈夫ですよ。不気味ですがね」

「すまないな。正直、安全が確保されていない場所に人を残すのはどうかと思うが……何かあれば、すぐに連絡してくれ。フィナ、二人にナルフの扱い方を」
「もう~、私一人でも大丈夫なのに……だけど、一人で残るのは心細いしね。二人とも、しばらくよろしく」
「はい」
「はは、むさ苦しいおっさんだが、よろしく頼むよ。お嬢ちゃんら」


「よし、三人ともあとは頼んだ。食料の方は手持ちで数日持つだろうが、追加分は」
「ワシが直接届けよう」
「よろしいので、マスティフ殿?」
「遺跡とトーワは片道二日。しかし、トロッカーと遺跡ならば一日。ワシの方が近いからな。無論、他の者には知られぬようにしておく」

「マスティフ殿、感謝する。では、そろそろ私たちは戻るとしようか」
「そうであるな。あまり留守にするわけにもいかぬ」
「そうニャね。何か新しい発見があったら連絡するニャよ、ケント」

「もちろんだ……新しい発見と言えば、フィナ?」
「何?」
「君は父のメモ帳……この遺跡の記録に当たるメモ帳に興味を持っていなかったか?」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

処理中です...