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第二十一章 世界旅行
伝説の装置
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私はもう一度映像を確認する。
浄化できる緑の範囲はトーワと遺跡の間にある土地の四分の一程度。
研究者ケントは領主ケントに戻り、言葉熱くフィナに返す
「いや、これでも十分すぎる! 少なくとも屎尿の問題は解決できる」
「その屎尿問題だけどさ、ちょっとしたアイデアがあるの。ま、親父の発案だけどね」
「親父さんの?」
私は彼に視線を振る。
エクアと仲良く並んでいた彼は一歩前に出て発案の内容を口にし始めた。
「屎尿ってのは汚染物質ですよね。ですので、浄化機構を使い、浄化してみてはとフィナの嬢ちゃんに尋ねてみたんですよ」
「なるほど、良いアイデアだ! フィナ、可能なのか?」
「可能だと思う。汚染された大地は放っておいても勝手に毒物を浄化している。その特性を生かして、汚染された大地に屎尿を埋めちゃえばいいのよ」
「つまり、あとは勝手に浄化機構が働き、汚染が除去され、無害になった屎尿が土となり大地の表面に上がってくるわけだ」
「そういうこと。問題があるとすれば、結構深めの穴を掘らなきゃいけないから、その工事に危険があるってところ。深さ数メートルくらいだと健康被害の可能性は低いけど、十メートルを超えるとちょっとね……」
「その危険な工事はなかなかの課題だな。荒れ地まで下水管を設置する必要もあるし。だが今は、人手もあり金もある。やれないこともない。あとは危険を避けるためフィナとカインの監督下で慎重に工事を行えば」
「あのさ、私の仕事どんどん増えてんだけど……汚染回避のマニュアルを作っておくからあとはそっちでやってよ」
この彼女の言葉に親父が手を上げる。
「俺がやっときますよ。なるべく役に立って、心ん中にある罪悪感を薄めたいんで……」
表面上、普通にしていても、親父の心の中には仲間を裏切ったという罪意識が渦巻いているのだろう。
立場上、私はあまり甘い顔を見せられないが……それでも、労いくらいはしよう。
「罪悪感はともかく、親父は非常に役立っていると思うぞ。特に君の発想力は見事なものだ」
「え?」
「遺跡に初めて訪れた際も、この場所が父の書斎に変化した意味を考え、室内にある書籍が遺跡の知識と同期していることを見出し、音声ではなく文字で意思を伝えるという方法を考え、さらに今回の屎尿処理の問題解決の考え方。親父はかなり貢献していると言える」
「あ、ありがとうございます」
「ふふ、とても四十近い親父と思えない柔軟な思考だ。ま、その柔軟な思考でアグリスの件も柔軟に対応できればよかったのだろうが」
「うぐっ」
褒めつつもぷすりと小さな針で軽くお仕置きをしておく。
これにはフィナもエクアも眉を顰めて私を見つめるが、私の顔が綻んでいるところも見て、二人は眉を降ろし、軽く息を抜く仕草を見せた。
親父もまた雰囲気の柔らかさに肩から力を抜く。
私は視線をトーワの立体映像に向け、浄化機構によって汚染が浄化された大地の今後の使い道を言葉に表し、そして見事、その道を開いたフィナを手放しで褒めた。
「屎尿問題が解決できれば浄化された大地に新たな畑を作れそうだ。これで五百のカリスたちの食料を十分に賄える。いや、それどころかさらに人口を増やせるっ。フィナ、よくやった! 君はトーワに大きな可能性をもたらした!!」
「ふふ~ん、そうでしょっ。もっと、感謝しなさい。で、この話に終わりにして円盤の話に移っていい?」
「なっ?」
私は高ぶる興奮をあっさりくじかれ、がくりとこけそうになった。
落ちた頭を振り上げ、フィナに問う。
「き、君は、浄化機構に触れて荒れ地が緑の大地に生まれ変わるかもしれないのに、もっと、こう、なにかないのかっ!?」
「いや、だってねぇ。こっちの円盤の方が興味深いし。ねぇ、エクア、親父」
「私はどっちも凄いことだと思いますけど……浄化機構でカリスさんたちが安心して暮らせるようになるのは良いことですし」
「俺としても、あいつらがたらふく飯を食って暮らせるようになるってのは嬉しいが……フィナの嬢ちゃんの意識が円盤に向くのもわかるぜ。この円盤がまともに機能すれば、もう、二日も掛けてここまで来る必要がねぇ。いつでも好きな時にトーワと遺跡を行き来できるからな」
親父さんは顎の無精髭をじょりっと撫で不敵な笑みを浮かべつつ私を見つめ、フィナも含み笑いのような顔を見せる。
二人は今の会話の意味を消化させる時間をいたずらっぽく私に与えたようだ。
私は二人の意味深な会話の中身に頭を捻り、すぐに答えをだした。
「二日も掛ける必要がない? いつでも好きな時にトーワと遺跡を行き来――あっ!」
私は数度目をパチリパチリと開け閉じを繰り返し、中身を消化する。
そして、フィナにまさかの技術を尋ねた。
