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第二十四章 絶望と失意の花束を
奇跡の素粒子
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「あんなふざけたことしやがって、全力でぶっ殺してやる!! 全員近くに集まって!」
フィナはそう声を張り、ポシェットからありったけの結界石を地面にばら撒いた。
そして、マフィンに指示を飛ばす。
「マフィンさんは結界を! それとサポートもお願い!」
「わかったニャ!」
私たちは一か所に集まり、マフィンの結界に包まれた。
フィナは青色の試験管をバルドゥルに投げつけて、同時に三種の魔法を産み出す。
それにマフィンが驚愕の声を生んだ。
「フィナ、無茶ニャ! 魔術士でもないおめぇが三種の魔法を唱えるニャンて!」
「わかってる! だからサポートをお願いしたの! それに、こうでもしないとこいつは殺せない!」
男へ向かって投げられた試験管は割れて、彼の周りに渦巻く水流を産み出した。
さらに水流に混じり、細かな金属片が舞っている。
バルドゥルは自分を取り囲む水流へ目を向ける。
「ふむ、海水か。召喚魔法でもやってのけようというのか? む、違うな。海水から何かを産み出している……これは三重水素? 加え、光の魔法の気配に溶け込む金属片……魔導を補助するミスリルに、力を増幅するオリハルコンか。そして、力の種は荷電レプトン――ミュー粒子!? まさかっ!?」
「消え失せろ! この糞野郎がぁぁぁあぁあ!」
フィナの突き抜ける言葉と同時に灰色の世界が閃光に染まった。
閃光は強大な力の波となって結界にぶつかり、結界内部にあっても臓腑を突き上げる衝撃が駆け抜けていった。
光が視界を奪い、世界が虚ろの中、マフィンがフィナへ称賛を送る。
「海水を操る魔法。粒子を操る光の魔法。さらに閃光から解き放たれた中性子から身を守る光の魔法。三つの魔法を操るなんて、魔術士の俺でもしんどい話ニャ。頑張ったニャね、フィナ」
「あったま痛い! はぁはぁ、上手くいったのは錬金の道具を使って負担を緩和できたから。それと、マフィンさんのサポートのおかげ。今のはとっておきの切り札……だけど、もう一人の私ごと消し飛ばしちゃった」
「それは仕方にゃいニャ。これで……」
白い閃光の世界から灰色の世界へと帰っていく。
揺らぐ景色に一同は目を向ける。
その先にある景色に、マスティフが声を詰まらせた。
「な、なんとっ!?」
「クククククッ、いや~、まさかの、『ミュオン触媒核融合』とは恐れ入った」
――※ミュオン触媒核融合
端的に言えば、水素の同位体(水素・重水素・三重水素)に負の電荷を持ったミュー粒子(負のミュオン)を導入し核融合を引き起こすもの。
水素の同位体(水素・重水素・三重水素)について。
重水素及び三重水素。
これらは同じ水素よりも質量が重い水素。
水素の原子核は陽子一つ。(軽水素)
重水素の原子核は陽子一つと中性子一つ。
三重水素の原子核は陽子一つと中性子二つ。
重水素は軽水素の約二倍の質量(原子記号はDまたは2H)――安定同位体と呼ばれ放射線を出すことはない。
また、これは普通の水にも微量に存在し、海水や淡水に関わらず水1000ℓに対して150㎖程度含まれている。
三重水素は軽水素の約三倍の質量(原子記号はTまたは3H)――不安定な放射性同位体でベータ線を放射してヘリウム3に変化する。
これには、宇宙から降り注ぐ放射線が大気中の窒素や酸素とぶつかり生成される天然由来のものと、原子炉からの排出や核実験などにより生成される人工的要因のものがある。また、体内にも微小存在する。
次に核分裂・核融合について。
核分裂――ウラン235やプルトニウム239などの重たい原子核が分裂するときに生じるエネルギー。
核融合――水素のような軽い原子核が融合する際に生じるエネルギー。
ここから核融合のみを抜き出して説明を続けよう。
水素原子核を融合させるための反応を起こすには、重水素と重水素の組み合わせでは十億度以上の熱が必要。
重水素と三重水素では一億度以上。もしくは地球の大気圧を一千億倍以上にする必要がある。(ここはスカルペルだけど気にしてはダメ)
よって、人が生活を営めるごく自然な状態であれば水素原子核が核融合を起こすことはない。
しかし、地球人類は核融合技術を手にしている。(水素爆弾)
どのように行ったかというと、核分裂を利用して生まれた原子爆弾を使用した。
爆弾の中に重水素化リチウムというものを入れて、その内部で原子爆弾を爆発させる。
