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第三章
第180話 魔道具店開店
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あれからというもの、ジャックさんは率先して店を手伝うようになった。
元々頭の回転は早いようで、接客は完璧にマスターしたようだ。
一方、経営に携わることとなった淡い水色の髪の青年カートはブレイズ子爵家の三男だそうで、その能力は領主様曰く申し分ないとのことだった。
確かに彼の経営手腕は舌を巻くほどであった。
容姿はジャックさんが太陽と例えるなら、カートさんは月といった感じだろうか。
対照的な二人ではあるが、共に容姿端麗であることは否めない。
まぁ、人間の姿になったメイスを見た後ではもう動じないが。
それはさておき、二人の協力のおかげで無事開店の運びとなったのだが、開店直後に店に訪れたのはキリアンさんとカミール伯爵家の皆さんだった。
「やぁ。今日開店だって?何やら珍しい魔道具があるって聞いたんだけど、見ても構わないか?」
相変わらず爽やかな笑顔で話かけてきたキリアンさんに、私も笑顔で返す。
「はい。構いませんよ。ごゆっくりご覧ください」
そこへ、裕福な庶民らしい服装をした領主様達が近づいてきた。
たぶん身バレを防ぐためだと思われるが、それでも滲み出る気品や整った容姿は隠しきれていない。
現に、通りを歩く人たちの視線が彼等に集中していたのだから。
領主様の家族が総出で現れたことに内心で驚きつつも、私は笑みを浮かべて会釈をする。
「本日はわざわざ足をお運びくださりありがとうございます。それと、彼等を紹介していただいたこと感謝いたします」
一応、手紙で感謝の気持ちを伝えていたのだけど、領主様がわざわざ足を運んでくれたのだ。
きちんとお礼を伝えておくべきだろうと思い頭を深々と下げた私に、領主様が手で制してお茶目に片目を瞑って言った。
「堅苦しい挨拶は要らない。今日はお忍びで来たからな。どれ、店を見せてもらえるか?」
お茶目な領主様につられて笑顔になった私は、笑いを堪えながら店内に入るよう促した。
「はい、もちろんです。どうぞお入りください」
促されるように店内に足を踏み入れた領主様達は、辺りをキョロキョロと見渡しながら感嘆の声を上げた。
「おぉ!想像していたよりすっきりとして商品が見やすいな。……ん?この板に書いてあるのは値段と使用方法か?ほぉ……実に明朗会計で分かりやすい」
実は、この世界には値札というものが存在しない。
そのため、買い物をする時は口頭でやり取りをするのが普通だった。
値札を付けていなければ適正価格がわからないため、値段を上げられても一見にはそれが高いのか安いのかわからずに買うこともしばしばあったそう。
ただ、交渉してそこから値引きしてもらうというのがこの世界の常識らしいのだが、この店では価格を設定しているので値引きは一切受け付けない。
ちなみに、公共施設の利用料や宿、食事を提供する店などは、国や商業ギルドが定めた法律を守る義務があるため適正価格が決まっているのだとか。
まぁ、日本でも大きな買い物……例えば自動車などは値引きがあったから、それと似たようなものと考えたら理解は出来る。
でもね、前世お金に苦労した私としては、値札ってあった方がいいと思うの。
常に財布と相談しながら買い物をしていたから、金額がわからないとそれだけで躊躇しちゃうから。
特に「時価」なんて文字を見てガクブルしていた私としては、値札が付いていた方が安心だし買うか買わないか判断出来たしね。
「商品の配置を見やすく工夫しました。それに、値札が付いていた方がお客様も安心して手に取りやすいと思いまして。価格も良心的ですから値引きなどの交渉をしなくて済みますし、従業員の負担が減るはずです」
私の説明に耳を傾けていた領主様は、驚いた表情を隠しもせずに感心した様子で呟いた。
「……ユーリは買い手と従業員のことまできちんと考えているのか。なるほど、買い手の立場としては値札が書かれていれば安心だろうな。従業員の方も金額が決まっていれば交渉する時間も省けるし負担が減るということか。実に合理的だ。ユーリは賢いな」
ふっと柔らかく目を細めた領主様は、偉い偉いと頭を撫でてくれた。
皆に見守られている中で頭を撫でられるのは恥ずかしい。
だけど、嬉しいという気持ちもあったので、私は素直に身を委ねた。
それから、私とヒデさんは領主様達家族の質問に一つ一つ丁寧に答えていく。
領主様達家族は特に冷蔵庫が気に入ったらしく、オーダーメイドで厨房用に大きな冷蔵庫を注文してくれた。
領主様達が帰ったあと、ヒデさんは満面の笑みを浮かべて早速冷蔵庫造りに取り掛かることとなった。
こうして順調に開店を迎えた魔道具店はすぐにカミール領で有名となり、予想以上の繫盛ぶりに驚くことになるのをこの時の私達は知る由もなかった。
第三章はこれで終了です。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
最終章ですが、少し間が空くと思います。