「この円盤っ……ヴァンナスの遺跡で見つかったという転送装置か!? フィナッ!!」
「ピンポ~ン! 大正解! これがあの地球から初代勇者を呼び出したと言われる古代人の転送装置で~す!!」
浄化できる緑の範囲はトーワと遺跡の間にある土地の四分の一程度。
研究者ケントは領主ケントに戻り、言葉熱くフィナに返す
「いや、これでも十分すぎる! 少なくとも屎尿の問題は解決できる」
「その屎尿問題だけどさ、ちょっとしたアイデアがあるの。ま、親父の発案だけどね」
「親父さんの?」
私は彼に視線を振る。
エクアと仲良く並んでいた彼は一歩前に出て発案の内容を口にし始めた。
「屎尿ってのは汚染物質ですよね。ですので、浄化機構を使い、浄化してみてはとフィナの嬢ちゃんに尋ねてみたんですよ」
「なるほど、良いアイデアだ! フィナ、可能なのか?」
「可能だと思う。汚染された大地は放っておいても勝手に毒物を浄化している。その特性を生かして、汚染された大地に屎尿を埋めちゃえばいいのよ」
「つまり、あとは勝手に浄化機構が働き、汚染が除去され、無害になった屎尿が土となり大地の表面に上がってくるわけだ」
「そういうこと。問題があるとすれば、結構深めの穴を掘らなきゃいけないから、その工事に危険があるってところ。深さ数メートルくらいだと健康被害の可能性は低いけど、十メートルを超えるとちょっとね……」
「その危険な工事はなかなかの課題だな。荒れ地まで下水管を設置する必要もあるし。だが今は、人手もあり金もある。やれないこともない。あとは危険を避けるためフィナとカインの監督下で慎重に工事を行えば」
「あのさ、私の仕事どんどん増えてんだけど……汚染回避のマニュアルを作っておくからあとはそっちでやってよ」
この彼女の言葉に親父が手を上げる。
「俺がやっときますよ。なるべく役に立って、心ん中にある罪悪感を薄めたいんで……」
表面上、普通にしていても、親父の心の中には仲間を裏切ったという罪意識が渦巻いているのだろう。
立場上、私はあまり甘い顔を見せられないが……それでも、労いくらいはしよう。
「罪悪感はともかく、親父は非常に役立っていると思うぞ。特に君の発想力は見事なものだ」
「え?」
「遺跡に初めて訪れた際も、この場所が父の書斎に変化した意味を考え、室内にある書籍が遺跡の知識と同期していることを見出し、音声ではなく文字で意思を伝えるという方法を考え、さらに今回の屎尿処理の問題解決の考え方。親父はかなり貢献していると言える」
「あ、ありがとうございます」
「ふふ、とても四十近い親父と思えない柔軟な思考だ。ま、その柔軟な思考でアグリスの件も柔軟に対応できればよかったのだろうが」
「うぐっ」
褒めつつもぷすりと小さな針で軽くお仕置きをしておく。
これにはフィナもエクアも眉を顰めて私を見つめるが、私の顔が綻んでいるところも見て、二人は眉を降ろし、軽く息を抜く仕草を見せた。
親父もまた雰囲気の柔らかさに肩から力を抜く。
私は視線をトーワの立体映像に向け、浄化機構によって汚染が浄化された大地の今後の使い道を言葉に表し、そして見事、その道を開いたフィナを手放しで褒めた。
「屎尿問題が解決できれば浄化された大地に新たな畑を作れそうだ。これで五百のカリスたちの食料を十分に賄える。いや、それどころかさらに人口を増やせるっ。フィナ、よくやった! 君はトーワに大きな可能性をもたらした!!」
「ふふ~ん、そうでしょっ。もっと、感謝しなさい。で、この話に終わりにして円盤の話に移っていい?」
「なっ?」
私は高ぶる興奮をあっさりくじかれ、がくりとこけそうになった。
落ちた頭を振り上げ、フィナに問う。
「き、君は、浄化機構に触れて荒れ地が緑の大地に生まれ変わるかもしれないのに、もっと、こう、なにかないのかっ!?」
「いや、だってねぇ。こっちの円盤の方が興味深いし。ねぇ、エクア、親父」
「私はどっちも凄いことだと思いますけど……浄化機構でカリスさんたちが安心して暮らせるようになるのは良いことですし」
「俺としても、あいつらがたらふく飯を食って暮らせるようになるってのは嬉しいが……フィナの嬢ちゃんの意識が円盤に向くのもわかるぜ。この円盤がまともに機能すれば、もう、二日も掛けてここまで来る必要がねぇ。いつでも好きな時にトーワと遺跡を行き来できるからな」
親父さんは顎の無精髭をじょりっと撫で不敵な笑みを浮かべつつ私を見つめ、フィナも含み笑いのような顔を見せる。
二人は今の会話の意味を消化させる時間をいたずらっぽく私に与えたようだ。
私は二人の意味深な会話の中身に頭を捻り、すぐに答えをだした。
「二日も掛ける必要がない? いつでも好きな時にトーワと遺跡を行き来――あっ!」
私は数度目をパチリパチリと開け閉じを繰り返し、中身を消化する。
そして、フィナにまさかの技術を尋ねた。
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