その時に生じる高温と高圧で水素が核融合を起こしてエネルギーが発生。
そこで発生したエネルギーは他の水素原子核にも再度核融合を生じさせて、核融合の連鎖反応を起こし、核分裂で得られる何百・何千倍ものエネルギーを産み出すことができる。
核融合のためにはまず、核分裂を行う原子爆弾を用意しなければならない。
核融合というのは厳しい条件で起き、それを人工的に引き起こそうとするとかなり面倒だということはお分かりいただけたと思う。
だが、フィナが使用したミュオン触媒核融合はこれらの手順が必要なく核融合を引き起こせるものだ。
その核融合を行うためには、二つの水素原子核を10の-12乗~10の-13乗cmの距離まで近づける必要がある。(10の-1乗=0.1)
それを行うために高温高圧を用いるのだが、ミュオン触媒核融合の場合、その必要がない。
水素の同位体に負の電荷を持つミュオンを導入すると、水素原子核同士を引き寄せてミュオン分子というものを形作る。
ミュオン分子の中の二つの原子核は容易に核融合を起こし、残されたミュオンは次の核融合を引き起こすべく他の水素を探す。
例えるなら、ミュオンはお節介焼きの凄腕お見合いおばさんで、水素は年頃の男女のような存在。
ミュオンおばさんは容赦なく水素な男女を結んでは他の男女を結ぶといった感じだ。
こうやって、一つのミュオンが何度も核融合の橋渡しを行うため、ミュオン触媒核融合と呼ばれている。
となると、負の電荷を持つミュオンがあれば核融合を容易に引き起こしてエネルギーを得られるのではないかという話になるが、そうはならない。
何故ならば、ミュオンは自然界から多量に得ることができないからだ。
これを生成するためには非常に高度な装置と強力なエネルギーが必要になる。
また、寿命も短いため、継続的に負のミュオンを与えないと反応が続かない。
現在の地球の技術では、ミュオンを産み出すエネルギー量が核融合で得られるエネルギー量よりも上回るため、核融合を引き起こしても赤字となる。
そのため、ミュオン触媒核融合は夢の技術となっている。
しかしフィナは、これらの力を魔導で行い、力の増幅はミスリルとオリハルコンという地球には存在しない伝説の物質で代替えし行った。
もちろん、これらには魔導を正確に操り、また、核融合時に発生する中性子を防がなければならない。
それらを全て生身で行えたからこそ、バルドゥルはフィナを褒め称える。
フィナはそう声を張り、ポシェットからありったけの結界石を地面にばら撒いた。
そして、マフィンに指示を飛ばす。
「マフィンさんは結界を! それとサポートもお願い!」
「わかったニャ!」
私たちは一か所に集まり、マフィンの結界に包まれた。
フィナは青色の試験管をバルドゥルに投げつけて、同時に三種の魔法を産み出す。
それにマフィンが驚愕の声を生んだ。
「フィナ、無茶ニャ! 魔術士でもないおめぇが三種の魔法を唱えるニャンて!」
「わかってる! だからサポートをお願いしたの! それに、こうでもしないとこいつは殺せない!」
男へ向かって投げられた試験管は割れて、彼の周りに渦巻く水流を産み出した。
さらに水流に混じり、細かな金属片が舞っている。
バルドゥルは自分を取り囲む水流へ目を向ける。
「ふむ、海水か。召喚魔法でもやってのけようというのか? む、違うな。海水から何かを産み出している……これは三重水素? 加え、光の魔法の気配に溶け込む金属片……魔導を補助するミスリルに、力を増幅するオリハルコンか。そして、力の種は荷電レプトン――ミュー粒子!? まさかっ!?」
「消え失せろ! この糞野郎がぁぁぁあぁあ!」
フィナの突き抜ける言葉と同時に灰色の世界が閃光に染まった。
閃光は強大な力の波となって結界にぶつかり、結界内部にあっても臓腑を突き上げる衝撃が駆け抜けていった。
光が視界を奪い、世界が虚ろの中、マフィンがフィナへ称賛を送る。
「海水を操る魔法。粒子を操る光の魔法。さらに閃光から解き放たれた中性子から身を守る光の魔法。三つの魔法を操るなんて、魔術士の俺でもしんどい話ニャ。頑張ったニャね、フィナ」
「あったま痛い! はぁはぁ、上手くいったのは錬金の道具を使って負担を緩和できたから。それと、マフィンさんのサポートのおかげ。今のはとっておきの切り札……だけど、もう一人の私ごと消し飛ばしちゃった」
「それは仕方にゃいニャ。これで……」
白い閃光の世界から灰色の世界へと帰っていく。
揺らぐ景色に一同は目を向ける。
その先にある景色に、マスティフが声を詰まらせた。
「な、なんとっ!?」