お待たせして申し訳ありませんが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
うみの渚
元々頭の回転は早いようで、接客は完璧にマスターしたようだ。
一方、経営に携わることとなった淡い水色の髪の青年カートはブレイズ子爵家の三男だそうで、その能力は領主様曰く申し分ないとのことだった。
確かに彼の経営手腕は舌を巻くほどであった。
容姿はジャックさんが太陽と例えるなら、カートさんは月といった感じだろうか。
対照的な二人ではあるが、共に容姿端麗であることは否めない。
まぁ、人間の姿になったメイスを見た後ではもう動じないが。
それはさておき、二人の協力のおかげで無事開店の運びとなったのだが、開店直後に店に訪れたのはキリアンさんとカミール伯爵家の皆さんだった。
「やぁ。今日開店だって?何やら珍しい魔道具があるって聞いたんだけど、見ても構わないか?」
相変わらず爽やかな笑顔で話かけてきたキリアンさんに、私も笑顔で返す。
「はい。構いませんよ。ごゆっくりご覧ください」
そこへ、裕福な庶民らしい服装をした領主様達が近づいてきた。
たぶん身バレを防ぐためだと思われるが、それでも滲み出る気品や整った容姿は隠しきれていない。
現に、通りを歩く人たちの視線が彼等に集中していたのだから。
領主様の家族が総出で現れたことに内心で驚きつつも、私は笑みを浮かべて会釈をする。
「本日はわざわざ足をお運びくださりありがとうございます。それと、彼等を紹介していただいたこと感謝いたします」
一応、手紙で感謝の気持ちを伝えていたのだけど、領主様がわざわざ足を運んでくれたのだ。
きちんとお礼を伝えておくべきだろうと思い頭を深々と下げた私に、領主様が手で制してお茶目に片目を瞑って言った。
「堅苦しい挨拶は要らない。今日はお忍びで来たからな。どれ、店を見せてもらえるか?」
お茶目な領主様につられて笑顔になった私は、笑いを堪えながら店内に入るよう促した。
「はい、もちろんです。どうぞお入りください」
促されるように店内に足を踏み入れた領主様達は、辺りをキョロキョロと見渡しながら感嘆の声を上げた。
「おぉ!想像していたよりすっきりとして商品が見やすいな。……ん?この板に書いてあるのは値段と使用方法か?ほぉ……実に明朗会計で分かりやすい」
実は、この世界には値札というものが存在しない。
そのため、買い物をする時は口頭でやり取りをするのが普通だった。
値札を付けていなければ適正価格がわからないため、値段を上げられても一見にはそれが高いのか安いのかわからずに買うこともしばしばあったそう。
ただ、交渉してそこから値引きしてもらうというのがこの世界の常識らしいのだが、この店では価格を設定しているので値引きは一切受け付けない。
ちなみに、公共施設の利用料や宿、食事を提供する店などは、国や商業ギルドが定めた法律を守る義務があるため適正価格が決まっているのだとか。
まぁ、日本でも大きな買い物……例えば自動車などは値引きがあったから、それと似たようなものと考えたら理解は出来る。
でもね、前世お金に苦労した私としては、値札ってあった方がいいと思うの。
常に財布と相談しながら買い物をしていたから、金額がわからないとそれだけで躊躇しちゃうから。
特に「時価」なんて文字を見てガクブルしていた私としては、値札が付いていた方が安心だし買うか買わないか判断出来たしね。
「商品の配置を見やすく工夫しました。それに、値札が付いていた方がお客様も安心して手に取りやすいと思いまして。価格も良心的ですから値引きなどの交渉をしなくて済みますし、従業員の負担が減るはずです」
私の説明に耳を傾けていた領主様は、驚いた表情を隠しもせずに感心した様子で呟いた。
「……ユーリは買い手と従業員のことまできちんと考えているのか。なるほど、買い手の立場としては値札が書かれていれば安心だろうな。従業員の方も金額が決まっていれば交渉する時間も省けるし負担が減るということか。実に合理的だ。ユーリは賢いな」
ふっと柔らかく目を細めた領主様は、偉い偉いと頭を撫でてくれた。
皆に見守られている中で頭を撫でられるのは恥ずかしい。
だけど、嬉しいという気持ちもあったので、私は素直に身を委ねた。
それから、私とヒデさんは領主様達家族の質問に一つ一つ丁寧に答えていく。
領主様達家族は特に冷蔵庫が気に入ったらしく、オーダーメイドで厨房用に大きな冷蔵庫を注文してくれた。
領主様達が帰ったあと、ヒデさんは満面の笑みを浮かべて早速冷蔵庫造りに取り掛かることとなった。
こうして順調に開店を迎えた魔道具店はすぐにカミール領で有名となり、予想以上の繫盛ぶりに驚くことになるのをこの時の私達は知る由もなかった。
第三章はこれで終了です。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
最終章ですが、少し間が空くと思います。
お待たせして申し訳ありませんが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
うみの渚
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