銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第二十一章 世界旅行

浄化機構よりも

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 謎のカエルを見かけたあと、フィナたちは遺跡へ戻った。
 それからしばらくして、預かっていた手の平サイズのひし形の青色ナルフに通信が入り、私は二日を掛けて単独遺跡へ。
 フィナ曰く、浄化機構の解読が終えていつでも北の荒れ地の浄化ができるそうだ。
 屎尿しにょうの問題を抱えている現在、ただちにそれを動かしたいところだが、彼女は浄化機構以上に凄いものを発見していた。



――遺跡内部・幻想のアーガメイトの書斎

 ここには私とフィナ。そして目付け役に置いている親父とエクアがいる。

 部屋は相変わらず父の書斎の姿だったが、窓の部分から古代人と思われる金髪の男の姿は消えて王都を見渡せる窓に戻っていた……のだが、その窓からは王都は見えず、何故か動物の着ぐるみを着た女性の一団がとげとげの肩パットをして、釘のついた棒を振り回しながら無数の風船が浮かぶ街中でパレードを行っている光景が広がる。

 おそらく、現状では男を安全に蘇生させる手順が見つかっていないので、窓には適当な映像を投射することにしたのだろう。映像の内容は意味不明だが……。


 ともかく、これらの様子から、この部屋のシステムをかなり扱えるようになっているみたいだ。
 その証明と言っていいのか、以前は存在しなかった黒い円盤状の大きな台が部屋の左隅にあった。その台の真上には同じく黒い円盤状の天井。台から天井までの高さは3mほど。

 この円盤は部屋を無理やり広げる形で置かれているので四角の部屋がいびつな形になっている。
 円盤の材質は一見、大理石のようにも見えるが、ここは古代人の遺跡。
 もちろんそんなはずはない。


「フィナ、これはなんだ?」
「ぬっふっふっふ~、なんだと思う~?」

 彼女は口元に手を置いて、ねばつくような実に癖のある笑いと口調を見せてくる。
 非常に鬱陶しいが、この円盤、相当なもののようだ。

「正直、見当もつかん。私としては円盤のことよりも浄化機構の話を聞きたいんだが?」
「もう、つれないなぁ~。しょうがない、浄化機構の話を先にしようではないか」
「口調が変だぞ」
「フフフフ、それだけこの円盤が凄い機械ってわけよ。ま、とっておきは後にして、浄化機構だけど~」


 フィナが中指にはめた青い宝石の指輪を見せつけてくる。
 彼女は指に装飾などつけていなかったはず。
 私が不思議そうに指輪を見つめていると、フィナはくすりと笑い、パチリと軽快に指を跳ねた。
 すると、以前見た、トーワ城を含む北の荒れ地の立体的な映像が浮かび、日本語らしき文字が入り混じる光の球体が浮かんだ。


 私は今の行動を尋ねる。
「最初に訪れた時は本を破り、次には金属の板。そして今は、指輪のついた指を跳ねた。来るたびに仕様が変わっているな」
「まぁね。私に扱いやすく遺跡が勝手にカスタマイズしていっているから」
「あんまり君好みにされてもな。他の者が扱えなくなるだろう。エクアや親父は理解できているのか?」
 私はエクアと親父へ顔を向ける。

「はい、それなりには。この指輪を着けた状態で指を跳ねるか宝石の頭を叩くと、遺跡のシステムにアクセスできるインタフェースが空中に開くんです」
「そこから、遺跡のあちこちにアクセスできるんですが……ま、俺たちには限られた種類の食事をレプリケートしたり、浄化原子灌水浴装置ナノウェイブシャワーを使い身体や部屋全体を浄化したり、リフトを呼び出したりと、生活の基本となることぐらいしかできませんがね」


 二人は中指にはめた青色の指輪を見せながら答えを返してくる。
 どうやら二人はフィナと共に過ごすことにより、遺跡のシステムの扱い方に慣れていっているようだ。
 率直に言って、エクアと親父がインタフェースやレプリケートという言葉を使っているのには違和感しかない。
 私は少し声を上擦らせて言葉を返す。

「そ、そうか。私からすれば、それだけ扱えれば十分すごいんだが……え~っと、それで浄化機構だが、フィナ?」

「ハイハイ、浄化機構ね。最初は何が起こるかわからなかったから恐る恐る扱ってたんだけど、扱ううちに遺跡のシステムには強力な安全装置が働いてて、余程のことをしないかぎり不具合を起こしたり危険なことが起きないってわかったのよ。あ、故障してたら別だからね」

「なるほど、それでだんだん大胆になり、あっちこっちいじり倒して、この妙な円盤を作り出したわけだな」
「なんか言い方が悪いなぁ~。まぁ、いいけどね。それで結果なんだけど、浄化機構の扱い方は思ったより単純みたい」


 そう言って、北の荒れ地の汚染された部分を指差す。
 そこは真っ赤に染まっている。

「この赤い部分が汚染領域で、基本的にやっばい放射性物質や化学物質のたぐいね。この様子だと、昔この半島で危険な兵器がわんさか使われたのかも」
「相手は魔族だろうか?」
「たぶんね。んで、浄化機構がそれら汚染物質を何とかトーワの荒れ地内に集めて浄化を頑張ってるところ。そんな頑張り屋さんの、この赤い部分に触れて~ずずっと」

 真っ赤に染まる部分に指を置いて横にずらすと、赤の範囲が狭まった。
 ずらす前は北の荒れ地全体が真っ赤だったが、今はトーワからこの遺跡までの四分の一の大地が緑色に染まっている。

「と、こんな感じで汚染範囲を狭めることができる。緑の範囲は浄化できる範囲」

 軽い口調で説明を交えるフィナに私は言葉を大きく跳ねた!

「本当か!?」
「本当に本当」
「こうも簡単に浄化できるなら今すぐにでもやってもらいたい! さっそく北の荒れ地全体の浄化をっ!」
「ちょっと、落ち着いて。結論から言うと、全体は無理」
「ど、どうしてだっ?」
「翻訳システムと同様、浄化機構の一部に機能不全があって、いま私が縮めた範囲で浄化は精一杯みたい」
「今の範囲のみ……いや、これでもじゅうぶ……」

 
 私は第一にトーワのことが頭をよぎった。
 だが、一度心を落ち着かせて、研究者としての私の言葉で声を返す。

「フィナ、一部とはいえ機能しているのに、なぜ古代人は浄化機構をしっかり動かさなかったんだ?」
「その疑問については、まず、歴史を振り返る必要がある。さっきもちょろっと出たけど、古代人は魔族との戦いで半島全体を汚染してしまった。だから、この浄化機構を使い浄化を行うことにした」

「ああ、そうだったな」
「次に、以前大地を調べた時、この機構は半島を汚染している毒物をトーワの北に集めて浄化している、という話をしたよね。それも、汚染とは関係ない自然界に存在する毒物まで集めてるって言ってたの覚えている?」<第七章 大地に封じられたもの>

「そういえば、そんなこと言ってたな」
「で、なんでそんなに大雑把なのかというと、この遺跡の放棄具合から見て、やっぱり緊急事態が発生してやっつけ仕事で浄化機構を起動したみたい」

「ふむ、それで?」
「浄化はゆっくりと進む。年月が経って、かなりの浄化が進み、浄化機構に余裕ができた。だから、ある程度なら一気に浄化を進ませられるようになった、というわけ」

「そういうことか。理解できた」
「でも、さっき言った通り、その浄化も機能不全があるから範囲は狭いよ」
「狭いか……」
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