「クククククッ、いや~、まさかの、『ミュオン触媒核融合』とは恐れ入った」
――※ミュオン触媒核融合
端的に言えば、水素の同位体(水素・重水素・三重水素)に負の電荷を持ったミュー粒子(負のミュオン)を導入し核融合を引き起こすもの。
水素の同位体(水素・重水素・三重水素)について。
重水素及び三重水素。
これらは同じ水素よりも質量が重い水素。
水素の原子核は陽子一つ。(軽水素)
重水素の原子核は陽子一つと中性子一つ。
三重水素の原子核は陽子一つと中性子二つ。
重水素は軽水素の約二倍の質量(原子記号はDまたは2H)――安定同位体と呼ばれ放射線を出すことはない。
また、これは普通の水にも微量に存在し、海水や淡水に関わらず水1000ℓに対して150㎖程度含まれている。
三重水素は軽水素の約三倍の質量(原子記号はTまたは3H)――不安定な放射性同位体でベータ線を放射してヘリウム3に変化する。
これには、宇宙から降り注ぐ放射線が大気中の窒素や酸素とぶつかり生成される天然由来のものと、原子炉からの排出や核実験などにより生成される人工的要因のものがある。また、体内にも微小存在する。
次に核分裂・核融合について。
核分裂――ウラン235やプルトニウム239などの重たい原子核が分裂するときに生じるエネルギー。
核融合――水素のような軽い原子核が融合する際に生じるエネルギー。
ここから核融合のみを抜き出して説明を続けよう。
水素原子核を融合させるための反応を起こすには、重水素と重水素の組み合わせでは十億度以上の熱が必要。
重水素と三重水素では一億度以上。もしくは地球の大気圧を一千億倍以上にする必要がある。(ここはスカルペルだけど気にしてはダメ)
よって、人が生活を営めるごく自然な状態であれば水素原子核が核融合を起こすことはない。
しかし、地球人類は核融合技術を手にしている。(水素爆弾)
どのように行ったかというと、核分裂を利用して生まれた原子爆弾を使用した。
爆弾の中に重水素化リチウムというものを入れて、その内部で原子爆弾を爆発させる。
その時に生じる高温と高圧で水素が核融合を起こしてエネルギーが発生。
そこで発生したエネルギーは他の水素原子核にも再度核融合を生じさせて、核融合の連鎖反応を起こし、核分裂で得られる何百・何千倍ものエネルギーを産み出すことができる。
核融合のためにはまず、核分裂を行う原子爆弾を用意しなければならない。
核融合というのは厳しい条件で起き、それを人工的に引き起こそうとするとかなり面倒だということはお分かりいただけたと思う。
だが、フィナが使用したミュオン触媒核融合はこれらの手順が必要なく核融合を引き起こせるものだ。
その核融合を行うためには、二つの水素原子核を10の-12乗~10の-13乗cmの距離まで近づける必要がある。(10の-1乗=0.1)
それを行うために高温高圧を用いるのだが、ミュオン触媒核融合の場合、その必要がない。
水素の同位体に負の電荷を持つミュオンを導入すると、水素原子核同士を引き寄せてミュオン分子というものを形作る。
ミュオン分子の中の二つの原子核は容易に核融合を起こし、残されたミュオンは次の核融合を引き起こすべく他の水素を探す。
例えるなら、ミュオンはお節介焼きの凄腕お見合いおばさんで、水素は年頃の男女のような存在。
ミュオンおばさんは容赦なく水素な男女を結んでは他の男女を結ぶといった感じだ。
こうやって、一つのミュオンが何度も核融合の橋渡しを行うため、ミュオン触媒核融合と呼ばれている。
となると、負の電荷を持つミュオンがあれば核融合を容易に引き起こしてエネルギーを得られるのではないかという話になるが、そうはならない。
何故ならば、ミュオンは自然界から多量に得ることができないからだ。
これを生成するためには非常に高度な装置と強力なエネルギーが必要になる。
また、寿命も短いため、継続的に負のミュオンを与えないと反応が続かない。
現在の地球の技術では、ミュオンを産み出すエネルギー量が核融合で得られるエネルギー量よりも上回るため、核融合を引き起こしても赤字となる。
そのため、ミュオン触媒核融合は夢の技術となっている。
しかしフィナは、これらの力を魔導で行い、力の増幅はミスリルとオリハルコンという地球には存在しない伝説の物質で代替えし行った。
もちろん、これらには魔導を正確に操り、また、核融合時に発生する中性子を防がなければならない。
それらを全て生身で行えたからこそ、バルドゥルはフィナを褒め称える。
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